中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

イナゴ投資家とイナゴタワー

 

 

バッタの大群のイラスト

1.飛蝗

子供の頃、よくバッタを捕まえて遊んでいた。田舎育ちの男なら誰でもそんな記憶があると思う。ぴょんぴょん跳ねて、バタバタと飛んでいくトノサマバッタ。わざわざ捕虫網を使わなくても、素手で捕まえることができた。ごくありふれた風景だ。

 

このトノサマバッタは、カマキリのエサだ。鳥やカエルやネコも、トノサマバッタを食べる。

地域によっては人間も、このトノサマバッタを食べる。若い頃に旅行したとある地域で、ミカンネットにギチギチにつまっているトノサマバッタが八百屋で売られてたのを見た。つくだ煮にして食べるわけだが、そのビジュアルは凄まじかった。

 

まあ、味は悪くないので試食しても良いと思う。

 

トノサマバッタは様々な生物のエサにされるが、時々天敵がいない場所で大繁殖する事がある。乾燥地帯に雨が降り、一時的に草原ができた時などが当てはまる。天敵のいない新しい草原で、ひたすらバッタが繁殖する。

大発生すると数億匹の大群を形成し、移動を開始する。動かないとすぐエサがなくなるからだ。数億匹のバッタが真っ暗になるほど空を覆い、ありとあらゆる植物を食べ尽くしていく。

この大群が通り過ぎたあとは草一本生えていない。そんなバッタの大群のことを「飛蝗(ひこう)」という。多くはアフリカや中国なんかで起こるが、日本でも明治初期の北海道なんかで起きている。農作物は当然全滅する。時代が時代なら飢饉が起きて餓死者がたくさん出る。とんでもない災害だ。

 

そんな災害レベルのバッタに例えられる投資家たちがいる。「イナゴ投資家」っていうやつだ。

 

 

2.イナゴ投資家の生態

ある企業で上方修正が発表された。大企業との提携話が発表された。すごくイケてるサービスがリリースされた。

そんな話がネット上で流れると、その話に飛びついてくるイナゴが集まってくる。イナゴ投資家は、発表の内容を精査することもなく株を買う。買いが一気に湧いてくるので株価はすぐに跳ね上がる。株価が跳ね上がることで更に目立ち、より多くのイナゴが寄ってくる。みんなが買うので株価はどんどん上がる。

そうなることを誰もが知っているので、誰よりも早く株を買わねばならない。少しでも早く株を買わないと、あっという間に高値に到達してしまうのだから。当然発表内容を吟味する時間など無い。まずは株を買わないと。早く買うことだけが、儲けを保証してくれる。

 

本物の飛蝗が発生する条件が「乾燥地帯の雨」であるように、マーケットにイナゴ投資家が湧いてくる条件も決まっている。 

 

①  時価総額が小さい小型株

② 1日の出来高(取引額)が小さい株。

③ 時流に乗ったテーマ株

 

この3つの条件が当てはまる銘柄で、よくイナゴが見られる。

まず①だ。トヨタ自動車のような巨大企業にイナゴ投資家が殺到したところで、ほとんど株価は動かない。時価総額が小さい小型株でないと、イナゴは株価を動かせない。

イナゴ投資家も儲けたいと考えているので、株価が動かない銘柄には寄ってこない。

 

そして②だ。時価総額が小さい株は、だいたい出来高も小さい。だから①と②は共通している場合がほとんどだ。もともと出来高が小さい株は、株価が急変動しやすい。それは上方向のこともあるし、下方向のこともある。少しの売りしか出ない株に大量の買い注文が入るからこそ、株価が暴騰するんだ。

 

そして③。時流に乗ったテーマ株は、妄想を掻き立てる。多少株価が高くなっても、もっともっと企業が成長するかもしれない。そうなれば高い株価も正当化される。

時流に乗ったテーマ株は、そんな妄想をいだく余地がある。

 

 

 ①~③の条件がそろっている銘柄に、

④ カリスマ投資家の一言

が火を付ける。

 

1億円以上の資産を持っているとか、短期間で何倍にも資産を増やしたとか、そんな有名なカリスマ投資家がTwitterでつぶやく。

そうすると、フォロワーであるイナゴ投資家が大挙して押し寄せる。Twitterは瞬時に何万人にもの人に情報を拡散する力がある。

あっという間に買いが集まり、いままで見たこともないような高値が形成される。

 

 

3.イナゴ投資家が作るイナゴタワー

しかし一瞬で上がった株価は、一瞬で下落する。

 

巻き戻し動画を見るように、売りが売りを呼んで株価は地面に突き刺さる。前日ストップ高、当日ストップ安。そんな理不尽な値動きが起きる。

株価のチャートはとんがった針のような山を描く。この山のことを「イナゴタワー」と呼ぶ。こんな乱暴な値動きで儲けるのは至難の技だ。イナゴ投資家の群れで、勝ち組イナゴはとても少ない。イナゴタワーは、イナゴ投資家の死体でできているんだ。

 

イナゴタワーが形成されたあとは、株価は上がりにくい。高値づかみして逃げ遅れたイナゴたちが、「上がったら売ろう」と待ち構えているからだ。

本物の飛蝗と同じように、イナゴ投資家が通ったあとは草も生えない。

 

 

 イナゴはたくさん生まれてたくさん死ぬ。

ただ死んでイナゴ塚を形成する。あるいはカマキリやネコや鳥やカエルや、一部地域の人のエサになる。

 

なんでイナゴ投資家なんてものになりたがるのか。こんなに致死率が高いのに。

中には儲けているイナゴもいるんだろうけど。

このブログではイナゴになることを推奨しません。

 

 

 ↓ これ、結構面白いです。