中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

きずなHD⑤・・バリュエーションについて①

夏休みに帰省した家族のイラスト

 1.中期経営計画と株価

きずなHDは2020年7月に中期経営計画を発表している。

3年後の2023年に売上 10,420百万円、当期利益 554百万円という計画を定めた。

 

f:id:nigatsudo:20210311204659p:plain

 

2020年5月期は売上7,676百万円、当期利益210百万円だった。

2021年3月11日の株価は1,532円。時価総額5,277百万円だから、PER 25.1で評価されている事になる。

2021年5月期の予想は売上8,400百万円、当期利益300百万円。予想PERなら 17.6倍だ。

 

17.6倍という予想PERをそのまま当てはめれば、2022年の3月頃に時価総額 9,750百万円になる。株価なら2,831円だ。

つまり1年で1.85倍だ。

年間パフォーマンス目標が+25%である私にとっては十分過ぎる。

 

株価なんてわからないけど、予想PER 17.6倍という評価はそれほど高いわけではないだろう。あくまでも中期経営計画が達成できれば、の話だけど。

というわけで本当に中期経営計画が達成できるかどうかを検証してみる。

まずは売上から。

 

 

2.売上の予想

きずなHDは直営ホール経営以外に、提携業者への葬儀委託事業も行っている。更に葬儀のネット集客や仏壇等のアフター商材販売も行なっている。

しかしこれらの事業の売上に対する占有率は2020年度で8.4%だ。力も入れていないし、成長もしていない。この部分はとりあえず無視して話を進める。

 

となると、きずなHDの売上は以下のように表すことが出来る。

 

売上 = 直営ホール数 ✕ 1ホールあたりの葬儀件数 ✕ 葬儀単価

 

たった3つの変数を検討していくだけでいい。

 

 

① 直営ホール数

まず現在までの直営ホール数の推移を見てみる。

 

f:id:nigatsudo:20210313161140p:plain

きずなHDは一度出店したホールを潰して撤退したことは、過去に一度もない。

 

2021年1月14日の2Q決算発表時の直営ホール数は90ホールだった。

3月14日までに3ホール追加して現在93ホールを営業している。5月まで2ヶ月半あるが、それまでに計画通り96ホールを達成するだろう。

 

f:id:nigatsudo:20210313161511p:plain

このペースで出店を続け、2023年5月までに116ホールを営業する予定だ。

いつも1年先の出店の開拓を行っているらしい。また新型コロナウイルスの影響で用地確保が楽になっていると、社長が動画で話していた。

ホール数の計画達成は問題ないだろう。

 

 

②葬儀件数

中期経営計画での葬儀件数の予想はこのようになっている。

 

f:id:nigatsudo:20210313162252p:plain

2020年5月期での実績では、1ホールあたり97.6件/年で葬儀を行っている。ひと月あたりに直せば8.1件だ。

2023年5月期では、1ホールあたり99.95件/年で葬儀を行う想定だ。ひと月あたりに直せば8.3件になる。そんなに無理な計画じゃないだろう。 

 

きずなHDは月次を発表している。これから1ホールの平均葬儀件数が計算できる。それをグラフにしたのが以下だ。

 

f:id:nigatsudo:20210313163019p:plain

1つのホールで毎月9件前後の葬儀が行われている。

想定葬儀件数である8.3件/月は無理のない数字だと考える事ができる。

 

 

③ 葬儀の単価

2023年5月期での売上計画は10,420百万円だ。

その中の4%程度、420百万円を直営ホール以外の売上だと想定すると、直営ホールの売上は10,000百万円となる。きずなHDの中期経営計画では、116の直営ホールでそれぞれ年間100件程度の葬儀を行う事になっている。

これを計算すると、葬儀の単価を86.2万円と想定している事になる。

 

単価についても月次で発表されている。グラフにしたものが以下だ。

f:id:nigatsudo:20210313164905p:plain

見ての通り、葬儀の単価はきずなHDの想定より早く低下してきている。

 

これは新型コロナ感染症の影響だろう。蜜を防ぐために葬儀の参列者数が減少しているのだ。9月頃に89.0万円とやや持ち直しているが、感染者数増加に従って再び下落し、1月の単価は80.7万まで下がっている。

 

葬儀の単価減少はリスクについての記事でも触れた。

単価86.2万円の想定は決して高くないが楽勝でもない、といった目標だろう。

 

 

 

④M&Aの影響

f:id:nigatsudo:20210311204659p:plain

もう一度中期経営計画の資料を見ると、一番下にM&Aについて書かれている。

 

「M&A効果は中計数値に織り込んでいないが、積極的に取り組む」

 

今回の2023年の売上についての計算は、M&Aを想定していない。

実際には2Qで岡山県備前屋という葬儀会社を買収している。この備前屋の3ホールについては、まだ直営ホールの数にも含まれていない。

 

M&Aの分を含めれば、2023年5月の売上10,420百万円の達成については全く問題ないと考えている。

 

 

 

3.まとめと次回予告

ホール数は予定通り達成、葬儀件数は予定より強気、葬儀単価は少しだけ弱気。

Totalで予想通りの売上の数字を達成できる。

そこにM&Aの分の数字がプラスされる。売上の達成については全く問題なし。

 

そんな風に私は考えている。

 

 

売上について書くだけで随分長くなった。

利益についての考察は次回に回すことにします。リスクの1つと考えていた人材確保と人件費についても考察しました。次回も読んでください。

 

 

 

タイトルだけで結構ウケた。 

 内容もなかなか刺激的。

「遺骨はゆうパックで送ることが出来る」って事はこの本で知りました。

 

こっちがパロディ元の本です。