アズームを買った理由⑦ 原価と販管費と利益
1.アズームの決算
7月30日にアズームの3Q決算が発表された。その内容はほぼ予想通りだった。
発表される当日は決算に対する期待からか、株価が5.0%も上がっていた。発表された翌日は-11.23%と下落した。
決算発表前にどのような期待があって買われたのか、発表後はどのような失望があって売られたのか。どちらも私にはよくわからない。わからないから株価の予想はしない。
とりあえず3,500円あたりで100株追加購入してみた。数日後の未来の株価はわからないが、数年後の未来の株価はもっと高いと思っている。
2.利益は成長するか
これまで受託台数(=商品の入荷量)や稼働率(=商品の売上)の話を書いた。
しかし売上の話だけでは心もとない。商品がいくら売れたとしても赤字になっては困る。いろいろな議論はあるだろうが、企業の価値は利益が第一だ。
アズームの企業分析の最後の記事として、今回は利益の話を書く。
アズームのコアになる事業は駐車場のサブリースだ。駐車場をオーナーから借り上げ、それを利用者に貸すことで利益を得ている。
たとえば、1ヶ月2万円で借りたものを3万円で貸すことができれば1万円の利益になる。この場合オーナーに支払った2万円が原価になり、受け取った3万円が売上、儲かった1万円が粗利になる。
この1万円の粗利から販管費(会社の本社費用や宣伝費や社員のお給料など)を引くと営業利益が出てくる。
売上については既に考察したのだから、利益については原価と販管費の事を考えればいい。
2.サブリース駐車場の原価は地代
サブリースの駐車場の原価は、駐車場オーナーに支払う地代だ。決算短信を読めば、四半期ごとの売上に対する原価について書かれている。原価を売上で割れば原価率が出てくる。売上と原価率をまとめたのが次のグラフだ。
原価率はだいたい55~62%あたりで推移している。
もちろん決算短信に載っている原価は、会社全体の売上に対する原価だ。サブリース事業だけでなく、駐車場仲介やその他の新規事業を含めた原価。だから駐車場サブリースの原価をそのまま示しているわけではない。
しかしアズームの売上の85%以上が駐車場サブリースを占めているのだから、大体の傾向はわかるだろう。原価率はだいたい6割弱。10万円の売上があるとしたら、6万円程度を駐車場オーナーに地代として払っていると理解できる。
この原価は完全に変動費だ。1台分の駐車場を借りれば1台分の地代を払う必要がある。何らかの事情があって原価率が急激に上昇しない限り、売上に比例して大きくなると考えればいい。
今回発表された3Qの決算でも、原価率は60.4%だった。
3年後も同じような原価率が続くと判断した。
3.販管費は人件費が大きい
原価の次は販管費だ。
販管費とは「販売費および一般管理費」の略だ。販売費は販売にかけた人件費と広告費が、一般管理費は間接部門に関わる人件費や事務所の家賃、光熱費などが含まれる。
駐車場サブリース事業にはあまり広告費がかかっていないと推察する。集客は自社で運営するウェブサイトで行っているのだから、宣伝する必要がない。
それでは何に費用をかけているのか。
おそらく人材に費用をかけているのではないか。2019年9月で、アズームの社員数は132人、平均年間給与は409.4万円。給与のみで5億4,000万円を支払っていることになる。この年度の販管費は10億7,500万円だから、50.3%だ。
その前の年である2018年9月は、社員数が75人、平均年間給与は452.6万円。会社が支払った給料の総額は3億3945万円。同年度の販管費6億6300万円の51.2%を占める。
支払い給与の約2倍が販管費、という目安で将来を予測してもいいだろう。
さらに、社員に支払うお金は給与だけではない。社会保険料や交通費や各種手当ても会社が負担する。社員が多くなれば本社のオフィスも広くする必要がある。
いずれも社員が増えるほど金額が増える。販管費は社員数に比例すると考えた。
さて、去年までのアズームはとても積極的に社員数を増やしていた。2019年9月で75人だったのが、2019年9月には132人。たった1年で76%も社員を増やしている。
そして2020年6月末現在の社員は135人であり、9ヶ月経過してほとんど増えていない。
アズームの四半期ごとの販管費は、
2020年1Q 325百万円
2020年2Q 326百万円
2020年3Q 329百万円。
社員数の増加が止まって、販管費の増加も止まっている。
4.売上と原価、販管費、営業利益
前回までの記事で売上が着実に伸びるであろうという話を書いた。そして原価は一定だ。ならば売上から原価を引いた粗利も確実に伸びるはずだ。
その状態で販管費の伸びが止まっていれば、粗利の伸びイコール営業利益の伸びになる。
グラフのように、売上は伸びているが販管費は伸びは止まっている。
そして粗利と販管費、営業利益のグラフはこちら。
粗利はずっと伸びている。販管費の伸びが止まれば、その差額はすべて営業利益の伸びになる。グラフの紫と緑の差が営業利益だ。
この調子で行けば、会社予想の営業利益は達成できるだろう。3Qまでの営業利益が108百万円なのだから、4Qの営業利益が82百万円になれば、今季の会社予想である営業利益190百万に届く。
そして2021年の営業利益520百万円もそんなに難しくないと計算しているのだけど、どうだろう。
5.販管費は会社次第
今後の営業利益について計算した内容を書いてみた。
販管費がこのまま抑え気味で続けば予想通りになると考えている。
しかし販管費は会社次第だ。社長が「もっともっと社員を雇って全国展開するぞお」と言い始めれば、あっという間に利益は消滅する。そうなれば株価も見えないレベルに下がる、かもしれない。
売上の成長が続けば持ち続けたいとは思っていますが。
投資はいつだって自己責任で。
この本、とてもおもしろかったです。
企業分析だけでなく個人投資家の退場防止にも役立ちます(断言)。