中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

アズームを買った理由⑥ 稼働率とIT

スポーツカーを運転する人のイラスト(カップル)

1.サブリース事業の稼働率

前回の記事ではサブリース事業の受託台数のみについて考察した。

しかし受託台数は「仕入れた商品の数量」に過ぎない。売る商品が確保できなければ売上が増える訳がないので、受託台数が最も重要なKPIであるのは間違いない。しかし実際に売れるかどうかは別問題だ。

 

借り上げた駐車場である「仕入れた商品」が実際どれほど売れたか。それを表すKPIが「稼働率」だ。この稼働率が高く維持されていないと、売上は伸びないし利益も出ない。それどころか借り手がいなくても地代は払い続ける必要があるので、稼働率があまりに低下すると赤字になってしまう。

 

サブリース事業の年間平均稼働率の推移は以下のようになっている。

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上記のグラフは会社説明会資料からのキャプチャだが、年平均稼働率は83%~90%のあたりを維持している。

四半期決算ごとに発表される受託台数と稼働台数から作った稼働率のグラフは以下の通り。

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87%~91%の範囲内に収まっている。

年間平均稼働率と四半期時点の稼働率がやや乖離している。2018年の平均稼働率は83%だが、2018年4Q時点での稼働率は87.7%だ。これはつまり、瞬間的な稼働率は80%を切る時もあるという事だ。

その原因は、新規駐車場獲得のための受託台数の急増だろう。受託台数が急増したときは、借り手が見つかるまで2ヶ月ほど稼働率が下がるらしい。そんな事を動画で社長が言ってた。

 

ちょっと話がズレたが、稼働率の維持はとても重要だ。受託台数と共にずっとフォローしていく必要がある。

 

 

2.借り手のつく駐車場を仕入れる

稼働率を高く維持するためには、借り手がつく駐車場を仕入れてくるのが一番だ。

しかし個人によってそれぞれ駐車場の価値は違う。

「通勤する会社のすぐ隣なら3万払ってでも借りたいけど2km離れている場所なら5,000円でも借りたくない」

せっかく自動車通勤をするのだから、炎天下や雨の日に長い距離は歩きたくない。しかし、ある人にとっての「職場から2km離れた場所にある駐車場」は、別の人にとっての「職場の隣の駐車場」かもしれない。個人個人でニーズは違うし、そのニーズをきめ細かくすくい上げて駐車場を仕入れる必要がある。それが出来てこそ、稼働率を安定して高く維持する事ができる。

 

 

3.ニーズを取りこぼさずに貸す

借り手の付きやすい駐車場を仕入れることができても、借り手を見つけてくる必要がある。借り手のニーズは個人個人で違うので、こちらもきめ細かく対応する必要がある。

そのためにやっているのがマッチングサービス事業だ。

この事については以前の記事で書いた。

 

 

4.ITの本来の使い方

借り手の付きやすい駐車場を借りてくる。その駐車場を確実に貸す。

この2つを実現させるために、アズームはITの力を利用している。

 

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従来人気や相場を足で確認し判断していた部分を、アズームはデータベースに基づいて合理的に決定している。担当者の経験もカンも必要とせず、借り手の付きやすい駐車場を市場価格で安全に仕入れることができるわけだ。

上のキャプチャはアズーム上場時の「成長可能性に関する説明資料」からだ。

 

アズームは起業した時から「IT化の遅れている不動産業界にITを持ち込んで勝負する」というコンセプトでビジネスを展開している。未だに台帳やエクセルで業務を行っているような不動産業界こそ、ITが差別化の要因として有効だと考えている訳だ。

 

現在の軍隊にマシンガンを配備しても差別化にはならない。どの国の軍隊もマシンガンを装備している。しかし戦国時代の日本のどこかの勢力にマシンガンを配備したら、歴史は変わるだろう。

たとえば北条氏に数千のマシンガンを配備すれば、天下を取るのは豊臣でも徳川でもなく北条氏になる。槍や火縄銃ではマシンガンと戦えない。

 

ITが差別化をもたらすわけじゃない。IT化の遅れている業界でいち早くITを持ち込むことが差別化をもたらす。

駐車場業界という比較的ニッチかつIT化の遅れている市場で、ITの力を使って無双状態。だからこそアズームは著しい成長が続いている。私はそう考えている。

 

 

5.ITに必要なのはエンジニア

北条氏にマシンガンを配備する、というたとえ話をした。

これをもう少し踏み込む。北条氏にマシンガンを3,000丁渡す場合と、北条氏に3,000丁のマシンガン+技術者+製造設備を渡す場合の違いだ。

ただマシンガンを渡しただけなら、故障やなんやらで少しずつ3,000丁の稼働率は下がるだろう。しかし技術者と製造設備があれば、修理や微調整やバージョンアップが常にできる。周囲との差別化はずっと維持されるだろう。

 

IT化も同じだ。システムを外注してIT化がなされたところで、トラブルは常に起こる。システムは常に修正、バージョンアップが必要だ。その度に外注先に依頼するのは効率が悪い。

その点、システムが自社内のエンジニアによって作られていれば、トラブルの対応は早い。微調整やバージョンアップも社内のニーズに合わせて素早くなされるだろう。

 

アズームのシステムは社内で作られている。

2020年6月現在のアズーム社内には、ITのためのエンジニアが40名いる。このエンジニア達が駐車場の管理システムを常に改善している。

 

IT人材というのは希少な人材で、採用するのが難しい。しかしアズームは近年ベトナムハノイ大学からITエンジニアを採用している。このベトナム人エンジニアを採用することで「社内のシステムの改善速度が加速度的に速くなって来ている」らしい。2020年6月14日に公開された「Japan stock chanel」というYoutubeの番組で社長が自分で言っていた。

 

ついでにもうひとつ。アズームはコールセンターも社内に置いている。

一般的にコールセンターはBPOとして外注する事が多いが、きめ細かく対応するためにこれも内製化している訳だ。その分コストはかかるだろうけど、きめ細かく対応するという目的にはかなっている。

 

 

6.まとめ

・受託台数は商品仕入れ数、それに稼働率をかけたものが売上

・借り手の付きやすい駐車場を仕入れて確実に貸すのが稼働率維持に必要

・そのためにITの力を使っているのがアズーム

・遅れている業界だからこそITは強い差別化になる

・エンジニアを採用し内製化されたシステムこそより強い

 

 

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