中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

日本リビング保証の決算が分かりにくい話

 

前回までのあらすじ・・・お急ぎの方は読み飛ばしてください。

日本リビング保証のビジネスは以下の通り

 

① おうちのトータルメンテナンス事業

Ⅰ.保証サービス

(1)住設あんしんサポート・・・新築住宅向け設備保証

  ・マイホームを建てると修繕を自費でやることになるので面倒

  ・住宅メーカーにとって客との付き合いは維持したいが自分で修繕するのは面倒

  ・両者の面倒を解決するのが日本リビング保証の住設安心サポート


(2)売買あんしんサポート・・・中古住宅向け設備保証

  ・中古住宅は品質のばらつきがあるので消費者は不安

  ・空き家問題の解決のため国は中古住宅の流通促進を国策として展開してる

  ・不動産業者も大家さんも中古住宅が売れてほしい

  ・消費者の不安を和らげ購入を促すのが日本リビング保証の売買安心サポート

  ・売買あんしんサポートは宅地建物取引業法の改正もあり時流に乗っている

 

Ⅱ.検査補修サービス

  ・売買あんしんサポートの仕事の一部である「検査と補修」を独立させたサービス

  ・住宅設備だけでなく住宅そのものの検査と補修もやっている

 

Ⅲ.電子マネー発行

  ・マイホームのオーナーがリフォームその他のために積立金を積むサービス

  ・住宅メーカーにとってリフォーム需要を囲い込むためにも利用できる

  ・そのため住宅メーカーが販促の一環としてオーナーにポイント付与を行う事も

  ・住設安心サポートと組み合わせた「住設安心サポートプレミアム」を推している


② BPO事業

  ・大手住宅メーカーや家電メーカーは自前で上記のような設備保証をやっている

  ・しかしコールセンター設置や検査修理の手配は自分でやるのはとても面倒

  ・これらの面倒を受注し、代行してやっているのがBPO事業

 

 

.10万円のお金が入ってきても売上が1万円

本題の会計の話に入る。

 

私が日本リビング保証の株を買い始めた2018年7月13日、その株価は4,170円だった。その後3分割されたので現在の株価になおすと1,390円だが、PERは52.6倍。自己資本率は0%を割ってマイナスだった。指標だけから見ると「潰れる直前」というレベルで不安定な会社をバカ高い値段で買ったことになる。

それでも割安だと考えて買った。

そう判断した理由は日本リビング保証のちょっと変わった会計方式で説明できる。

 

誰かが新築の家を建てて住設安心サポートを利用し、10年間の保証を購入したとする。

1年間の保障費が1万円ならば10年分10万円の現金を払い込む。日本リビング保証には10万円のお金が入ってくる。しかし帳簿には「売上1万円」と記載される。今年の保障費は1万円だからだ。

10万円の現金が入ってくるのに「売上1万円」なんだ。

 

ただし来年も売上1万円、再来年も売上1万円、、、と記入される。10年間分の保証なのだから10年後まで、毎年売上1万円だ。10年間本当の意味での売上がゼロでも、会計上はずっと毎年1万円の売上が続いていく。

そのあたりの仕組みは決算説明会資料にも書かれている。

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 実際、2019年6月期の経常利益が213百万円なのに対し、営業キャッシュフローが889百万円と4倍以上ある。現実のお金の流入量と比べて帳簿上の利益がすごく少ない。

 

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日本リビング保証は、決算にあらわれる経常損益の額よりずっとたくさんお金を稼いでいる。

 

3.「前受け金」という名の「受注残」

10年分の保証料は10年間に均等に売上として計上される。しかし実際にお金は10年分先に入っている。このお金の流れはどのように処理されているのか。

 

日本リビング保証は先払いされた未来の保証料を「預り金」として「お客さんから借りてる」という形で処理している。もちろんそのうち売上になるお金なので返す必要はない。この「預り金」は、「前受収益」と「長期前受収益」としてB/Sに記入されていく。

「前受収益」は1年以内に売上として計上される預り金だ。B/Sの流動負債に含まれている。「長期前受収益」は1年以後に売上として計上される預り金だ。B/Sの固定負債に含まれている。

何を言っているのかピンとこない方もいると思う。しかしこの2つの合計が、来年以降の保証料として既にお客さんから受け取っている金額だ。今後の売上につながるので「受注残」と呼んでもいいかもしれない。

この「受注残」が、2020年6月期の1Q時点で46億9,500万円もある。

 一方、おうちのトータルメンテナンス事業のセグメント売上は1年間で12億円。約4年分の未来の売上が確保されている訳だ。

 

この「受注残」の推移をみれば、おうちのトータルメンテナンス事業のメインである「Ⅰ.保証サービス」の成長を追うことができる。

保証サービスは、ここ3四期ほどQonQで約25%ずつ成長している。

2019年3Q +25.4%、2019年4Q +24.4%、2020年1Q +26.1%の成長だ。

 

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日本リビング保証のメインである住宅の保証サービス事業は絶好調であり、QonQ +25%で成長している。私はそう理解した。 

 

 

4.おうちポイント発行高

ここまでが日本リビング保証の「Ⅰ.保証サービス」についての話だ。

ここからⅡ.を飛ばして「Ⅲ.電子マネー発行」について書く。

 

電子マネー発行と書くとなんだか難しそうだが、要はマイホームのリフォームのための積立金だ。お金を先に受け取っておき、将来のリフォームや修繕における確実な顧客として囲い込む。なかなか上手いビジネスだと思う。

この電子マネー発行については、新規発行高と累積未使用ポイントが四半期ごとに発表されている。

まずは四半期ごとの発行高のグラフ。

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X軸の「1」が2017年1Qを示している。わかりにくくて申し訳ない。「12」が最新の2020年1Qだ。Y軸の単位は百万円だ。

かなりばらつきがあるが、四半期ごとに約1億円弱のポイントを発行している。発行高の成長はQonQで+10%程度だ。

 

そして未使用ポイント残高のグラフがこちら。

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X軸Y軸の数字の意味は同じ。 

現在12億円近い未使用ポイントが積みあがっている。

 

この未使用ポイント、日本リビング保証から見れば現金の塊だ。電子マネー発行でも現金がじゃぶじゃぶ入ってきている。

 

そして未使用ポイントのいくらかは、必ず未使用のまま失効する。

おうちポイントの使用期限は15年だ。世の中にはそこら中にポイントがつく場所があるけど、すべてを綺麗に消化できる人は少ない。

消化されなかったポイントは失効し、全て日本リビング保証の利益になることだろう。

 

 

5.検査補修サービス

最後に「Ⅱ.検査補修サービス」について。

売上高のグラフは以下の通り。

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Y軸の単位は(千円)だ。

四半期ごとに7,000万円前後の売上があり、現在のところほぼ横ばいに見える。今後に期待。

 

 

6.小括

ここまでが「①おうちのトータルメンテナンス事業」の数字についてだ。

 

自分の頭の中ではもっとスッキリしていたのだけど、やっぱり上手く説明するのは難しい。思った以上に大変だった。

 

下手な説明にお付き合い頂きありがとうございました。

なんとなく「現金が異常に積みあがっている」という事くらいは理解頂けたのではないかと思います。見かけより儲かっているし、成長もしている事も。

 

次回は成長の理由と今後の見通しについて、自分なりに考えたことを書きます。

BPOセグメントの話と株価指標の歪みについてもそのうち。