損切りできなかった4295フェイスの思い出
最近「運が良くてたまたま儲かった」話をいくつか書いた。
「運が良くてたまたま」はそんなに続かない。だから損をした話もたくさんある。たくさんありすぎて覚えていないくらいだ。
そのなかでも最大級の損をたたき出したのが、今回書く「フェイス」という会社への投資だ。駆け出しの頃に大失敗し、ビギナーズ・ラックで儲けたお金を全て融かしてしまった。もう株価を確認する事すら嫌になって、ずっと塩漬けにしたまま放置していた。こっちは「運が悪くて」損をした訳じゃない。間違った行動を取って当然のように大損をした。
運さえ良ければどんな人でも儲けることが出来る。いや、人に限らない。猿に株取引をさせても、運さえよければ儲ける事ができる。
でも、運が良い猿以外は損をするだろう。
「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負け無し。」
こんな事をつぶやいたのは、プロ野球の野村元監督だ。
運が良くてなぜか勝ってしまう事はある。勝った原因はよくわからない、わからないけど勝ったっていうやつ。株式投資でもそんな事はよくある。
しかし負けた時は必ず原因がある。たまたま負けた、という事はない。そもそも負けたことを運のせいにしてはいけない。ちゃんと敗因を分析し、次に生かさないと。
この言葉はそういう意味なんじゃないかと思う。
という訳で、フェイスという株で大損した理由を書く。
フェイスとは、かつて着メロのサービスを行っていた会社だ。
「着メロ」と言っても最近の若者はわからないと思う。
昔の携帯電話では、着信があった時に自分の好きな音楽が流れるように設定するのが流行っていた。「着信があった時に流れるメロディ」という事で、「着メロ」と省略して呼ばれていた。この着メロのデータを有料でダウンロードするサービスがあり、そのフォーマット(仕組み)を作っていた会社がフェイスだった。着信メロディ - Wikipedia
着メロはなんと言っても音楽のデータを売るだけだ。データはどれだけ売っても材料費がかからない。コピーすればいいだけだから。データは売れば売るだけそのまま利益になる。フェイスはとても儲かっている企業だった。
この企業を見つけた時、
「これだ・・!」
と思った。
フェイスという会社は既に儲かるシステムが出来上がっている。これ以上何もしなくても勝手に利益が出てくる。
この会社は、川を渡るためのたったひとつしか無い橋の料金所を手中に収めている。そんなふうに思えた。下げつつある株価も「お買い得価格」にしか見えたかった。
このフェイスの株を、2006年の始めころに3,740円で買い始めた。株価は短期的に再上昇していたので、焦って4,470円まで買い上がった。
フェイスの株価は一時的に5,000円くらいまで上昇した。
そこを頂点にして、株価は下げに転じた。
「企業価値が変わらないのに株価が下がった時は、買う時だ」
そう思って2,100円くらいでナンピン買いした。
しかし株価は更に下がった。全然上がる気配がなかった。もう下がり続ける株価を見るのも嫌になった。証券会社のサイトやYahooファイナンスを見ることもなくなった。数カ月ぶりにふと思い立って株価をチェックするが、やはり下がっていた。本当に下がっていく一方だった。
これでは株を買ったまま退場しているのと変わらない。
2008年9月にリーマンショックがあった。下がりきったフェイスの株価は、それ以上大きく下がることも無かった。しかしその後のリバウンドも無かった。ただただ株価は地を這うような動きをしていた。
やっと損切り出来た頃には2013年11月になっていた。その時の株価は1,110円だった。貴重なお金を四分の一に減らしてしまったのだ。
(本文中のフェイスの株価は全て分割後の値段に変換して書いた)
2019/2/28現在のフェイスの株価は790円だ。その後に持ち続けていても傷口が開く一方だったわけだ。
大損した理由ははっきりしている。
最近の若い人に「着メロ」なんてやっている人はほとんど居ない。街で聞く着信音は、「ぷっぷぷぷっぷぷぷっぷ、ぷぷぷぷぷ」の音ばかりだ。
私がフェイスの株を買いだした頃は、既に着メロの文化はすたれ始めていた。フェイスが着メロのデータをコピーして大儲けしていた時代は、すでに終わりつつあったのだ。
「企業価値が変わらないのに株価が下がった時は、買う時だ」
この文章は全く正しい。しかし、その企業価値そのものが下がっていた。企業価値の下落に伴って株価も下落していた。私はそんな株を買っていたんだ。
それに気付かず、あるいは気付いていながら損を確定するのが嫌で、株を塩漬けにしていた。これでは勝てるわけがない。負けるべくして負けた投資だ。
株で安定して儲けるのは難しい。しかし損をするのはカンタンだ。
1.これから業績が下がるような株をうっかり買ってしまう。
2.自分の間違いに気付かず下がり続ける株を売らずに持ち続ける。
3.間違いに気付いてもそれを認めるのが嫌で、売らずに持ち続ける。
あるいは、「売った後にあがったら悔しいな」などの妄想を描いて売らない。
4.1~3を繰り返す。
1.については誰にでもある。しかし、そこですぐに間違いを認め、損切りすればそんなにひどい事にはならない。
損をするためには上記の2.3.4.をしっかりとやる事が肝心だ。
私は損をしたくない。だからもう間違いは繰り返さない。
そのためにも、フェイスの失敗は一生忘れないだろう。