中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

ダウ平均株価が上がると、アメリカとは無関係の株価まで上がるのはなぜか?

 

アメリカの大統領選挙のイラスト(男性)

1.株式投資家の1日のはじまり

私はいつも寝不足だ。だから朝ふとんから出るのはつらい。

でも起きなくてはいけないのでスマホのアラームを鳴らす。何度かスヌーズを使って、意識を少しずつ少しずつ覚醒の方向に持っていく。スマホの画面ロックを解除できる程度まで目が覚めたら、まずダウ平均を確認する。

 

ダウ平均が大きく動いていれば、確実に目が覚める。そして、

「・・おお!、今日はよく上がりそうだ」

とニヤついたり、

「暴落してますねぇ・・・」

とうんざりしたりする。

これが私の、火曜日から土曜日までの1日の始まりだ。

同じ習慣を持つ投資家が国内に何万人もいる。これは断言出来る。

 

 

ダウ平均とは、アメリカ合衆国の平均株価指数だ。日本に日経平均があるように、アメリカ合衆国にはダウ平均があるんだ。

このダウ平均がどかんと上がれば日経平均もつられて上がる。ダウ平均が暴落すれば日経平均も暴落する。ダウ平均と日経平均はかなりの確率で連動する。

そして日経平均が大きく動けば、私のポートフォリオを構成する株価もつられて動く。ダウ平均によって私の持つ株の資産価値が動いてしまうのだ。

 

 

2.アメリカの株価と日本の地方自治体システムとの関連??

これは変な話だと思わないだろうか?

私の持ち株、例えばシステムディの業績とアメリカの株価は何の関連もない。アメリカの株価が下がっても、システムディが提供する情報システムの売上や利益には影響がない。

アメリカの景気が良くなろうが悪くなろうが、中国と貿易戦争を始めようが止めようが、どこかの国に空爆をを始めようが、システムディの業績には影響しないだろう。影響したとしても「風が吹けば桶屋が儲かる」レベルでしかない。

 

それなのに、アメリカとは何の関連もないシステムディの株価は、1日前のダウ平均にしっかり影響されて上がったり下がったりする。つられて上がってくれるのは嬉しいけど、つられて下がるのは嫌だ。

どうでもいいニュースに付き合って、なんとも主体性のない話だ。

そんな風に愚痴りたくなりそうけど、どうだろう?

 

 

3.ダウ平均に影響されてしまう合理的な理由

ダウ平均につられて持ち株が下がれば腹が立つのもわかる。自分が株主である企業は、アメリカとは1円も取引していない。それなのになぜアメリカの株価に影響されるんだ?

そう考えるのも無理はない。

 

でも、そこにはちゃんと合理的な理由が存在する。

「すべての企業は紙幣印刷機である」

そう考えるとスッキリ理解できるんじゃないだろうか。

 

 ここにAとBの、2つの紙幣印刷機が存在する。

A:年間1億円の紙幣を印刷できるアメリカ製の印刷機  価格は10億円

B:年間1億円の紙幣を印刷できる日本製の印刷機    価格は10億円

ドルで例えると計算が面倒なので、単位はすべて円で示す。AもBも性能は同じだ。だから同じ値段で売られている。

 

ある日、アメリカで株価が暴落した。つまり紙幣印刷機の価格が暴落したわけだ。

その結果、それぞれの値段は以下のようになった。

A:年間1億円の紙幣を印刷できるアメリカ製の印刷機  価格は7億円

B:年間1億円の紙幣を印刷できる日本製の印刷機    価格は10億円

 

年間1億円の紙幣を印刷できる印刷機なのに、アメリカ製の印刷機はずいぶん安くなった。

この時、日本製の紙幣印刷機を持っている人はそれを売却して10億円の現金を入手し、アメリカ製の紙幣印刷機を買えばいい。そうすると同じ性能の印刷機が手元に残り、プラスして3億円の現金が手に入る。

これが合理的な考え方だ。3億円ならだれでも欲しい。そうなると割高な日本製の印刷機がどんどん売りに出される。そのお金でアメリカ製の印刷機が買われる。

 

だれもが10億円の日本製の紙幣印刷機を売れば、需給の力が働き、日本製の紙幣印刷機の値段は下がる。これはAとBの価格が同じになるまで続く。

 

A:年間1億円の紙幣を印刷できるアメリカ製の印刷機  価格は8億円

B:年間1億円の紙幣を印刷できる日本製の印刷機    価格は8億円

 

アメリカ製の紙幣印刷機の値段が暴落した結果、日本製の紙幣印刷機の値段まで下がった。

これがダウ平均株価につられて日本の株価が下がる合理的な理由だ。

割高な日本株を売却し、割安なアメリカ株が買われるために起こる。

 

 

 4.値段が下がっても性能は同じ

 株価が暴落した時に株を売るのは、上記のように、ある方向から見れば合理的だ。

でも企業の本質が変わらないのに安くなったから売る、っていうのは変な気もする。

 

あんまり株価が下がると景気が悪くなり、本当に企業の収益力が落ちてしまう事がある。でも、多少の株価の変動は企業の業績に影響しない。つまり紙幣印刷機の性能には影響しないんだ。

 

 同じ性能の紙幣印刷機が安くなるんだから、買う方としてはお得だ。そうやって暴落時に安くなった株を買い漁る。安く買って、高くなるまで待って売る。

それが「バリュー投資家」の考え方だ。

 

 「バリュー」とは「価値」という意味だ。マクドナルドの「バリューセット」のバリューと同じ。

価値あるものを安く買って、その価値にふさわしい値段が付いたら売る。

 これがバリュー投資の本質だ。

 

見る方向によって、暴落時に売るのも暴落時に買うのも「合理的」なんだ。

どっちの作戦をつかってもいい。どっちの作戦をつかっても、上手にやれば儲ける事ができるから。

わたしは上手にやるのが下手なので、バリュー投資家よりの立場をとっている。