1.株価は需給で決まる/株が売られる時
株価は、買いたい人と売りたい人がいるからこそ決定する。
買いの注文が売りの注文より多ければ株価は上がる。売りの注文が買い注文より多ければ株価は下がる。その日その時の注文の量が株価を上下に変動させる。株価とは「取引された株の値段」なのだから、株価が需給で決まるのは動かしようのない事実だ。
これまでの記事で、様々な「需要の増加」による株価上昇について書いてきた。ファンドが買うときとか、1部上場が決まった時とか、TOBがかかるときとか、イナゴが群れてやってくるときとか。
株の需要(買い)が増加して供給(売り)を圧倒した時、株価は上昇していく。逆に供給(売り)が需要(買い)を圧倒すれば、株価は下落する。
意識的に上昇する話を書いてきたが、逆のパターンで下落することも多い。 そして下がる時は上がるときより派手だ。コツコツ上げていた株が、ドスンと暴落する。いきなり始まるジェットコースターの下りのようだ。
私は遊園地のジェットコースターが怖いので嫌いだが、少なくともいつ下りが始まるかわかる分だけ良心的だと思っている。株価の下落はいつ始まるかわからない分、悪質だ。
という訳で、今日は株の売りが湧いてきて株価が下がる時の話を書きます。
2.現金が欲しい個人投資家
株式投資家は株を買う。株を買って上がるのを待つのが株式投資家だ。
信用取引で株を売って下がるのを待っている投資家もいるが、どちらかと言えば少数派だ。信用取引だけを見ても、株を売っている人より買っている人の方が2倍以上多い。信用取引をやらない現物派は、当然ながら買うことしかできない。
だから、株を買っている投資家に限定して話をしていく。
投資家が所有している株を売ると、現金が手に入る。
現金は置いておいても増えることは無い(銀行の利息は少なすぎるので無視)。しかし現金は減ることもない。いろいろな物を買うこともできるので、現金は便利だ。
投資家が株を売る理由は、現金が必要になったときだ。
子供が大学に入学し、まとまったお金が必要になった。家を建てるためにローンの頭金を用意する必要が出てきた。このように現金が必要になった時に、個人投資家は株を売る。
でも家を建てる時期は個人によってバラバラだ。子供が大学に入学してお金がかかるのは3月から4月だが、毎年その頃に株価が下がるという現象は見られない。
個人投資家が現金のために株を売っても株価が下がる、という事はなさそうだ。
3.現金が欲しい機関投資家
一方、機関投資家はどうだろう?機関投資家が現金のために株を売ることはあるだろうか?
機関投資家が株を買っているお金は、出資者が出してくれたお金だ。だから出資者に「お金を返して!」と言われた時は、株を売って現金に変え、それを返す必要がある。
機関投資家が現金のために株を売るのは、お金を返す必要が出てきたときだ。つまり、そのファンドや投資信託が解約される時だ。
出資者に「お金を返して!」と言われれば抵抗できない。
返せと言われればただちに株を売って、お金を返さなくてはいけない。「あと2週間待てば株価はもとに戻って、その後は2倍まで上昇する!」という事が間違いなくても、機関投資家は株を売らなくてはならない。
これは機関投資家にとって絶対のルールだ。
ファンドや投資信託が解約される時はどんな時か?
これは、株価が下がったときだ。
株価が下がれば、ファンドや投資信託の価値も下がる。そうすればさらなる損を防ぐために、出資者はファンドや投資信託を解約する。
だから株価が下がる時、現金が必要になった機関投資家が更に株を売る。
するとその売りで、さらなる株価下落が起こる。さらなる株価下落がもっと売りを呼んでくる。その売りがさらなる株価下落を招く。
こうやって負のスパイラルがどんどん進む。ありえないほど安くなった株が、更に売られていく。これが、ドスンと株価が下がる原因だ。
4.安心が欲しい個人投資家
どんどん株価が下がる時。これは、買いのみの個人投資家にとってなかなかつらい時だ。2018年の12月にもそれなりの株価下落があった。15年ほど株をやってきた私でも、毎日減っていく資産を見ているのはつらかった。
「安い時は株を買うときだ!」そう思っていてもなかなか買えるものではない。もっともっと下がるかも知れないのだから。
株価が下がった時に買った株が更に下がり、深いダメージが更に深くなる。そんな経験なんていくらでもある。そんな経験が、落下していく株を買うのに二の足を踏ませる。
何日も下がっていくのを見ていると、最後に我慢できなくなる。
我慢できなくなって株を売る。株を売って手に入るもの、それは現金と「これ以上お金が減らないという安心」だ。
散々苦しんだ投資家が、最後に「安心」が欲しくなって株を売る。しかしそこで手に入る「安心」は一時的なものだ。
我慢に我慢を重ねた投資家がギブアップする。その時はもう株を売る人が残っていない。我慢強くない投資家は、もうとっくに売って逃げているのだから。
売る人がいなくなると、株価はゆっくりと元に戻っていく。「あなたの売った、そこが底」っていうやつだ。
我慢に我慢を重ねた後に売った投資家は、上がっていく株価を見て2倍苦しむことになる。
その精神的ショックで退場していく投資家も少なくない。株で破産して退場するより、精神的ダメージを受けて退場する投資家が多いと思っている。
5.まとめ
株価が暴騰するときも暴落するときも同じだ。株価が極端に走る時は、理性で株価が動くわけじゃない。感情で株価が動くんだ。
投資は精神のコントロールがとても大事だと言うことが理解できただろうか。
早く逃げるか、冬の間を穴ぐらにこもって売らずにやり過ごすか。
上げるときも下げるときも、売るのはとても難しい。