1.セゾン情報システムズのビジネス
セゾン情報システムズのビジネスを簡単に説明するのはとても難しい。
セゾン情報システムズはクレジットカード会社であるクレディセゾンの持分法適用会社で、クレジットカード業界や流通業界向けのシステム開発や運用をメインのビジネスとしている。
他にも銀行や保険などの金融機関向けのアプリケーションを開発したり、セキュリティを支援したり、IT化を支援したりもしている。
そして何よりも「HALFT」と呼ばれる企業間のファイル転送サービスを提供している。
ファイル転送には双方の企業にHALFTが導入されている必要がある。よって国内の売上高TOP500に含まれる企業のうちの85%にHALFTが導入されている。銀行や自動車産業業界に至っては100%が導入済みだ。
それ以外にも様々な業務アプリやシステムを統合し、1つのシステムとして活用する仕組み「Data Spider]を提供している・・。
・・・うん、全然説明できた気がしない。
まあ、あるジャンルでは圧倒的なシェアを持ってるIT企業だと思ってください。
そんな企業の株を2019年12月に購入した。
2.セゾン情報システムズを買った理由
あんまり長くなると読んでもらえないと思うので箇条書きで購入理由を示す。
・HALFTはファイル転送サービスで圧倒的なシェアを占めている
・HALFTがなければ企業間のファイル転送ができない
・そのためストック性が極めて高い。
・ファイル転送サービスによる認知度の高さ、信頼性の高さがある
・Data Spider等、ファイル転送以外のサービスも次々リリースしてる
・これらが顧客企業あたりの売上額を増やす事は十分考えられる
・DX、ビッグデータ、IoTなどのキーワードが追い風になる事業内容だ
・コロナ禍でも売上高がマイナスになっていない実績がある
・上方修正が十分期待できる進捗率だった
それなのにPER 15倍程度にしか評価されていない。配当利回りは4.2%程度。
ここから暴落することなんてあり得ないだろう。
これは「当たったら2倍以上、外れてもマイナス10%程度のクジ」だ。つまり期待値がとても高い投資案件だ。
そう判断した。
2019年12月に、2,090円から2,230円くらいの値段で買った。
セゾン情報システムズは最盛期でポートフォリオの7.2%を占めていた。
3.その後のIRニュースと株価
2020年2月28日、3Qの発表の少し後に通期業績予想の修正が発表された。
売上高▲2.1%、営業利益+12.0%、純利益▲52.4%という数字だった。
利益率の高いHALFTやData Spiderの売上が好調だったため営利は上方修正。しかし特別損失が発生して純利益は下方修正されていた。
このニュースによって株価は1,596円まで下がった。
株価が下がるのは嬉しくはないが、当初の仮説が崩れた訳ではないので放置していた。
株価は3ヶ月くらいで2,000円くらいまで戻した。
2021年5月12日、4Qの決算が発表された。
再度の上方修正を期待していたフシもあったが、それはなかった。
それよりずっと気になったのは来期予想だ。
売上はわずかだが伸びている。しかし来期の利益予想が伸びていない。
その理由は「HALFT Square」という新製品の開発に9億円投資するから、だった。
来期に9億円、それ以降も相応の資金を投資する予定とのことだった。
この投資がなければ来期の利益予想はずいぶん良くなるのに。
4.予想できない未来と、ある疑念
新製品の開発に9億円投資するのは別にいい。それがきちんと利益につながるのであれば大丈夫だ。
しかしそのHALFT Squareという新製品がどんな商品でどのくらい儲かるのか?そもそも開発はうまくいくのか?年間9億円の投資に見合うリターンはあるのか?
それらを評価することは私には不可能だ。
9億円はセゾン情報システムズにとって決して小さな金額ではない。来期9億円のその投資について評価できないのだから、企業の未来は予想できない。
自分で業績の予想ができない企業には投資できない。私がセゾン情報システムズをHoldし続ける条件は失われた。
そしてもう一つ疑念が湧いてきた。
「そもそもこの企業は利益を上げていく気が無いのではないか?」という疑念だ。
セゾン情報システムズという企業はその沿革が特殊だ。
2015年、システム開発遅延が原因で親会社であるクレディセゾンに訴訟を起こされているのだ。結局150億円の賠償金をクレディセゾンに支払った。2015年の純資産が112億円しかない会社なのに、150億円を取られた訳だ。しかも自分の親会社に。
この事件によりセゾン情報システムズは一時期倒産の危機を味わうこととなる。
さらにそのドタバタを突くように、村上ファンド系のファンドに敵対的TOBをかけられている。結局TOBは失敗したが、現在も32.8%の株はそのファンドが握っている。
有価証券報告書の大株主欄に親会社と、敵対的TOBの時のファンドの名前が載っている。
自分を殺しかけた親と、かつて侵略戦争を挑んできた敵が大株主な訳だ。
「利益を上げても毒親と敵が喜ぶだけ。ならば自分自身への投資に稼いだお金を注ぎ込んだほうがいい」
会社の経営者がそう考えてもおかしくない。
そんな疑念が私の中に湧いてきた。
もし本当にそう考えていれば、今後も大きな利益を上げることはない事になる。
これは私の妄想かもしれない。
しかし一度でも疑ってしまえば愛は終わりだ。
5.愛の終わりと投資の終わり
2021年6月、セゾン情報システムズは2,070円前後でほとんど売った。出来高が少なくて売るのに苦労した。1割くらい売らずに未練がましくHoldしていたが、結局8月の終わりに全部売却した。その時の株価は1,930円くらいだった。
セゾン情報システムズへの投資はこうして終了した。
私の中ではずいぶんドラマチックな展開になった。
全ては私の妄想なのかもしれない。
敵対的TOBと村上ファンドの事件についてはそれほど深く調べていないので、間違いも含まれているかも知れない。
詳しい方がいたら優しく教えて下さい。
しかしこの投資案件でも1つだけ正しいことがあった。
「当たったら2倍以上、外れてもマイナス10%程度のクジ」
という部分だ。
正しかったのは後半だけだったが。
ライブドア事件では村上世彰はベニスの商人のシャイロックのように扱われてたが、もちろんそんなに単純な人物では無い。しかしこの本はちょっと自分を美化しすぎだとも思った。そんなにキレイなお手々してないっすよね?
こっちは、まあネタとして。