日本リビング保証2Q決算について
1.日本リビング保証の上方修正
このブログで日本リビング保証の企業分析記事を書き終えた翌日、上方修正が発表されて株価が上がった。その後正式な2Qの決算発表があり、決算説明会の資料などもアップされた。それらを読んで感じた事などを書いてみる。
まずは上方修正の内容。
2Qまでで、売上が+10.0%、営業利益が+32.5%、経常利益が+43.1%上方修正されている。その結果、このようにとても見栄えのいい数字が出た。
売上が増えたのは長期保証とBPOの受注が良かったから、営業利益が増えたのはオフィス移転や人材採用が後期に延期されたから、経常利益が増えたのは資産運用の成績が予想より良かったから、と理由を説明している。
オフィス移転は今年6月に決定しているし、人材の採用も間違いなくやる。だから現在のところ通期での上方修正しません。
そのように発表されているが、売上高はオフィス移転とは関係ない。売上が10%伸びているのだから、通期もいずれは上方修正されると考えている。
2.セグメントの利益
既に書いたが、おうちのトータルメンテナンス事業は変わった会計方法をとっている。そのために今までBPO事業に比べて売上も利益も数字が悪かった。それが今回営業利益でほぼ同じレベルまで増加している。
次回からはおうちのトータルメンテナンス事業の利益とBPO事業と逆転する。そしてそれ以降は二度と再逆転することはないだろう。
上の方に「事業セグメントへの費用配分の見直しを実施」とある。決算説明会の質疑応答を読むと、本社費用の各セグメントへの配賦方法が変わった事がわかる。BPO事業とおうちのトータルメンテナンス事業の利益が並んだのはそれも1つの理由だろう。
しかし費用配分変更後でも、YoYでおうちのトータルメンテナンス事業の利益の伸びの方がBPO事業のそれより大きい。ただ数字を弄っているだけではない。
日本リビング保証/長期契約積み上げ2Qは過去最高益を達成 - ログミーファイナンス
3.前受収益+長期前受金
日本リビング保証の決算でいちばん気になるのは前受収益と長期前受収益だ。これが本当のお金の流れを示し、将来の売上と利益の額を決定するからだ。
今回の2Q発表時点で、前受収益と長期前受収益の合計は4,892百万円だ。前年同時期と比べて+24.7%だ。
この数字を裏打ちする値として「新規保証契約額」というKPIも存在する。これは日本リビング保証が販売した保証の新規契約額だが、1QはQonQで+42.5%、2QはQonQで+16.3%。1Q+2Qでは前年同期比+30.3%だった。
全く文句なしの成長だ。
4.トピックスについて
その他決算説明会資料でトピックスとして取り上げられていたことから2点。
「② リアルサービス拠点の開設」にあるように、福岡と名古屋にサービスセンターを開設する。
日本リビング保証はBtoBの商売がほとんどであり、その顧客として日本各地にある中小の工務店やハウスメーカーがある。顧客に良好なサービスを提供するために、各地の営業所やサービスセンターは必須だろう。
しかし現在のところ、日本リビング保証には東京本社と大阪支社しかない。福岡と名古屋にサービスセンターを開設することで、よりきめ細かいサービスと営業が可能になると考えている。
もう1つは「③ 金融機関との連携強化」だ。
神奈川銀行と業務提携契約を新たに締結、とある。具体的な内容は神奈川銀行からのリリースにあった。
神奈川銀行と取引のある住宅メーカーや工務店に、日本リビング保証の提供する住宅設備の延長保証、定期点検やコールセンター代行の「人手不足」に対応できる各種サービス業務を紹介する、とある。
ちょっとわかりにくいので解説してみる。
住宅メーカーや工務店は、建てた家の商品価値を高めて顧客に満足してほしい。顧客満足のためには、実際住んでいる人が設備の故障などで不便を感じないようにする必要がある。そのために保証があればいいし、定期点検もした方がいい。実際に故障したときはすぐに修理する必要がある。
すぐ修理するためには24時間で電話対応が必要だし、修理工をあっせんする必要もでてくる。これは本当に大変だ。人手不足が進む工務店には従業員の負担が大きすぎる。
「そんな面倒は外注すれば解決しますよ」と神奈川銀行が日本リビング保証を紹介する。そういう契約を結んだようだ。
神奈川銀行以外にも、オリックス銀行(東京)、福邦銀行(福井県)とも同様の契約を結んでいる。何もしなくても顧客が増えていく仕組みを作っている訳だ。いい傾向じゃないか。
5.まとめ
そんなわけで、引き続きホールドしていきます。
株価は短期的にどうなるか分かりませんが、安心して持っていられます。
ビジョナリーカンパニーのシリーズは本当に名著。
内容もよいし、筆者の熱が込められている文章もいい。
本当にお勧めです。
再び日本リビング保証の会計について
1.BPO事業に触れていない話
日本リビング保証のビジネスは以下のように分けられている。
① おうちのトータルメンテナンス事業
Ⅰ.保証サービス
(1)住設あんしんサポート・・・新築住宅向け設備保証
(2)売買あんしんサポート・・・中古住宅向け設備保証
Ⅱ.検査補修サービス
Ⅲ.電子マネー発行
② BPO事業
前回までで6回に渡って日本リビング保証のビジネスについての話を書いた。
しかしその内容のほとんどが「① おうちのトータルメンテナンス事業」のセグメントについてのみ書かれている。「② BPO事業」についてはほとんど触れていない。
その理由は、BPO事業が「他の企業の下請け仕事」だからだ。
大手企業が自社で設備保証の延長を行う時、面倒な細々した作業を他社に外注する。その外注された仕事を引き受けているのがBPO事業だ。
そんなに将来性のある事業でもないので、書く方もあまり力が入らない。もっとおうちのトータルメンテナンス事業に集中してほしい、とも思う。
しかし2019年6月期の決算資料を読むとこうなっている。
セグメント売上はおうちのトータルメンテナンス事業が12億円、BPO事業が4.4億円なのに対し、セグメント利益はおうちのトータルメンテナンス事業が1,700万円の損失、BPO事業が約2億円の利益、となっている。
おうちのトータルメンテナンス事業は会計上赤字なのだ。
ここだけ見ると、私がおうちのトータルメンテナンス事業についてばかり書いている意味が分からなくなる。「日本リビング保証という会社は自分でやっているビジネスは赤字を垂れ流しながら、他社の下請けでお金を稼いでいる」そう判断したくなる。
2.再び日本リビング保証の会計の話
日本リビング保証の会計が分かりにくいという話は既に書いた。
上の記事に書いたように、日本リビング保証の会計は保証料が10年分一括で払い込まれても、売上や利益は1/10づつしか計上されない。しかし人件費などの経費は毎年発生する。だからおうちのトータルメンテナンス事業は赤字に見える。
一方BPO事業は、毎年の売上と利益が毎年の会計に計上される。その結果、下請けであるBPO事業ばかりお金を稼いでいるように見えるんだ。
おうちのトータルメンテナンス事業は、過去の売上と利益が何年間にもわたって配分されていく。つまり毎年過去のストックがプラスされて計上される。だから売上や利益のぶれが小さい。一方BPO事業は単年度だけの売上が反映されている。年度ごとに受注した仕事の量がダイレクトに決算の数字に影響する。
このような理由で、日本リビング保証の決算の数字は下請け仕事に過ぎないBPO事業の数字に強く影響をうけてしまう。
そういう訳で、日本リビング保証の売上や利益の数字はあてにならない。数字がゆがんでしまい、会社本来の成長や稼ぐ力を見誤ってしまう。それでも株価は決算の表面上の字で上下してしまうだろう。そのあたり、忍耐の必要な投資対象かもしれない。
逆の視点から見れば、BPO事業の縮小で見かけ上決算が悪いときは絶好の買い場になるだろう。
そのように歪んでいる日本リビング保証の会計だが、2019年6月期の当期純利益は1億4,300万円、2020年6月期の純利益予想は1憶5,800万円だ。
一方、2020年1月31日の株価は1,335円、時価総額は66億5,500万円。
ここから計算される実績PERは 46.5倍、来期予想PER 42.1倍となる。
東証一部の平均PERは 14.93倍なのだから、ずいぶん高いと判断したくなる。
しかし何度も書いているが、日本リビング保証の会計は特殊だ。利益だけでは企業価値が判断できない。利益が未来へ先送りされているのだから。
そこで、純利益ではなくキャッシュフローを見てみる。
2019年6月期の営業キャッシュフローは8億8,900万円だ。
時価総額66.5億円の企業が、一年に8億8,900万円稼いでいる。
キャッシュフローを元に企業の割安感を示す指標として「株価キャッシュフロー倍率」というものがある。PERではなくてPCFRと呼ばれるやつだ。
このPCFRを求めると、2019年6月期の実績で PCFR 7.48倍、という数字が出る。
年に25%で成長している企業の株を、PCFR 7.48で買える。安いと思いませんか?
そんなわけで、私は日本リビング保証を買ってずっと持っています。
追記.投資キャッシュフローについて
これで話を終了するつもりだったけど、もう一点だけ。
前段で営業キャッシュフローの表を掲載したが、その隣に投資キャッシュフローの欄もある。それがマイナス12億7,500万円になっていることが気になった人がいるかもしれない。一体何にそこまでお金を注ぎ込んでいるのか、と。
その答えは、2019/10/10のIRニュースで分かる。
このように、日本リビング保証は時々投資用不動産を購入している。
日本リビング保証には「前受け金」という形で積みあがった現金が潤沢にある。この現金をただ銀行に預けていてもほとんど金利は付かない。
だから時々投資用不動産を購入して、その家賃収入を得るという形で資産運用しているのだ。ずっと不動産業界で生きているのだから、割高な不動産を掴まされているという事はない。そう思っているのだけど、どうだろう。
つみあがった現金の使いどころがない、というのも贅沢な悩みだ。それだけ日本リビング保証はお金をたくさん持っているんです。儲かっていない企業ならそうはいかない。
7回に渡ってダラダラと書いてしまいましたが、これで終了です。
読んでいただいた方、ありがとうございました。
こんな時こそ投資の勉強を。
このあたりの本は間違いないです。絶対に損はしないです。
日本リビング保証の競合について(その②)
新型コロナウイルスのお陰で私のポートフォリオはひどい状態です。でもそんなことは関係なく、今回も日本リビング保証の事を書きます。
テレビ東京のように我が道を進みます。
1.競合他社について(その②)
前回の記事で競合各社の話を書いた。今回はまずその続き、日本リビング保証の検査補修サービスと競合する2つの企業について書く。
検査補修サービスの詳細についてはこちらの記事を読んでください。
6083 ERIホールディングス
ERIホールディングスは、建造物の検査を専門に行っている企業だ。
戸建住宅から大きなビルまで、不動産の売買や投資には品質の保証がされているとある程度安心できる。ERIホールディングスはそのための検査を専門に行っている企業だ。しかし検査だけで、保証や修理は行っていない。日本リビング保証とは検査補修サービスとの競合があるのだけど、検査補修サービスの売上は年間2億8,000万円程度。おうちのトータルメンテナンス事業全体の売上が12億円なので、割合は大きくない。
ERIホールディングスとの競合はそれほど心配しなくてもよいだろう。
未上場 ジャパンホームシールド
ジャパンホームシールドは、5938 LIXILグループのグループ企業のひとつだ。LIXILグループは住宅に関わる5つの事業領域をもつが、その中のひとつに「住宅・サービス事業」がある。この事業領域の中に更に5つの子会社があり、その中のひとつがジャパンホームシールドだ。LIXILグループの大きさから比べるとジャパンホームシールドは小さな企業に感じる。しかし2016年3月現在の社員数は289名。日本リビング保証の社員数81名(派遣社員7名込み)と比べるとずいぶん大きな会社だ。
もともとはマイホームの地盤調査を専門に行っていた会社だが、2012年より中古建物の検査と保証業務を開始している。会社のサイトを見ると、建物の検査については書かれているが保証についてはそれほど書かれていない。
そもそも日本リビング保証における検査補修サービス事業の比重は大きくない。上記の2社との競合の影響は、会社の将来価値にはそれほど大きくないだろう。
2.やる気がでない話
競合については以上です。
でも「住宅設備保証」でGoogle検索すると他にも色々な会社が出てきます。
しかし検索順位1位のSOMPOワランティ以外は、現在のところ競合になりえないと考えています。自社で建てた住宅の設備延長保証を自前でやっていたり、BtoBではなくBtoCであったり、だからです。
競合以外の話についてもう少し書こうと思っていましたが、切り目がいいので止めます。というかやる気が出ないのです。最近の株価が冴えないからです。
私はテレビ東京にはなれなかった。
日本リビング保証の強みと競合について
1.生命保険が儲かる話
生命保険には「万が一の時のための備え」「安定した人生のための道具」「ロックンロールと対極にあるもの」というイメージがある。しかしその本質は博打だ。
生命保険の掛け金とは、自分が病気になったり死んだりしたときにお金がもらえるように賭けた賭け金だ。死んだら「賭けが的中した」としてお金が増えて戻ってくる。健康に過ごせた場合、賭けが外れた事になりお金は没収される。
生命保険は博打なので、生命保険業者は賭けの胴元だ。博打は常に胴元が儲かるようにできている。これは永遠の真理だ。
具体的な生命保険の仕組みはこうだ。
人間には寿命があり、平均寿命が統計として毎年集計されている。何人生まれて何人死ぬか?途中で交通事故にあう可能性はどのくらいか?何歳くらいでどのような病気にかかるか?その病気にかかる確率は?死亡率は?全てデータとして出される。
1人が事故にあうかどうかは分からない。でも10万人いれば、そのなかの何人が事故にあうかは確率通りになる。「大数の法則」というやつだ。
その確率を計算して「保険金の支払総額 < 掛金の総額 ー 経費 」というように調節してやればいい。この不等式の左辺と右辺の差が、生命保険会社の利益となる。
この不等式を計算するためには人口統計や死亡率のデータが必要になる。生命保険会社にとって、これらのデータは儲けの源泉だ。
2.保証サービスで儲けるためには
同様に日本リビング保証の主要業務である「保証サービス」は賭けだ。
ボイラーやキッチンやトイレが故障したら「賭けが的中」したわけなので、無料で修理してもらえる。故障しなかった場合は賭け金が没収される。
この博打で儲けるために、胴元は「どのような設備がどのくらいの確率で壊れるか」を知っておく必要がある。様々なメーカーの、様々な製品が、どのような使われ方で、いつ頃、どんなふうに故障するか。修理するにはいくらかかるか。生命保険の死亡率のデータと同様に、設備保証でも設備の故障率のデータが必要になってくる。
日本リビング保証が創業されたのは2009年だ。この頃は住宅設備の延長保証というサービスがまだ存在していなかった。日本リビング保証の創業者が、日本で初めてスタートさせた事業だ。
まだ10年しか経過していないが、住宅設備の故障率のデータの蓄積はトップだろう。このデータが安定した利益を生み出す源泉になると考える。バランスシートに載らない日本リビング保証の資産だ。
また、このデータは同業他社の参入をためらわせる堀の役目も果たすのではないだろうか。これは私の推測なのだけど。
3.競合他社について
日本リビング保証と似たようなサービスを行っている競合他社には、2453 ジャパンベストレスキューシステム、4290 プレイステージインターナショナル、6064 アクトコール、8630 SOMPOホールディングスの子会社であるSOMPOワランティなどがある。
順番に見ていきたい。
2453 ジャパンベストレスキューシステム
住宅のカギ、水回り、リフォームから害虫駆除やパソコン修理までやっているサービス社。日本リビング保証のビジネスはBtoBだが、ジャパンベストレスキューシステムはBtoCが大きいようだ。
日本リビング保証はマイホームオーナー向けの保証だが、ジャパンベストレスキューシステムは賃貸住宅入居者向けの保証がメインだ。設備保証と火災保険などをセットにして販売している。大学生協を通じた学生向けの保証や痴漢冤罪保険などもあり、事業領域は日本リビング保証とかなり違うようだ。
4290 プレイステージインターナショナル
プレイステージインターナショナルの7つの事業領域のひとつに「ワランティ事業」がある。そのワランティ事業の中に、自動車延長保証、家賃保証、介護保障・医療費用保証と並んで住宅設備延長保証があるようだ。
しかしサイトを見てみても住宅設備延長保証に関する記載はほとんどない。住宅設備延長保証は、7つの事業領域のなかの1つの更にその中の一部を占めるのみ。会社としてはそれほど力を入れていないようだ。先に書いたような「設備の故障率のデータ」の蓄積も進まないだろう。
6064 アクトコール
3つの事業領域のひとつに「住生活関連総合アウトソーシング事業」がある。ここで住宅設備の緊急かけつけサポートを行っている。トイレの詰まりやガスレンジの故障、鍵の故障や紛失などに対応しているようだ。こちらも賃貸入居者向けのサービスがほとんどであり、事業領域はかぶっていない。
SOMPOワランティ
SOMPOホールディングスの子会社であるSOMPOワランティは、延長保証の専門業者だ。家電、パソコン、スマホと共に住宅設備保証も行っている。BtoCであり、SOMPOワランティのサービスを導入した企業にはリフォーム会社やハウスビルダーも含まれている。この会社が一番日本リビング保証の事業領域と近いだろう。
親会社のSOMPOホールディングスは時価総額1兆5800億円の大企業だ。その中のSOMPOワランティの占める割合が小さすぎて、ほとんど情報が入手できない。
大手企業の子会社だからこそ、すぐに利益を出さなくてもデータを十分に集める余裕があるわけだ。人材も豊富だろう。
日本リビング保証の有利な点としては、保証だけでなくリフォーム積み立て等の様々なサービスをワンストップで提供できることか。また、中古設備の保証はSOMPOワランティでは行っていないようだ。
とにかく、なんとか大企業に負けないように頑張ってほしいと思っている。
もちろんTOBなんて期待していない。テンバガーなら期待している。
4.次回予告
他にも競合他社があるよ、という事を知っている人は教えてください。
次回、日本リビング保証の気になる点と今後の展開について書きます。
日本リビング保証の成長の理由
1.前回のあらすじ
日本リビング保証のおうちのトータルメンテナンス事業の数字はだいたいこんな感じ。
Ⅰ.保証サービス
・実際は現金がたくさん入ってくるのに売上や利益が数分の一にカウントされる
・「受注残」である「前受収益」+「長期前受収益」の増加をフォローするとよい
・2019年度の受注は8.7億円
・受注残の増加率はQonQで+25%程度
・2020年度の受注残は47億円まで積みあがっている
Ⅱ.検査補修サービス
・売上は2.8億円/年くらい
・ほぼ横ばいであり成長はしていない
Ⅲ.電子マネー発行サービス
・電子マネー発行額は四半期ごとに約1億円程度
・発行高はばらつきがあるが、だいだいQonQで+10%程度成長している
・未使用ポイントの残高は12億円、どんどん積みあがっている
・ポイントの使用期限は15年、失効した分は利益になると考えられる
2.成長の理由
前回の記事では日本リビング保証の決算について分かりやすく書こうと思った。
だが、無理だった。
でもおうちのトータルメンテナンス事業が、決算に示される売上や利益の数字以上に伸びていることだけは分かって貰えたのならうれしい。
なぜこのようにスムーズに事業が伸びているのか、その理由について今回は書きたい。
日本リビング保証の2019年6月期までの決算説明会資料には、初めの方にこんな事が書いてあった。
まあ悪くないキャッチフレーズだ。
しかし2020年6月期からはこうなっていた。
こちらの方が日本リビング保証のビジネスを上手く説明している。この下の方の小さい文字で書かれた一文。
オーナーには「利便性・安心安全」を、
クライアントには「業務効率・ビジネスチャンス」を創造します。
オーナーとはマイホームを建てた個人だ。「保証される安心安全と、故障しても修理してもらえる利便性」を提供する仕事をしています、とアピールしている。
クライアントとは住宅メーカーなどの業者だ。「業務効率とビジネスチャンス」を業者に提供します、とアピールしている。
ビジネスチャンスを提供するとは?
これまでにも何度か書いたが、日本リビング保証のほとんどがBtoB、つまり会社相手に行っているビジネスだ。住宅メーカーや不動産業者が、商品である住宅の商品価値を高めるために、日本リビング保証に注文して設備保証を付けている。
「住宅の商品価値を高める」これが設備保証が提供する価値だ。
商品価値が高くなれば、商品が売れやすくなる。だからこそ住宅メーカーや不動産業者が、自分でお金を出して保証をつけるんだ。
そして電子マネー発行サービス。これはリフォーム需要の囲い込みだ。
少子化が進む我が国は住宅着工件数がどんどん下がってきている。
2030年度の新設住宅着工戸数は63万戸に減少、リフォーム市場は6兆円~7兆円台で横ばいが続く | ニュースリリース | 野村総合研究所(NRI)
そんな環境の中で、日本の住宅メーカーや工務店は生き残りをかけて戦う必要がある。生き残りのために安定した顧客を確保したい、そう考えて当然だ。
そこで、日本リビング保証の電子マネー発行サービスを使う。これを積み立ててもらえば間違いなくリフォームの注文は自分のところに来る。なんといってもお金はもう払っているのだから。だからこそ「販売促進」という形をとって、住宅メーカー側も積立金の一部を払うんだ。
「リフォームの需要を確実に獲る」これが電子マネー発行サービスの提供する価値だ。
「住宅の商品価値を高める」も「リフォームの需要を確実に獲る」も、住宅メーカー側のメリットだ。住宅メーカーにとってはお客さんも喜んでくれるし何も悪い部分がない。
クライアントに「ビジネスチャンス」を創造する、という意味が理解できると思う。住宅着工件数が減り、生き残りの戦いが激しくなるほど、住宅メーカーは日本リビング保証のサービスを欲しがるだろう。
成長の理由は「住宅業界がそのサービスを求めているから」というのが私の結論だ。
3.次回予告
長くなってきたので一度切ります。次回は、日本リビング保証の強みと競合について書きます。
なんだかダラダラ続いてる。書きたいことはまだまだあるんですが・・。
決算書を読む人なら絶対に電卓は買った方がいいと思います。
カード型の小さいやつ、スマホの電卓。いずれも作業効率悪いです。
日本リビング保証の決算が分かりにくい話
前回までのあらすじ・・・お急ぎの方は読み飛ばしてください。
日本リビング保証のビジネスは以下の通り
① おうちのトータルメンテナンス事業
Ⅰ.保証サービス
(1)住設あんしんサポート・・・新築住宅向け設備保証
・マイホームを建てると修繕を自費でやることになるので面倒
・住宅メーカーにとって客との付き合いは維持したいが自分で修繕するのは面倒
・両者の面倒を解決するのが日本リビング保証の住設安心サポート
(2)売買あんしんサポート・・・中古住宅向け設備保証
・中古住宅は品質のばらつきがあるので消費者は不安
・空き家問題の解決のため国は中古住宅の流通促進を国策として展開してる
・不動産業者も大家さんも中古住宅が売れてほしい
・消費者の不安を和らげ購入を促すのが日本リビング保証の売買安心サポート
・売買あんしんサポートは宅地建物取引業法の改正もあり時流に乗っている
Ⅱ.検査補修サービス
・売買あんしんサポートの仕事の一部である「検査と補修」を独立させたサービス
・住宅設備だけでなく住宅そのものの検査と補修もやっている
Ⅲ.電子マネー発行
・マイホームのオーナーがリフォームその他のために積立金を積むサービス
・住宅メーカーにとってリフォーム需要を囲い込むためにも利用できる
・そのため住宅メーカーが販促の一環としてオーナーにポイント付与を行う事も
・住設安心サポートと組み合わせた「住設安心サポートプレミアム」を推している
② BPO事業
・大手住宅メーカーや家電メーカーは自前で上記のような設備保証をやっている
・しかしコールセンター設置や検査修理の手配は自分でやるのはとても面倒
・これらの面倒を受注し、代行してやっているのがBPO事業
1.10万円のお金が入ってきても売上が1万円
本題の会計の話に入る。
私が日本リビング保証の株を買い始めた2018年7月13日、その株価は4,170円だった。その後3分割されたので現在の株価になおすと1,390円だが、PERは52.6倍。自己資本率は0%を割ってマイナスだった。指標だけから見ると「潰れる直前」というレベルで不安定な会社をバカ高い値段で買ったことになる。
それでも割安だと考えて買った。
そう判断した理由は日本リビング保証のちょっと変わった会計方式で説明できる。
誰かが新築の家を建てて住設安心サポートを利用し、10年間の保証を購入したとする。
1年間の保障費が1万円ならば10年分10万円の現金を払い込む。日本リビング保証には10万円のお金が入ってくる。しかし帳簿には「売上1万円」と記載される。今年の保障費は1万円だからだ。
10万円の現金が入ってくるのに「売上1万円」なんだ。
ただし来年も売上1万円、再来年も売上1万円、、、と記入される。10年間分の保証なのだから10年後まで、毎年売上1万円だ。10年間本当の意味での売上がゼロでも、会計上はずっと毎年1万円の売上が続いていく。
そのあたりの仕組みは決算説明会資料にも書かれている。
実際、2019年6月期の経常利益が213百万円なのに対し、営業キャッシュフローが889百万円と4倍以上ある。現実のお金の流入量と比べて帳簿上の利益がすごく少ない。
日本リビング保証は、決算にあらわれる経常損益の額よりずっとたくさんお金を稼いでいる。
3.「前受け金」という名の「受注残」
10年分の保証料は10年間に均等に売上として計上される。しかし実際にお金は10年分先に入っている。このお金の流れはどのように処理されているのか。
日本リビング保証は先払いされた未来の保証料を「預り金」として「お客さんから借りてる」という形で処理している。もちろんそのうち売上になるお金なので返す必要はない。この「預り金」は、「前受収益」と「長期前受収益」としてB/Sに記入されていく。
「前受収益」は1年以内に売上として計上される預り金だ。B/Sの流動負債に含まれている。「長期前受収益」は1年以後に売上として計上される預り金だ。B/Sの固定負債に含まれている。
何を言っているのかピンとこない方もいると思う。しかしこの2つの合計が、来年以降の保証料として既にお客さんから受け取っている金額だ。今後の売上につながるので「受注残」と呼んでもいいかもしれない。
この「受注残」が、2020年6月期の1Q時点で46億9,500万円もある。
一方、おうちのトータルメンテナンス事業のセグメント売上は1年間で12億円。約4年分の未来の売上が確保されている訳だ。
この「受注残」の推移をみれば、おうちのトータルメンテナンス事業のメインである「Ⅰ.保証サービス」の成長を追うことができる。
保証サービスは、ここ3四期ほどQonQで約25%ずつ成長している。
2019年3Q +25.4%、2019年4Q +24.4%、2020年1Q +26.1%の成長だ。
日本リビング保証のメインである住宅の保証サービス事業は絶好調であり、QonQ +25%で成長している。私はそう理解した。
4.おうちポイント発行高
ここまでが日本リビング保証の「Ⅰ.保証サービス」についての話だ。
ここからⅡ.を飛ばして「Ⅲ.電子マネー発行」について書く。
電子マネー発行と書くとなんだか難しそうだが、要はマイホームのリフォームのための積立金だ。お金を先に受け取っておき、将来のリフォームや修繕における確実な顧客として囲い込む。なかなか上手いビジネスだと思う。
この電子マネー発行については、新規発行高と累積未使用ポイントが四半期ごとに発表されている。
まずは四半期ごとの発行高のグラフ。
X軸の「1」が2017年1Qを示している。わかりにくくて申し訳ない。「12」が最新の2020年1Qだ。Y軸の単位は百万円だ。
かなりばらつきがあるが、四半期ごとに約1億円弱のポイントを発行している。発行高の成長はQonQで+10%程度だ。
そして未使用ポイント残高のグラフがこちら。
X軸Y軸の数字の意味は同じ。
現在12億円近い未使用ポイントが積みあがっている。
この未使用ポイント、日本リビング保証から見れば現金の塊だ。電子マネー発行でも現金がじゃぶじゃぶ入ってきている。
そして未使用ポイントのいくらかは、必ず未使用のまま失効する。
おうちポイントの使用期限は15年だ。世の中にはそこら中にポイントがつく場所があるけど、すべてを綺麗に消化できる人は少ない。
消化されなかったポイントは失効し、全て日本リビング保証の利益になることだろう。
5.検査補修サービス
最後に「Ⅱ.検査補修サービス」について。
売上高のグラフは以下の通り。
Y軸の単位は(千円)だ。
四半期ごとに7,000万円前後の売上があり、現在のところほぼ横ばいに見える。今後に期待。
6.小括
ここまでが「①おうちのトータルメンテナンス事業」の数字についてだ。
自分の頭の中ではもっとスッキリしていたのだけど、やっぱり上手く説明するのは難しい。思った以上に大変だった。
下手な説明にお付き合い頂きありがとうございました。
なんとなく「現金が異常に積みあがっている」という事くらいは理解頂けたのではないかと思います。見かけより儲かっているし、成長もしている事も。
次回は成長の理由と今後の見通しについて、自分なりに考えたことを書きます。
BPOセグメントの話と株価指標の歪みについてもそのうち。
日本リビング保証を買ってずっと持っている理由②
前回までのあらすじ
日本リビング保証のビジネスは以下のように分かれている。
① おうちのトータルメンテナンス事業
Ⅰ.保証サービス
(1)住設あんしんサポート・・・新築住宅向け設備保証
・マイホームを建てると修繕を自費でやることになるので面倒
・住宅メーカーにとって客との付き合いは維持したいが自分で修繕するのは面倒
・両者の面倒を解決するのが日本リビング保証の住設安心サポート
(2)売買あんしんサポート・・・中古住宅向け設備保証
・中古住宅は品質のばらつきがあるので消費者は不安
・空き家問題の解決のため国は中古住宅の流通促進を国策として展開してる
・不動産業者も大家さんも中古住宅が売れてほしい
・消費者の不安を和らげ購入を促すのが日本リビング保証の売買安心サポート
・売買あんしんサポートは宅地建物取引業法の改正もあり時流に乗っている
Ⅱ.検査補修サービス
Ⅲ.電子マネー発行
② BPO事業
今回は残りの3つについて書きたい。
Ⅱ.検査補修サービス
日本リビング保証の「検査補修サービス」とは、売買あんしんサポートから派生して出来たビジネスだ。売買あんしんサポートで設備保証をするためには、まず住宅設備の状態を検査する必要がある。また保証した設備が故障した場合は修理する必要がある。
売買あんしんサポートを販売する過程で、検査と補修のみの依頼が増えてきた。
この検査と補修だけを独立させてひとつの事業にしたのが「検査補修サービス」だ。
現在は検査補修の対象範囲を住宅設備だけでなく住宅そのものまで広げている。
検査補修サービスも、住宅事業者から仕事を受注するBtoBだ
Ⅲ.電子マネー発行
電子マネー発行と聞くとずいぶんいかめしいが、要は補修やリフォームのための積立だ。
住宅は時間が経過するとガタが来て補修が必要になる。
リフォームには下記のように結構なお金がかかる。リフォームのための住宅ローンも存在するくらいだ。
リフォームの施工費用・相場をチェック|「ホームプロ」リフォーム会社紹介サイト
そんなわけでリフォームのための積立の需要が存在する。
日本リビング保証は100%子会社であるリビングポイント株式会社を通し、電子マネー「おうちポイント」を発行している。
上の図のように、おうちポイントはマイホームのオーナーが積み立てる。それと同時に住宅メーカーが値引きの代わりにポイントを付与している。これでマイホームのオーナーはリフォームや修繕が心理的な負担なくできるようになる。
また住宅メーカーにとっては、マイホームオーナーを囲い込みリフォームの仕事を確実に受注できる利点がある。ポイントの有効期限は15年。この短さも住宅メーカーにとってはありがたいだろう。
この「おうちポイント」と前回書いた「住設安心サポート」を組み合わせたサービスが「住設安心サポートプレミアム」だ。
様々なサービスを組み合わせつつポイント付与を行い消費者を囲い込んで、マイホームのアフターサービス周辺のビジネスを効率よく受注していくシステム。そのシステムを住宅メーカーに販売しているのが日本リビング保証の立ち位置だと考えている。
② BPO事業
ここまでに紹介した日本リビング保証のビジネスは全て「おうちのトータルメンテナンス事業」というセグメントに含まれている。
日本リビング保証のもう一つのセグメントが、これから書くBPO事業だ。
積水ハウスとかタマホームなどの大手ハウスメーカーは、自社で設備保証の延長を行うこともある。また家電メーカーは、自社製品の長期保証を付けることもある。しかしこれはなかなか面倒くさい話だ。
保証料を集金し、保証書を発行し、設備の不具合を受け付けるコールセンターを設置し、検査や修理の手配を行い、実際に部品を用意して修理する。設備保証とはこのようなメンドクサイ事を全て行う必要がある。
設備保証に関わる面倒くさいことを、家電メーカーや大手ハウスメーカーに代わって行うのがBPO事業だ。
その他、新規事業
ここまでに書いた日本リビング保証のビジネスは全てB to Bだ。お客さんは住宅メーカーや不動産業者であり、企業同士のビジネスだ。
しかし、2019年8月よりB to Cのビジネスである「うちもキーピング」というサービスを開始している。マイホームの定期健診、メンテナンス、リフォーム積み立てなどのサービスを個人向けにも開始している。
これが収益に結び付くのはまだまだ先だろうけど。
次回予告
ビジネスモデルについて書くだけで結構長くなってしまった。
次回、ようやく数字について書きます。
一見とても割高に見える日本リビング保証だけど、本当はとてもバリューであるという話です。
「無限の住人」の作者である沙村広明が書いた現代の話。面白い。
Kindleなら無料で読めます。私にとって今年最初のヒットでした。