パワーソリューションズを買ったわけ②
1.PSOLの面倒な仕事とニッチな顧客
顧客企業に導入された各種の汎用システムを、それぞれの企業が利用しやすいようにアレンジし最適化する。
それがパワーソリューションズ(以下PSOLと略す)のビジネスだ。
このビジネスはたぶん、とても面倒くさい。
私が普段仕事をしている医療の世界では電子カルテが使われている。これまでいくつもの病院で働いていたが、どの病院の電子カルテも色々なシステムがツギハギでつながっていて実に使いにくい。
メインの電子カルテがあり、検査や点滴のオーダーシステムがある。ここまでは1つのシステムで収まっている。
しかし何故かCTやMRIの画像ソフトは別のシステムだ。病理検査のオーダーや検査結果も別のシステム。放射線治療も別のシステム。抗癌剤などの化学療法をオーダーするのも別のシステム。そして看護師が使うシステムも別。
病理検査と画像ソフトは同時に開けない。複数の患者のカルテを開いていると病理検査のオーダーが出来ない。化学療法オーダーのシステムと点滴オーダーシステムを同時に開くとフリーズするから気をつけろ・・。
医療という1つの業務なのに、それぞれの部署が独自に導入したシステムがそのまま雑に統合されている。当然、とても使いにくい。
これらをスムーズに使えるように統合するのはとても面倒だろう。
PSOLはそんな面倒な仕事をメインのビジネスにしている。
PSOLは「資産運用を行っている金融機関」に特化してこの面倒くさい仕事を行っている。
いくら面倒な仕事でも、業界を絞れば応用が効きやすい。
どこの病院の電子カルテでも同じようなトラブルを起こしているのなら、1つの病院で効果があった対策は他の病院にも流用できる。
PSOLは資産運用を行っている金融機関に特化し、サービスを行っている。類似案件を多くこなしてノウハウを蓄積しながらサービスの質を高める。それを武器として更に顧客を増やす。
これがPSOLのビジネスモデルだ。
PSOLのサービスについて知っている人は少ないだろう。
しかし資産運用会社のなかでは知名度が高いらしい。
資産運用会社で働く人は、企業を渡り歩きながらキャリアアップしていく方も多い。移籍した人が新たな職場で使いにくいシステムに遭遇すると、PSOLの事を思い出す。
そうやって自然に顧客が増えていく。
そんな事を社長が言ってた。
2.ITコンサルティング会社との違い
各企業に適切なITインフラ導入をアドバイスするビジネスとしては、ITコンサルティング会社がある。
コンサルティング会社は企業に入って業務を分析し、問題を発見して改善提案を行う。企業はその提案を受けて、システムを導入したり改善したりする。
しかしコンサルティング会社がするのは提案だけだ。提案された改善策を具体的に実行して実現させるのはSIerの仕事になる。
一方、PSOLは業務分析、改善提案、更にそれを実行して問題解決するところまで全部やってくれる。
依頼する企業としてはこちらの方が便利だろう。
提案する企業と実行する企業が別だった場合、上手く行かなかった時はどちらにクレームをつければいいかも分からない。
同じだった場合、現実味のない事を提案される可能性はなくなるし、責任の所在もはっきりする。業務は一括して受託してもらったほうが、依頼する方としてはありがたいに決まっている。
3.大手SIerとの競合について
上記のような理由で、大手SIerとは競合が起こらない。
電子カルテの話に例えると、カルテや画像診断のソフトを作るのは大手SIerだ。
PSOLはソフトを作らない。大手SIerが作ったソフトを使いやすいようにセッティングするだけだ。
だから大手SIerとは競合にならない。むしろ補完し合う関係になる。
実際大手SIerから顧客照会を受ける事すらあるようだ。
面倒くさい仕事はやりたがる人が少ない。
面倒くさい仕事に特化してその仕事に精通すれば、面倒くさくなくなる。
面倒くさい仕事をサクサクできるようになった企業は、その仕事のプロだ。
「面倒くさい仕事はその道のプロに任せてしまおう」そう思われるようになれば、それは十分な参入障壁になりうる。
これが、PSOLは大手SIerと競合しない理由だ。
4.総括と次回予告
PSOLがビジネスを行っている環境と立ち位置について書いてみました。
次回、私がPSOLで最も気に入っているポイント、MD制について書きます。
いつものように何回も続きます。
お付き合いください。
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