ファブリカを買ったわけ③・・・SMSの市場拡大について(後編)
前回のまとめ
・ファブリカのSMS事業は、業務用SMS市場の拡大により大きな恩恵を受ける
・海外と比較すると、日本国内の業務用SMSはまだまだ伸びそうだ
・デロイトトーマツも矢野経済研究所も、業務用SMS市場の大幅な伸びを予想している
1.はじめに
前回に続いて業務用SMSの市場拡大について考えてみる。
今回は主に利用シーンから考察する。
SMSは「市場が伸びるから使われるようになる」訳じゃない。
「使う人や使う頻度が増えるから市場が伸びる」のだ。
今後、日本での業務用SMSがどのようなシーンで使われるようになるか?
どんな理由で使われるのか?
この2つについて、SMSの優位性、海外での使用例、消費者の嗜好の変化という3つの切り口から考えてみる。
2.SMSの優位性
SMSの優位性は何と言っても到達率の高さだ。
メールは届かない。
久しぶりのメールを送る時は「このメアド生きてるかな」と考える必要がある。相手のメアドが変更されててメールが届かない、という経験は誰にでもあるだろう。そもそも聞いたメアドが普段遣いされているとは限らない。メールアドレスはいくらでも無料で作ることができるのだから。
加えてフィルターの問題がある。迷惑メールがあまりに多いのでほとんどのメアドにはフィルターがかかっている。企業がメールを送ってもフィルターに阻まれて届かない。
そして届いたところで開封せずに削除される。
電話は出てくれない。
知らない番号からかかってくる電話なんて、みなさんも取らないでしょう?
LINEはブロックされる。
とても悲しい事だがそれはよくある話だ。
その点SMSは届く。
SMSは電話番号と紐づいているので変更されることはほとんどない。
電話は取ると時間も取られるし面倒な事が起こる可能性があるが、SMSの内容をチェックしたところで本人に不利益はない。SMSの開封に心理的な抵抗を感じる人はいないだろう。
SMSの到達率は98%というデータもある。
そもそもAmazon等の2段階認証で使われてるくらいだ。信頼性も高い。
今後迷惑SMSが増えることによって開封率は下がるかもしれない。
しかしSMSの送信にはお金がかかる。無料で送信できるメールと比べ、迷惑SMSがはびこる可能性は低いだろう。まだまだそれを心配する段階じゃない。
送信側の企業にはそれ以外にもメリットがある。
電話や郵送と比べると安い。そして早い。
さらに楽だ。企業側のシステムと連結させれば、数クリックで送信できる。
これらがSMSの優位性だ。業務用SMSの市場は伸びると考えている。
3.国内、海外での使用シーン
私が業務用SMSを受信するのは、AmazonやYahooの2段階認証がほとんどだ。
宅急便の再配送に関して1回だけSMSを受け取ったことがあるが、それ以外は全て2段階認証だった。他にどんな使用シーンがあるのか。
ファブリカの決算説明会資料を見ると、国内SMSサービスの用途の内訳が載っている。
やはり本人認証が40.4%とトップだ。
16.7%を占める「督促」は、家賃保証会社や不動産業者によるものが多いようだ。自治体が税金の督促に使う事もある。
27.8%を占める「業務連絡」は、車検や保険の満期案内、リコール通知、予約のリマインドなどのに使われている。また人材派遣会社が抱えている派遣社員に対して指示を出す為にも使われているとの事だ。
「事前通知」は宅急便やガス会社の点検等で、訪問前に連絡するために使われてる。
一方、日本よりずっとSMSの利用頻度が高い海外ではどうなのか。
アメリカでは、注文の確認、配送追跡情報の連絡、予約の確認等にSMSが使われている。
また、商品の割引情報や入荷案内、プロモーションやマーケティングにも使われているらしい。このあたりの使われ方は日本ではまだまだ一般的じゃない。
他の国についても調べてみたが、多くの国で、タクシーの配車、クレジットカードの利用履歴、病院や歯科の予約リマインド、政府広報やコロナのコントロール、WiFi接続のためのパスワード、選挙活動などに使用されているようだ。
インドネシアではJKT48の総選挙にSMSによる投票が行われている。
子供が登校したときと下校した時に、親にSMSが届くようなところもあるらしい。
使用シーンについても伸びしろは十分にありそうだと感じた。
4.携帯電話のない世界と消費者の嗜好の変化
安いから、という理由でよく知らないECサイトから商品を買った時。商品がなかなか届かないと不安になる。お金だけ取られて商品が届かないんじゃないか?などと考えてしまう。
Amazonなら発送された時にメールが届くし、サイトを見れば商品がどこまで運ばれているかわかる。これはストレスが少なくて済む。
若い人には携帯電話を持たずに待ち合わせをした経験がない方も多いはずだ。
携帯電話がない場合、待ち合わせの時間が近づいても相手が現れないと不安になる。途中で事故に遭っていないだろうか。何か急用が入ったんじゃないだろうか。そもそも来るつもりがあるんだろうか。
そんな事を考えながら相手を待つ。携帯電話普及以後はなかなか無いシチュエーションだ。
悪くない思い出だと思うのは私がおっさんになったから。その当時はとても不安だった。
2年後に!!シャボンディ諸島で!!
ドドンッ!!!
これだけの言葉で待ち合わせをするのは本当にストレスがかかるんだ。
消費者は常に現在の状況を知りたいと考えている。携帯電話普及以前、ネット普及以前と比べると、企業と消費者のコミュニケーションニーズは間違いなく高まっている。
手軽で確実なSMSは、様々なシーンで利用されるようになる。業務用SMSはそのニーズを吸って更に普及していく。
そんな風に考えている。
5.まとめと次回予告
・SMSは安くて確実に届くコミュニケーションツール
・利用シーンはこれからも拡大する可能性が高い
・消費者は現状を知りたい。企業とのコミュニケーションニーズは高まってる
・以上の理由から業務用SMSの市場が伸びるという話は説得力を感じられる
前回書いた3つの検討事項
① 業務用SMSの市場が拡大するのは本当か?
② ファブリカはシェアを維持できるのか?
③ 利益率は維持できるのか?
今回の記事でその①についての考察を終えます。
次回以降は「② ファブリカはシェアを維持できるのか」について書いていきます。
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とか。