リーマンショックはどのくらい我慢が必要だったか
1.投資家、南さんのブログ記事
まずはこのブログ記事を読んでほしい。
著名な投資家さんのブログなので、既に読んでいる方も多いと思う。
2020年1月18日に書かれたブログ記事。
記事のタイトルは「リーマンショックは怖いか?」。
2008年はリーマンショックが起こり、年初15,156円だった日経平均が10月の安値6,995円まで下がった。記事はその1年間の企業の業績と株価の連動性を検証している。
結論は以下の一文でまとめられている。
「業績さえ良ければ下落相場にも耐えられる。銘柄選択を誤らなければ、下落相場を必要以上に恐れることは無い、という結論に至りました。」
ちゃんと成長している企業を選んで株を買えば、リーマンショックすら怖くないという事だ。コロナショックの渦中で実にタイムリーな記事。投資家必読だろう。
しかし、リーマンショックでは業績のよい企業の株も一時は下落していた。
首尾よく業績のよい企業を選んで株を買った投資家は、一体どのくらいの株価下落に耐えればよかったのか?そしてその期間は?気になったので調べてみた。
2.調査方法
南さんがブログで上げていた業績のよい企業の2008年初頭から年末までの株価を、Yahooファイナンスの「時系列」で調べてみた。この方法で調べることができなかった銘柄は除いた。各企業の営業利益の伸び率は南さんのブログに書いてある数字をそのまま使わせて頂いた。
3.結果と感想
リーマンショックは2008年9月15日、リーマンブラザーズHDが破綻したことをきっかけに起きた。その2008年1月の始値、9月および10月の始値、最安値、10月の終値、12月の終値を調べてみた。月足のローソク足チャートでイメージしてもらえればいいと思う。以下のようなフォーマットでまとめた。
銘柄:2008年の営業利益の増加率
安値 (ショック後の最安値)9/1のからの変動率(最安値を付けた日)
2008年 終値(2008年12月30日の終値) 9/1からの変動率
まずは指標からみていく。
2008年 始値 15,156円
9月 始値 12,937円
10月 始値 11,397円
安値 6,995円 9月始値から -45.9% (10/28)
終値 8,577円 最安値から +22.6%
2008年 始値 1,461円
9月 始値 1,242円
10月 始値 1,099円
安値 722円 9月始値から -41.9% (10/28)
終値 867円 最安値から +20.1%
日経平均もTOPIXも、9月1日の段階で年初から既に15%ほど下げている。9月15日にリーマンブラザーズが破綻し、その後の最安値は1.5か月後の10月28日だ。底値からすぐに20%ほどリバっているが、それ以上は年末まで回復していない。
10/28の底で投げた(あるいは投げさせられた)投資家が3日後にリバった株価を見て更に打ちひしがれた状況が目に浮かぶようだ。
しかしその年が終わっても完全に回復することなく、株価は底練りを続けていた事がわかる。改めてみると酷さが実感できる。
次に業績の良かった企業を見ていこう。
大黒天物産:営業利益30%増益
2008年 始値 695円
9月 始値 1,177円
10月 始値 1,200円
安値 879円 9月始値から -25.3%(10/10)
終値 1,198円 底値から +36.3%
リーマンブラザーズが破綻してから底値を付けたのは25日後。 しかし10月の終わりには既に値が戻っている。投資家の我慢は1か月間で、その後は順調な株価の伸びを楽しめたようだ。
あさひ:営業利益79%増益
2008年 始値 1,280円
9月 始値 1,900円
安値 1,474円 9月始値から -22.4%(9/16)
終値 1,680円 底値から +14%
指標や他の銘柄が最安値を付けたのは10月に入ってから。しかしあさひはリーマンブラザーズが破綻した翌日に最安値を付けている。どの銘柄より早く底を打ち、あとはずっと右肩上がり。あさひホルダーにとって悪夢はほんの一瞬だったようだ。
王将フードサービス:営業利益 16.2%増益
2008年 始値 1,498円
9月 始値 1,450円
10月 始値 1,398円
安値 1,070円 9月始値から -26.2%(10/10)
終値 1,299円 底値から +21.4%
指標より2週間ほど早く底を打ち、その後はゆっくりと回復。年末には元の株価に戻っている。もし株主が1年間眠っていたら、リーマンショックなど何も起こらなかったに等しい事件だった。
ファーストリテイリング:営業利益30%増益
2008年 始値 7,550円
9月 始値 10,930円
10月 始値 10,750円
安値 7,750円 9月始値から -29.1%(10/27)
終値 10,260円 底値から +32.4%
2008年 終値 12,980円 9月始値から +18.8%
底を打ったのはほぼ指標と同時期。しかしそこからの回復は見事で指標を完全に置いてきぼりにしている。ホルダーの我慢は1か月に満たない。さすがユニクロ様だ。
スタートトゥデイ(ZOZO):営業利益248%増益
2008年 始値 215,995円
9月 始値 410,009円
10月 始値 296,004円
安値 175,113円 9月始値から -57.3% (10/28)
終値 189,505円 底値から +8.2%
2008年 終値 309,991円 9月始値から -24.4%
2008年にも凄まじい成長を遂げていたスタートトゥデイは株価の伸びも凄まじい。おそらくPERなどもとても高かったのだろう。評価が高い分、谷も深い。リーマンショック以前の9月初頭から比べると-57.3%の下落。復活も時間がかかっているが、年始に買ったホルダーにとっては比較的早くプラ転してただろう。
ニトリ:営業利益26.8%増益
2008年 始値 5,500円
9月 始値 6,000円
10月 始値 6,250円
安値 5,240円 9月始値から -12.6% (10/10)
終値 6,120円 底値から +16.8%
安定して業績を伸ばしていたニトリは下げ方も他の銘柄と比べて小さく、復活も早い。リーマンショックの氷河期の中、ニトリホルダーにとっては「冬は来たけど沖縄の冬」という感覚か。
4.考察
株価の数字はYahooファイナンスの時系列で調べた。分割とか増資とかも影響しているのか、不自然な数字もある。転記ミスや計算ミスもあるだろう。サンプル数も少ない。まあ個人がやっているブログなのでご勘弁を。根性のある人は是非自分で精査して、その結果を公開していただければ嬉しい。
サンプル数が僅かなのでエビデンスにはならない。でも以下のような傾向があるのかもしれない。
・企業の業績が良ければリーマンショックが来ても株価は戻る。そして更に上昇する。
・本当の下げは3日間ほど。セリクラで投げなければ爆死はない。致命傷で済む。
・指標が底を打つのは1.5ヵ月後だった。成長企業の底打ちはずっと早いものもある。
・評価が高い企業(PER等が高い企業)は復活に時間がかかる。
今回のコロナショックはいつ底を打つのか?復活はどうか?
もちろんわからないが、ひとつの目安として1.5ヵ月後という節目はあると思う。小中学生が長い春休みを終えた4月10日頃か。とりあえずそこまで我慢。指数よりずっと早く底打ちする銘柄もあるはず。
まだまだ先は長いかもしれませんが、企業の業績さえよければ株価は戻る。必ず春が来ると思えば、長く厳しい冬の間もパニックにはならずに済む。
リーマンショックの本、いろいろあります。
この機会にぜひ読んでみてください。