中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

INFORICHを買ったわけ⑥・・・沖縄の話

琉球舞踊のイラスト

1.競合他社その⑤ 充電GO

「充電GO」もモバイルバッテリーシェアリングサービスのひとつだ。

サービス内容もINFORICHとほぼ同じ。料金は24時間で220円から。


充電GOのサービスを提供しているのはインタラクティブ株式会社だ。スマホバッテリーレンタル以外にも、求人マッチングサービスやデジタルマーケティングなどの事業も行っている。

その本社は沖縄県にあり、バッテリースタンドもほぼ沖縄県だけに存在する。

 

サイトをみると「県内1000箇所」と書いてあるが、「*順次設置予定」とも書いてある。

 

実際はどのくらの数があるのだろうかと調べてみた。

インタラクティブ株式会社が自ら行ってる求人マッチングサービスの自社ページにこんな記載があった。

少なくとも沖縄県内に500ヶ所以上のバッテリースタンドがあるようだ。

 

一方沖縄にあるINFORICHのバッテリースタンド数はどのくらいだろうか。WebサイトのMAPで確認できる。

沖縄本島に287ヶ所、先島諸島に34ヶ所。合計321ヶ所になる。

沖縄県内でのバッテリースタンド数は充電GOの方がチャージスポットより多い。

 

 

そして価格面での攻勢も強い。

もともとの料金は充電GOは24時間220円、チャージスポットは24時間540円だ。

 

それ以上に充電GOはキャンペーンを連発している。

 

 

今年の3月は24時間15円で借りることができた。

5月と6月にも沖縄県民限定ではあるが24時間15円で借りることができた。

7月は1時間15円のキャンペーンをやっていた。

 

そして8月と9月は毎週1回、24時間レンタル無料のクーポンを配っている。

 

なかなかエグい。

沖縄のバッテリースタンドのシェアトップでありながらこれほどまでの攻勢をかけている。沖縄県内の支配を確実なものにするという強い意志を感じる。

 

 

これはさすがにチャージスポットは苦戦しているだろう。

そう考えて沖縄各所のバッテリースタンドの貸出状況を確認してみた。

 

すると、案外そうでもなかった。

どこのスタンドもそこそこ借りられているのだ。

上のスクショはチャージスポットのアプリの地図だ。撮影は9/18の正午。

国際通りにあるセブンイレブンの状況が示されているが、バッテリーの半分は貸出中だ。

国際通りのような観光地以外でも普通に貸し出されてる。チャージスポットがそんなに苦戦している印象はない。

 

 

2.いったいどうして?

沖縄県では充電GOのの方がバッテリースタンドの数も多いし料金も安い。

それでもチャージスポットが利用されているのはどうしてだろう。

 

私の考えた仮説は以下の通り。

沖縄県には毎月60万人以上の旅行者が日本全国から流入している。

この観光客が利用している可能性について検討してみた。

 

令和元年の旅行者の平均滞在日数は3.68日というデータがある。なので平均して73,600人の旅行者が沖縄県に滞在していると計算できる。

73,600人を沖縄県内のチャージスポットのバッテリースタンド数321ヶ所で割ると、1台あたり229人の観光客がいることになる。

旅行中はスマホをよく使うだろう。バッテリー切れのリスクはいつもより大きいし、その悪影響はいつもよりずっと大きい。

229人のうちの3%がチャージスポットを利用すると仮定すると、バッテリースタンド1台あたり7人弱の利用者がいることになる。

 

出発前からチャージスポットを利用している人は旅行中も利用するだろう。

モバイルバッテリーシェアリングが提供する価値は「便利さ」だ。3泊4日の観光旅行だけのために充電GOのアプリをダウンロードする人は少数派だと考える。

 

沖縄旅行中に初めてバッテリー切れを起こした旅行者が、解決策として最初に想起するのがチャージスポットである可能性も高い。近くのコンビニに駆け込み、初めて利用する事で今後の継続利用につながるという事もありそうだ。

 

そうすると、もうこれだけで充分な気がする。沖縄県でのチャージスポットの事業は観光客だけでも充分ペイする可能性があると思う。

 

実際の所はわからない。

ちょっと沖縄県の状況を会社側に聞いてみたいところだ。

 

 

えっ!

9月27日の湘南投資勉強会にINFORICHの秋山社長が登壇されるんですか!

なんてタイムリーな話でしょう!これは正座待機するしかないですね!!

 

 

3.競合他社まとめ

INFORICHはバッテリースタンド設置シェア率82%を占めている。

これはビジネスの立ち上げの段階で思い切った投資を行った結果だ。コロナの逆風の中でも怯むこと無くバッテリースタンドを設置し続けた。

その果実を回収する時期はこれからだ。

 

競合他社にとっては打つ手がない。これから100億円かけてバッテリースタンドを設置したところでようやくINFORICHと対等になるだけだ。

対等になったところで競争が激化する。中国の怪獣充電のように赤字化する可能性も高い。そんなハイリスク・ローリターンの投資は合理的だとは思えない。

 

さらに言えばINFORICHはコンビニや鉄道駅などの「オセロの角」を押さえてしまっている。例えばファミリーマート以外のコンビニにはチャージスポット以外のバッテリースタンドが置けない。そういう排他的な契約を結んでいるからだ。

 

オセロで4つの角を押さえられた後に逆転するのはほぼ無理だ。

 

というわけで、沖縄以外の場所でINFORICHの優位性が切り崩される可能性はほとんどないと考えている。

 

 

 

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コンサルティング会社サバイバルマニュアル」

買った。まだ読んでる途中だけど面白い。勉強にもなる。こんなふうに仕事をしていると、ぼんやり生きている普通の人とは一緒に行動するのが難しくなるなと思った。

「読むか、残業か?」というキャッチコピーがウケる。

 

村上春樹羊をめぐる冒険

30年以上前、高校生の頃に読んだ。村上春樹の小説のなかでいちばん好き。

私も羊をめぐる冒険に行きたかった。

 

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でも評判はよさそうですね。

INFORICHを買ったわけ⑤・・競合他社について

ガリヴァー旅行記のイラスト「小人に捕まるガリバー」

INFORICHの競合他社

INFORICHの競合他社は数社ある。

直接の競合となるのは①POWER NOW、②HESTAチャージ、③充レン、④mocha、⑤充電Go、の5社だろう。

どの競合他社もINFORICHと似たような機材を使っており、似たようなシステムで運用されている。

 

それ以外にも⑥U4Bという企業もある。こちらはBtoBの企業であり直接の競合ではないのだけど、一般消費者の充電需要を満たすサービスなので取り上げる。

合計6社。各社の料金等はあまり詳しく書かない。

 

モバイルバッテリーシェアリングが消費者に提供する価値は「便利さ」だ。つまり「簡単に、いつでも借りれる、いつでも返せる」という事だ。これは「バッテリースタンドがどこにでもあって24時間アクセスできる」という事が重要になる。

 

「レンタル料金は安い、だけど返却場所は限られている」というサービスは不便だ。それなら最初から自分でモバイルバッテリーを買えばいい。それが面倒だからレンタルするのだろう。

 

便利さを担保するのは利用できるバッテリースタンドの数だ。さらに言えば24時間いつでもアクセスできることが望ましい。

競合他社の調査も主にバッテリースタンドの数を調べてみた。

 

 

その① POWER NOW

POWER NOWは中国でモバイルバッテリーシェアリングを展開している「来電科技」の日本法人だ。

システムはCHARGE SPOTやその他の企業と変わらない。1時間110円から借りられる。

充電器は買うから借りる時代に!設置店を開拓いただくお仕事です!「レンタルバッテリー」営業代理店募集 | 代理店募集.com

 

POWER NOWは2020年1月に日本で本格的なサービスを開始した。

その時のニュースリリースには「2020年8月までに日本国内で2万か所のバッテリースタンドを設置する予定」とある。

 

しかしどう見てもPOWER NOWのバッテリースタンドは多くない。

スマホにPOWER NOWのアプリを入れるとバッテリースタンドの場所が確認できる。

 

品川駅から渋谷駅あたりのMAPがこれだ。

画面上には25か所のバッテリースタンドしか表示されない。

 

 

同じ地域のチャージスポットのバッテリースタンドを示す地図は下の通り。

左上の渋谷駅の場所に(236)という数字が見える。渋谷駅周囲だけで236ヶ所のバッテリースタンドが設置されているわけだ。

 

チャージスポットのバッテリースタンドは国内40,900台だ。

地図に現れるバッテリースタンドの密度を考えると、POWER NOWのバッテリースタンドが国内2万ヶ所も設置されているとは考えられない。

POWER NOWの事業計画は上手く行ってないと考えるのが妥当だろう。

 

 

その② HESTA CHARGE

「HESTA CHARGE」もモバイルバッテリーシェアリングサービスだ。

そのサービス内容はINFORICHとほぼ同じ。レンタル料金は24時間165円から。

 

展開しているのはHESTA大倉という企業だ。

HESTA大倉の本業はニュータウンの開発、分譲マンションや戸建住宅の販売、リゾートクラブの運営などだ。新規事業としてモバイルバッテリーシェアリングを行っているようだ。

 


会社の公式発表ではバッテリースタンドの設置台数が4,200台、アプリのユーザーは4万人とのこと。

INFORICHはバッテリースタンド設置数が40,900台、月間アクティブユーザー数が69万人だ。

 

渋谷から品川駅周囲のバッテリースタンドMAPは以下の通り。

規模も利用者も1/10以下のようだ。

 

 

その③ 充レン

充レンもモバイルバッテリーシェアリングのサービスだ。

ネオンサインのような派手なロゴが印象的だ。


展開しているのは東京エナジーパートナー。東京電力HDの子会社のひとつであり、日本最大の小売電気事業者でもある。
レンタル料金は24時間で330円。

 

バッテリースタンドの数はそれほど多くないようだ。

サイトの「新着情報」のページを見ると、2022年10月6日に「充レンを神戸市営地下鉄に設置決定」というニュースがある。その記事に「現在、全国各地の約3,300箇所にレンタルスタンドを設置しております」という文章がある。

 

そしてそれ以降は新しい設置のニュースはない。

 

渋谷~品川間のバッテリースタンドMAPはこの通り。

POWER NOWやHESTA CHARGEよりは多いが、チャージスポットと比べるべくもない。

 

 

そして2023年8月29日に新しいニュースリリースがあった。

 

東京エナジーパートナーが「充レン」を会社分割によって譲渡するとのこと。

買い手は別のモバイルバッテリーシェアリングサービスを展開しているGREEN UTILITYという会社だ。

東京電力エナジーパートナーとしては、自社でモバイルバッテリーシェアリング事業を諦めたようだ。

 

 

その④ mocha

充レンを買収した「GREEN UTILITY」が展開しているのがmocha(モチャ)だ。

 

mochaの渋谷~品川間のバッテリースタンドMAPはこの通り。

範囲内でバッテリースタンドは25ヶ所のみ。

更に付け加えると、このMAPのスクショを撮った深夜に稼働しているのバッテリースタンドは2ヶ所のみだ。バッテリースタンドの設置場所は、深夜営業していないレストラン等の店舗がほとんどのようだ。

これでは「どこでも借りれてどこでも返せる」という利便性はないだろう。

 

充レンを買収したmochaだが、買い手の規模の方がずっと小さいようだ。

 

 

mochaについて、2020年2月29日のニュースリリースにこんな記事があった。

「2月に関西エリアで一気に50ヶ所バッテリースタンドを設置。現在全国で300ヶ所稼働中」

「2020年に全国で10,000ヶ所のバッテリースタンドを設置する計画です」

 

2020年4月1日にはこんな記事が。

「バッテリースタンド全国1000万箇所設置を目標に!」

 

しかしmochaのバッテリースタンドは全国1,000ヶ所もなさそうだ。

充レンの事業を買収したが、そのシステムの統合もなかなか難しいだろう。どれほどのシナジー効果があるのかも不明だし、買収後のバッテリースタンド数を考えてもチャージスポットと比べてまだまだ少ない。

 

 

まとめ

競合他社を順番に見ていったけど、INFORICHの脅威になるような所はなさそうだ。

2020年頃に「バッテリースタンドをすごくたくさん設置します!」という目標を掲げながらも実現していない企業が多い。

 

2020年といえば新型コロナ感染症が爆発した年だ。その時の行動制限や外出自粛については記憶に新しい。

人流が大幅に低下して先行きが見えない時期に、各社はバッテリースタンド設置のアクセルを緩めたのではないかと想像している。

 

その中でアクセルを踏み続けたINFORICHが、現在のガリバー状態を作ったのではないだろうか。

コロナ禍はINFORICHにとっても売上を大きく減らす逆境だったはずだが、競合他社が怯んだ隙に圧倒的だった市場を更に地固めしたと考えられる。

 

言い古された言葉だけど、ピンチをチャンスに変えたんだと。

リスクを取って「ほぼ独占企業」の地位を築いたのだと考えてる。

 

次回予告など

競合他社のうちの最後のひとつ、「充電GO」については次回に回した。

私がいちばん注目している競合他社が「充電GO」なのです。

だからこそ長くなります。読んでください。。

 

 

「物語思考」

けんすうさんの新刊。まだ途中までしか読んでいませんが、面白いです。

どちらかというと娘や息子に読ませたいと思って購入した本ですが、自分にも十分参考になりそうです。

 

 

 

INFORICHを買ったわけ④・・コンビニとカップヌードル

カップラーメンを食べる人のイラスト

1.コンビニエンスストアとの出会い

私はけっこうなイナカに生まれたので、あと結構な年齢なので、中学生の頃はまだコンビニの存在を知らなかった。初めてコンビニの店内に入ったのは高2の時だった。

 

その時の感想は

「なんだこの店は?商品が定価でしか売っていない!隣のスーパーに行けば定価の1割引き以下で売ってるのに、だれがこんな店で買うんだ??」

だった。

 

そんな高校生は数年後大学生になり、ちょっとだけ街に引っ越して、近所のコンビニのバイトにあだ名を付けられるほどのヘビーユーザーになった。

出会ったばかりの第一印象とその後の利用頻度には相関がなかった。

 

 

2.カップヌードル新発売

カップヌードルがこの世に発売されたのは1971年9月18日だ。世界で初めて発売されたカップラーメンであり、開発したのは当時日清食品の社長であった安藤百福さんだ。有名な話だからご存じの方も多いと思う。

 

その頃はさすがに私も生まれていないが、その開発にかかわる話は何度も聞いた。

なかでも印象的だったのは発売当時「こんなものが売れるわけがない」という意見がとても多かったこと。

 

当時のインスタントラーメンは袋めんしか存在していなかった。チキンラーメンがその代表だが、袋からドンブリに移してお湯を注ぐのがその調理方法だ。

平均的な袋めんの値段は25円から35円。それに対してカップヌードルは100円くらい。一食当たり4倍の値段だった。

 

「どんぶりのない家庭は存在しない。だれが4倍の値段を出して同じラーメンを食べるんだ?そんなもの売れるわけがない」

 

これが発売当時の小売店の感想だった。

つまり店に並べてもらう事すらできなかった。

 

そして現在、カップラーメンは即席めん市場の3分の2を占めており、その国内販売数は年間35億8千万食だ。「カップラーメンなんて誰が買うんだ?」なんて言う人がいたら変な目で見られるだろう。

でも発売前は本当にそういう声が主流だったんだ。

 

 

3.お茶を買う人

このブログを読んでる方はほとんどが個人投資家だろう。

個人投資家はお金についてしっかりした考えを持ってる方が多い。言葉を悪く言えばクーポン好きポイント好きのケチ。自宅で沸かせるお茶を買うなんて敗北以外の何物でもない、そう考えてる方もいると思う。

 

しかし一方でペットボトル入りのお茶を置いていないコンビニは存在しない。

自分が絶対に使用しないサービスでも需要は存在する。

 

ペットボトル入りの緑茶が初めて発売されたのは1990年、500mlサイズのペットボトルで発売されたのは1996年だ。それ以前のお茶はほぼ100%「自宅で沸かして飲むもの」だった。

 

初めてペットボトル入りのお茶を見た時の私の感想は

「お茶が150円?沸かせば10円くらいだろう?誰が・・(以下略)」

だった。

 

そして現在緑茶飲料の市場規模は年間2240億円くらいだ。

このお茶のたとえ話はある投資家さんから教えてもらった。

自分が利用しなくても市場は存在するという事だ。

 

 

4.そしてモバイルバッテリーシェアリング

似たような話を3つ挙げた。

いずれもINFORICHの株を買うときに思い出したエピソードだ。

 

私も経済観念がしっかりとしている(つまりケチな)個人投資家の一人なので、今後もモバイルバッテリーシェアリングを日常的に利用することはないだろう。

そもそもイナカ暮らしなので移動には自家用車を日常使いしている。車は走りながらスマホの充電ができるから、バッテリー切れを心配する必要は全くない。

 

「3,000円で買えるモバイルバッテリーを数百円かけてレンタルするビジネス」が上手くいくのかはよく分からない。

 

しかし「誰が買うんだ?」というビジネスが数千億規模まで拡大した事例なんて無数にある。

今の自分が利用しないと考えるサービスも、世の中に広く受け入れられて大きくなる可能性は十分ある。

もしモバイルバッテリーシェアリングがより一般的に普及するのであれば、そのシェアを80%以上を握っているINFORICHは間違いなく恩恵を受けるだろう。

 

 

5.次回予告

次回は競合他社について書きます。今度こそちゃんと書きます。

あと3回から4回くらいでまとまるはず。

 

 

こんな本をアマゾンにおすすめされた。

読んでないので内容は評価できませんが、株式投資は若い時から始めた方がいいのは間違いないです。

 

 

INFORICHを買ったわけ③・・先行する香港

タイムマシンのイラスト

1.新規事業と海外進出

これは私の偏見なのだけど、決算説明会資料に、始めたばかりでまともに売上も立っていないような新規事業の事をでかでかと書いている企業は警戒してしまう。

また、まだ事務所を開いた程度の海外進出の事をでかでかと書いている企業も同様だ。

 

投資家に期待を持たせるために、株価対策としてやっているのかもしれない。

だけどメインのビジネスの成長が頭打ちになっているシグナルにしか見えない時もある。

 

INFORICHも海外事業について決算説明会資料に書いてある。

もちろんバッテリースタンドの数は圧倒的に日本国内が多い。これを見るとINFORICHのビジネスの本体が日本国内であり、海外事業がサブだという事がわかる。

国内のビジネスが上手く行かない限りINFORICHへの投資は上手く行かない。だから企業分析の中心は国内事業になるはずだ。

 

しかし3回目のブログ記事にして海外事業について触れる。

それには訳がある。

 

 

2.INFORICHのビジネスは香港で開始された

2023年5月12日に行われた1Qの説明会でのQ&Aの内容だ。

こんな事が書かれている。

 

 

司会者:「海外で営業利益が黒字の地域はありますか? その国の収益性と日本の将来の収益率をどのように見込んでいますか?」というご質問です。

橋本:海外で営業利益が黒字の地域は、日本よりも1年ほど早くサービスを開始した子会社の香港です。

 

INFORICHのモバイルバッテリーシェアリングビジネスは香港で開始された。

その香港では既に黒字化しているというのだ。

INFORICHは「香港の状況は日本の1年先を行っている」と説明会等で言っている。

私が知りたいのは「日本でのINFORICHのビジネスが将来的に上手くいくかどうか」だ。先行した地域である香港の状況は大いに参考になるはずだ。深掘りするには十分な理由だろう。

 

 

しかしどうして香港でのビジネスが黒字にできたんだ?

前回の記事で書いた通り、中国はモバイルバッテリーシェアリング企業が乱立して各社赤字になっていた。中国と香港はほぼ地続きで相互の人の流れも活発だ。

それなのになぜINFORICHだけ黒字に?

 

そのあたりをIRに問い合わせた。

明確な回答がかえってきた。

「香港では当社のサービスがシェア8割近くを占めており、適正な設置先への支払い料金で・適正な量を設置できていることが黒字化に繋がったと考えます」

 

株主しては実に心強い。

 

 

更に聞いてみた。

「香港での状況は日本の状況の1年先を行っているというのはどういう意味?」

 

それに対してはこんな回答が。

「モバイルバッテリーシェアリングのビジネスは一定の密度のバッテリースタンドを設置することがスタート。その結果ユーザーに認知され、利用が習慣化される、というのがビジネスの根幹。香港は日本より1年早くバッテリースタンドが一定の密度に達した。そのため認知から利用の習慣化が1年早く進んでいる。そういう意味で1年先を行っていると説明した」

 

非常に満足できる回答だった。

日本国内でもモバイルバッテリーシェアリングが普及していくような気がしてきた。

少なくとも私は。

 

 

3.次回予告

思ったより長くなったので今回はこれで終了にします。

 

次回は金にうるさい投資家がどうしても考えてしまうこと

そもそも誰がそんなもの借りるんだ?Amazonで3,000円で買えるものを24時間540円で借りる?ありえんだろ!」

という疑問について書く予定です。

INFORICHIの競合各社についてはその後くらいに書こうかと思ってます。

 

 

 

INFORICHを買ったわけ②・・先行する中国の事情

小野妹子の似顔絵イラスト

1.タイムマシン経営

アメリカで流行したことは数年遅れで日本でも流行する。アメリカで上手くいったビジネスを日本に持ち込めばうまくいく可能性が高い」

このように考えて海外の成功したビジネスモデルを日本で再構築する経営手法がある。

 

タイムマシンで未来からビジネスモデルを持って来たかのようなので、この経営手法を「タイムマシン経営」と呼ぶ。ソフトバンク孫正義さんが命名したらしい。

 

INFORICHのビジネスは中国から持ち込まれた。中国でモバイルバッテリーシェアリングが普及していることを見た秋山社長が、数年後日本でも同様の状況になると予想してビジネスを始めた。これもタイムマシン経営だろう。

 

ただし、輸入元はアメリカではなくて中国だ。

なんとなく遣隋使や遣唐使を思い出す。

 

「数年後日本でもモバイルバッテリーシェアリングが中国と同様に普及する」という秋山社長の考えは、INFORICHのビジネスの出発点だ。

 

それなら我々もタイムマシンを使って未来を見てみよう。

つまり、現在の中国のモバイルバッテリーシェアリングの状況について確認する。これが最初の調査になる。現在の中国の状況は数年後の日本の状況を示しているかもしれない。

 

 

2.中国のモバイルバッテリーシェアリング

中国でモバイルバッテリーシェアリングを展開している主な企業には「怪獣充電」「竹芒科技」「小電科技」の3社がある。この3社でシェアの90%以上を占めている寡占状態のようだ。

その中の1社である「怪獣充電」は「Energy Monster」という企業名で2021年4月にNASDAQに上場した。上場時の中国でのモバイルバッテリーシェアリングのシェアは34%とトップだった。

現在は英語の会社名を「Smart Share Global」に変更している。

 

NASDAQに上場しているのなら簡単に情報が取れる。

Yahooファイナンスでも見ることができる。

 

 

すぐに2021年から2022年にかけて営業赤字だという事がわかる。

売上高も2022年は前年と比べてがっつり下げている。

 

株価も確認してみた。

 

 

上場した2021年4月が10ドルで、そこからずっと右肩下がり。2023年8月25日現在で株価は0.9ドルと逆テンバガーを達成している。壮絶な上場ゴール。

長期投資家なら吐き気を催すようなチャートだ。

 

中国の現状が将来の日本の姿とすれば、これがINFORICHの未来なのか?

この時点でINFORICHへの投資を中止しようと本気で思った。

 

 

3.中国のバッテリーシェアリング事情

しかし結果だけ見ても仕方がない。なぜ怪獣充電は赤字なのか、その原因を確認してから判断しても遅くない。

 

中国のモバイルバッテリーシェアリングについて検索したところ、こんな記事が見つかった。

私が重要だと考えた部分を以下に引用する。

 

「人流の多いバーや飲食店に充電宝を設置する場合、設置場所に対して利用料を支払う必要がある。いわゆる家賃に相当するものだ。特に人流が多く、数時間の滞在をするため充電宝の利用率が高くなるバーなどでは、利用料の40%から50%をバーに対して支払う契約になっている。

この負担も、充電宝企業にとっては重荷になっている。小電の場合、このような支払いが2018年から、1.05億元、7.15億元、10.13億元となっており、それぞれ営業収入に占める割合は25%、44%、53%にもなる」

 

ちょっと理論が飛躍するが、結論を先に書く。

怪獣充電の赤字の原因は企業間の競争の激化によるものだろう。

(もちろんCOVID-19による人流の低下も赤字の原因だろうが、それについては置いておく)

 

これは2020年の中国でのモバイルバッテリーシェアリングのシェアを示している。

現在は「街電」と「来電」が合併して「竹芒科技」になっているが、大勢は変わらない。かなりシェアが拮抗した寡占状態だ。

 

前回の記事に書いた通り、中国ではバッテリースタンドが人口400人に1台と飽和状態になっている。その状況でシェアが拮抗しているのであれば、消費者はどの企業のバッテリーをレンタルしたところで変わらない。どこに行ってもどの企業のバッテリースタンドが見つかるのだから。

バッテリースタンドを設置する店舗オーナーにとっても同じだ。分け前をたくさんくれる企業のバッテリースタンドを設置するだけ。どの企業のスタンドを置いても売り上げは変わらないのだから。

 

この事についてはINFORICHのIRにも問い合わせてみた。

意訳すると、「中国本土ではバッテリーシェアリングサービスが乱立している。とにかくバッテリースタンドの設置数を増やそうと各社が争っているのが怪獣充電の赤字の原因だと考えている」という回答をいただいた。

 

バッテリーのレンタルは差別化がむつかしい。安くて、借りやすくて返しやすいならどこのバッテリーでも同じだ。電気は電気でしかない。電圧に色は付かない。

 

 

4.日本のバッテリーシェアリングの事情

一方、日本の状況はどうか。

以下のグラフはINFORICHの会社説明会資料にある日本のバッテリーシェアリングのシェアだ。

INFORICHのシェア82%と圧倒的だ。

これは偶然でも何でもない。INFORICHを起業した秋山社長が「このビジネスは最初に圧倒的にバッテリースタンドの数を増やすのが成功のカギだ」と判断した結果だ。

圧倒的なほど数を増やすために、累計108憶円を集めてバッテリースタンドを設置していった。その結果がこのシェア率だ。

 

ここまでバッテリースタンドの密度に差がついてしまえば他社と比べて利便性が圧倒的に変わってくる。どこでも借りれてどこでも返せるという安心感は、INFORICH以外では得られない。

利用者にとってはその利便性が利点になる。バッテリースタンドを設置する店舗のオーナーにとっても利用者が利用しやすいバッテリースタンドを設置するしかなくなる。

 

独占企業は暴力装置だ。

独占企業の株を買うのは悪くないんじゃないか?

モバイルバッテリーシェアリングが現在よりずっと普及していくのなら、シェア82%のほぼ独占企業であるINFORICHに恩恵がない訳がない。。

 

そのように考えるようになった。

 

INFORICHの企業調査に本腰を入れることにした。

 

 

5.次回予告とおまけ

次回はINFORICHの香港での状況と、日本での競合について書きます。

 

 

孫正義 300年王国への野望」

陰謀論めいたタイトルですが、ちゃんとした本です。

起業に興味のある方はもちろん、ベンチャー大好き、マザーズ大好きな個人投資家なら読んでおいて損はないと思います。小さな企業を大きくしていくのはこんな感じなんだろうな、と分かった気になれます。

INFORICHを買ったわけ①

モバイルバッテリーを使う人のイラスト

1.INFORICHを買った

INFORICHというモバイルバッテリーシェアリングの企業がある。

その企業の株を買った。

 

買ったのは6月7日から7月24日までの間だ。
最初はPFの2%程度だったが、8月10日の決算発表前の段階でPFの17%を占めるまでになった。

 

投資の初期ロットでここまで大きなポジションを取ったのは初めてだ。

しかもINFORICHは上場して1年もしない企業だ。情報も少ないし実績も積みあがっているとは言えない。

 

゛若い会社は実績が足りないし、情報も少ない。

分からない事はリスクだ。若い会社への投資はリスクが大きい。

リスクの大きな投資は慎重に行う必要がある。

という訳で、今後は以下のルールを自分に課したい。

主力サービスのローンチ5年以内の企業、あるいはIPO後に決算発表を5回以下しか行っていない企業には半分のポジションしか取らない。”

 

これは2022年の反省として私が書いたブログの引用だ。

こんな事を書きながらINFORICHに大きく投資した。


ある意味自分で決めたルールを破ったとも言える。これで上手くいかなかったら自虐的に安西先生の画像を張る羽目になってたところだ。

 

しかし結果的に上手くいった。とりあえずよかった。

 

INFORICHはかなり悩みながら買った。その思考過程について書いてみたい。

例によって何回も続く長い話になります。

 

 

2.INFORICHのビジネスモデル

INFORICHのビジネスモデルはシンプルだ。モバイルバッテリーを「CHARGE SPOT」と呼ばれる無人のバッテリースタンドで貸し出してレンタル料金を受け取るだけ。料金は30分165円からだ。利用者は好きなところでモバイルバッテリーを受け取り、好きな場所に返却することができる。

 

 

それ以外にバッテリースタンドについているサイネージを利用した広告等のビジネスも行っているが、こちらは売上の1%にも満たない。今後の成長が期待できる部分もあるが、些末な部分だ。コストもそれほどかかってないようだ。

 

あくまでもINFORICHの本業はモバイルバッテリーシェアリングだ。こちらがうまくいかない限り投資の成功はありえない。サイネージを利用した広告その他のビジネスについては完全に無視して考える。

 

 

3.INFORICHの主張

中国ではモバイルバッテリーシェアリングサービスが日本より普及している。中国全土に360万台のバッテリースタンドが存在しており、より一般的に利用されている。

もちろん中国は14億人の国民がいるわけだが、それでも360万台といえば人口400人あたり1台になる。

 

INFORICHの創業者である秋山広宣社長は「今後日本でも中国と同じようにモバイルバッテリーシェアリングが普及していく」と考えた。

そして香港でモバイルバッテリーシェアリングの企業を買収し、そのノウハウを日本で展開することを決めた。INFORICHが日本でモバイルバッテリーシェアリングサービスを開始したのは2018年からだ。

 

現在、INFORICHのバッテリースタンドは日本国内に4万台ほど。INFORICH以外の企業のバッテリースタンドを合わせても5万台だ。日本の人口は1.25億人だから、2,500人あたり1台になる。400人あたり1台の中国と比べるとまだまだ少ない。

 

 

ここまでは事実だ。

 

そしてここからがINFORICHの主張になる。

「日本でのバッテリーシェアリングはこれからもっと普及していく。日本国内で10万台程度までCHARGE SPOTを増やす余地がある。そうなれば1台当たりの利用者も増える。最終的なアクティブユーザーは1000万人を想定している」

これは2023年2Qの決算発表以前に社長がインタビューや決算説明会で語った内容だ。

 

そして8月22日に出された中計は以下の通り。

「2026年度の売上190憶円、EBITDA 60億円を目指す」

 

ほんとかよ・・。

 

 

4.すぐに湧き上がる疑問

このような会社の主張を鵜吞みにする投資家はいない(いたとしても淘汰される)。

すぐに以下のような疑問が湧いてくる。

 

・日本でも中国と同じようにモバイルバッテリーシェアリングが普及するのか?中国と日本じゃずいぶん社会の構造が違うぞ。スタバでもマックでもファミレスでもコンセントは使えるし充電ができるよ。

 

・日本にそんなにCHARGE SPOTを出す余地があるのか?既に結構な数があるぞ?

 

・中国ではモバイルバッテリーシェアリングの普及が進んでいるって言うけど、モンスターエナジー(中国のモバイルバッテリーシェアリング企業、NASDAQ上場)は赤字だぞ。本当に利益を上げることが出来るのか?

 

・そもそも誰がそんなもの借りるんだ?Amazonで3,000円で買えるものを24時間540円で借りる?ありえんだろ!

 

 

これらの疑問点に対してどのように考えたか。

それについて次回から書いていきます。

 

 

5.謝辞とおまけ

INFORICHという企業はふくろうさんという方から教わりました。

多くの気付きを与えてくれたふくろうさんに感謝します。

 

あと、最近読んでよかった本。

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」

むちゃくちゃ面白かった。映画「オデッセイ」の原作である「火星の人」と同じ作者。面白くないわけがないと思ってたけどそのハードルを楽々超えた。

SFへのアレルギーがない方ならかなり高確率で楽しめます。おすすめ。

 

 

2022年を振り返る⑦・・今後どうしたらいいのか

獲得した選手と握手をする監督のイラスト

1.2022年にお金を減らした投資先の共通点

2022年にお金を減らしたのは、モビルス、THECOO、CINCの3つだ。

この3つには共通点がいくつかある。

 

まず、3つともクラウドでサービスを提供しているSaaS企業だ。

そして、3つとも若い企業だ。

 

ビルスは2011年9月に会社が設立され、2016年4月に現在のビジネスであるコンタクトセンター向けのサービスを開始、2021年9月にマザーズへ上場している。

 

THECOOは2014年1月に会社が設立され、2017年12月に現在の主力サービスであるFaniconをリリース、2021年5月にマザーズへ上場している。

 

CINCは2014年4月に会社が設立され、2016年7月に現在の主力サービスであるKeywordmapをリリース、2021年10月にマザーズへ上場している。

 

設立も、主力サービスの誕生も、上場も、同じような時期に行われている。

 

上場からのチャートも3つともそっくりだ。

上場直後が一番高くて、その後何度かリバる様子を見せながらも結局はダラダラと下げ続け、現在に至る。

 

 

 

 


ビルスでお金を減らした過程は前々回の記事で詳細に書いた。

 

THECOOとCINCも大体同じだ。

決算発表ごとにパッとしない数字が出てきてそのたびに暴落する。最終的に「テコ入れのために投資するから来期以降は利益率が下がる」というアナウンスがなされる。それを受けて株価はとどめの一撃を食らう。Yahoo掲示板が怨嗟の声で満ちる。私は途方に暮れる。

 

 

2.マネーボール

マネーボール」というノンフィクションがある。

 

資金不足のため成績不振が続いている球団のゼネラルマネージャーに就任した男が、データを徹底的に利用することで球界の常識をことごとくひっくり返し、球団改革を実行するドキュメンタリーだ。

 

ブラッド・ピット主演で映画化もされているから、ご存じの方もいるだろう。

Hulu Japan on Twitter: "「マネーボール」の配信を開始しました!https://t.co/r5j4LM6Hcz  メジャーリーグの弱小チームを独自の”マネー・ボール理論”により改革し、常勝球団に育てあげたのGMビーンの半生をブラッド・ピット主演で描きます。  https://t.co/79ckOowMeP ...

 

その本の中に、以下のような一節がある。

 

「過去のドラフトの結果から言って、高卒の投手がメジャーに昇格できる可能性は、大卒の投手にくらべて半分以下、大卒の野手と比べると四分の一以下に過ぎない。高校生投手を一位指名して120万ドルの契約金を払うなど・・・確率を無視し、理性をないがしろにしている。」

 

事実として、高卒の野球選手がメジャーで活躍する可能性は、大卒の選手のそれより低いのだ。

 

その原因として「早熟なだけの選手が高校生のリーグで良好な成績を上げることでスカウトの目に留まる」という説を挙げている。

 

一方、大卒の選手は高卒の選手に比べてプラス4年間分の実績がある。

より信用に値するデータが蓄積しているし、早熟なだけの選手は成長はゆっくりだがポテンシャルの高い選手に追い付かれて埋没しているはずだ。

大学での4年間という時間が、メジャーで生き残れない選手をふるい落としてくれている訳だ。

 

 

3.高卒ルーキーの会社

ここまで書けば私が何を言いたいのか、もう皆さんお分かりだろう。

 

前々回の記事で、モビルスへの投資が失敗した理由を書いた。

 

ビルスキャズムを超えるのに苦労し、成長が踊り場に達した。

キャズムを超えるために人材投資を行う必要が出てきたため、利益をほとんど出さないという内容の中計を出すことになった。

そのため株価は暴落し、私のお金は減った。

 

CINCもほぼ同じだ。

キャズムという言葉は使っていないが「成長を維持するために人員採用とマーケティングにお金をかける」と、今期は減益予想だ。

 

このブログを読むような方ならこの一枚で理解できるだろう。

 

THECOOも、販管費が順調に伸びているにも関わらずアイコン数の増加は頭打ちのように見える。

 

 


4.上場する側の思惑

企業側、あるいはベンチャーキャピタルの立場に立って考えてみるとよくわかる。

企業の株は成長速度が頂点になる頃に売り出したい。高値で売ってお金を稼ぎたい。

それがVCの思惑であり仕事だ。

 

だからキャズム以前の、低コストでサービスを普及させることができる市場を取っている間に上場するのは合理的だ。成長スピードも速いし、成長のためのコストが少なくて済むので利益率もよくなる。

キャズム以前の成長スピードがそのまま延長されるイメージを個人投資家が持ってくれればありがたい。無事売り抜けることができる。

 

その後キャズムに到達した企業が業績を落とし、Yahoo掲示板には「上場ゴール」という言葉があふれる。

VCにとっては理想的な展開だ。Yahoo掲示板の意見など知った事か。

 

 

5.今後どうすればいいのか

IPOからの期間が短ければ短期間の財務諸表しか見る事ができない。

 

創業やサービス開始からの期間が短ければキャズム以前の「イージーモード」だけしか経験していない可能性がある。そうであればキャズム以後のデータはゼロだ。

VCもそれを十分承知している。

 

つまり若い会社は実績が足りないし、情報も少ない。

分からない事はリスクだ。若い会社への投資はリスクが大きい。

リスクの大きな投資は慎重に行う必要がある。

 

という訳で、今後は以下のルールを自分に課したい。

 

主力サービスのローンチ5年以内の企業、あるいはIPO後に決算発表を5回以下しか行っていない企業には半分のポジションしか取らない。

 

5%のポジションを取りたいと思ったら2.5%までにしておく。

自信があって15%のポジションを取りたいと思っても7.5%にしておく。

 

私の場合、これでリスクとリターンが釣り合う気がしている。

 

 

「情報が少ないってのはリスクだから気をつけようね」

たった1行で表せる話を原稿用紙50枚以上の文字数で書いただけでした。

読んでくれてありがとうございますw

 

 

という訳で「マネーボール」の紹介。

勘と雰囲気で選手を選ぶ他球団が、データで判断する主人公の喰い物にされていく話です。

正しいデータ運用の前では「長年の経験に裏打ちされた勘」で行動する者など養分。

いやらしい駆け引きによって次々と嵌め込まれていきます・・