中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

きずなHD⑦・・バリュエーションについて③

墓掃除のイラスト

1.これまでのまとめ

営業利益は以下のような式で求めることができる。

 

営業利益 = 売上 - 原価 - 販管費 

 

2023年5月期の会社計画である営業利益は1,027百万円。これが本当に達成できるかどうか評価するため、売上と原価について考察していった。

 

 

今回は最後の販管費について考察してみる。

 

 

2.過去の販管費の推移

過去の販管費の推移についてもう一度確認する。

 

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四半期ごとの販管費の推移を緑色の棒グラフで示した。

2020年4Qに一時的に上昇しているが、これは上場費用がかかったためだ。それを除くとほとんど変化していない。

 

 

3.販管費 = 販売費 + 一般管理費

販管費は「販売費および一般管理費」の略だ。

「販売費」は広告宣伝費、「一般管理費」は本社機能にかかる費用だと考えていいだろう。この2つに分けて販管費を見ていく。

 

まず広告宣伝費について。

これも中期経営計画の資料に今後の広告宣伝費の予定が書かれている。

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会社の規模が大きくなるにつれて、少しずつ広告宣伝費を増やしていく計画だ。

広告宣伝費は増えていくが、売上に対する比率は少しずつ減少している。

 

これは地域ドミナント戦略の強みだ。

ひとつの地域にホールが2店舗しかなくても30店舗あっても、広告を打つ費用は同じになる。テレビCMでも新聞広告でも宅配チラシでも、その地域に店舗が多ければ多いほど、1店舗あたりの広告費は少なくなる。売上あたりの広告費も少なくなる。

 

地域ドミナント戦略が、店舗出店拡大とともに広告宣伝費を減らしていく。

 

 

次いで本社機能に関わる費用について

これもそんなに増えないと予想している。

店舗数が倍になったとしても、本社の建物が2つ必要になることはない。本社業務に関わる人数は多少増えるかもしれないが、2倍にはならない。経営者や役員も2倍にならない。

店舗数が増えれば売上が増えるが、本社機能に関わる費用はそれほど増えない。

経費が増えないのだから、利益が増えるのは道理だ。

 

 

3.販管費詳細

販管費の内容は有価証券報告書に書かれている。

「従業員給付費用」と「広告宣伝費及び販売促進費」という2つの項目で60%を占めている。それ以外には「支払手数料」「役員報酬等」「減価償却費」などがある。

 

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従業員給付費用は、本社で働く社員の給料だ。

広告宣伝費および販売促進費とは、広告宣伝にかかる費用だ。

減価償却費は本社その他の減価償却費だし、役員報酬も説明不要だろう。

いずれも今後大きく増えそうな項目ではない。

 

支払手数料は新ホールの出店仲介手数料や、監査法人コンサルタント等に支払う費用との事だ。2020年度は急増しているが、これは新規上場に伴う費用に3億円かかった為だとのこと(IRに確認済)。それを除けば全く増加していない。

今後支払手数料が増加するのはM&Aに伴う費用が考えられる。実際今年の1月に岡山県備前屋を買収しているが、買収手数料として40百万を計上している。これが支払い手数料に含まれる訳だ。

 

過去の推移と同じように、今後も販管費はゆっくりとしか増えないだろう。

M&Aに伴う手数料だけがイレギュラーだが、一過性のものだしネガティブな材料でもないので 気にしない事にした。

 

 

4.個人的な営業利益、純利益予想、時価総額

売上は会社予想と同じ10,420百万円。

原価率は過去の平均よりやや高い63.5%とすると、原価は6,616百万円。

販管費は上場費用の負担が消えた分と自然増加分を勘案して2,442百万円だと試算した。

 

営業利益 = 売上 - 原価 - 販管費

この式にそれぞれの数字を当てはめると、2023年5月期の営業利益は1,362百万円となる。私の予想は会社予想の1,027百万円と比べて+32.6%ほど強気だ。

 

 

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金融費用は金利や有利子負債の額によるのでよくわからないが、過去の値から220百万円とした。税率は今後も34.6%だと仮定する。

これらの数字を当てはめると、2023年5月期の当期利益は746百万円となる。

 

 

5.バリュエーションとまとめ

現在、きずなHDはPER19倍で評価されている。これを当期利益746百万円に当てはめると、時価総額141億円になる。

現在の時価総額が58.2億円だから、2.4倍にまで増加するわけだ。

株価で言うと4,060円になる。

 

 

どう考えても2021年4月12日現在の株価、1,692円は安い。

そう思ってたくさん買った。

リスクもそれなりにあるし、上手くいくかどうかはもちろん分からない。

 

 

 

 株式投資を初めて2年以内の初心者がどんな本を読むべきか?

そんな事を考えてみたけど、やはり鉄板はコレです。

株式投資の方法はいろいろありますが、このブログの記事を最後まで読める方なら絶対に読んで損はないです。

きずなHD⑥・・バリュエーションについて②

御神渡りのイラスト

1.中期経営計画と利益

前回の記事では2023年5月期の売上目標の達成の可能性について考えてみた。

今回は利益の目標達成の可能性について考えてみる。

 

中期経営計画をもう一度見てみる。2023年5月期の当期利益のは554百万円だ。

2020年から比べて+163.8%成長する計画になっている。

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純利益率を計算すると2020年度は2.73%だが、2023年度は5.31%まで上昇している。

現在より利益率が上がることを想定している訳だ。

そんな事が本当に可能かどうか、考えてみた。

 

結論から先に書く。

私にはこの2023年度の純利益554百万円が、妥当どころか楽勝のように思えた。

そう思った根拠について書いていく。

 

 

2.営業利益と当期利益

きずなHDのPLを確認すると以下のようになっている。

 

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IFRSなので営業利益から当期利益までは、ほぼ金融費用と法人所得税費用しかない。

 

金融費用は有利子負債の利息がほとんどだろう。負債の額と利率によって自動的に決まる。どのくらい借金を返済するのか増やすのか、利率はどのくらいなのか。

それらは今後の投資の規模と金利によって決まるはずだ。

一方、法人所得税も利益によってほぼ自動的に決まる。

 

金融費用と法人所得税は経営者にとっては予測しやすいはずだ。

だからこの2つの項目は会社予想をそのまま信じる事にした。一応、自分でも計算してみたが、そんな突飛な数字ではなかった。

 

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中期経営計画には2023年5月期の営業利益についても書かれている。

2023年5月期の営業利益は1,027百万円と予想している。

この予想営業利益の数字が妥当なのかどうかを検証すればいい。

 

 

3.売上と営業利益(全体像)

売上と営業利益は以下のように表すことが出来る。

 

営業利益 = 売上 ー 原価 ー 販管費

 

最初に全体像を捉えてみる。

まず過去の4Qごとの原価率がどのくらいなのかを確認する。

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 グラフの右側の縦軸が原価率の目盛だ。

最も低い2019年4Qの原価率が60.8%、最も高い2021年1Qの原価率が64.8%だった。目盛が50%から始まっているので大きく変動しているようにも見えるが、実際は±2%以内に収まっている。

 

次いで販管費の推移を見てみる。

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販管費は売上に関わらずほとんど変化していない。

 

2020年4Qだけ突出しているが、これはきずなHDの上場費用のためだ。上場費用は今後考えなくていいので無視する。この2020年4Q を除くと、販管費はQごとに533百万円~555百万円の中に収まっている。つまりほとんど変化していない。

現在の販管費は四半期ごとの555百万を4倍した2,220百万円と考えていいだろう。

 

過去の数字を押さえたあとで2023年の売上と利益を見る。

2023年5月期の売上予想は10,420百万円、営業利益は1,027百万円。

過去の4Qで一番原価率が高かった2021年1Qは64.8%だ。計算しやすいように原価率65.0%と設定すると、売上が10,420百万円なら原価は6,773百万円だ。粗利は3,647百万円となる。

 

 

2023年5月期の営業利益が1,027百万円なので、

営業利益 = 売上 - 原価 - 販管費 の式に当てはめると、

1,027百万 = 10,420百万 - 6,773百万 - 販管費

販管費  = 2,620百万

 

年間の販管費を2,620百万円使っても利益目標が達成できてしまう。

年間2,620百万ならこれまでの販管費の118%という事になる。

 

つまり、原価率を過去最高の65%に設定し、更に販管費を18%増やしても目標が達成されてしまう。達成のハードルは十分に低い。

 

 

実際の原価率は63.5%、販管費は10%増しの2,442百万円くらいになるのではないか。

この数字で計算すると以下のようになる。

 

売上 10,420百万円

粗利   3,804百万円

営利   1,362百万円

 

前提を甘くして計算すると、営業利益は1,362百万円。会社予想の132.6%までになる。

 

 

4.原価を深堀

「過去の原価率はだいたい61%~65%」

「最も高い65%でも会社予想利益のクリアは楽勝」

「平均的な原価率63.5%なら素晴らしい数字が出るよ」

 

原価についてはこんな理解でも十分だと思っている。

 

 

でももう少し深堀りしてみる。

きずなHDの決算説明資料はとても充実していて、原価の内容まで踏み込んで説明されている。せっかくだからそれについても考察する。

 

既にウンザリしてきた人は結論まで読み飛ばしてください。

 

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説明会資料の通り、2021年2Qでの原価率は62.8%だ。

今回は数字よりその内訳を見たい。原価の中で大きいのは直接原価と減価償却費と労務費だ。直接原価は変動費減価償却費と労務費はほぼ固定費だと考えていいだろう。

 

直接原価には、参列者に出す料理や返礼品や、祭壇の生花にかかるお金が含まれる。生花などを内製化してコストカットを図っているようだ。

 

減価償却費はホールの建物や設備などのものだ。

新しく出店したあとは一時的に減価償却費率が上昇する。新店舗では売上が軌道に乗るまでしばらくかかる。その間にも固定費である減価償却費はかかり続けるのだから、出店が加速すれば減価償却費率は上がる。

出店のスピードが計画通りに進むならば、減価償却費も計算済だろう。減価償却費の計算が予想と大きくブレることはないだろう。

 

労務費は実際の葬儀を行うスタッフの人件費だ。

スタッフの必要人数はホールの数に比例する。よって新規出店が加速すれば労務費が増える。労務費は固定費なので、売上が上がるまで原価率を上げる要素になる。

 

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説明会資料にも同じことが書いてあった。

新規出店後は6~7年かけて認知度の向上を図り、売上を既存店並みまで引き上げていくという認識のようだ。

 

 

中期経営計画には将来の予定従業員数も出ている。予定以上に従業員数が増えて労務費が上ブレする事はないだろう。

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サービス業なのだから実際に葬儀を行うスタッフこそ最も重要な要素だと思っている。人材の確保は会社の成長に欠かせない。

むしろ人材確保ができずに出店のスピードが衰える可能性の方を心配すべきかもしれない。これについても考えたが、今回のテーマとは外れるので割愛します。

 

 

という訳で原価率についての結論。

・原価率は出店スピードが上がると一時的に上昇する

・半年間で10ホールを新規に出店した2021年2Qでも原価率は62.8%

・過去の原価率はだいたい61%~65%

・原価率を過去最高の65%に設定しても中期経営計画の会社予想利益のクリアは楽勝

・平均よりやや高い原価率63.5%の想定でも素晴らしい数字が出る

 

 

 

5.まだ続く

販管費について深堀したところまで書く予定でしたが、力尽きました。

販管費と最終的なバリュエーションについては次回書きます。

 

私は会計の素人なので、詳しい人から見たら変な事を書いている可能性があります。突っ込みどころがあれば是非教えて下さい。

 

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読んでいないので魂を込めて勧めることはできませんが。

 

きずなHD⑤・・バリュエーションについて①

夏休みに帰省した家族のイラスト

 1.中期経営計画と株価

きずなHDは2020年7月に中期経営計画を発表している。

3年後の2023年に売上 10,420百万円、当期利益 554百万円という計画を定めた。

 

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2020年5月期は売上7,676百万円、当期利益210百万円だった。

2021年3月11日の株価は1,532円。時価総額5,277百万円だから、PER 25.1で評価されている事になる。

2021年5月期の予想は売上8,400百万円、当期利益300百万円。予想PERなら 17.6倍だ。

 

17.6倍という予想PERをそのまま当てはめれば、2022年の3月頃に時価総額 9,750百万円になる。株価なら2,831円だ。

つまり1年で1.85倍だ。

年間パフォーマンス目標が+25%である私にとっては十分過ぎる。

 

株価なんてわからないけど、予想PER 17.6倍という評価はそれほど高いわけではないだろう。あくまでも中期経営計画が達成できれば、の話だけど。

というわけで本当に中期経営計画が達成できるかどうかを検証してみる。

まずは売上から。

 

 

2.売上の予想

きずなHDは直営ホール経営以外に、提携業者への葬儀委託事業も行っている。更に葬儀のネット集客や仏壇等のアフター商材販売も行なっている。

しかしこれらの事業の売上に対する占有率は2020年度で8.4%だ。力も入れていないし、成長もしていない。この部分はとりあえず無視して話を進める。

 

となると、きずなHDの売上は以下のように表すことが出来る。

 

売上 = 直営ホール数 ✕ 1ホールあたりの葬儀件数 ✕ 葬儀単価

 

たった3つの変数を検討していくだけでいい。

 

 

① 直営ホール数

まず現在までの直営ホール数の推移を見てみる。

 

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きずなHDは一度出店したホールを潰して撤退したことは、過去に一度もない。

 

2021年1月14日の2Q決算発表時の直営ホール数は90ホールだった。

3月14日までに3ホール追加して現在93ホールを営業している。5月まで2ヶ月半あるが、それまでに計画通り96ホールを達成するだろう。

 

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このペースで出店を続け、2023年5月までに116ホールを営業する予定だ。

いつも1年先の出店の開拓を行っているらしい。また新型コロナウイルスの影響で用地確保が楽になっていると、社長が動画で話していた。

ホール数の計画達成は問題ないだろう。

 

 

②葬儀件数

中期経営計画での葬儀件数の予想はこのようになっている。

 

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2020年5月期での実績では、1ホールあたり97.6件/年で葬儀を行っている。ひと月あたりに直せば8.1件だ。

2023年5月期では、1ホールあたり99.95件/年で葬儀を行う想定だ。ひと月あたりに直せば8.3件になる。そんなに無理な計画じゃないだろう。 

 

きずなHDは月次を発表している。これから1ホールの平均葬儀件数が計算できる。それをグラフにしたのが以下だ。

 

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1つのホールで毎月9件前後の葬儀が行われている。

想定葬儀件数である8.3件/月は無理のない数字だと考える事ができる。

 

 

③ 葬儀の単価

2023年5月期での売上計画は10,420百万円だ。

その中の4%程度、420百万円を直営ホール以外の売上だと想定すると、直営ホールの売上は10,000百万円となる。きずなHDの中期経営計画では、116の直営ホールでそれぞれ年間100件程度の葬儀を行う事になっている。

これを計算すると、葬儀の単価を86.2万円と想定している事になる。

 

単価についても月次で発表されている。グラフにしたものが以下だ。

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見ての通り、葬儀の単価はきずなHDの想定より早く低下してきている。

 

これは新型コロナ感染症の影響だろう。蜜を防ぐために葬儀の参列者数が減少しているのだ。9月頃に89.0万円とやや持ち直しているが、感染者数増加に従って再び下落し、1月の単価は80.7万まで下がっている。

 

葬儀の単価減少はリスクについての記事でも触れた。

単価86.2万円の想定は決して高くないが楽勝でもない、といった目標だろう。

 

 

 

④M&Aの影響

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もう一度中期経営計画の資料を見ると、一番下にM&Aについて書かれている。

 

「M&A効果は中計数値に織り込んでいないが、積極的に取り組む」

 

今回の2023年の売上についての計算は、M&Aを想定していない。

実際には2Qで岡山県備前屋という葬儀会社を買収している。この備前屋の3ホールについては、まだ直営ホールの数にも含まれていない。

 

M&Aの分を含めれば、2023年5月の売上10,420百万円の達成については全く問題ないと考えている。

 

 

 

3.まとめと次回予告

ホール数は予定通り達成、葬儀件数は予定より強気、葬儀単価は少しだけ弱気。

Totalで予想通りの売上の数字を達成できる。

そこにM&Aの分の数字がプラスされる。売上の達成については全く問題なし。

 

そんな風に私は考えている。

 

 

売上について書くだけで随分長くなった。

利益についての考察は次回に回すことにします。リスクの1つと考えていた人材確保と人件費についても考察しました。次回も読んでください。

 

 

 

タイトルだけで結構ウケた。 

 内容もなかなか刺激的。

「遺骨はゆうパックで送ることが出来る」って事はこの本で知りました。

 

こっちがパロディ元の本です。

きずなHD④・・予測可能な未来とリスク

 タージ・マハルのイラスト

予測可能な未来、だが未確定

未来は予測可能なものもある、という話を最初に書いた。

 

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きずなHDの未来は上の図の中のレベル1に近いのではないか。

そんな話を書いたが、もちろんバラ色の未来が100%保証されているわけではない。保証されているならそれは株価に織り込み済みになってしまう。未来の価値が株価に織り込み済みならば、投資してもあんまりお金は増えない。

 

実際の未来はレベル1~3がある程度ブレンドされたような状態なのだろう。

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このグラフの網掛けの領域の幅や下の方に垂れ下がっている「ひげ根」の数や太さが、未来の不確定さの程度を示している。

 

きずなHDの未来は図の網掛けの部分の幅が狭いと考えている。

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そういう意味で「未来がある程度予測可能」だと書いた。

ならば次は網掛けのエリアから外れた「ひげ根」について検討していくべきだ。

 

議論がぼやけないように、未来予想モデルの定義をひとつに絞っておく。

横軸は時間、縦軸はEPSとする(株価ではない)。

 

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時間とともに直営ホール数が増加し、それに伴ってEPSが増えていく。

これが未来のメインストーリーだ。網掛けの部分の幅の中に収まる未来だ。

 

しかし、何かのきっかけでEPSが下がる未来もある。こちらの未来は網掛けの部分から下に垂れている矢印で表される。この矢印こそが検討するべき「将来のリスク」だ。

 

リスクを1つ1つ検討していく。

 

 

リスク①:有利子負債が多い

きずなHDは直営ホールで葬儀サービスを提供している。

直営ホールを建てるにはお金がかかる。そのお金は主に金融機関からの借金で賄われている。

 

きずなHDの2021年2Qでの有利子負債は14,500百万円。有利子負債率74.7%だ。

この有利子負債にはリース負債が含まれる。詳細は省くが、きずなHDは借りている土地や車両などのリース代金も有利子負債に含まれるという会計システム(IFRS)を採用している。

リース負債のことはひとまず置いておく。

 

リース負債を抜いた真水の借金である金融機関からの借入金は4,047百万円だ。

この40億円の金利は、市場金利と連動して半年ごとに見直される契約になっている。つまり今後金利上昇が進めば支払利子負担が増える。そうなれば当然EPSは下がる。

 

また、40億円の借金は「2期連続して赤字だったら一括返済」という制限条項が付いている。普通に考えて2年間連続赤字などなさそうだが、2年連続して大震災が起こることもあるかもしれない。

 

「大震災のことまで考えていたら投資なんて出来ないよ」と思っているが。

 

 

リスク②:のれんの減損

きずなHDのB/Sを見ると、3,625百万円ののれんが計上されている。これは総資産の18.6%を占める。

 

こののれんの大きさはM&Aを繰り返して成長してきた企業としては当然だ。また詳細は省くが、上場前のLBOものれんが大きくなった理由のひとつだ。

きずなHDの会計はIFRSなので、のれんは基本的に償却されない。しかし買収した企業の収益が悪くのれんの価値が回収できないと判断された場合、一気に減損される可能性がある。その場合、その期のPLは無事では済まないだろう。

 

 

リスク③:増資やMSワラントの可能性

きずなHDが成長するためにはホールの建設という設備投資が必要だ。つまり成長のためにはお金が必要なんだ。

そのお金を調達するために、増資やワラント発行を行う可能性もあるかもしれない。

 

 増資やMSワラントについても過去に書いているので良ければ参考にしてください。

増資やMSワラント発行が行われれば、EPSは下がる。

 

増資以上にEPSが上がるなら長期的には問題ないのだけど。

 

 

リスク④:葬儀単価のさらなる下落

平均寿命の伸びと社会構造の変化によって1件あたりの葬儀単価は下落してきている。

これは家族葬を事業の中心に置いているきずなHDにとっては追い風だが、さらなる下落は向かい風になる。

 

きずなHDの2021年2Q葬儀単価の平均は83万1千円だ。

単価は月次でも発表されている。そのグラフを載せておく。

 

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グラフの通り、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって葬儀単価は下がってきている。そして単価はまだ下がる余地がある。

 

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きずなHDのメインブランドである「家族葬のファミーユ」のサイトでは、上記のように葬儀プランをの3つに分けて提示している。

 

 一番右の火葬プランは11.3万円からだ。

これは事実上葬儀を行わず、直接ご遺体を火葬場に持っていく方法だ。

新型コロナウイルスの影響もあってこの火葬プランを選択する方が増えたそうだ。

 

 しかしこれはあまりにも合理化しすぎだ。火葬プランを選択して後悔する遺族も多いとの事。

ネアンデルタール人は既に死者に花を添えて葬儀を行っていた。死者を悼むのは人類の本質だ。火葬プランはそんなに広がらないと考えているが、どうだろうか。

 

 

リスク⑤:地域ドミナントと悪評

葬儀会社は評判が命だ。人生で1度きり、失敗の許されない葬儀をあえて評判の悪い葬儀会社にお願いしたい人は少ないだろう。

 

ちょっと前に「バイトテロ」という言葉がよく聞かれた。コンビニで働くアルバイトの人が、店舗の冷凍庫に寝転がるというバカな動画をUpして炎上し、その店舗の売上が激減した事件だ。

 

万が一にでも死者を冒涜するような動画がぎずなHDの関係する施設で撮影されUpされた場合、その地域の売上にかなりのダメージを与えるだろう。

 

地域ドミナント戦略をとる葬儀会社にとって、悪評は命取りだ。

そのためにもモラルある社員を採用し、その働きにきちんと報いる必要がある。

 

 

リスク⑥:VCが大株主

きずなHDの最大の株主はアドバンテッジパートナーズというベンチャーキャピタルだ。その保有率は48%を超えている。

他にもゴールドマンサックスや日本トラスティサービスなどの名が大株主として連なっている。このあたりのVCや金融機関が株を売ってくる可能性はある。

その一方で、社長や役員、創業者らしき人物は大株主一覧には載っていない。

 

これはEPSとは関係ないが、投資家としては無視できないリスクだろう。

 

 

まとめと次回予告

・きずなHDに投資する際に想定されるリスクを挙げてみた。

・予測可能な未来などと言いながら当然リスクはある

・銘柄に惚れる事なくリスクを冷静に分析し判断するのが投資家の仕事

 

 

 次回は数年後の売上や利益の予想、それに伴うバリュエーションについて書きます。

私は将来の利益とリスクを考慮し、十分安いと判断したからきずなHDを買いました。

 

 

「Zero  to  ONE」

最近読んだ本です。ペイパルを創業したピーター・ティールがスタートアップについて書いた本。とても刺激的で面白い。

序文を「僕は君たちに武器を配りたい」の瀧本哲史さんが書いている。それだけでも読む価値あり。

 

きずなHDを買った訳③・・成長のための戦略

ギザの三大ピラミッドのイラスト

1.きずなHDと業界の現状

2021年現在、きずなHDは89の直営ホールを運営している。

主な展開エリアは、宮崎県(21ホール)、熊本県(16ホール)、北海道(17ホール)、千葉県(16ホール)、愛知県(12ホール)などだ。

 

きずなHDの売上に占める直営ホールの割合は9割以上だ。

ネット集客や仏壇等のアフター商材販売、業務委託なども行っているが、売上や利益に占める割合は少ない。フランチャイズ展開も選択肢に入っていない。

きずなHDは直営ホールを増やしていくというシンプルな成長戦略を描いている。

 

具体的にどのような方法で直営ホールを増やすつもりなのか。その戦略について書いていきたい。

 

前回書いた業界の現状を再掲しておく。 

チャンス

・業界のリーダーとなるような企業が存在しない

・零細葬儀会社の廃業が進んでいる

 

脅威

・葬儀の単価が減少している

・地域性という参入障壁が存在する

・消費者側の終活意識が高まっている

・優秀な人材が必要だが人材確保が難しい

 

 

2.地域ドミナント戦略という成長戦略

きずなHDの社長は以前のインタビューでこんな話をしていた。

「直営ホールの出店は密にやりたい。半径1.5~2 ㎞にひとつくらい出す。札幌だけでも50ホール必要だと考えている」

これは完全に地域ドミナント戦略だ。

 

企業の利益の源泉は「独占」にある。狭い地域を独占することで地元で負け知らずになるのが「地域ドミナント戦略」だ。

ずっと前に書いた記事だが、是非読んでほしい。

もともと地域性の高いビジネスである葬儀業だが、その中で成長するためには地域ドミナント戦略が最適解になると思う。

 

地域ドミナント戦略には、宣伝が効果的に行える、地域に合わせたサービスが展開できるといった利点がある。そして一度ドミナントが達成されてしまえばそれ自体が他社の参入を防ぐ堀として働く。

 

また、密な店舗展開は人材の有効活用にもつながる。すべてのホールが365日葬儀を行っているわけではない。スタッフが隣のホールに応援に行くことは可能だ。優秀な人材を有効活用する上でも地域ドミナント戦略は役立つ。

 

更に失注の回避にもつながる。スケジュールが埋まった時は隣のホールで葬儀を行ってもらえばいい。ホールとホールの距離が20㎞も空いていれば難しいが、2㎞くらいなら利用者にとっても十分許容範囲だろう。

 

 

3.M&Aという成長戦略

有価証券報告書等を読むと、きずなHDのこれまでのM&Aの軌跡が書かれている。

 

2005年3月 綜合葬儀会社みやそうをM&Aにより吸収合併

2013年4月 札幌地区のGEN株式会社を完全子会社化

2016年11月 愛知県の株式会社ファミーユから葬儀事業を譲り受け

2018年4月 京都の株式会社花駒の全株式を取得

2021年1月 岡山県備前屋の株式を取得

 

 

葬儀は地域差が大きく、それが土地の風習を知らない外部の者にとっては参入障壁になる。シェアを大きく占める葬儀業者が存在しない理由のひとつだ。

 

土地の風習がわからないのなら、土地の風習を知る会社を買ってしまえばいい。つまりM&Aだ。

そうやって足がかりを確保した後に、その周囲を地域ドミナント戦略で占拠していく。これを繰り返すことでゆくゆくは全国制覇を狙うのがきずなHDの戦略だ。

 

ある時のインタビューで社長はこう語っていた。

「現在の戦略で全国展開するとしたら、全部で1,500ホール必要になる。まだまだ先だが、既にホールを展開する予定地には地図上にピンを打ってある」

きずなHDが現在展開しているのは89ホールだ。ちょっと風呂敷が大きすぎる気もするけど、株主が聞く話としては悪くない。

 

 

4.オリジナルプランという戦略

葬儀の列席者が減少することで葬儀単価は減少しつつある。

このことは家族葬を提供するきずなHDにとっては追い風であるが、向かい風でもある。参列者が40人でも30人でも家族葬だが、葬儀1件あたりの単価は下がる。

 

この傾向は新型コロナ感染症の流行で拍車がかかったようだ。人が集まれば感染リスクは増える。葬儀といえどもウイルスは手加減してくれない。結果、葬儀は更に小規模になっていく。

 

参列者減少に伴う単価下落に対して、きずなHDは「オリジナルプラン」という対策を用意している。

 

オリジナルプランとは、オーダーメイドで行う葬儀プランだ。文章で説明するより具体例を見てもらった方がいいだろう。

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オリジナルプラン物語 | 家族葬のファミーユ (famille-kazokusou.com)

このように、ひとりひとりに合わせた葬儀を提供するのがオリジナルプランだ。

 

葬儀が「昔から決まっている定型的なしきたりに沿って行うもの」ならば、それはコモディティだ。規模の大小はあっても差別化ができない。

しかし結婚式と同じように「消費者の希望に沿って行うもの」ならば差別化は可能だ。手間も人手もかかるが、その分単価は高くなる。

 

きずなHDがこのオリジナルプランを開始したのは4年前の2017年からだが、スタートから8か月は1件の受注もなかったそうだ。実際受注が入るようになってからも1件の葬儀に25人のスタッフが必要になるなど、採算が合うような事業ではなかった。

しかし現在はノウハウが蓄積し、3人のスタッフで施行できるようになったとのこと。

 

きずなHDはこのオリジナルプランこそ自社の提供する価値だと考えているようだ。

他社との差別化と単価下落に対する切り札でもあるため、オリジナルプランの件数を重要KPIとして決算ごとに発表している。

 

そしてこれは想像なのだけど、オリジナルプランこそ人材採用の決め手になっているのではないかと考えている。

仕事にはやりがいがあった方がいい。故人らしい葬儀を挙げることができれば遺族から感謝される。そんな金銭以外報酬が、労働には必要なんだ。

 

実際きずなHDの社員の多くは葬祭業経験のある中途採用者だ。

定型的な葬儀を流れ作業のごとく提供する企業と、オリジナリティを出し遺族に感謝されるサービスを提供する企業。求職者はどちらで働きたいと考えるだろうか。

 

 

5.まとめ

◎地域ドミナント戦略

・零細葬儀会社の廃業が進んでいることが追い風

・地域性の強い葬儀業界としては最適解

・人材の有効活用につながる

 

◎M&A戦略

・地域差という参入障壁がクリアできる

・参入後は地域性という参入障壁が有利に働く

・優秀な人材の確保も可能

 

◎オリジナルプラン戦略

・終活意識の高まりが追い風になる

・葬儀単価の減少に対する対策になる

・優秀な人材確保の切り札になる?

 

それぞれの戦略が時代の流れと噛み合っている。

 

 

6.次回予告

バラ色の未来を描きましたが、お花畑はここまでです。

次回はおまちかね、きずなHDを購入することのリスクについて書きます。

 

株主なんだからリスクについてなんて黙っておけばいいのかも知れませんが。。

まぁ煽り屋としてやっていくつもりはないのでw

 

 

葬儀業界の調査で一番参考になった本。このブログの元ネタにもなっている。

きずなHDのホルダーなら読んでおいて損はないです。

きずなHDを買った理由②・・葬儀業界について

前方後円墳のイラスト

前回の記事の反応が良くて嬉しい。

twitterのフォロワーさんも増えて励みにもなった。

気分良く続きを書きます。

 

今回は葬儀業界の特徴について書きます。

 

 

1.葬儀の特徴について

葬儀業界の特徴を箇条書きでまとめてみた。

 

① 宗教がからむ

葬儀といえばお坊さんが読経するイメージがある。

日本において無宗教で執り行われる葬儀の割合は10.7%、というデータがある。9割弱の葬儀には宗教が絡むわけだ。また葬儀でのお布施が収入の柱だという寺院も多い。

 

「結婚式をキリスト教式で挙げるのは平気だけど、キリスト教式で葬儀を挙げられるのはちょっと・・」

このセリフに共感できる人は多いだろう。葬儀については他のサービスより選択が保守的になる傾向がある。

 

② 地域性が強い

結婚式をハワイで行う人はいても葬儀をハワイで行う人はいない。東京の有名なホテルで結婚式を上げたがる若者はいるが、京都の金閣寺で葬式を挙げることを夢見る人はいないだろう。

ナマモノである遺体を運ぶのはなかなか大変だし、参列者の移動も大変だ。

その結果、葬儀は近所で行うことになる。県を跨ぐことすらほとんどないだろう。

 

③ 地域差が大きい

葬儀の風習は地域によって激しく違う。

 

他県の葬式に参加するとカルチャーショックを受けるはずだ。

私も北海道のある地域で葬儀に参加し、受付で香典の中身を確認されて領収書を貰って結構驚いた経験がある。香典に領収書!

でもその土地ではそれが普通だった。

 

この地域差が参入障壁として働く。土地の風習を知らない業者は、その土地では葬儀を執り行えない。

 

④ 家族経営の企業が多い

本当に小さな町でも葬儀屋は存在する。それぞれの土地に根付いた零細葬儀社が多い。社員数名の町工場のような葬儀会社が津々浦々に多数ある。家族経営プラスアルファ、くらいの規模で営業している。

そんな零細企業の例に漏れず、後継者がいなくて廃業する事も多い。

 

⑤ 24時間対応が必要

人が亡くなるのはほとんど病院だ。

医師が死亡確認を行うと、遺族は葬儀屋に電話をかける。電話をかけて1時間もしないうちに葬儀屋はやってくる。そしてご遺体を引き取っていく。

これは24時間、365日いつでも同じ流れだ。

葬儀業はなかなか大変な仕事だ。だから人材確保は困難になる。

また、息子が家業を継がない葬儀屋があるのも無理はない。

 

⑥ 何度も利用する人は少ない

人が亡くなるのは一度きりだ。

家族の葬式を何度か出すことはあっても、生涯10回喪主をやりましたという人はごく少数だろう。

その結果、業者と消費者の経験値の差が大きくなる。年に50回の葬儀を行う業者と、一生で数回の経験しかない消費者。この差は一般的なサービス業よりずっと大きくなる。

その結果、業者側がその気になればボッタクリも可能になる。

 

⑦ 消費者側に選択のための時間がない

結婚式なら1年ほどかけて準備することができる。式場やドレスや料理を選び、呼ぶ人を決めて席順を決めて・・と大変だが、色々比較して悩む時間がある。

一方、葬儀はすぐに行う必要がある。いつまででも遺体をそのままにしておく事はできない。死亡確認が終わったらすぐに業者に電話しなくてはいけない。

これも不透明な会計とボッタクリを可能にする余地を増やす。

 

しかし終活意識の高まりによって事前に準備を行う人が増えてきた。また、スマホの普及によってその場での価格比較ができるようになり、葬儀業者のボッタクリも減少してきているとの事だ。

 

⑧ 失敗は許されない

「火葬した遺骨なんですが、ちょっと手違いがあって無くしてしまいました(笑)」

 

そこまで極端な事はないだろうけど、基本的に葬儀の失敗は許されない。悪評が立った葬儀会社が地域で営業を続けるのは不可能だろう。

葬儀業の社員には高いプロ意識が必要だ。つまり優秀な人材が必要な業界なんだ。

人材確保が難しいのは間違いないだろう。

 

 

2.葬儀市場の歴史と現状

そもそも葬儀は地域共同体が行うものであり、業者が行うものではなかった。

葬儀業者は多くなく、葬儀市場というものはほとんど存在していなかった。

 

地域共同体の力が弱くなってきた1970年頃、葬儀サービス会社が各地で創業され葬儀市場が生まれた。

 

現在の葬儀市場は1兆5千億円だ。しかし市場は成熟しておらず、高シェアを占める企業は存在しない。

 

日本最大手の葬儀業者は大阪を地盤とした(株)ベルコだが、その売上高は446億円。つまりシェアは3.0%程度だ。

上位10社を全部合わせても16%程度にしかならない。

 

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葬儀業界の最新M&A動向 | 山田コンサルティンググループ (ycg-advisory.jp)

 

葬儀業界に存在する様々な参入障壁のため、葬儀業界はまだ覇者が存在しない。

 

 

3.きずなHDの成長のためには

きずなHDをとりまく葬儀業界はなかなか複雑なようだ。

その複雑な状況の中で、きずなHDは成長できると判断して株を買った。

きずなHDにとってのチャンスと脅威に分けて箇条書きにしてみた。

 

チャンス

・業界のリーダーとなるような企業が存在しない

・零細葬儀会社の廃業が進んでいる

 

脅威

・葬儀の単価が減少している

・地域性という参入障壁が存在する

・消費者側の終活意識が高まっている

・優秀な人材が必要だが人材確保が難しい

 

成長のためにはこれらのチャンスを活かし脅威を除いていく戦略が必要になる。

 

 

きずなHDの2020年5月度の売上は7,676百万円。これは葬儀業のシェア上位10社にすら入っていない。そして純利益は210百万円に過ぎない。

それがいつか売上500億円、純利益25億円くらいの業界トップになるポテンシャルはある。私はそう考えている。何年かかるかは知らない。

 

 なぜそう考えたのか。それについて次回書きます。 

 

 

 

投資家として人生の最後を考えるならこれは必読。

お金はあの世に持っていけない。持っていけるのは思い出だけ。

「ゼロで死ね」

ロックなタイトルもいい。

7086 きずなHDを買った理由①・・予測可能な未来

お葬式の心配をしている人のイラスト

1.きずなHDを買った

きずなHDは葬儀会社だ。葬儀サービスを展開している。

 

2021年1月12日から14日にかけて、このきずなHDを買った。

1月10日に本格的購入を決定したが、そのすぐ後の1月14日に2Qの決算発表が予定されていた。決算後に株価が跳ね上がって買えなくなるのは嫌なので、12日月曜日からの3日間でそれなりの株数を仕込んだ。

 

世の中には「ポジションを持ったまま決算を迎える」、いわゆる「決算跨ぎ」が嫌いな人が多いようだ。

私は全然平気だ。きずなHDを決算直前に買った事も特別な事をしているつもりはない。決算ギャンブルに勝った!などとドヤるつもりは全くないです。

きずなHDは月次も出てるし。

 

2Qの発表時にM&Aのニュースがあったりもして、結果的に株価はその後上昇した。決算前に買っておいてよかった。

 

という訳で、久しぶりの企業分析記事は今回買ったきずなHD買った理由について書く。

買った理由は「かなり確実な未来が予測できるから」です。

 

 

2.予想可能な未来

私の投資方針はグロース寄りだ。小型株を安く買って、企業の成長を楽しみながら待つのが好きだ。そのためにはある程度未来を予測しなくてはならない。

 

未来を予測する上で、不確実性には4つのレベルがある。

 レベル1:ほぼ読める未来

 レベル2:分岐していくシナリオ的な未来

 レベル3:見えないけど方向がわかる未来

 レベル4:全く読めない未来

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レベル1のようにほぼ読める未来は存在する。

これから7月に向けて気温は上昇する。小学校6年生は来年中学生になる。

隕石が落ちてきて氷河期が始まるかもしれないが、起こる確率からいってそれを考慮する必要はないだろう。

 

レベル2のシナリオ的な未来

高校受験が成功したら〇〇高校に進学する。ダメだったら△△高校。〇〇高校で頑張れば大学は・・。分岐点を考え確率を考えて未来を読む事は可能。

 

レベル3の方向だけわかる未来

世の中はキャッシュレスが進むだろう。DXが進むだろう。

どんなスピードでそれが進み、だれが勝者になるかはわからないけど方向はわかる。昭和の時代のように現金決済のみに戻るという事は考えにくい。

 

レベル4の全く読めない未来

さっき生まれた子が将来だれと結婚するか、あるいはしないのか。半年後の東京都の天気は晴れか雨か。

こんな未来を予想しようとしても無駄だ。

 

投資を行うなら、レベル1で未来が読める企業に投資したい。 

 

 

3.厚生省の統計

日本の人口はわかっている。人の平均寿命はほぼ分かる。

いつごろ、どのくらい人が亡くなるかは厚労省が将来推計のデータを出している。

 

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Microsoft PowerPoint - 総-8参考1 (mhlw.go.jp)

 

 

日本は少子化が進んで人口が減少し始めている。しかし死亡者数はまだまだ減らない。

死亡者数のピークは2040年頃だ。

これは推計だが、外れることはほとんどない。あと20年くらいで不老長寿の薬が発明される事はあるかも知れないが、全国民に普及することはないだろう。

 

亡くなる人はこれから増える。葬儀市場が縮小することは考えにくい。

 

 

3.長寿と葬儀

一方、平均寿命は伸びている。そして今後も伸びることが予想されている。

これも議論する必要がないほど確実だ。

 

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平均寿命が伸びると、亡くなった時の故人の関係者は少なくなる。

 

60歳くらいで亡くなった場合、職場の人間関係はそのまま残っている。同じ世代の友人も多いし、元気だ。義理も人情もまだまだ現役だ。

亡くなった時の社会的なインパクトは強く、その結果葬儀の参列者は多くなる。

 

一方、90歳くらいで亡くなったときはそうならない。

職場の人間関係はほとんど消えている。職場以外の義理での人間関係はほとんど消失しているだろう。既に旅立った同世代の友人も多く、残っている人も体が弱っている。残った人間関係は家族を中心とした十数名だろう。

 

その結果、葬儀の参列者は少なくなる。これは既に起こり始めている流れだ。

 

 

4.家族葬とは

多くの方は数回の葬儀の参加経験があると思う。

参加した葬儀の中には、故人の事をよく知らない事もあったのではないだろうか。故人が職場の同僚の親だったり、近所の婆さんだったり、10年ほど会っていなかった親戚だったり。

 

それほど親しくなかった故人でも葬儀にも参加する。その結果、参列者の数は多くなる。日本の葬儀における平均の参列者は64名というデータがある。  

 

しかし、最近の葬儀の参列者数は減少し始めている。平均寿命が伸びているのがその原因の1つだ。

 

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会葬者(参列者)の人数は?|第3回お葬式に関する全国調査|いい葬儀 (e-sogi.com)

 

 

最近は、列席者を家族や親しい親族、友人のみに限定し、少人数でゆっくり故人とお別れする「家族葬」という形態が増えてきている。

 

100人の参列者がやってくる葬儀会場と、20人弱の参列者で行われる葬儀会場は別物だ。世間は小さな葬儀会場を必要としている。これからその傾向は強くなっていくだろう。

 

きずなHDは家族葬を中心に行っている葬儀会社だ。

今後の成長がレベル1で「ほぼ読める」。そんな風に考えてこの企業を買った。

 

 

5.まとめと予告

・人は間違いなく死ぬ。未来における死者の数もほぼ決まっている。

・平均寿命は伸びている。その結果、葬儀は小規模になっている。

・きずなHDは小規模な葬儀「家族葬」を提供する企業だ 。

・きずなHDが今後伸びることは「ほぼ読める未来」だと考えた。

 

 

続きます。今後はこんな事を書いていきます。

① 葬儀業界のあらましと、きずなHDのコンセプト

② 売上と利益の予想

③ 競合他社について

④ リスクについて

⑤ バリュエーションについて

 

「ほぼ読める未来」などと書いていますが、リスクもそれなりにあります

リスクについてもきちんと書いていきますので、よければ読んでください。

 

 

 

本文中にある「不確実性の4つのレベル」という話はこの本に載っています。

考え続ける力 (ちくま新書)

対談集ですが、おすすめです。是非一読を。