中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

手術や投資が上手くなりたい方へ⑥・・・メンタル面について

退院した男性のイラスト

1.年末デスマーチ

今年の年末年始は9連休、という職場も多いと聞く。

12月27日に年内の仕事を終えれば次に出勤するのは1月6日。うらやましい限りだ。

 

しかしカレンダーの休日が減ろうが増えようが病人の数は変わらない。私のような医療従事者の場合、カレンダーに記された休みのマークが増えれば増えるほど前後の平日は仕事が苛酷になる。

その上病院の職員に流行した風邪が年末年始の労働人口を減らした。その結果、生き残った人間の労働強度を更に上げた。

 

そんなわけでブログを書く体力を残すことができず、更新が滞った。

ちょっと落ち着いたので、ようやく以前の記事の続きを書きます。反響は相変わらずほとんどありませんがw。

 

 

2.手術中の出血について

手術が上手い人とは以下の要素がそれぞれ高い人だと書いた。

① 縫合、結紮、剥離、切断などの基本的な手技が上手い

② 人体の立体的な構造への理解が深い

③ こんな時はこうすればいい、というような「引き出し」が多い

④ 出血時などの急な変化にも対応できる対応力を持つ

⑤ 大量出血などの危機にも落ち着いて対応できるメンタルを持つ

 

今回は⑤の、危機にも落ち着いて対応できるメンタルについて書きます。

 

 

手術中の出血は怖い。

人間はたくさん出血すると死んでしまうが、手術室で人が亡くなることはほとんどない。手術中は輸血の準備もされているし、様々な薬品がすぐに投与できるように用意されている。手術中に亡くなる可能性より道を歩いていて交通事故で亡くなる可能性の方がずっと高い。

それでも術者にとって出血は怖い。出血は本能的に怖いもの、なんだろう。

 

わかりやすい場所の血管が切れて出血するのは怖くない。直ちに結紮すればすぐに止血する。しかし出血点が分からない場合、血を止めるのは難しい。すぐに出血点を見つける必要があるが、なかなか見つからない事もよくある。そしてあふれてきた血そのものが術野を覆い隠して、ますます出血点が分かりにくくなる。出血点らしき場所を縫合して止血しようとすると、逆に周囲の血管や臓器を傷つけてしまう事もある。さらに出血し出血点が分かりにくくなって、泥沼にはまる。

 

そんな時、執刀医は全身に汗をかく。心拍数が上昇し、呼吸が浅くなる。瞳孔が開き、喉がカラカラになる。全身の筋肉が無意識に収縮し、次の日の肩こりと全身筋肉痛が約束される。

 

突然の大出血を起こしたとき、多くの駆け出しの医者は硬直して体が動かなくなる。しかしその間も出血は続く。状態はどんどん悪くなる。

ここまでの状況に陥ると、自力で立て直すのは大変困難だ。

だいたいは同じ手術に入っている先輩の医者がなんとかしてくれるのだけど、その経験はトラウマになる。長い間その医者を苦しめることになる。

だから出血は怖い。

 

 

3.市場全体の暴落、あるいはストップ安

外科医に出血の怖さがあるように、投資家にも暴落の怖さがある。市場全体が暴落する事もあるし、集中投資している株のストップ安というものもある。

 

毎日毎日株価が下がり、月給以上のお金が1日ごとに減っていく。これもなかなかつらい経験だ。1ヵ月分の給料が毎日消えている中で、その30分の1の給料を稼ぐために一日中仕事をするんだ。なんだか人生の意味を考えたくなってくる。

手術中の出血なら誰かが止血してくれるかもしれない。でも投資は自分で全て対応するしかない。個人投資家はすべての判断を自分自身で下さなくてはいけない。

 

ようやく株価が底を打った時、我慢できずに売る。

売った場所が一番の底値で、その直後に株価が反発して大きく戻す事もよくある。

 

売らなければ損はずっと少なくて済んだのに・・。

この往復ビンタで更に精神的なダメージを食らう。もう株の事なんて見るのも嫌になる。そうやって退場していく。

株をやって破産して退場する人は、多分、とても少ない。このような精神的なダメージによって投資が嫌になって退場する人がほとんどだ。

 

 

4.メンタルを鍛える?

出血にも大暴落にも耐えられるメンタルを持つにはどうすればいいか?

瞑想したり、滝に打たれたり、イメージトレーニングをしたりすればいいのか?

 

 

私は、メンタルを鍛えるのは難しいと思っている。

精神力に頼るのは悪手だ。太平洋戦争中の日本軍と同じだ。

 

追い詰められた主人公が気合と根性で逆転して敵を打ち負かす。そういう状況は少年ジャンプの中で、読者として楽しむ程度にとどめておく。

精神力に頼るような状況になる前に、知力や体力をつかってそれを回避しよう。

 

精神力を鍛えるのは大変だ。知力や体力を鍛えるのも大変だけど、その方法が確立されている。それなら事前準備がしやすい知力や体力を鍛えるべきじゃないだろうか?

 

手術なら術前に出来る準備をしっかりしておく。スキルを磨き知識を深め、術前検査の画像を読み込んでよくよくイメージした後で手術に向かう。そうすれば大量出血が起きる事態も減るだろうし、出血した時も止血しやすくなる。

わざわざ大量出血という死地に踏み入れる必要なんてないんだ。

 

 

株なら投資対象の企業をよく調べる。暴落の原因について冷静に考え、それが一時的なものなのか恒久的なものなのか判断する。

一時的なものだと判断できたのなら、そのまま売らずに持ち続ければいい。かなりの確率で株価は戻る。

恒久的な原因で株価が下がったと思うならとっとと売る。投資に全勝は存在しない。すべての投資が上手くいく事などない。桶狭間の戦いで圧勝した織田信長の軍にも戦死者はいる。全ての兵が勝つわけじゃない。全体で勝てばいいんだ。

 

そんなスタンスで投資や手術を続ければいい。精神だけを鍛えるのは難しい。

続けていればそのうち経験も増えるし、腹も据わってくるから。

 

 

 

 

↑ メンタルを鍛えるより筋肉を鍛えましょう、という本です。

筋肉がつけばメンタルも自然と鍛えられる、という筋トレ至上主義、筋トレ万能主義者のお言葉が書かれています。未読の方は是非。