アズームを買った理由④ 駐車場業界について
1.駐車場業界の成長
駐車場業界は成長が著しい。そう言われてもピンとこない方も多いと思う。
日本の人口は減少に向かっているし、「若者の車離れ」といった言葉は随分前から聞こえてくる。実際自動車の保有台数はここ15年くらい増えていない。
自動車保有台数は頭打ち。それなのに駐車場業界だけが成長している。ちょっと意味がわからないけど、実際成長している。
下のグラフは駐車場業界の売上の推移だ。
https://gyokai-search.com/3-parking.html
きれいな右肩上がりのグラフが確認できる。 グラフには縦軸の数字が付いていないが、2018年で駐車場業界の業界規模は3,563億円となっている。
自動車の台数が増えていないのに駐車場業界だけが成長している。なぜこんな事が起きるのか?疑り深い方はリンクを踏んで参照元を確認してくれたと思う。すると、以下のような文章があることに気付く。
「2018年-2019年の駐車場業界の業界規模(主要対象企業4社の売上高の合計)は3,563億円となっています。」
このグラフの業界規模とは、駐車場業界主要4社の売上高の合計の事を示している事がわかる。そしてこの主要4社のうち、トップであるパーク24のシェアは83.8%と圧倒的だ。
駐車場業界の成長とは、パーク24の成長。その理解で問題ないだろう。
パーク24をはじめとする大手駐車場業界の企業が売上を伸ばしてきた理由は何か。それについて考えてみる。
2.町の不動産屋さんは駐車場が嫌い
アパートやマンションを借りる時と同様に、駐車場も不動産屋の仲介によって借りる事が多い。町の不動産屋に出かけて、希望に沿った場所と料金の駐車場を探して借りる。
駐車場の仲介もアパートと同じように、不動産屋に賃料1ヶ月分の礼金を払うことが多いらしい。
しかし不動産屋は駐車場の仲介が嫌いだ。お金にならないからだ。
仲介することによって1ヶ月分の手数料が入る。1ヶ月の賃料1万円の駐車場の仲介と、1ヶ月の家賃8万円のアパート。同じような手間でアパートのほうが8倍の手数料になる。それならアパートの仲介をメイン業務にしたくなるだろう。
町の不動産屋というやる気のない業者に仲介を頼むくらいなら、駐車場が専門のやる気のある大手業者に頼んだほうがいい。
そうやって町の不動産屋という無数の小さな駐車場業者の業務を吸収し、パーク24などの企業は大きくなってきた。そう考えていいと思う。
3.駐車場が余っているという話
駐車場業界が伸びているというが、駐車場が余っているという話も存在する。
前々回の記事にも上げた国土交通省の資料だ。車は減っているのに駐車場が増えている。 その傾向は東京23区内などの都会ほど強いようだ。
4.駐車場が足りないという話
逆に、駐車場が足りないという話もある。
2016年1月に3大都市圏(東京都、愛知県、大阪府)在住の20代~60代、週に1回以上自動車を運転する男女656名を対象に行った、駐車場に関するアンケート調査の結果がある。
https://seed.nagoya/materials/research2_20160405.pdf
空いている駐車場がなくて困っている人は日常的に存在する。
駐車場が足りないという話をもうひとつ。
ご存知の方も多い「すぽさん投資ブログ」に、今年のパーク24の株主総会についての記事がある。
その質疑応答でパーク24の社員の方がこう話している。
「駐車場事業は実は需要が非常に大きく、供給が追い付いていないという大きな背景がある。東名阪では2100万台必要と言われているが、実際は700万台しか供給できていない。このためどうやって「上手に仕入れるか」ということがポイントになっている。」
https://spotoushi.net/archives/81227417.html
業界最大手であるパーク24も、駐車場が足りないという認識でいるようだ。
両方とも月極駐車場ではなく、時間貸しの駐車場の話ではあるんだけど。
5.結論:マッチングが悪い
駐車場業界が成長しているという話。駐車場が余っているという話と、足りないという話。 なんだか話が矛盾している。なんでこんな事が起こるのか。
それはやはりマッチングが悪いからだろう。
車で通勤する人は、会社のすぐそばに駐車場を借りたい。会社から1kmも離れた所に借りたくない。
借りる人はひとりひとり希望の場所がバラバラだ。しかしそれに見合う駐車場が都合よくあるとは限らない。需要のない場所にどれだけ供給されても、駐車場不足は全く解消されない。
そして、仲介業者である不動産屋は駐車場が嫌いだ。
現在の駐車場仲介のEC化率は7%に留まっている。残りの93%は、現在も不動産屋をはじめとする店頭で仲介されている。駐車場が嫌いな不動産屋が、利用者にとってベストな駐車場のために奔走してくれるとは思えない。
これらの結果、余っている駐車場と、満たされない駐車場需要が併存している。
私はそう考えている。
アズームは、この駐車場の需要と供給をうまくマッチングさせることで成長している。
6.次回予告
アズームの駐車場マッチングのためのITについても書く予定だったけど、長くなったのでこのへんで終わります。
次回は、アズームの将来の売上や利益の予想とバリエーションについて書きたいと思います。私が、現在のアズーム時価総額60億円を激安だと判断している理由です。
「世界倒産図鑑」
ひと月前に読んだ本です。企業の誕生から倒産までの長い話をコンパクトにまとめ、その経緯を上手く抽象化して教訓を引き出してます。とてもおもしろかった。倒産の教訓は投資家にとってとても有用だと思います。