手術や投資が上手くなりたい人のために②
1.まず目的地を決める
目標は具体的である必要がある。
暖かい南の島に行きたい、と思った場合。
その希望を口にしただけで、誰かが旅行を企画してお金も出してくれて手続きも全てやってもらえる上に案内までしてくれる。
そんなアラブの王様のような恵まれた人も世の中にはいるのだろうけど、普通は自分でやる必要がある。
少なくとも「こんどの冬休みに」「パラオに行く」というように、具体的な目的地と日時を決める。そうじゃなければ行動に移れない。
「手術が上手い医者になりたい」という希望も、具体的な姿を描く必要がある。
「とにかく手術が上手くなりたい」というのは具体性に欠ける。行先すら明確じゃないのにどうやって行動に移すことができるのか。
という訳で、まず具体的な「手術が上手い医者」のイメージを描。
「ブラックジャックみたいな医者になりたい」
そうですか。普通のレベルに達していない医者がいきなりブラックジャックを目指して上手くいきますか?そもそもブラックジャックはフィクションですよ。
「年利100%程度をコンスタントに稼ぐ投資家になりたい」
・・・馬鹿なの?
上に例をあげたような目標は、目的地として「蓬莱山」を選ぶようなものだ。
せめて現実に存在する土地を目的地として選んでほしい。
夢のない話をするようだけど、化け物になる必要はない。
「普通のレベルで手術ができる医師」は十分に貴重だし、人を救える。
「年間 +15%のパフォーマンスをコンスタントに上げる投資家」は十分にすごいし、十二分にお金持ちになれる。
巨万の富を築いて自前のロケットで火星まで旅行したい訳ではないでしょう?
そもそも普通に切れる外科医にも普通に稼げる投資家にもなれていないですよね?
化け物になる方法は知りません。私は普通の人です。
そして、たとえ化け物になる方法を知っていたとしても、教えることができないんじゃないかと思います。
2.手術が上手い人とはどんな人か
では、目的地とそこまでの行き方を更に具体的なものに落とし込んでいこう。
「普通に手術が上手い人」とはどんな人なのか?どんなことが出来れば上手いと言えるのか?そのためにはどのような研鑽を積めばいいのか?
まずは「手術が上手い人」を構成する要素を分解して考えてみた。
駆け出しの頃に考えたのはこんな人だった。
① 縫合、結紮、剥離、切断などの基本的な手技が上手い
② 人体の立体的な構造への理解が深い
③ こんな時はこうすればいい、というような「引き出し」が多い
④ 出血時などの急な変化にも対応できる対応力を持つ
⑤ 大量出血などの危機にも落ち着いて対応できるメンタルを持つ
手術が上手い人とは、①から⑤までの要素を掛け算した合計値が高い人だ。
ポイントは、掛け算であることだ。
どれか1つでもゼロがあれば、その人の手術力はゼロだと思っていい。
3.投資が上手い人とはどんな人か
次に、投資が上手い人とはどんな人か?
「安定して良好なパフォーマンスを出す人が上手いんじゃないの?」
これは全くの正論。投資は結果がすべて。どれだけ世界経済動向や企業分析に長けた人でも、稼ぎがなかったら下手くそ投資家だ。
でもこれでは役に立たない。
「マラソンで優勝するためには一番先にゴールにたどり着ければいいんだよ。簡単じゃんw」
という言葉と同じくらい役に立たない。
だからもう少し因数分解してみる。良好なパフォーマンスを出せる投資家とはどのような人なのか?それを自分なりに考えてみた。
① 資金管理が上手い
② 会計やビジネスモデルなどの理解という基本的なスキルが高い
③ 経済全体の動向や投資家の感情・行動に対する理解が深い
④ こんな時はこうすればいい、というような「引き出し」が多い
⑤ 暴落、下方修正などの急変時の対応力がある
⑥ 暴落時でもひるまず、暴騰時でもおごらないメンタルを持つ
⑦ 運がいい
①から⑦までの掛け算の値が高い人が、優秀な投資家なんじゃないだろうか。
恐ろしいことに、投資は手術と違ってやろうと思ったその日からできる。ある程度のお金とクリックする能力さえあれば、サルでも稼ぐことができる(こともある)。
それが初心者を惑わせる。誰でも簡単にできると勘違いさせる。
そんな訳がない。
運よく地合いに乗って2年くらいは儲けることができるかもしれない。でも、コンスタントに儲けることは絶対に無理だ。上にあげた要素を高める努力が絶対に必要だ。
4.次回予告
なんかいつもより文章に使う言葉が荒っぽい気がする。
本業にも関わる事なので熱くなってしまうのかもしれない。まあ、あんまり気にしないで下さい。
次回、それぞれの項目に対する研鑽方法について書きます。
掛け算なのだから、ひとつひとつの値を上げていけばいいんです。そうすれば「手術力」も「投資力」も飛躍的に向上する。
そういう理屈です。
↓ この本は結構勉強になりました。駆け出しの外科系の医師がこのブログを読んでいる可能性などほとんど無いと思いますが紹介してみます。
それと、この本の値段を確認してみてください。医学書の中ではとても安い部類です。貧乏な研修医は泣きながらこういう本を買い込むんです・・。