中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

「せどり」と裁定取引

ビームせどりのイラスト

1.ビブリア古書堂の事件手帖

私が「せどり」という言葉を知ったのは「ビブリア古書堂の事件手帖」という小説だ。

 

美人で人見知りな古本屋の店長である「栞子さん」が、本に関する事件をいろいろ解決していくミステリー小説だ。シリーズ合計で600万部を超えて売れているベストセラーだし、剛力彩芽主演でテレビドラマ化されたりもした。だからご存知の方も多いと思う。

古本屋の店長というのは、穏やかに本を読んで過ごすことができる一種の理想的な職業だとも思える。そんな職業ですら事件が起こるのだから、穏やかに見えない職業が日々トラブルに塗れるのは仕方がない。

そんな事も考えさせられる話だった。

 

 

2.「せどり」とは

さて、「ビブリア古書堂の事件手帖」には「せどり」を行う人が登場する。そのおかげで「せどり」という言葉を知った。

 

せどり」とは何か?具体的なやり方を見ていこう。

 

せどり」のやり方は以下の通り。

まず、ブックオフなどの古本屋に行く。大量の本の背表紙を見て回り、高く売れる本を見つける。もし、1,000円で売れる本が380円で売っていればそれを買う。買った本を1,000円で売る。これで620円儲かる。

こうやってお金を稼ぐのがせどりだ。

 

本の値段はどこで確認すればいいか?本はどこで売ればいいか?

どちらもアマゾンが解決してくれる。

 

本の値段はアマゾンで確認すればいい。アマゾンを使っている人は知っているだろうけど、アマゾンには「マーケットプレイス」というシステムがある。

 

f:id:nigatsudo:20190711210011p:plain例えば「ピーター・リンチの株で勝つ」という本は、単行本の定価が1,944円だ。

そしてその下に「1,280円より中古品の出品」という文字が見える。

 

 

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そこをクリックすると、古本の値段が出てくる。一番安いのは、送料抜きで1,280円だ。この値段が、「ピーター・リンチの株で勝つ」という古本のネット上の価格だ。

 

本を売るのも、このアマゾンマーケットプレイスが役に立つ。

実際、上の画面を見ると日本各地の古本屋が「ピーター・リンチの株で勝つ」を出品しているのがわかる。アマゾンをプラットホームにして、古本屋が自分の商品を売っているんだ。アマゾンは取引を仲介して、その手数料を徴収する。これがアマゾンのマーケットプレイスの仕組みだ。

 

このマーケットプレイスは、誰でも出品することができる。

もし、ブックオフで「ピーター・リンチの株で勝つ」が108円で売られていたら買うべきだろう。アマゾンに出品すれば、1,280円で売ることができる。そうすれば1,172円儲けることができるんだ。

 

せどりのやり方はいくつもある。しかし、基本は同じだ。

高く売れる物を安く買って、その差額を手に入れる。

スマホには、アマゾンでの価格を確認するためのアプリも無料でダウンロードできる。ちょっと手間がかかるが、せどりはかなり確実にお金を稼ぐことができる方法だ。

私も過去に、試しにせどりをやってみた。結果、結構な金額を稼ぐことができた。

 

 

3.裁定取引(さいていとりひき)とは

 せどりは、商品の値段の差を利用してお金を稼ぐ方法だ。高く売れる本が安く売っている。それを買って売るだけだ。

ブックオフに落ちているお金を拾いに行こう」

そんなキャッチコピーがせどり界に存在するくらいだ。

 

 同じことが、株式市場でもできることがある。

例えばニトリの株。ニトリの株は東証1部に上場されているが、札幌証券取引所にも上場されている。

 2019年7月11日のニトリの株価は、終値で14,765円だった。

もし、東京証券取引所でのニトリの株が14,765円なのに、札幌証券取引所でのニトリの株が14,000円だった場合があったとする。

同じ株なのに765円も株価に差がついた。この時に札幌でニトリの株を買って東京で売れば、瞬時に、確実に稼ぐことができる。100株だったとしても76,500円の儲けになる。

 

まさに、「取引所に落ちているお金を拾う」という行為だ。

東京と札幌の「価格のゆがみ」を利用してお金を儲けるという方法だ。

このような取引を「裁定取引」という。

 

まあ、中学生にも分かりやすいように書いた例えだ。実際にこんな事はほぼ起こらない。

マーケットで「価格のゆがみ」ができてもすぐに解消される。確実に儲かるチャンスなんだから、最初に見つけた人がそのチャンスを使ってしまう。

道に76,000円が落ちていたら誰でも拾う。同じように、マーケットに落ちているお金もすぐに拾われる。

何万人もが注目する株式市場なんだからなおさらだ。個人が裁定取引で稼ごうと思っても難しいだろう。

 

 でも、裁定取引の考え方は覚えておくといい。

「価格のゆがみ」は、株取引でお金を儲けるとても重要なポイントなんだ。

 

 

 

 ↓ 興味のある人は、一度せどりをやってみてもいいと思います。

   株式投資にも応用できる考え方が身につく、かもしれないです。

システムディ 第2四半期会社説明会資料を読んで(その3)

 

 

 

パソコンの前でご飯を食べる人のイラスト(女性)

 

システムディの決算分析、最終回です。

第1回と第2回は以下のリンクから見てください。

 

 

1.売上 = 顧客数 ✕ 単価

売上は、「顧客数」と「顧客あたりの売上高」をかけた数字になる。これはどんな商売でもおんなじだ。売上を増やすには、顧客数を増やすか、一人あたりの顧客が買う商品の単価を上げるか。このどちらかしかない。もちろん両方とも上げるのがベストなんだけど。

 

今回発表されたシステムディの顧客数を6領域に分けてグラフにしてみた。

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縦軸は顧客数、横軸は半期ごとに目盛が刻まれている。

少しずつ上昇しているのがわかるが、1年前までの急上昇は認めなくなっている。

横軸の9が今回の第2四半期のデータだ。

横軸の7、つまり1年前の第2四半期までの急上昇は頭打ちだ。とくに公教育と公会計の顧客数増加はポッキリと折れている。

 

このグラフだけを見ると、株を売りたくなってくる。

しかし実際はVolume Businessの売上を、前年同期829百万円から今年度941百万円へと13.5%伸ばしている。

全体としては、売上高を前年同期比 96.5%と減らしながらも、経常利益を前年比20%まで伸ばしている。

これをどう解釈するべきか。

 

やはり、「売上高 = 顧客数 ✕ 単価」の式を考えればよいのだろう。

顧客数はそれほど上昇していないのに、13.5%売上が伸びた。これは顧客あたりの単価が上昇したからだ。売り切りのパッケージソフトから、より単価の高いクラウドサービスに移行したから客単価が伸びたのではないだろうか?

 

また、利益が売上高を超えて伸びているのもいい。

ソフトは一度作ってしまえばあとはコピーして売るだけだ。クラウドならば新しく製品を作る必要すらない。売上が上がった分、そのまま利益が上がっていく。

 

しかも、前回書いたようにまだまだクラウド化してない顧客が半分以上いるのだ。クラウド化の流れが進めば、そのぶん顧客単価が増え、売上が増え、利益も増える。

 

そう考えてもいいだろう、と思っている。

 

 

2.キャンパスプランスマートのリリース

システムディは6月6日に「キャンパスプランスマート」という新しいソフトをリリースすると発表した。

現在、システムディが学園ソリューション事業として大学向けに提供しているソフトが「キャンパスプラン」だ。学園ソリューション事業には976の顧客がいる。

この「キャンパスプラン」をリニューアルした「キャンパスプランスマート」を新しくリリースしたんだ。

そのソフトの内容は残念ながらわからないが、とても使いやすいらしい ↓ 

https://www.systemd.co.jp/common/uploads/2019/06/20190606_CampusPlanSmart.pdf

 

これが導入されれば、間違いなく客単価は上昇するだろう。

ご存知の通り大学の入試制度はコロコロ変わる。それに受験生が振り回されるのがいつもの受験の光景だが、きっと大学の事務の人達も受験生以上に振り回されているはずだ。

そんな大学の事務の人達が、クラウド化され制度が改定されるたびにアップデートされるソフトを欲しがるのは自然な流れだ。

その流れが、この「キャンパスプランスマート」のリリースで進むんじゃないだろうか?

そんな事も考えている。

 

 

3.公会計ソリューションの競合ソフトの終焉

システムディは、地方自治体向けの会計ソフトを提供している。PPP(トリプルピー)という名前のソフトであり、全国950の自治体が顧客だ。

地方自治体の会計は、少し前に法律が変わって「複式簿記」を導入しなくてはいけなくなった。その法律改正に合わせてシステムディがPPPを売り出したのだが、現在そのシェアは50%だ。

このPPPの競合に、J-LISの作ったソフトがある。J-LISは地方公共団体情報システム機構という、国の機関だ。J-LISのソフトのシェアは25%、使用料金は無料だ。

この「国が作った無料のソフト」は、2019年3月から有料化された。

しかも、2022年3月31日でのサポート終了が決定している。

J-LIS 地方公会計標準システムサポート事業

 

25%のシェアをもつ競合が、勝手にサポートを終了してくれるのだ。これはどう考えてもチャンスだ。

当然、システムディもこのチャンスを把握して対応しているだろう。25%全部取れるとは思わないが、伸びしろとして十分な魅力がある。

 

 

 4.保有継続

 というわけで、システムディの保有は継続する。

 少し上がったけど、時価総額はたったの48億円。PERも16.16と、お安いままだ。

まだまだ上はあると思っている。

 

 皆さんの意見を聞きたいです。

ぜひコメントなどお願いします。

 

 

システムディ 第2四半期会社説明会資料を読んで(その2)

エッグインクラウドのイラスト

1.会社説明会資料を読んでの疑問点

上方修正があったシステムディ。会社説明会の資料も出たのでいろいろ分析したよ、という話の続き。

 

会社説明会資料を読んでいくと、いくつか疑問が湧いてきた。疑問は主に資料P16の周囲から湧いてくる。

 

 

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これがそのP16だ。

湧いてきた疑問は以下の2つ。

 

疑問① ストック収入が半期に941百万円って多すぎないか?

    本当にストック収入なら、通期で1,882百万になるのか?

    資料には「通期見込み1,367百万円」のままになっているけど?

 

疑問② Volume Businessの顧客数は半期で6,554から6,712に増えている(+158社)。

    「サポート・クラウド契約数」は6,272から6,425に増えている(+153社)。

    これは、通常の顧客がクラウドの顧客へ行く流れが終わったってことか?

    

これだけでは何を言っているのかピンとこないと思う。順番に説明します。

 

 

2.疑問① ストック収入が半期に941百万円って多すぎないか?

「ストック収入」とは、クラウド等で月額使用料をいただくような収入が当てはまるはずだ。月額使用料なら、顧客数が変わらない場合、上期も下期も同じ売上になるはずだ。つまり、上期の売上が941百万円なら通期でその倍の1,882百万円になるはずだ。

しかしそれなら通期見込みが1,367百万円のままであるはずがない。

 

 

確認のため、2018年度の会社説明会資料をチェックしてみる。

まずは2018年中間期の会社説明会資料。

 

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2018年6月20日に発表された中間期の会社説明会資料。

P18にはストック収入が829百万円とある。これが全て月額使用料からのストック収入だと考えると、通期のストック収入は1,658百万円になるはずだ。

 

 

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しかし、2018年の通期の会社説明会資料では、ストック収入が1,215百万円だったと書かれている。

通期のストック収入が中間期の倍なら1,658百万円になるはずだ。それがたったの1,215百万円だったんだ。

これは、株価がストップ安になるのも仕方がない。

 

 

IRに聞いてみた

なぜストック収入が半期の倍にならないのか?と、IRにメールしてみた。

その回答はこうだった。

「月額課金制でも1年分の使用量を期首に払い込むユーザーが少なからず残っている。特に学園ソリューション事業では4月に一括して計上するケースが多い。」

「あと、ストック収入と書いているけど、それが全部クラウド契約しているわけではない。サポート契約しているだけのユーザーもいる。そういう収入も全てストック収入って事になっている。」

 

まあ、このあたりは予想通りだった。

ストック収入って言うんなら、期首に全部計上するのは変じゃないかとも思うけど。

 

 

 

3.疑問② 通常の顧客がクラウドの顧客へ行く流れが終わった?

Volume Businessの顧客数は半期で6,554から6,712に増えている(+158社)。

「サポート・クラウド契約数」は6,272から6,425に増えている(+153社)。

顧客数の伸びと「サポート・クラウド契約数」の伸びがほぼ同数になっている。これは、顧客のほぼ全てが「サポート・クラウド契約」を結んでしまったということか?

 

システムディは、売り切りのパッケージソフトのみを売るビジネスから、利益率とストック性の高いクラウド契約に変更する流れが来ている。この流れの中で利益がビュンと伸びるだろう。そう考えてシステムディを買ったんだ。

もう顧客全てがクラウド契約を結んだとすれば、利益が急激に伸びる伸びしろを使い切った事になる。それは、株主である理由を揺るがす事態だ。

 

 

これもIRに聞いてみた

このことについてもIRにメールして聞いてみた。

すると、こんな答えが帰ってきた。

「ストック収入にはクラウド収入も含まれています。しかし、クラウド収入のストック収入に占める割合は半分もございません。

 

この情報は重要だ。

まだまだパッケージソフトのユーザーはクラウドに移行していない。

ユーザーがクラウドに移行するメリットは大きい。情報セキュリティ対策の面からも、社会や法令の変化に対応するアップデートのやりやすさからも、ゆくゆくは全てがクラウド契約に移行すると考えている。

クラウド契約は間違いなく単価が高い。まだ半分以上の顧客がクラウド契約に移行していないならば、まだまだ利益が急激に伸びる余白があるはずだ。

 

 

 4.満足した

IRへの問い合わせの回答はとても満足できるものだった。

安心して保有を継続することにした。

 

 システムディの中間決算まとめ、あと1回続きます。

 

 

 

 

 ↓ 90秒で説明できない会社には手を出すなと。

  2週間ほどかけて説明していますが、それは説明者の技量の問題です。 

ピーター・リンチの株の法則---90秒で説明できない会社には手を出すな

 

システムディ 上方修正と第2四半期決算の分析

 

踊るお姫様のイラスト

1.ストップ安でナンピン買いしたシステムディ

半年前、私の持ち株であったシステムディは決算発表後にストップ安となった。同じ日にプレミアグループという企業の株もストップ安になっていたので、たった1日でお金がびっくりするくらい減った。

私はかなり集中投資する方なので、6銘柄の株しか持っていなかった。その6つの内の2つが同じ日にストップ安になったんだ。おかげで「ひとりリーマン・ショック」を味わう事ができた。

 

その「ひとりリーマン・ショック」のさなか、私はストップ安になったシステムディをナンピン買いした。

そのあたりの話は何度か記事にしたので、ぜひ読んでください。

 

 

 

2.システムディの上方修正

2019年6月7日に、システムディは上方修正を発表した。

第二四半期の売上高は16.7億円から17.6億円へ訂正され、5.4%上方修正された。

経常利益は2.31億円から3.53億円へ訂正され、52.9%上方修正された。

 

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その結果、経常利益は前年比120%を記録した。

この上方修正を受けて株価はストップ高となった。

私にとっては「ひとりリーマン・ショック」からの逆転だ。これはちょっとドヤってもいいだろう。

 

ストップ高の後3週間ほど株価はもみ合ったが、昨日から株価は更に上に放たれた。連日の新高値更新だ。

私はあんまりチャートを読むのが得意じゃないんだけど、その私が見てもいい形のチャートに見える。これから更に上がっていくことを期待する。

 

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そして6月20日に中間期の会社説明会資料が公表された。その内容について、今日は書いてみたい。

 

 

3.システムディの商売はVolume Bisinessがキモ

システムディの企業分析の記事はいくつかあるので読んでみてください。

 

システムディを買った理由 - 中1の息子に教える株式投資の始め方

システムディの企業分析 ナンピン買いまでした理由 - 中1の息子に教える株式投資の始め方

システムディ、1月の企業説明会資料を読んで - 中1の息子に教える株式投資の始め方

 

 読むのが面倒な人にはサラッと復習を。

 システムディの商売は、大規模事業体向けにカスタムメイドの情報システムを販売する「Value Business」と、そこで培ったノウハウをパッケージソフトにして小規模事業体に販売する「Volume Business」がある。

 

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このうち、開発コストや人手がかからず儲かりやすいのは、小規模事業体向けの「Volume Business」の方だ。このVolume Businessが、売り切りのパッケージソフトから月額課金のクラウドソフトに切り替わっていくことで、より利益率とストック性が上がっていくと考えている。それが私のシステムディの購入理由だ。

 

短くまとめてみたけど、やっぱり短い文章だと理解しにくい。ぜひ過去の記事も読んでください。

 

 このVolume Businessについて解説しているのが、説明会資料のP16だ。

 

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この部分についてちょっと引っかかりを感じた。だからIRにメールしてみた。

その結果、自分なりにすごく納得できた。今後も株主を続けていきたいと思えた。

 

その内容について、次回書きます。

せめてその記事を書くまでは、システムディの株価が下がりませんように。

 

 

 

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震災後の遠藤照明とシンプルな投資

 

節電のイラスト「スイッチをオフ」

1.2011年3月からの日本

前回の続きです。

 

東日本大震災が起きて、震源地の宮城県を中心とした東北の太平洋側は被害が甚大だった。鉄道や道路などの交通網は各所で分断された。

しかし被害の規模に対して、その復興のスピードはとても早かったように思う。例えば東北新幹線は、4月29日には既に全線の運転を再開している。それぞれの立場の人間が、それぞれの立場で全力を尽くして復興に向けて動いている。そんなような雰囲気があった。

 

ただ、たくさんの人が亡くなっていることもあり、「自粛ムード」というものが蔓延していた。花見やお祭りやコンサートなど、日本中で華やかな行事が中止されていた。多くの国民が喪に服していたんだ。その結果、経済が回らず商売がうまく行かず、更に苦しくなる人もいたんだけど。

 

 

そして大震災以降、日本中の原子力発電所が運転を停止した。

原因はもちろん福島第一原子力発電所メルトダウンだ。震災とは全く関係ない地域の原子力発電所も、「安全が確保されるまで」運転再開を見合わせるという事になった。原子力発電所が運転を停止した分、他の火力発電所などで発電を補わないといけない。しかし東北地方はその火力発電所なんかも大きな被害を受けていた。補おうにも使える発電所が残っていなかった。その結果、全国的に電力不足が起こった。

 

 

節電運動が強く推進された。地下鉄のエレベーターが運行を停止したり、クーラーが消されたり、コンビニの照明が半分消されたりしていた。それでも足りなくて、時々計画停電が行われることもあった。

 

 

2.LEDを買おう!

その頃私は忙しく仕事をしていた。震災後しばらく経過しても、まだまだ生活は落ち着いていなかった。

震災後に買った日経平均ETFはわずかに上昇したが、その後もヨコヨコに推移していた。日本は終わらなかったが、すんなり株価は戻らなかった。

照明が弱く落とされた街を歩いていた時に、ふと思った。

「LEDを買えばいいんだ」

 

電気屋でLEDの電球を買い、白熱灯の電球と交換した。

そして日経平均ETFを全部売却して、そのお金で「遠藤照明」という株を買った。

遠藤照明はLEDを作っている会社だ。電力不足だから蛍光灯や白熱電球からLEDへの移行が進むだろう。個人でも節電運動に協力的な人はたくさんいた。これはもう日本中の大きな流れだ。国の政策だ。実際、LEDへの転換に補助金を出している自治体もあった。

ETFを売り、塩漬けになっている他の株を売り払って、その資金で遠藤照明を買った。本当に、お腹いっぱいになるまで買い集めた。そして放って置いた。

その結果、とても儲かった。

 

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800~1,000円で買った株を、2,100~2,900円で売ることができた。

投資家として仮死状態だった私だったが、目覚めていきなりヒットを飛ばした。資産を倍増させることができた。

 

 

3.シンプルな投資

このときの投資は実にシンプルな発想から行えた。

振り返ってこの話を見れば、誰でも納得できるストーリーだ。

もちろん多少の分析は行ったけど、企業分析は確認のためだけに行った。ストーリーは夜の街で思いついた。思いついてすぐに勝ちを確信した。

 

こんなストーリーは誰でも思いつくことができる。経済のサイクルや決算書の知識なんて必要ない。投資のキャリアも必要ない。ただ、アイデアさえあればいい。

こんなアイデアを息子には期待しているんだ。

息子よ、私を高みに連れて行ってくれ。

 

こんなにシンプルな投資がうまくいく機会は多くないだろう。でも、チャンスは必ずやってくる。

その時は思い切って勝負に出たい。

 

 

 

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東日本大震災と株式投資

 

地震を気にしない人のイラスト

1.震災と東京電力の株

かぶ1000さんという有名な個人投資家がいる。

中学生の頃に株を始め、「株式投資に全ての時間を使いたい」という理由で高校卒業以降一度も定職に就かず、現在も生活費等のお金は全て株式投資から得ている専業投資家だ。その資産は3億円以上。純度100%の「生涯投資家」だと思う。

 

このかぶ1000さんは、2011年の東日本大震災東京電力の株を買っている。知っての通り、東京電力福島第一原子力発電所の所有者だ。福島第一原発は、震災の影響で原子炉がメルトダウンし、放射性物質を撒き散らした。

その最中に、福島第一原発の所有者である東京電力の株を買っていたのだ。

 

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これが東京電力の10年間の株価チャートだ。

震災後にフリーフォールして地面にぶつかっている。その後、空気の抜けたボールが跳ね返るようにちょっとだけ反発しているが、そのあたりで儲けたのだろう。

かぶ1000さんは、なんらかの確信があってそのような行動に出たのだろう。私には到底真似できない。

 

もう10年ほど前のことになるが、この時の事はよく覚えている。東京電力の株は買わなかったが、自分なりに考えて行動した。

今日は、2011年3月に私がどのような行動を取ったかを書いてみたい。

 

 

2.2011年3月10日の状況

2011年の投資家としての私は、仮死状態だった。

仕事があまりにも忙しく、気持ちにも余裕がなく、全く株式投資への興味を失っていた。株式の保有は続けていたが、株価の確認は1ヶ月に数回程度だった。

何よりも持ち株の株価が上がらない。あまり下がりもしないのだけど、全然上がらない。減らない含み損を毎日確認するのもストレスなので、本当にほったらかしていた。「まあいいか」そんな気持ちでいた。

 

私が株を始めた最初の数年間は調子よく資産を増やしていた。しかし2011年頃は、含み損を抱えた株を、ただ何も考えずに保有していただけだった。

それもそのはずだ。日経平均は私が株を始めた2003年頃から上昇していた。

そして2008年にリーマン・ショックが起きた。私の運用資産は激減した。

 

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これは2000年からの日経平均のチャートだ。

 

株式投資を始めた頃は、資産がどんどん増えていくのは自分の実力だと思っていた。しかし実際は大きな流れに乗っていただけだった。流れはそのうち滝壺に注いだ。いつまで経っても新しい流れに乗れて浮上する日は来なかった。

 

2011年の私は、下がりきった持ち株を所有しているだけ、退場していないだけの投資家だった。

 

でも、少しずつ入金はしていた。

仕事で得たお金を、少しずつだが証券口座に入れていた。

仮死状態だけど、その入金だけが投資家としての種火を残していた。

 

 

3.3月11日

そして地震が起こった。

津波が起きて大勢の方が亡くなった。福島県で原子炉がメルトダウンした。

私の住んでいた地方も3日間ほど停電した。

放射性物質が撒き散らされて、日本はもう終わりだ、と言われていた。放射能汚染を避けるため、関西や沖縄の方に疎開する芸能人のニュースなんかが流れていた。

 

日経平均は暴落した。

 

 日経平均は日本の企業の平均株価だ。日本が終わりなら、日本企業もほぼ終わりだ。当然のように暴落していた。

 

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東日本大震災(2011年)前後の日経平均株価チャート | 経済&マネー

 

そんなニュースを見て、仮死状態だった投資家の私は怒りとともに目覚めた。

「日本が『この程度の震災』で終わるか。バカじゃないか?日本は太平洋戦争の焼け野原からも復興したんだ。日本人を舐めるな!」

そんな気分になっていた。 

 

そして速攻で日経平均ETFを買った。すべてのキャッシュポジションを日経平均ETFに注ぎ込んだ。

本当は個別株を買いたかったけど、しばらく相場から離れていたので何を買えばいいかわからなかった。個別銘柄を調べる余裕はなかった。だからとりあえずETFを買ったんだ。3月17日の事だった。

 

 

4.その後

予想通り、日本は終わらなかった。

しばらくは仕事がものすごく忙しくなっていたが、仕事をしている間も株価は戻ってきていた。

仮死状態だった投資家としての私も生き返った。

 

 生き返るタイミングとしては申し分なかった。その後、日経平均アベノミクスのお陰で生き返ってくれたのだから。

 

 

この話、続きます。

 

 

株を売って手に入る「現金」と「かりそめの安心」

浮き輪に掴まり助かった人のイラスト

1.株価は需給で決まる/株が売られる時

株価は、買いたい人と売りたい人がいるからこそ決定する。

買いの注文が売りの注文より多ければ株価は上がる。売りの注文が買い注文より多ければ株価は下がる。その日その時の注文の量が株価を上下に変動させる。株価とは「取引された株の値段」なのだから、株価が需給で決まるのは動かしようのない事実だ。

 

これまでの記事で、様々な「需要の増加」による株価上昇について書いてきた。ファンドが買うときとか、1部上場が決まった時とか、TOBがかかるときとか、イナゴが群れてやってくるときとか。

株の需要(買い)が増加して供給(売り)を圧倒した時、株価は上昇していく。逆に供給(売り)が需要(買い)を圧倒すれば、株価は下落する。

 

意識的に上昇する話を書いてきたが、逆のパターンで下落することも多い。 そして下がる時は上がるときより派手だ。コツコツ上げていた株が、ドスンと暴落する。いきなり始まるジェットコースターの下りのようだ。

私は遊園地のジェットコースターが怖いので嫌いだが、少なくともいつ下りが始まるかわかる分だけ良心的だと思っている。株価の下落はいつ始まるかわからない分、悪質だ。

という訳で、今日は株の売りが湧いてきて株価が下がる時の話を書きます。

 

 

2.現金が欲しい個人投資家 

 株式投資家は株を買う。株を買って上がるのを待つのが株式投資家だ。

信用取引で株を売って下がるのを待っている投資家もいるが、どちらかと言えば少数派だ。信用取引だけを見ても、株を売っている人より買っている人の方が2倍以上多い。信用取引をやらない現物派は、当然ながら買うことしかできない。

だから、株を買っている投資家に限定して話をしていく。

 

投資家が所有している株を売ると、現金が手に入る。

現金は置いておいても増えることは無い(銀行の利息は少なすぎるので無視)。しかし現金は減ることもない。いろいろな物を買うこともできるので、現金は便利だ。

投資家が株を売る理由は、現金が必要になったときだ。

 

子供が大学に入学し、まとまったお金が必要になった。家を建てるためにローンの頭金を用意する必要が出てきた。このように現金が必要になった時に、個人投資家は株を売る。

でも家を建てる時期は個人によってバラバラだ。子供が大学に入学してお金がかかるのは3月から4月だが、毎年その頃に株価が下がるという現象は見られない。

個人投資家が現金のために株を売っても株価が下がる、という事はなさそうだ。

 

 

3.現金が欲しい機関投資家

一方、機関投資家はどうだろう?機関投資家が現金のために株を売ることはあるだろうか?

機関投資家が株を買っているお金は、出資者が出してくれたお金だ。だから出資者に「お金を返して!」と言われた時は、株を売って現金に変え、それを返す必要がある。

機関投資家が現金のために株を売るのは、お金を返す必要が出てきたときだ。つまり、そのファンドや投資信託が解約される時だ。

 

出資者に「お金を返して!」と言われれば抵抗できない。

返せと言われればただちに株を売って、お金を返さなくてはいけない。「あと2週間待てば株価はもとに戻って、その後は2倍まで上昇する!」という事が間違いなくても、機関投資家は株を売らなくてはならない。

これは機関投資家にとって絶対のルールだ。

 

ファンドや投資信託が解約される時はどんな時か?

これは、株価が下がったときだ。

株価が下がれば、ファンドや投資信託の価値も下がる。そうすればさらなる損を防ぐために、出資者はファンドや投資信託を解約する。

だから株価が下がる時、現金が必要になった機関投資家が更に株を売る。

するとその売りで、さらなる株価下落が起こる。さらなる株価下落がもっと売りを呼んでくる。その売りがさらなる株価下落を招く。

 

こうやって負のスパイラルがどんどん進む。ありえないほど安くなった株が、更に売られていく。これが、ドスンと株価が下がる原因だ。

 

 

4.安心が欲しい個人投資家

どんどん株価が下がる時。これは、買いのみの個人投資家にとってなかなかつらい時だ。2018年の12月にもそれなりの株価下落があった。15年ほど株をやってきた私でも、毎日減っていく資産を見ているのはつらかった。

 

「安い時は株を買うときだ!」そう思っていてもなかなか買えるものではない。もっともっと下がるかも知れないのだから。

株価が下がった時に買った株が更に下がり、深いダメージが更に深くなる。そんな経験なんていくらでもある。そんな経験が、落下していく株を買うのに二の足を踏ませる。

 

何日も下がっていくのを見ていると、最後に我慢できなくなる。

我慢できなくなって株を売る。株を売って手に入るもの、それは現金と「これ以上お金が減らないという安心」だ。

散々苦しんだ投資家が、最後に「安心」が欲しくなって株を売る。しかしそこで手に入る「安心」は一時的なものだ。

 

我慢に我慢を重ねた投資家がギブアップする。その時はもう株を売る人が残っていない。我慢強くない投資家は、もうとっくに売って逃げているのだから。

 

売る人がいなくなると、株価はゆっくりと元に戻っていく。「あなたの売った、そこが底」っていうやつだ。

我慢に我慢を重ねた後に売った投資家は、上がっていく株価を見て2倍苦しむことになる。 

 その精神的ショックで退場していく投資家も少なくない。株で破産して退場するより、精神的ダメージを受けて退場する投資家が多いと思っている。

 

 

5.まとめ

株価が暴騰するときも暴落するときも同じだ。株価が極端に走る時は、理性で株価が動くわけじゃない。感情で株価が動くんだ。

投資は精神のコントロールがとても大事だと言うことが理解できただろうか。

 

早く逃げるか、冬の間を穴ぐらにこもって売らずにやり過ごすか。

上げるときも下げるときも、売るのはとても難しい。