手術や投資が上手くなりたい人のために③・・基本手技
1.手術が上手い人とは
前回、手術が上手い人とは以下の要素がそれぞれ高い人だと書いた。
① 縫合、結紮、剥離、切断などの基本的な手技が上手い
② 人体の立体的な構造への理解が深い
③ こんな時はこうすればいい、というような「引き出し」が多い
④ 出血時などの急な変化にも対応できる対応力を持つ
⑤ 大量出血などの危機にも落ち着いて対応できるメンタルを持つ
これらの要素を掛け合わせた数値が高い人は手術が上手い。
ならば手術が上手くなるためには、上記の要素をひとつひとつ高めていけば良い。
どうやってこれらの要素を高めていけばよいのか。それをこれから順番に書いていきたい。
あ、投資のことも書くので安心してください。
2.縫合して結紮する
まず一番最初の要素、
① 縫合、結紮、剥離、切断などの基本的な手技が上手い
を見ていこう。
手術で使う道具で一番メジャーなものはメスだろう。「いらすとや」での検索でもすぐに画像が出てきた。
しかし本当の手術ではイラストのようなメスはほとんど使わない。メスを使うのは一番最初の皮膚を切開する時くらいだ。
実際によく使う道具は、長攝子(「ちょうせっし」と読む。長いピンセット)、クーパー(ハサミの一種)、持針器(縫うための針を持つ道具)、電気メスなどだろう。これらの道具を使って何度も何度も切って縫合して結紮していく。
手術では、これらの作業を延々と繰り返す。
この基本的な手技が出来ないと手術はできない。どれだけ知識があっても、思った通りの場所を切ったり縫ったりする技術がないと役に立たない。
基本的な技術を高めるために、頭の良さは全く必要ない。
ひたすら馬鹿みたいに練習するのみだ。
私の場合、医師になって4年くらいは毎日のように練習していた。
古くなって使わなくなった持針器や長攝子やクーパーを、手術室の重鎮看護師さんにお願いして譲ってもらった。針や糸も使用期限切れで廃棄予定のものをいただいた。
探してみたらまだ押し入れに入っていた。ちょっと錆びてしまっているが、これらの道具を使ってひたすら縫合、結紮の練習をした。
縫うのは100円ショップで売っている台所用のスポンジとか、UFOキャッチャーで取れるぬいぐるみだ。毎日寝る前に最低30分、実に地味な練習を続けていた。
「少なくとも練習をしている時は前に進んでいる」
そう考えると悩みも少しは薄らぐ。自分にはセンスがない、などと無駄に悩まずに済む。日々小石を積み上げていき、天まで届く階段をつくっていくイメージだ。
BGMはFANKY MONKEY BABYSの「ガムシャラBOY」でお願いしたい。
3.投資における基本的手技とは
手術と比較すると、投資に必要な技術はぼんやりしている。
投資で必要な技術はマウスでのクリックのみだ。それさえ出来れば株式投資はできる。だからこそ基本的な練習をせずに気軽に始めてしまうのだろう。
運や地合いがよければそれでも儲かってしまう。しかし運も地合いもよい状態が永遠に続かない。いつか潮目が変わり、大きくお金を減らして退場していく。
長く投資の世界で生き残るためには技術が必要なんだ。
投資のスタイルによって基本手技に相当する技術は様々だろう。
しかし私のような中長期の投資家にとっては、決算書を読む技術こそが基本手技だと断言できる。
企業がどのようなビジネスを行っているのか、どのくらい儲かっているのか、今後の見通しはどうなのか。
そういう事を把握するためには、会計の知識やビジネスモデルの理解が必須だ。
会計もビジネスモデルも、もの凄く奥が深い。少しずつ身に着けていくしかない。
そのためには決算書を読まなくてはいけない。決算書や企業説明会資料などをたくさん読んで「読む技術」を身に着けていく。
日本には3691社の上場企業がある。それらの全てはネット上で決算書を読むことが出来る。練習の材料には事欠かない。
自分もそんなにたくさんの企業をフォローしているわけではないのだけど、もっと多くの企業を調べていく必要があるとは常に思っている。
しばらくこのシリーズが続きそうです。
あんまり人気はでないだろうと思っているんですが、重要な事ばかりなので。
そういえば 明後日が四季報の発売日ですね。
買う予定のある方はぜひ。