中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

科学的な銘柄選択・・「科学的な適職」より

嫌な面接官のイラスト(就職活動)

 1.職業選択と銘柄選択

最近このブログには企業分析の記事ばかり書いていた。それはそれで良いんだけど、数社の株しか持っていない私では記事のネタがすぐに切れてしまう。そして持っていない企業の分析記事は書いていても面白くない。

 

という訳で需要があるかどうか知らないけど、最近読んだ本の話を書く。

「科学的な適職」という本です。

 

 [鈴木祐]の科学的な適職

タイトルの通り、就職や転職を考えている人向けの本。

面白いのは著者の主張が書かれていないこと。思い込みから来る「主張」ではなく、過去に行われた研究結果について書かれた本だということ。就職や転職を控えている人にはぜひ読んでほしい。

 

そして転職を考えていない投資家にもオススメする。

職業選択とは「選択」だ。

株式投資も企業を選んだり売ったり買ったりと、選択を繰り返している。

この本には正しく選択するための方法について書かれている。

 

「科学的な適職」は就職や転職についての本。

だけどこれは投資ブログなので、内容をすべて投資に置き換えて書いていく。

 

 

2.バイアスが常に存在する前提で判断する

バイアスという言葉を聞いたことがない方は少ないだろう。

 

自分の思い込みを裏付けてくれる情報のみを集めてしまう「確証バイアス」

未知のものを検討し受け入れるのが面倒なため現状維持に走る「現状維持バイアス

退場した人の話は聞けないので生き残った人間の話のみが真実となる「生存バイアス」

 

 このあたりは有名だけど、それ以外にもバイアスは無数にある。

発表されているものだけでもバイアスには170種以上あるらしい。だから、自分には確実にバイアスが存在するという前提で判断を下す必要がある。

「正しい意思決定を行うためには、綿密なデータ分析よりこれらのバイアスを取り除く事のほうが600%重要だ」

そんな実験データもあるらしい。

 

 

3.自分のバイアスを粛々とチェックする方法とは

 この本ではバイアスを取り除く方法がいくつか書かれている。

投資にも使えそうな方法を3つ紹介する。

 

 

① 時間を操作する

目先のバイアスから自分を切り離すために、時間軸を変えるフレームワーク。「10/10/10テスト」と名付けられた方法。具体的には、以下のように将来の自分の感情を想像する事でバイアスを除去する。

 

 ・この選択をしたら、10分後はどう感じるだろう

 ・この選択をしたら、10ヶ月後はどう感じるだろう

 ・この選択をしたら、10年後はどう感じるだろう

 

 

さすがに1つの銘柄を10年スパンで投資する方は少ないだろう。投資期間にもよるけど、時間軸は10分/10日/10週あたりが一般的でよい気がする。だからその線で例を上げてみる。

 

・10分後は

株価が下がり始めているこの株を売れば、10分後に不安から解消されて楽になってるだろうな。

 

・10日後は

下がる不安からは解消されたけど、売ったという選択が正しかったかどうか気になって株価を毎日チェックしているだろうな。リバっていたら買い直すか?

 

・10週後は

もう次の四半期決算が近づいて来ているな。はじめに想像していた決算の予想はどのくらい当たっているのだろうか。それでまた株価は動くだろうけど、どちらに動くか?

 

実際は株価の変動によってどう感じているかは違う。しかし、少なくとも目先の不安だけに囚われることはなくなるだろう。短期的な恐怖だけで動いて後で後悔する事は避けられそうだ。

 

そして売ったあとに株価がどう動くか事前に想像し、それに対する行動もあらかじめ決めておくことができる。

「恐怖に囚われて投げて、その後でリバっていく所に飛びついて、再び下げて往復ビンタをくらう。」

短期間の感情に翻弄されて傷を深くした経験のある人じゃなくても、試しに10-10-10テストをやってみても良いのでは無いかと思う。

 

 

② 敗北を想定する

まず未来を想像して、自分の選択が『完全な失敗』に終わった場面をイメージする。 

続いて、その完全な失敗がどのような原因で起きたのかを紙に書き出していく。自分が普段どんな失敗をしやすいか考えて、現実にありそうな理由をできるだけ出していく。

どれだけリアルに失敗のプロセスをイメージできるかが最大のポイント。

 

例1:本業の月次が良かったので決算を期待して買ったら、本業以外の新規事業が激しくコケて下方修正されてしまった。

例2:月次では順調に売上を伸ばしていたので安心していたら、大量の広告費が計上されていて利益は前年比50%以下になっていた。

例3:成長のために大胆な投資や採用を行った後だから売上も上がるだろうと期待していたけど、MSワラントを発行されてしまった。

例4:Twitterですごく良さそうな話を見たので買ったけど、煽りの本尊は既に売っていた。

 

このように失敗の原因を思いついたら、その前後についても詳しくイメージする。

「この企業が利益を3割下方修正すれば株価が〇〇%下がるかもしれない。そうすると自分の運用資産が〇〇万円まで減るな。そうなれば来月計画していた旅行の楽しみが半減するかもしれない。」

ここまでリアルに想像する。

 

買う前から株ツラい状態をイメージする訳だ。ツラいのは当然で、この敗北を想定する方法は「プレモータム」と名付けられている。プレモータムは日本語にすると「事前の検死」。「死ぬ前に解剖して死因を調べる」という訳だ。

 

でもこの方法で未来の予測精度が30%上昇したというデータがあるらしい。

少なくともその場の勢いでレバをかけまくって爆死して退場、という事態は防げそうだ。

 

 

③ 視点を操作する

自分の行動を三人称として記録していく方法。

古代ローマの事実上の初代皇帝ユリウス・カエサルが、自分の遠征を自ら記録した「ガリア戦記」の中で使った文体にちなむ。

 

「彼は吉野家HDの損切りについて悩んだ。そして優待の利回りを計算し、ポケ丼がどのくらい話題になっているかを検索して今後の月次の推移を想像した。その結果、彼は吉野家のHDを損切りした。」

 

 このように取引を三人称で記入していく。

 

悩みや行動を三人称で書き記していくと、他人の視点で物事を考えるのがうまくなり、複数の観点からベストの対策を導き出せるようになる。

 

三人称でなくても書き残すメリットは2つある。

ひとつは意思決定の記憶をあとから改ざん出来ないこと。

人には自分の敗北や失敗を正面から受け止めることができず、記憶を都合よく書き換える性質がある。文字で残しておけばそのような記憶の改ざんはできなくなる。正しく事実を受け入れてこそ、その失敗を次に繋げることができる。

 

もうひとつのメリットは意思決定のパターンがはっきりする事。

「自分はTwitterの有名垢の発言に流されがちだな」

「企業のバラ色の未来予想を信じすぎだな」

そんな失敗パターンも自覚する事ができる。

 

 

4.おわりに

とても長くなってしまって申し訳ないです。しかも上手くまとまっていない。

ちょっとした興味で読んだ本でしたが、とても参考になったので紹介してみました。

私は何でも投資への教訓に結びつける癖があるんですが、この本は上に書いた3つ以外にも感心する内容が多かったです。

帯にあるDaiGoの推薦文がもったいないくらい内容がしっかりしていました。

まとまっていないこの記事に満足できない方は、ぜひご自分で読んでみてください。

 

 

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  もうひとつのオススメはガリア戦記

古代ローマの事実上の初代皇帝であり、最高の司令官でもあるユリウス・カエサルが自分で書いた戦記。文章が本当に上手くて美しくて、ああもうこの人は本当に何をやらしてもスゴい。