コロナショック後の銘柄④ 明豊ファシリティワークスはBuy
1.明豊ファシリティワークスを買った理由
明豊ファシリティワークスを買った理由も散々書いた。以前の記事を読まれていない方はまずこちらを読んでください。
全部で6回に渡って長々と書いている。
これらを全部読むのは大変なので、買った理由を理由を箇条書きにする。
・コンストラクションマネジメント(CM)は国策の後押しもあり、今後伸びていく
・明豊ファシリティワークスは一部上場、公共事業におけるCMのシェアは50%
・実績と信用がある企業に仕事を任せるのは公共事業を発注する公務員の本質。これまでの実績と信用が競合他社との「堀」になっている。
・建築会社は利益相反になるのでCM業務に参入できない。これも堀。
・仕事はいくらでもあり(予想)、むしろそれを実行する人材不足が心配
・しかしノウハウの蓄積、社員の生産性がしっかりとマネジメントされており、ブラック企業と真逆。人材確保についても不安がない。
箇条書きにすると説明が不足しているような気がする。かなり私の予想や妄想も含まれている。
ピンと来ない方は是非以前の記事を読んでください。もちろん投資は自己責任だし、書いている内容については何一つ保証できませんが。
2.株価の推移
ここ一年間の明豊ファシリティワークスの株価チャートは以下の通り。
私が最初に購入したのは2019年9月から11月の間。平均購買価格は604円だった。
その後株価は順調に上昇し、コロナショックで暴落した。現在は500円前後でウロウロしている。
3.コロナショック後の明豊ファシリティワークスの業績は?
新型コロナ感染症によって不景気がやってくる可能性は十分にあるだろう。その時の明豊ファシリティワークスの業績はどうなるだろうか?自分なりに考えてみた。
まず、1年以内の短期間の業績予想をしてみる。
これはほとんど影響を受けないと考えている。CM事業は1年以上かけて行う仕事が多い。本社ビルの設計から完成までを1年以内に全て終えるのは無理だ。武漢の病院じゃあるまいし、そんなに早く本社ビルを建ててもいいことはない。
次の決算では3月31日までの数値が発表される。コロナショックによる売上減少は考えられない。
ロックダウンによって出社できず、仕事そのものが進んでいないのではないか?
そんな疑問を持つ方もいるかもしれないが、それは全然心配していない。
こんなリリースがある。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応方針について│preview.meiho.co.jp│明豊ファシリティワークスのコンストラクション・マネジメント
黄色のマーカーでラインを引いたように「完全なテレワークで業務を実施することが可能な体制を構築しており」とある。
ホルダーの方なら知っていると思うが、明豊ファシリティワークスのデジタル化は元々素晴らしいレベルに達している。
以前よりクラウド上でプロジェクトの進捗状況、社員の生産性などが管理され、可視化されてた。新型コロナが蔓延するずっと前からいつでもテレワークが可能な体制になっていたわけだ。コロナ後も仕事はほぼ通常通り進んでいると考えられる。
では、もっと長期間ではどうだろうか。不景気で業績が失速する可能性は?
上記の円グラフにあるように、明豊ファシリティワークスの受注比率の25%は公共分野だ。「鉄道、学校、その他」に含まれる「学校」も、公共分野に近い。この部分は不景気によって仕事が減る可能性は低いだろう。むしろ政府の景気刺激策によって公共工事が増える可能性も高いと思ってる。
一方、民間分野の建設は不景気で減少するだろう。
テレワーク中心で仕事のやり方が変わって、それによるオフィス移転の仕事が増えるという可能性もある。でもそんな根拠のない事を理由に株は買えない。
しかしそれでも明豊ファシリティワークスの仕事そのものは減らないと考えている。
発注者側としては、明豊ファシリティワークスにCMを依頼することによってコストダウンが図れる。担当者の業務も楽になるし、完成した建物の質も上がる。発注者としてはCMを依頼しない理由がない。
それなのに22.6兆円のCMが関与しうる建築費のなかで、実際CMの介入を受けている部分は3兆円程度、全体の13%に過ぎない。まだCMというものの存在が知られていないだけで、今後このマーケットはさらに拡大していくと考えている。
不景気によって一時的に建設が半分になっても、CMのマーケットは拡大するだろう。よって明豊ファシリティワークスの業務が落ち込むことはないと考えている。
4.明豊ファシリティワークスは買った
マーケットの拡大余地十分。競合他社との間の堀も健在。顧客がCMを依頼するメリットは不景気で更に増大する。
そんな企業の株価が暴落している。
という訳で、追加して買った。420円の時に買えたのは自分にとって出来すぎだったと思う。その時の株価で配当利回り5%を超えていたし、予想PERは9倍を切っていた。
成長余地が十分ある企業でこの値段はいくらなんでも安い。そう思って20%ほど買い増しした。
かなり確信を持って買ったのだけど、今後の事はどうなるか分からない。
まずは5/15の4Qの発表を待つ。
不景気について勉強しようか、と思って読んだ本。とても面白かった。
緊縮財政をやりすぎると国民の失業率や疾病率や自殺率が上がって、それを回復させるためには更に多額のお金がかかってしまう、という話をDataで説明しています。
コロナショック後の銘柄③ マークラインズはHold
1.マークラインズはHold
気づけばマークラインズの決算が明日に迫っていた。
この会社については書くことがあまりない。Holdを続けています。
でも決算後に「思ったとおりになりました」と、後出しジャンケンになるのは嫌だ。という訳で、書くことは少ないけど先に書いておきます。
2.情報プラットフォーム事業の今後
マークラインズは情報プラットフォーム事業が売上の73.4%、利益の84.3%を占めている。その利益率は驚異の54.9%だ。
この情報プラットフォーム事業は、有料会員から1ヶ月ごとに使用料を徴収するビジネスだ。会員数が増えれば増えるほど、追加のコスト無しでその情報使用料がそのまま利益になる。KPIは当然、会員として契約した企業の数になる。
その企業の増加数が、以下のグラフだ。
月によってブレはあるが、だいたい毎月15社~45社増加している。
新型コロナによるパンデミックが起きた3月も増加している。当時いちばん酷かった中国ですら、3月の1ヶ月間で5社増えていた。
過去にはリーマンショックの時に有料会員数が減ったという記録がある。今回のコロナショックが何年も続くようであれば減少もありうるが、まだそれを心配する状況ではない。このような状況下こそ、ストックビジネス最強なんだと思う。
3.その他のビジネス
情報プラットフォーム事業以外には、コンサルティング、人材紹介、市場予測などの事業を行っている。それぞれ利益に占める割合は5.0%、3.2%、2.7%といったところだ。
これらのビジネスはストックビジネスではない。不景気になれば人材紹介などは減少するだろう。コンサルティングは逆に増えるかもしれない。そのあたりはよくわからないが、大勢に影響するほどの数字ではないと思う。
4.今後について
マークラインズは利益率が高く、安定しており、すごくいい企業だ。決算前に不安になったことはほとんどない。
しかし、いい企業だから投資先としても良い、とは限らないのが株式投資の難しいところ。もっと上昇しそうな企業に乗り換えたほうがいいのかもしれないとも思うし、バフェットのように永久に持ち続けたいとも思う。
とりあえず明日の決算は持ち越す。
こんな安値で手放す気にはなれない。
↑ 著者である山本潤さんの考え方はとても勉強になる。
私はもう買いました。まだ 届いていないので読んではいませんが、山本潤さんなら面白くて勉強になるのは間違いない。
コロナショック後の銘柄② 日本リビング保証はHold
1.日本リビング保証の株主がツラい話
日本リビング保証はかなり前から持っている。
なぜ買ったのか、どうして持ち続けているのか、会社の魅力は?
そんな内容を延々と書き続けた記事があるのでぜひ読んでください。
しかし私にとって日本リビング保証を持ち続けるのはなかなかハードな経験だった。買ったのが2018年7月~8月頃だったのだから。
チャートを見ての通り、凄まじいジャンピングキャッチだった。その後1年半の含み損に耐え、2018年12月の急落にも耐え、ようやく買値を上回ったと思ったらまたコロナショックで叩き落される。そんな株を持ち続けている。しかも運用資産の10%程度も。
このような資産運用を真似するのは正直オススメしません。ツラいです。
2.コロナショックで日本リビング保証のビジネスはどうなるか
新型コロナによる不景気が長引けば、住宅の着工件数は減少するだろう。
しかし日本リビング保証は「保険会社」であり、建築会社ではない。新築住宅の着工が減っても売上はそんなに減少しないと考えている。
例えば不景気で新車が売れなくなった時、自動車保険の契約数が減るなんてことはあるだろうか?新車に買い換えるお金がない人が運転をやめるだろうか?古い自動車を乗り続けるだけだと思う。
実際過去30年間で新車の販売数は減っているが、乗用車数は増加している。
国内新車販売数のピークは1990年の777万台だが、2018年には527万台まで減少している。しかし国内保有台数は1990年の5,527万台から2018年の7,794万台へ、3割も増加している。新車の販売台数と自動車保険の契約数は、全く関係がない。だから不景気と自動車保険の契約数も関係ない。
【くるま問答】新車販売は減っているのに保有台数は約30年で40%増加。その理由とは!? - Webモーターマガジン
自動車ではなくて住宅ではどうか。
住宅の地震保険と火災保険の加入率のグラフがある。ちょっと字が読みにくいので、ちゃんと読みたい方はリンクをクリックしてください。
https://www.mof.go.jp/about_mof/mof_budget/budget/fy2017/2017tokkai_sankou.pdf
見ての通り、不景気と火災保険や地震保険も全く関係していない。むしろバブル景気が膨らんでいる1980年代後半に地震保険の加入率が下がっているのが面白い。神戸や東日本の震災後に地震保険の加入率が上がっているのは当然だろう。不安は人間を保守的にするし、高揚は人間を楽観的にする。
不景気で住宅の設備保証の需要が下がるというのは、ちょっと考えにくい。
3.日本リビング保証の「前受金」という緩衝作用
更にもうもう一点、前受金という緩衝作用がある。
以前の記事で何度も書いているので詳しくは繰り返さないが、日本リビング保証の会計は特殊だ。保証料が10年一括で払い込まれても、売上や利益は1/10ずつしか計上されない。
この特殊な会計方式が緩衝剤として働く。よって、(そんな事はありえないが)実際の売上がゼロになったとしても、数年間は会計上の売上と利益が計上される。一時的なビジネスの失速は、日本リビング保証の決算の数字にほとんど影響しない。
4.解約のリスクは
10年間の保証契約を結んでいてもお金に困ったオーナーが解約するのではないか?そんな疑問点もあるだろう。それについてもIRに確認してみた。
その結果、以下のような回答を頂いた。
「過去の解約の理由のほとんどがオーナーの不動産の売却に伴うもの。設備保証の分野における競合企業はほとんどなく、他社への乗り換えはオーナー側の金銭的なメリットがない。実際、過去にも解約はほとんどなく、解約率は0.1%にも満たない。そもそも解約したところで数万円しか戻らないので、住宅オーナー側の金銭的メリットはほとんどない。新型コロナによる影響で解約が増えるというは想定していない。」
5.まとめ
売る理由がない。
別に株価下落で感情的になっている訳ではない。本当に売る理由がない。
2020/5/1現在の日本リビング保証の時価総額は55.6億円。それに対して年間の営業キャッシュフローが9億円程度。まだまだ成長の余地もある。売る理由がどこにある?
含み損がツラい?
それは売る理由になりません。
次の決算は5月18日です。
コロナショック後に入れ替えた銘柄、そのままの銘柄① 吉野家HD
1.吉野家HDを買った理由
このブログでは書いたことがないが、私は吉野家HDの株主だ。
現在も優待券目的で株を保有している。コロナショック以前は400株ほど持っていた。買ったのはポケ丼のキャンペーンが始まったころだ。
普段、吉野家の店内にいる客はおじさんがほとんどだ。なのにその日は家族連れが何組もいる。子供たちはみんなポケモンのモンスターボールを模したどんぶりで牛丼を食べている。どうやらポケ丼というキャンペーンを行っているらしい。小さなポケ丼を一人で3杯注文して食べている30歳くらいの男性もいた。
これは明らかに異変だ。
調べてみると、ポケ丼のキャンペーンは12/19から始まったばかり。
第一弾は3月で終わるが、第四弾まで計画されているようだ。貰えるフィギュアは6種類だが、どう考えてもマイナーなポケモンばかり。ピカチュウなどのメジャーなポケモンのフィギュアは第二弾以降に控えているのだろう。
それでも店舗で客の入りの増加が実感できるほどの人気だ。
客層がおじさんばかりだった吉野家が、ポケ丼を使って新たにファミリー層を取り込む。なかなかいい戦略だ。
更に調べると、吉野家には新しく優秀なマーケッターが入社したようだ。この人がポケ丼を含む様々なキャンペーンを企画しているのだろう。
売上がどのくらい上がるか、その時にどのくらい利益が伸びるか、米国産牛肉の購入量はどのくらいで、為替によってどのくらい利益が影響を与えるか。自分なりにいろいろ計算してみた。
どうやら行けそうだ、と思って吉野家HDの株を購入した。
購入時の株価が「安い!!」と確信をもって判断できるほど安くなかった。同じ評価基準で将来の利益が評価されるのであれば、株価は上昇するだろう。株価上昇には「同じ評価基準であれば」という前提条件が必要だった。だからそれほど多く買うことができなかった。
2.ポケ丼のその後
ポケ丼の第一弾は3月まで続くはずだった。
しかし、予想を超える売れ行きでフィギュアの在庫が切れてしまった。わずか10日程度、12月の終わりにはキャンペーンが中止されてしまった。
なんという機会損失。
しかしキャンペーンの効果がものすごく高いことは証明された。品切れの反省は次回に生かせる。第二弾はそのような弾切れを起こしたりしないだろう。その時こそ売上も利益もドカンと上がるはずだ。ゆっくり第二弾の開始を待てばいい。そう思っていた。
しかしコロナショックが起きた。吉野家HDの株価も下がった。
その時の株価下落がひどすぎたので、ポートフォリオの中での比重が小さい吉野家HDにはそれほど注視していなかった。吉野家HDの株はそのまま売ることもなく放置されていた。
3.成長のストーリーは崩れた
新型コロナの影響はどこまで続くか分からない。
吉野家HDは、テイクアウトを前面に押し出して苦境を乗り越えようとしている。飲食店にしては健闘しているようだ。狂牛病騒ぎで米国産牛肉が輸入できなくなった2004年のエピソードを思い出す。あの時も吉野家は苦しみながらもピンチを乗り越えた。
しかし、当初のストーリー「ポケ丼でファミリー層を顧客として取り込み、売上と利益が上がる」というのは実現困難だろう。
Stay Homeがこれほど叫ばれているご時世で、ポケ丼キャンペーン第二弾が実施されると思えない。成長のストーリーは崩れてしまった。
当初のストーリーが崩れてしまったのに株を持ち続けるのはおかしい。
私は「現状維持バイアス」に陥っていた訳だ。
気付いた後に、優待分を残して売却した。
4.終わりに
まずストーリーが説明しやすい吉野家HDについて書いてみました。
売った銘柄、そのままの銘柄、新しく買った銘柄、いろいろあります。少しずつ書いていく予定ですのでよろしければ読んでください。
行動経済学の入門書としてはこの本もよかったです。
前提条件が変わったらポジションは変わる
1.株価上昇のストーリー
私は株価が上昇することを期待して株を買う。
株価が上昇する理由は様々だが、なんらかの理由があって株価は上がる。業績が良くなったり、どこかの企業に買収されるという噂が流れたり、自社株買いのIRが発表されたり、チャートがきれいだったり、カリスマ投資家が煽ったり。
理由はいろいろだけど、株価上昇にはストーリーがある。そのストーリーを自分なりに考えて、投資家は株を買う。
例:今年の夏は暑そうだ。
→ 暑い夏には冷たいビールが美味しい
→ 今年の夏はビールの売り上げは伸びるだろう
→ 冷夏だった去年と比較すれば売り上げも利益もよくなるはずだ
→ ビール会社の株は上がるんじゃないか?
→ 買った
誰でも思いつくような単純なストーリーを書いてみた。
こんな感じで、私は株価上昇のストーリーを描いてから株を買っている。もちろんストーリーだけに頼ることはせずに色々調べるが、ストーリーを描くことなしで株は買わない。
2.前提条件の崩壊
上に挙げた例では「今年の夏は暑い」というのがストーリーの前提条件だ。予想に反して雨ばかりの冷夏がやってきた場合、前提条件は崩壊しストーリーは破綻する。涼しい夏にはビールが売れず、ビール会社の業績は上がらず、よって株価も上がらない。
しかしストーリーが変化してもつい株を持ち続けてしまう事はよくある。
・今年の夏は冷夏だけど発表された新商品のバタービールは美味そうだ、きっと売り上げが伸びるに違いない。
・指標的には安いんだから、多少冷夏でも売る理由にならない。
・売り上げは伸びなくてもチャート的にダブルボトムを形成してる。これから上がる。
・私が売ると上がる気がする。それは気分的にとても嫌だ。
・せめて含み損がなくなって、買値まで戻るまで売らない。
・優待として届く缶ビールは魅力的。優待が続く限り持ち続ける。
・俺はこのビールが好きだ。株主として応援したい。
一度買った株は愛着が湧く。買う前も、買ってからもその企業についてはよく調べた。調べるほどに愛着は深まる。良い部分は目立つし、悪い部分は見ないようにしてしまう。
「今年の夏は暑いはず」という前提条件は崩れた。株価上昇のストーリーは成り立たなくなった。にもかかわらず、何故か同じ株を持ち続けてしまう。
こういう心の状態のことを「現状維持バイアス」というけど、言葉は知らなくてもその感情は理解できるのではないかと思う。
現状維持を続けた結果、 運よくその後に株価が上昇することもあるかもしれない。しかしそれはただの運。投資家の実力ではない。運に頼ってお金が増えるのを期待しても、多分無駄だ。
3.新型コロナウィルス感染症は多くの前提条件を破壊した
新型コロナウィルスのパンデミックによって世の中はずいぶん変わった。
ダウや日経平均がいくら戻っても、世界の形はそう簡単に元に戻らない。ワクチンと治療薬が普及するまで、人々の行動様式は変わらないだろう。
人々の行動が変わればお金の流れも変わる。パンデミック以前に成り立っていた前提条件とストーリーは、その多くが崩壊しただろう。
という訳で、私もポートフォリオの入れ替えを行っている。
そんな話をこれから書いていこうと思っている。
文中にある「現状維持バイアス」などの不思議な心の動きについて書かれている本です。行動経済学という学問のジャンルになるのだけど、なかなか面白いです。
日本リビング保証 「スイッチゴールド」って何?
1.日本リビング保証の謎のリリース
2020年3月19日、日本リビング保証から「スイッチゴールドを始める」というリリースがあった。
「当社は、100%子会社であるリビングポイント株式会社を通じて、貯まったポイントが金(ゴールド)に交換できる新サービス「スイッチゴールド」を2020年7月(予定)より提供開始いたします。」
このリリース、いまいち意味がわからなかった。
貯まったポイントとは「おうちポイント」の事だろう。それをゴールドに交換出来るようになるのか?おうちポイントは「工務店やハウスメーカーがリフォーム需要を囲い込みするための制度」だったんじゃないのか?それをゴールドに変えてしまったら制度そのものの意味がなくなってしまうんじゃないのか??
そんな疑問が湧いてきた。
これまで日本リビング保証が打ってきた様々な施策は理解しやすいものが多かった。つい最近リリースされていた「リアルサービス拠点の開設」も「金融機関との連携」も、成長に向けた一手としてすぐに理解できた。
しかし今回のリリースは意味がわからなかった。
だからIRに聞いてみた。
2.IRに聞いてみた
以下のような内容でメールした。
1⃣ おうちポイントは工務店がリフォーム需要を囲い込むためのシステムだと考えているのだけどその理解であってますか?
2⃣ そうだとすれば、おうちポイントをゴールドに替えられるシステムは工務店からクレームがくるのでは?
その回答は以下のようだった。
1⃣についてはその通りです。その理解であっています。
2⃣については問題ないです。なぜなら、スイッチゴールドは「うちもキーピング」のポイント活用先として導入される制度だからです。
なるほど。それなら理解できる。
という訳で「うちもキーピング」の内容について書く。
3.うちもキーピングとは何か
これまでさんざん書いてきたように、日本リビング保証のメインのビジネスはBtoBだ。つまり商売の相手は、全国の工務店やハウスメーカーなどの企業だ。
それに対し「うちもキーピング」はBtoCのビジネスだ。
建てて年数が経った家は工務店やハウスメーカーからのサービス期間が切れてしまう。そのようなマイホームのオーナーに対し、リフォームや点検、アフターサービスを提供するのが「うちもキーピング」だ。2019年8月から始まった新サービスなので、そんなに重要ではないと判断し、ブログの記事には書かなかった。
この「うちもキーピング」において、個人が積み立てたお金の活用先として「スイッチゴールド」を導入したとのことだ。
「うちもキーピング」の積み立てたお金の有効期限は15年だ。もともとはリフォームや修繕の原資として使用されるためのお金だが、15年も経てば環境も変わる。家が自然災害でまるごと消失してしまうかもしれないし、人生の予定が変わって海外に引っ越してしまっているかもしれない。
そんなとき、ポイントをゴールドに替えることができれば損をしない。
更に15年間という長い間のインフレのリスクヘッジとして、ポイントをゴールドに替えておくことは有効だろう。
スイッチゴールドとはそのようなニーズに応えるための制度らしい。
4.まとめと感想
・スイッチゴールドは日本リビング保証の本業であるBtoBの業務とは関係ない
・2019年8月から始まった新規事業であるBtoC「うちもキーピング」に関連する制度だ
開始してから一年も経過していない新規事業に関する制度にしては大がかり過ぎる気もする。なんだか先走っている気がしないでもない。
でもこれまでのビジネスの根底をゆるがすような話じゃないので安心できた。
また、今回の問い合わせメールの返信は次の日に来た。問い合わせに対するIRのレスポンスが良いのも、ホルダーとしては嬉しい。
そんなわけでのんびり握っていくことにしています。
リーマンショックはどのくらい我慢が必要だったか
1.投資家、南さんのブログ記事
まずはこのブログ記事を読んでほしい。
著名な投資家さんのブログなので、既に読んでいる方も多いと思う。
2020年1月18日に書かれたブログ記事。
記事のタイトルは「リーマンショックは怖いか?」。
2008年はリーマンショックが起こり、年初15,156円だった日経平均が10月の安値6,995円まで下がった。記事はその1年間の企業の業績と株価の連動性を検証している。
結論は以下の一文でまとめられている。
「業績さえ良ければ下落相場にも耐えられる。銘柄選択を誤らなければ、下落相場を必要以上に恐れることは無い、という結論に至りました。」
ちゃんと成長している企業を選んで株を買えば、リーマンショックすら怖くないという事だ。コロナショックの渦中で実にタイムリーな記事。投資家必読だろう。
しかし、リーマンショックでは業績のよい企業の株も一時は下落していた。
首尾よく業績のよい企業を選んで株を買った投資家は、一体どのくらいの株価下落に耐えればよかったのか?そしてその期間は?気になったので調べてみた。
2.調査方法
南さんがブログで上げていた業績のよい企業の2008年初頭から年末までの株価を、Yahooファイナンスの「時系列」で調べてみた。この方法で調べることができなかった銘柄は除いた。各企業の営業利益の伸び率は南さんのブログに書いてある数字をそのまま使わせて頂いた。
3.結果と感想
リーマンショックは2008年9月15日、リーマンブラザーズHDが破綻したことをきっかけに起きた。その2008年1月の始値、9月および10月の始値、最安値、10月の終値、12月の終値を調べてみた。月足のローソク足チャートでイメージしてもらえればいいと思う。以下のようなフォーマットでまとめた。
銘柄:2008年の営業利益の増加率
安値 (ショック後の最安値)9/1のからの変動率(最安値を付けた日)
2008年 終値(2008年12月30日の終値) 9/1からの変動率
まずは指標からみていく。
2008年 始値 15,156円
9月 始値 12,937円
10月 始値 11,397円
安値 6,995円 9月始値から -45.9% (10/28)
終値 8,577円 最安値から +22.6%
2008年 始値 1,461円
9月 始値 1,242円
10月 始値 1,099円
安値 722円 9月始値から -41.9% (10/28)
終値 867円 最安値から +20.1%
日経平均もTOPIXも、9月1日の段階で年初から既に15%ほど下げている。9月15日にリーマンブラザーズが破綻し、その後の最安値は1.5か月後の10月28日だ。底値からすぐに20%ほどリバっているが、それ以上は年末まで回復していない。
10/28の底で投げた(あるいは投げさせられた)投資家が3日後にリバった株価を見て更に打ちひしがれた状況が目に浮かぶようだ。
しかしその年が終わっても完全に回復することなく、株価は底練りを続けていた事がわかる。改めてみると酷さが実感できる。
次に業績の良かった企業を見ていこう。
大黒天物産:営業利益30%増益
2008年 始値 695円
9月 始値 1,177円
10月 始値 1,200円
安値 879円 9月始値から -25.3%(10/10)
終値 1,198円 底値から +36.3%
リーマンブラザーズが破綻してから底値を付けたのは25日後。 しかし10月の終わりには既に値が戻っている。投資家の我慢は1か月間で、その後は順調な株価の伸びを楽しめたようだ。
あさひ:営業利益79%増益
2008年 始値 1,280円
9月 始値 1,900円
安値 1,474円 9月始値から -22.4%(9/16)
終値 1,680円 底値から +14%
指標や他の銘柄が最安値を付けたのは10月に入ってから。しかしあさひはリーマンブラザーズが破綻した翌日に最安値を付けている。どの銘柄より早く底を打ち、あとはずっと右肩上がり。あさひホルダーにとって悪夢はほんの一瞬だったようだ。
王将フードサービス:営業利益 16.2%増益
2008年 始値 1,498円
9月 始値 1,450円
10月 始値 1,398円
安値 1,070円 9月始値から -26.2%(10/10)
終値 1,299円 底値から +21.4%
指標より2週間ほど早く底を打ち、その後はゆっくりと回復。年末には元の株価に戻っている。もし株主が1年間眠っていたら、リーマンショックなど何も起こらなかったに等しい事件だった。
ファーストリテイリング:営業利益30%増益
2008年 始値 7,550円
9月 始値 10,930円
10月 始値 10,750円
安値 7,750円 9月始値から -29.1%(10/27)
終値 10,260円 底値から +32.4%
2008年 終値 12,980円 9月始値から +18.8%
底を打ったのはほぼ指標と同時期。しかしそこからの回復は見事で指標を完全に置いてきぼりにしている。ホルダーの我慢は1か月に満たない。さすがユニクロ様だ。
スタートトゥデイ(ZOZO):営業利益248%増益
2008年 始値 215,995円
9月 始値 410,009円
10月 始値 296,004円
安値 175,113円 9月始値から -57.3% (10/28)
終値 189,505円 底値から +8.2%
2008年 終値 309,991円 9月始値から -24.4%
2008年にも凄まじい成長を遂げていたスタートトゥデイは株価の伸びも凄まじい。おそらくPERなどもとても高かったのだろう。評価が高い分、谷も深い。リーマンショック以前の9月初頭から比べると-57.3%の下落。復活も時間がかかっているが、年始に買ったホルダーにとっては比較的早くプラ転してただろう。
ニトリ:営業利益26.8%増益
2008年 始値 5,500円
9月 始値 6,000円
10月 始値 6,250円
安値 5,240円 9月始値から -12.6% (10/10)
終値 6,120円 底値から +16.8%
安定して業績を伸ばしていたニトリは下げ方も他の銘柄と比べて小さく、復活も早い。リーマンショックの氷河期の中、ニトリホルダーにとっては「冬は来たけど沖縄の冬」という感覚か。
4.考察
株価の数字はYahooファイナンスの時系列で調べた。分割とか増資とかも影響しているのか、不自然な数字もある。転記ミスや計算ミスもあるだろう。サンプル数も少ない。まあ個人がやっているブログなのでご勘弁を。根性のある人は是非自分で精査して、その結果を公開していただければ嬉しい。
サンプル数が僅かなのでエビデンスにはならない。でも以下のような傾向があるのかもしれない。
・企業の業績が良ければリーマンショックが来ても株価は戻る。そして更に上昇する。
・本当の下げは3日間ほど。セリクラで投げなければ爆死はない。致命傷で済む。
・指標が底を打つのは1.5ヵ月後だった。成長企業の底打ちはずっと早いものもある。
・評価が高い企業(PER等が高い企業)は復活に時間がかかる。
今回のコロナショックはいつ底を打つのか?復活はどうか?
もちろんわからないが、ひとつの目安として1.5ヵ月後という節目はあると思う。小中学生が長い春休みを終えた4月10日頃か。とりあえずそこまで我慢。指数よりずっと早く底打ちする銘柄もあるはず。
まだまだ先は長いかもしれませんが、企業の業績さえよければ株価は戻る。必ず春が来ると思えば、長く厳しい冬の間もパニックにはならずに済む。
リーマンショックの本、いろいろあります。
この機会にぜひ読んでみてください。