2023年を振り返る①・・セルシス(アートスパークHD)への投資について(前編)
1.年末と総括
12月も半ばを過ぎた。年末といえば今年の反省だ。
ことしの私の株式投資はとても上手くいった。コロナ禍からの復活に加えてアズームの上昇に上手く乗れた2020年以来のパフォなんじゃないかと思う。
まあこれから崩れる可能性は十分あるけど。
しかし例年通り投資の失敗例について書く。
成功例より失敗例の方が学びが多いし、失敗から学ぶことだけが失ったお金に意味を持たせ成仏させる方法だからだ。痛みを伴う経験こそ意味がある。
それに毎年の失敗についての記事は評判がいい。特にファンダ系の凄腕投資家の方々には好評をいただいている。そのような日頃お世話になってる凄腕の方々に少しでもお返しできるとすれば、私もとても嬉しい。
幸いな事に(?)こんなに上手くいった年でも失敗例には事欠かない。
今回はセルシスへの投資が上手くいかなかった件について書く。
あの頃はまだ「アートスパークHD」という社名だった。
2.アートスパークHDとの甘い日々
アートスパークHDは「CLIP STUDIO PAINT」というグラフィックペイントソフトを作っている会社だ。「クリスタ」という呼び方の方が通りが良いだろう。漫画やアニメ系のイラスト用お絵かきソフトとして圧倒的なシェアを誇り、日本語以外にも、英語、韓国語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、タイ語、インドネシア語の各言語版があり世界中に展開している。
クリスタはもともとパッケージソフトとして売られてた。一度買ったらずっと使える昔ながらのスタイルのソフトだ。
2017年11月よりサブスクリプションモデルが提供開始された。
月額数百円で、毎月利用料を支払う方式だ。
このサブスクモデルが拡大していく頃、良好な月次も相まって株価は気持ちよく上昇していった。
私がアートスパークHDを初めて知ったとき「これはイラスト界のWindowsだ」と思った。漫画やイラスト系のグラフィックスソフトのシェアが高く、大きな堀があると判断したからだ。
買ったのはかなり上昇した後だったが、それでも十分恩恵があった。
3.アートスパークHDの足枷
アートスパークHDのクリスタは競争優位性があり、とても魅力的だった。
しかしこの企業は大きな鉄球がついた足枷をはめていた。
足枷の名前はUI/UX事業。自動車の運転席前のグラフィックに関する車載プログラムを作る事業なのだけど、ずっと赤字を垂れ流していた。
クリスタをつくっている「クリエイターサポート事業」が14億円、17億円と稼いでいる横で、UI/UX事業の方は8億円、5億円とお金を失っていた。
将来的にUI/UX事業が稼げるようになる希望があるのなら我慢もできるが、私にはその希望は見いだせなかった。
UI/IX事業がなければずっといい会社なんだが。
投資家なら誰もがそう考えていたと思う。
UI/IX事業の赤字も気になるし、パッケージソフトからサブスクモデルに移行するおいしい部分も終わっていた。私は少しずつ株を売っていった。最終的には優待分を残してすべて売却した。
3.再び交際を申し込む
しかしアートスパークHDの事はずっと気になっていた。
UI/UX事業がなければすごくいい会社なんだ。そんな投資家の思いを受けたのか、会社はこんな文言を出すようになった。
以下のスクショは2022年度2Qの決算説明会資料だ。
UI/UX事業の役割及び位置づけの再検討。これは普通に考えると事業売却の事だろう。
売却すれば営業利益が3割増しになる。今後UI/UX事業への無駄な投資もなくなる。
ようやく儲かる本業だけに社内のリソースを注ぐことができる。
決算説明会資料にここまでの文言を出すのだから売却は時間の問題だろう。売却のニュースが流れれば株価は2割3割上昇するのは既定路線だ。それなら半年くらい早くても仕込んでおけばいい。お金が増えるのは時間の問題だ。
そう思って少しずつ買いなおした。
もう一度アートスパークと甘い時間を過ごすという夢を見るようになっていた。
4.UI/UX事業の売却のニュース。そして・・
2023年2月10日、4Q決算発表と同時にUI/UX事業の売却が発表された。
「来たか!」
ホルダーは誰しもがそう思った。UI/UX事業の売却のニュースを見た瞬間、PTSの早押し大会で株を購入した方もいたようだった。
私もニュースを見た瞬間に勝ちを確信していた。
しかし決算説明会資料には「DC3事業について」というページもあった。
「5年後に400億円の売上と300億円の営業利益を目指します」
まじか?今年の営業利益が14憶円だったんだけど??
「2023年度はDC3事業に10億円の開発投資を計画しています」
まじか。。今年の営業利益は14億円だったんだけど。。。
なんでだよ。。なんでそうなるんだよ・・・。
2月10日の15時ころのYahoo掲示板にその時の雰囲気が残されている。
3コマ漫画のようだ。
その後の株価もこんな風だった。
一度は甘い日々を過ごしていたアートスパークHDはセルシスと改名し、再びすり寄って行った私に強烈な肘鉄を食らわせた。
私はその痛みを感じながらただ呆然としていた。
5.次回予告
そんなわけで2023年の最初の目論見は崩れ去った。
防ぎようのない事故だった、と整理するのもよいだろう。
でも後で見ると回避できた可能性もあったような気がしてくる。
次回、この失敗の原因と損失回避の可能性について考えたことを書きます。
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