エフアンドエムへの投資と教訓・・・2021年を振り返る⑤
1.ラベンダーの花束
ひどい相場が続いていますがいかがお過ごしですか。
相場に対する恨みつらみはTwitter等でいくらでも聞けるので、このブログでは書きません。私は何が起きても平常運転を続けるテレビ東京をリスペクトしてます。このブログも相場環境に左右されず通常の記事を書きます。
いまだに2021年を反省するシリーズ、その⑤です。
今回はエフアンドエムへの投資について。
エフアンドエムの旧社名は「フラワーメッセージ」。元々は花束と共にメッセージを送るフラワーギフト会社だった。フラワーギフト事業はずっと前に廃業しているが、社名のFとMはそれぞれ花束とメッセージカードを意味している。
ちょっとほっこりする社名の由来で良いと思った。
ただ最終的に心象風景の中で私に送られたのはラベンダーの花束だった。
ラベンダーの花言葉は「期待」「不信感」「疑惑」だ。
2.エフアンドエムのビジネス
エフアンドエムはいくつかの事業を行っている。重要なものは以下の3つだ。
記事の中の数字は2021年初頭のものです。
①アカウンティングサービス事業
生命保険の営業職員を主な顧客として行っているサービス。
営業職員が受け取った領収書等をまとめてポストに投函するだけで、帳簿作成をしてもらえる。領収書を貼り付けたり経費を請求する書類を作る仕事を代行してる。
売上構成比は44%、事業利益率34%、売上高成長率は3.3%だった。
②コンサルティング事業
「エフアンドエムクラブ」という中小企業総務部への情報提供サービス。
プライバシーマーク認証取得支援、補助金申請支援などが主な業務。
売上構成比は39%、事業利益率33.1%、売上高成長率は2.2%だった。
③ビジネスソリューション事業
社労士事務所への経営支援、税理士、公認会計士への経営支援等を行っている。
それとともに「オフィスステーション」というクラウド型労務・人事管理システムを提供している。このオフィスステーションが伸びている。
売上構成比は12.6%、事業利益率は△50%と赤字。しかし売上高成長率は39.5%だった。
3.エフアンドエムを買った理由
エフアンドエムの購入を検討した理由は以下の通り。
・アカウンティングサービス事業、コンサルティング事業の安定性と利益率の高さ
・「オフィスステーション」の売上高成長率
・安定した事業と高成長率の事業のセット、つまり防御と攻撃のバランスが良い
そして懸念点は以下の通り。
・本当にオフィスステーションは今後も同様の成長を続けるのか?
・現在赤字だが、ちゃんと利益を出せるようになるのか?
オフィスステーションのような企業向け労務・人事管理システムはスイッチングコストが高い。つまり一度導入されれば使い続けてくれる可能性がとても高い。
一方、競合も多い。ぱっと調べただけでも同様のサービスを行っている競合他社は30社以上あるようだった。
この場合、競合他社との陣取り合戦が激しく行われる事になる。
エフアンドエムも、菅田将暉を主演にしたCMを打ったり、「オフィスステーション・労務ライト」というオフィスステーションの機能を一部制限した商品を無料でリリースしたりしてる。利益を度外視してまず普及を急ぐ訳だ。マザーズに数多あるSaaS企業と状況は同じだ。
そんな状況の中である記事を読んだ。
2020年12月29日の日経新聞の記事だったと思う。
エフアンドエムへのインタビュー記事で、こんな事が書かれていた。
「ここ3ヶ月~4ヶ月間、オフィスステーションの有料顧客が毎月1,000件ほど増えている」
この記事を読んで、懸念点は解消されたと判断した。
2021年の大発会から買い始めた。平均購入価格は1,611円。しかしあっという間に株価が跳ね上がってしまい、運用資金の1%程度しか買えなかった。
その後また株価が下がってきたので、2月12日に1,615円で少し追加して買った。
4.2021/5/14 4Q発表
エフアンドエムを買った理由を文章で書いた。実際はいろいろ数字をこねくりまわして具体的な数字を予想し、それらも確認して投資を決めた。純利益の会社予想794百万円に対し、私の予想は908百万円。上方修正も十分あると考えていた。
2021年5月14日、発表された4Qの純利益は843百万円。会社予想より上だが、私の予想よりずっと下だった。
利益が少なかった理由は「オフィスステーションのCM費用がかさんだから」。
まあそれは想定内だから良いかと思った。
しかしオフィスステーションを含むビジネスソリューション事業の売上が3Qと比較して下がっていた。
そして来期の予想も今年度比で売上+22.1%、経常利益△7.7%、純利益△6.4%の予想だった。
4Q発表時のPERは29.7倍。これではこの株価は支えきれないだろう。
ビジネスソリューション売上が3Qと比較して低下していること、オフィスステーションの黒字化のタイミング。そのあたりを色々調べたりIRに問い合わせしたりした。
しかし納得できる回答は得られなかった。
ラベンダーの花言葉は「期待」「不信感」「疑惑」。
「期待」は薄れ、「不信感」と「疑惑」が残った。
エフアンドエムの株は1,400円ちょっとの値段で全部売却した。
5.教訓として、販管費の考え方
「販管費が大きくなるビジネスモデルは嫌だ」
エフアンドエムへの投資でいちばん強く感じたのはコレだった。
売上を伸ばすために大量の広告費がかかる。割引クーポンや無料サービスが必要になる。代理店へのマージンが必要になる。
それはそれで良いのだけど、かけた分の経費がそれ以上に売上につながっている確信がほしい。どのくらいの時期にどのくらいの利益が上がってくるかの目処もほしい。
販管費は経営者の判断でいくらでもかけることが出来る。その気になれば利益をいくらでも圧縮できる。
「税金を払いたくない、税金を払うくらいなら事業の成長に使いたい」そう考える経営者はいくらでもいるだろう。その気になれば永遠に利益を上げずに済ます事も可能だろう。
広告を止めた後に上がってくるであろう利益によって評価されている株なら、広告続行が決定されるだけで株価は暴落する。それに巻き込まれるのはとても嫌だ。
その後エフアンドエムは10月28日に上方修正が発表され、株価は2,450円まで上昇した。でもエフアンドエムに対する興味は失っていたので何の感情も湧いてこなかった。
過去のタラレバはどうでもいい。しかし過去から何を学ぶかはとても重要だ。
今後は多額の販管費がなくても成長する企業に投資する。
これがエフアンドエムへの投資から得られた教訓でした。
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草食獣と肉食獣が共存して社会を形成している世界。肉食獣には肉を喰いたいという本能があり、それぞれがギリギリのところで折り合いを付けて暮らしている。その葛藤の描写が見事。