中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

ファブリカを買ったわけ②・・SMSの市場拡大について(前編)

メールを待つ人のイラスト(女性)

1.SMS市場は大幅な拡大が予想されてるが・・

ファブリカにおけるSMSソリューショングループの売上構成比は51.5%だ。セグメント利益率は28.0%と高い。

 

この業務用SMSの市場だが、年平均成長率41.5%と大幅な拡大が予想されている。

 

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年間41.5%の成長が続くのであれば、売上が2年で2倍、4年で4倍になる。もうこれはファブリカを買って寝てるだけでお金が増えること間違いなし。損するのは不可能だ。

はい解散!

 

 

そこまで無邪気な投資家は(一部のレバナス界隈を除いて)いないと思う。

私は無邪気から程遠い投資家なので、その実現可能性について慎重に検討してみる。

 

業務用SMSの市場拡大に伴ってファブリカの業績が伸びるためには、以下の3つの事について考える必要がある。

① 業務用SMSの市場が拡大するのは本当か?

② ファブリカはシェアを維持できるのか?

③ 利益率は維持できるのか?

 

まず、①  業務用SMSの市場が拡大するのは本当か?について。

「年平均成長率41.5%」という業務用SMSの市場推移のグラフは、SMSサービスを提供するどの企業の説明資料にも載っている。その出典はいずれも「デロイト トーマツ ミック経済研究所」だ。

デロイト トーマツとは世界最大の会計事務所で、デロイト トーマツ ミック経済研究所とはその傘下の、情報・通信分野を専門として市場調査を行う調査会社だ。

たぶんすごく優秀な人達がいろんな根拠から数字を算出しているんだろうけど、ひとつの会社が言うことをそのまま鵜呑みにする事はできない。

 

次の、② ファブリカがシェアを維持できるのか?について。

業務用SMSの国内市場で、2020年度においてファブリカは30.0%のシェアを占めている。これがそのまま維持できるのかは考えておく必要がある。

いくら市場が予想通り年平均41.5%以上拡大しても、競合他社にシェアを奪われたり、新規参入企業に持っていかれたりすると売上は拡大しない。

 

最後に、③ 利益率は維持できるのか?について。

いくら市場が伸びてシェアが維持できてもそれだけでは無意味だ。価格競争になってレッドオーシャン化が進み、全く利益が出ない事業になる可能性もある。

また、原価が高騰しそれを価格に転嫁できず利益を圧迫する可能性もある。

 

 

以上3つの条件について問題がなければ、ファブリカを買って寝てるだけでいい。

順番に検討してみたい。

 

 

2.業務用SMSの市場が拡大するのは本当か?

まず業務用SMS市場の拡大について考えてみる。

 

① 矢野経済研究所の市場予測

SMSサービスを提供している各社はどこもデロイト トーマツ ミック経済研究所の市場予測データを引用している。ファブリカもアクリートもAI CROSSも全部そうだ。

まず、デロイトトーマツ以外が出している市場予測はないか探してみた。

 

その結果、矢野経済研究所の予測が見つかった。

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こちらも成長を予想しているのは同じだ。

グラフにある数字を打ち込んで年平均成長率を計算してみた。その結果 CAGR 29.0%という数字が出た。デロイトトーマツの41.5%という数字よりかなり控えめだ。

 

2025年の予測はデロイトトーマツが71.8億通、矢野経済研究所が93.0億通・・あれ?

ここでようやく気がついた。

予測以前に、2017年度から2019年度の実績の数字が違ってる・・・。

集計の方法が違うのか何なのか。ネット上で無料のデータをあさってるだけなのでよくわからない。

まあ、いいか。

 

 

② アメリカでのSMS配信数

デロイトトーマツ矢野経済研究所もSMS市場の拡大を予想している。その根拠のひととつとして海外でのSMS事情があると思ってる。

 

2019年の日本でのSMS配信数が11億通だったのに対し、アメリカでのSMS配信数は2兆980億通だったという事実がある。日本の約1,900倍だ。

人口が日本の3分の2程度だったドイツでも80億通。ドイツも人口あたりに直すと日本の11倍になる。

 

このあたりの数字を見ると「2年間で2倍、4年で4倍」という皮算用はそこまで誇大妄想じゃないと思ってよさそうだ。なんといってもアメリカは日本の1,900倍なのだから。

 

海外でSMSがこれほど普及している理由については、キャリアメールの有無という背景が大きいと考えている。

 

ガラケー時代から携帯電話にはキャリアメールというものが存在した。

女性にデートのお誘いメールを送信して、その返信をドキドキしながら待っていた記憶を持つおっさんは多い。もう15年ほど前になるだろうか。

 

おっさんに甘酸っぱい記憶を呼び起こすキャリアメールだが、日本以外の携帯電話には存在しない。ガラケーとは言い得て妙、キャリアメールは日本の携帯電話だけで進化したシステムなのだ。

日本以外での携帯電話でのテキストメッセージはSMSを使用するのが一般的だった。

 

このキャリアメール、最近あんまり使ってる人もいないだろう。LINEを使うほうがずっと一般的だし、そもそも格安スマホにはキャリアメールが付いていない。

 

スマホの普及で国内のモバイル事情は海外と同質化した。しかしキャリアメールが無くなってもテキスト通信の需要はなくならない。

キャリアメールは消失してもテキスト通信の需要はなくならない。その一部はSMSが満たすだろう。アメリカ並みに増えるとまではいかなくても、数倍くらいになる可能性は十分にある。

 

参考:

 

 

3.雑談と、次回予告

君の名は。」で一世を風靡した新海誠が監督として携わった最初のアニメ「ほしのこえ」。2002年に公開された、2046年が舞台のSF作品だ。

 

異星人と戦うために太陽系を超えシリウス星系まで進んだ主人公。地球にいる恋人にメッセージを送るのだけど、その手段はガラケーでのキャリアメールだった。シリウス星系は地球から8光年離れている。だからメールも片道8年かかって届くという不便さだ。

 

私も見たが、作戦中にコックピットで恋人にメールを打つ不真面目さ(あるいは油断というか甘さ)が引っかかって、あんまり内容が入ってこなかった。

 

まあ、新海誠でも未来は予想できないってことですね。

 

ほしのこえ」はアマゾンプライムで見れます。

https://amzn.to/3DuKbd7

 

DVDならこちらを。200円です。

 

 

長くなりすぎたので一度切ります。

次回、SMSの市場予測について②。

SMSの利用シーンから将来のSMS市場について考えた事を書きます。