中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

ファブリカを買った訳⑥・・利益率と原価について

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1.利益率と原価

ファブリカのSMS事業の成長を考える上での3つの検討事項

① 業務用SMSの市場が拡大するのは本当か? 

② ファブリカはシェアを維持できるのか?

③ 利益率は維持できるのか?

 

この、③の利益率について考えてみる。

営業利益は売上から原価と販管費を引けば算出できる。

 

営業利益 = 売上 ー 原価 ー 販管費

上記の式の項目のうち、売上についてはこれまで書いてきた。

だから今回は原価について書く。

 

しかしファブリカはSMS事業だけでなくU-CAR事業やオートサービス事業もやっている。そうなると有報を読んでも利益構造がはっきりと見えてこない。

よって、SMS事業が売上のほとんどを占めているアクリートとAI CROSSの数字を参考にしながら考えていく事にする。

 

 

2.原価の内訳は回線使用料がほとんど

まずアクリートの2021年12月期の決算説明会資料を見てみる。

売上高 2,764百万円のうち、売上原価は1,666百万円、原価率60.3%だ。

この内SMS仕入原価は1,546百万円、売上高の55.9%を占めている。

そして営業利益率は18.0%だ。

2020年12月期もほぼ同様で、原価率60.1%、SMS仕入原価56.1%となっている。

そして営業利益率は19.9%だ。

 

次いでAI CROSSの有報を確認する。

2021年12月期の原価率は63.7%、営業利益率は10.8%。

2020年12月期の原価率は61.3%、営業利益率は10.0%だ。

 

最後にファブリカの決算説明会資料を見てみる。

SMSセグメントの営業利益率は29%前後となっている。

 

そしてSMS事業の宣伝広告費は4%前後で推移している。

セグメント利益率は経費がどのように配分されているか分からないので鵜呑みにはできない。

しかし少なくともSMSの売上のうち、キャリアに支払う回線使用料が50%から60%の間であることは間違いないだろう。比重としてはかなり大きい。

 

ここでひとつ気になることが出てくる。

キャリアはSMSを送信するための回線の仕入先であるが、同時にキャリア直として業務用SMSサービスを行う商売敵でもあるわけだ。

 

商売敵は回線使用料の値上げという切り札を持っている。

回線使用料を値上げすれば下流にあるファブリカ等の業者を干上がらせる事が可能だ。そうなれば成長著しい業務用SMS市場を全て奪うことが出来る。

切り札を持った相手との戦いはちょっと分が悪い気がする。

 

 

3.送信料値上げのリスクは

SMSサービスにおける送信料の割合は高い。これがキャリアによって値上げされれば利益率の維持なんて言っている場合じゃなくなる。ファブリカにとって死活問題となる。

これについては有報の【事業等のリスク】の部分にも記載がある。

 

 

よってSMS送信料の値上げについて調べてみた。

 

これについてはAI CROSSの原田社長が動画でこんな事を言っていた。

SMS配信は公共性の高いサービスなので、急に単価を上げることはない。過去に単価が上がったこともあったが、0.5円、1円程度上げるときも1年前からアナウンスがあった。急激に仕入れ単価が上がるリスクはそれほどないと考えている」

AI CROSS 原田社長 - 知られざる成長×寡占市場のSMSを大解剖 - YouTube

 

 

別の切り口からもうひとつ。

業務用の仕入れ単価は分からないが、個人用のSMS配信料ならわかる。

これはKDDIのサイトにあった一覧表だ。

 

大手3社の料金は、この通りほぼ横並びだ。

 

ここで連想したのが携帯電話の料金だ。

本来価格は市場の自由に任せるのが自由経済のはずだ。しかし携帯電話料金の値下げを政策として国が主導した事は覚えているだろう。共産主義でもないのに国が民間企業のサービスの価格に口を出してくる。

 

同様に鉄道の料金も公共性が高いという理由で、鉄道各社が運賃を自由に決定することが出来ない。鉄道運賃は「上限認可制」という制度が採用されている。

上限認可制という制度は鉄道事業法という法律で定められている。

賛否はおいておくが、これがこの国の姿だ。

https://www.myam.co.jp/market/analyst/upload_pdf/20110401_analyst.pdf

 

これらのことを考えると、原価が急に上昇して利益を圧迫する可能性は小さそうだ。少なくとも数年間で景色が全然変わってしまうような事は起こらないと判断した。

 

 

4.次回予告

唯一無二のサービスなら原価が上がっても価格に転嫁できるよ。原価が上がらなくても価格競争が激しくなれば値下げリスク高くなるし、結局利益減るじゃん。利益率の維持で重要なのは競合との差別化だろ?その企業のサービスを使い続ける理由があるかどうかが問題なんじゃないのか?

 

今回の記事を読んで上記のような感想を持った方も多いと思う。というか、こんな地味な企業を無駄に深掘りして調べてるブログを読むような方はほとんどそう思ったんじゃないだろうか。

という訳で、次回は競合他社との差別化について書きます。

 

 

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