中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

再び日本リビング保証の会計について

会計帳簿のイラスト

1.BPO事業に触れていない話

 日本リビング保証のビジネスは以下のように分けられている。

① おうちのトータルメンテナンス事業

   Ⅰ.保証サービス

      (1)住設あんしんサポート・・・新築住宅向け設備保証

      (2)売買あんしんサポート・・・中古住宅向け設備保証

   Ⅱ.検査補修サービス

   Ⅲ.電子マネー発行

② BPO事業

 

前回までで6回に渡って日本リビング保証のビジネスについての話を書いた。

しかしその内容のほとんどが「① おうちのトータルメンテナンス事業」のセグメントについてのみ書かれている。「② BPO事業」についてはほとんど触れていない。

 

その理由は、BPO事業が「他の企業の下請け仕事」だからだ。

大手企業が自社で設備保証の延長を行う時、面倒な細々した作業を他社に外注する。その外注された仕事を引き受けているのがBPO事業だ。

 

 

そんなに将来性のある事業でもないので、書く方もあまり力が入らない。もっとおうちのトータルメンテナンス事業に集中してほしい、とも思う。

 

しかし2019年6月期の決算資料を読むとこうなっている。

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セグメント売上はおうちのトータルメンテナンス事業が12億円、BPO事業が4.4億円なのに対し、セグメント利益はおうちのトータルメンテナンス事業が1,700万円の損失、BPO事業が約2億円の利益、となっている。

おうちのトータルメンテナンス事業は会計上赤字なのだ。

 

ここだけ見ると、私がおうちのトータルメンテナンス事業についてばかり書いている意味が分からなくなる。「日本リビング保証という会社は自分でやっているビジネスは赤字を垂れ流しながら、他社の下請けでお金を稼いでいる」そう判断したくなる。

 

 

2.再び日本リビング保証の会計の話

日本リビング保証の会計が分かりにくいという話は既に書いた。

 

上の記事に書いたように、日本リビング保証の会計は保証料が10年分一括で払い込まれても、売上や利益は1/10づつしか計上されない。しかし人件費などの経費は毎年発生する。だからおうちのトータルメンテナンス事業は赤字に見える。

一方BPO事業は、毎年の売上と利益が毎年の会計に計上される。その結果、下請けであるBPO事業ばかりお金を稼いでいるように見えるんだ。

おうちのトータルメンテナンス事業は、過去の売上と利益が何年間にもわたって配分されていく。つまり毎年過去のストックがプラスされて計上される。だから売上や利益のぶれが小さい。一方BPO事業は単年度だけの売上が反映されている。年度ごとに受注した仕事の量がダイレクトに決算の数字に影響する。

このような理由で、日本リビング保証の決算の数字は下請け仕事に過ぎないBPO事業の数字に強く影響をうけてしまう。

 

 そういう訳で、日本リビング保証の売上や利益の数字はあてにならない。数字がゆがんでしまい、会社本来の成長や稼ぐ力を見誤ってしまう。それでも株価は決算の表面上の字で上下してしまうだろう。そのあたり、忍耐の必要な投資対象かもしれない。

逆の視点から見れば、BPO事業の縮小で見かけ上決算が悪いときは絶好の買い場になるだろう。

 

 

 3.企業価値時価総額について

 そのように歪んでいる日本リビング保証の会計だが、2019年6月期の当期純利益は1億4,300万円、2020年6月期の純利益予想は1憶5,800万円だ。

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一方、2020年1月31日の株価は1,335円、時価総額は66億5,500万円。
ここから計算される実績PERは 46.5倍、来期予想PER 42.1倍となる。

東証一部の平均PERは 14.93倍なのだから、ずいぶん高いと判断したくなる。

 

しかし何度も書いているが、日本リビング保証の会計は特殊だ。利益だけでは企業価値が判断できない。利益が未来へ先送りされているのだから。

そこで、純利益ではなくキャッシュフローを見てみる。

 

2019年6月期の営業キャッシュフローは8億8,900万円だ。

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時価総額66.5億円の企業が、一年に8億8,900万円稼いでいる。

キャッシュフローを元に企業の割安感を示す指標として「株価キャッシュフロー倍率」というものがある。PERではなくてPCFRと呼ばれるやつだ。

このPCFRを求めると、2019年6月期の実績で PCFR 7.48倍、という数字が出る。

 

年に25%で成長している企業の株を、PCFR 7.48で買える。安いと思いませんか?

そんなわけで、私は日本リビング保証を買ってずっと持っています。

 

 

 

追記.投資キャッシュフローについて

これで話を終了するつもりだったけど、もう一点だけ。

前段で営業キャッシュフローの表を掲載したが、その隣に投資キャッシュフローの欄もある。それがマイナス12億7,500万円になっていることが気になった人がいるかもしれない。一体何にそこまでお金を注ぎ込んでいるのか、と。

 

その答えは、2019/10/10のIRニュースで分かる。

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このように、日本リビング保証は時々投資用不動産を購入している。

日本リビング保証には「前受け金」という形で積みあがった現金が潤沢にある。この現金をただ銀行に預けていてもほとんど金利は付かない。

だから時々投資用不動産を購入して、その家賃収入を得るという形で資産運用しているのだ。ずっと不動産業界で生きているのだから、割高な不動産を掴まされているという事はない。そう思っているのだけど、どうだろう。

つみあがった現金の使いどころがない、というのも贅沢な悩みだ。それだけ日本リビング保証はお金をたくさん持っているんです。儲かっていない企業ならそうはいかない。

 

 

 

 7回に渡ってダラダラと書いてしまいましたが、これで終了です。

読んでいただいた方、ありがとうございました。

 

 こんな時こそ投資の勉強を。

         このあたりの本は間違いないです。絶対に損はしないです。