中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

前提条件が変わったらポジションは変わる

庭師・植木職人のイラスト

1.株価上昇のストーリー

私は株価が上昇することを期待して株を買う。

株価が上昇する理由は様々だが、なんらかの理由があって株価は上がる。業績が良くなったり、どこかの企業に買収されるという噂が流れたり、自社株買いのIRが発表されたり、チャートがきれいだったり、カリスマ投資家が煽ったり。

理由はいろいろだけど、株価上昇にはストーリーがある。そのストーリーを自分なりに考えて、投資家は株を買う。

 

例:今年の夏は暑そうだ。

→ 暑い夏には冷たいビールが美味しい

→ 今年の夏はビールの売り上げは伸びるだろう

→ 冷夏だった去年と比較すれば売り上げも利益もよくなるはずだ

→ ビール会社の株は上がるんじゃないか?

→ 買った

 

誰でも思いつくような単純なストーリーを書いてみた。

こんな感じで、私は株価上昇のストーリーを描いてから株を買っている。もちろんストーリーだけに頼ることはせずに色々調べるが、ストーリーを描くことなしで株は買わない。

 

 

2.前提条件の崩壊

上に挙げた例では「今年の夏は暑い」というのがストーリーの前提条件だ。予想に反して雨ばかりの冷夏がやってきた場合、前提条件は崩壊しストーリーは破綻する。涼しい夏にはビールが売れず、ビール会社の業績は上がらず、よって株価も上がらない。

 

しかしストーリーが変化してもつい株を持ち続けてしまう事はよくある。

・今年の夏は冷夏だけど発表された新商品のバタービールは美味そうだ、きっと売り上げが伸びるに違いない。

・指標的には安いんだから、多少冷夏でも売る理由にならない。

・売り上げは伸びなくてもチャート的にダブルボトムを形成してる。これから上がる。

・私が売ると上がる気がする。それは気分的にとても嫌だ。

・せめて含み損がなくなって、買値まで戻るまで売らない。

・優待として届く缶ビールは魅力的。優待が続く限り持ち続ける。

・俺はこのビールが好きだ。株主として応援したい。

 

一度買った株は愛着が湧く。買う前も、買ってからもその企業についてはよく調べた。調べるほどに愛着は深まる。良い部分は目立つし、悪い部分は見ないようにしてしまう。

「今年の夏は暑いはず」という前提条件は崩れた。株価上昇のストーリーは成り立たなくなった。にもかかわらず、何故か同じ株を持ち続けてしまう。

こういう心の状態のことを「現状維持バイアス」というけど、言葉は知らなくてもその感情は理解できるのではないかと思う。

 

現状維持を続けた結果、 運よくその後に株価が上昇することもあるかもしれない。しかしそれはただの運。投資家の実力ではない。運に頼ってお金が増えるのを期待しても、多分無駄だ。

 

 

3.新型コロナウィルス感染症は多くの前提条件を破壊した

新型コロナウィルスのパンデミックによって世の中はずいぶん変わった。

ダウや日経平均がいくら戻っても、世界の形はそう簡単に元に戻らない。ワクチンと治療薬が普及するまで、人々の行動様式は変わらないだろう。

人々の行動が変わればお金の流れも変わる。パンデミック以前に成り立っていた前提条件とストーリーは、その多くが崩壊しただろう。

 

という訳で、私もポートフォリオの入れ替えを行っている。

そんな話をこれから書いていこうと思っている。

 

 

 

文中にある「現状維持バイアス」などの不思議な心の動きについて書かれている本です。行動経済学という学問のジャンルになるのだけど、なかなか面白いです。