きずなHD・・新しい中期経営計画について①
1.新しい中計の発表
きずなHDは7月15日、4Qの決算と共に新しい中期経営計画を発表した。
きずなHDは2020年7月21日にも中期経営計画を発表している。わずか1年で計画を立て直した訳だが、その内容は前回より更に強気なものとなっていた。
具体的にはホール出店ペースを1年あたり10店から15店に増やし、2023年度の当期利益の目標を554百万円から700百万円に増やした。2021年度の当期利益が359百万円なので、2年で倍にする計画となる。
発表の翌日、きずなHDはストップ高となった。
大変嬉しいのだけど、会社の中計をそのまま信じる投資家は長生きできない。
中計が出たのなら、その計画が達成される可能性やリスクを検討するのは長期投資家の義務だろう。
という訳で、久しぶりに記事を書くことにした。
読んでください。
2.売上の方程式
以前の記事にも書いたが、きずなHDの売上は以下の式で求められる。
売上 = 直営ホール数 ✕ 1ホールあたりの葬儀件数 ✕ 葬儀単価
この3つの変数を見れば、計画が達成できるかどうか検討することができる。
① 直営ホール数
今回発表された中計では、ホールの出店スピード加速させている。
22年度の出店数が10店なのは変わらないが、23年度以降は毎年15店づつ出店する計画へとアクセルを踏んでいる。
これは新型コロナ感染症の蔓延で外食産業がダメージを受け、その分出店用の土地確保が楽になったという理由もあるようだ。
② ホールあたりの葬儀件数
今回発表された中計では、葬儀件数の計画は以下のようになっている。
実はこの数字、以前の中計より小さくなっている。
以前の数字は以下のグラフの通りだ。
葬儀件数の計画は以下の通り下方修正している。
22年度 10,311件 → 10,200件
23年度 11,595件 → 11,400件
ホール出店数を増やしているのにトータルの葬儀件数は減らしているのだ。
前述の通りホール数の計画は増やしている。
22年度 106店 ⇢ 109店
23年度 116店 ⇢ 124店
つまり、ホールあたりの葬儀件数の計画は更に減っているということだ。
22年度 97.3件/年 → 93.6件/年
23年度 99.9件/年 → 91.9件/年
出店したばかりのホールは葬儀件数の立ち上がりが悪い。5年くらいかけてその土地に浸透し、葬儀件数を上げていくのがきずなHDが描くイメージだ。
しかしホール数を増やしているのに逆に葬儀件数を減らしているのは理屈に合わない。
なんといってもこれから死者数は間違いなく増えていく。市場は拡大していくのだから。
③ 葬儀単価
そして単価の計画は弱気だ。
以前の中計では上記のような葬儀件数と売上だった。
単純に売上を葬儀件数で割ると、
22年度単価 931千円
23年度単価 898千円
となる。
今回の中計はこれを大きく下方修正している。
22年度単価 931千円 → 840千円 (△9.8%)
23年度単価 898千円 → 867千円 (△3.5%)
ここまでが前回と今回の中計における売上計画の比較だ。
3.今回の中計のキモは売上にあらず
出店のペースを加速する!爆速成長!!
そんなイメージで今回の中計を見ていると本質を見失う。
確かに出店ペースは加速しているが、売上の計画は加速していない。
その一方、当期利益の伸びは加速している。
つまり今回の中計は「いきなりステーキ」のように単純に出店を加速して業績を上げる計画ではない。単価下落に耐えながらも攻めに出て、かつ利益体質を強化するという中計なのだ。
なかなか興味深い中計だと思う。
とりあえず7月19日に決算説明会の動画がアップされる。
それを見てからですかね。
次回は利益について書いてみます。
書き上げるまでちょっと時間がかかりそうですが。
いわゆる「特殊清掃」に関わる人が主人公のミステリです。
賛否あるかもしれませんが、私はとても面白かった。ちゃんと完結してます。
おすすめです。