信用評価損益率 ・・・・信用取引は損をするのがスタンダード
今週は多くの企業が決算を出した。
私の所有している企業や監視している企業も決算を出している。
こういうときは決算の分析の記事を書くとアクセス数が増える。それはよく分かっているんだけど、できないものはできない。
決算が出るとすぐコメントや分析記事を上げることが出来るひとはスゴいと思う。私には無理。分析には時間もかかるし、そんなに暇もないし。
というわけで、今日も信用取引の話の続き。
1.信用評価損益率という指標
信用取引を使って株を買うと、そのデータは証券取引所に集められる。信用取引で買った株が上がっているか下がっているか、という事も同様にデータとして集められる。
全体として信用取引を使って買った株が儲かっているかどうかは、「信用評価損益率」として表される。信用評価損益率は例えばこんなサイト 信用評価損益率 信用残 で誰でも確認することが出来る。
信用評価損益率とは、簡単に言えば信用取引をしている投資家がどのくらい苦しんでいるかを示す指標だ。「苦しんでいるかを示している」のがミソだ。
数式ではこうやって表される。
信用取引で買った株の含み益
信用評価損益率(%) = ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✕ 100
信用取引で買った株の合計金額(買った時の合計)
一応「含み益」の説明を。
買った株が上がった時、「含み益」があるという。100万円で買った株が120万円に上がった時「含み益が20万円ある」という。上がった株を売ってしまえば「含み益」とは言わない。売る前の、確定していない利益のことを「含み益」という。
上の数式では、信用取引で買った株が上がっていれば信用評価損益率はプラスになるし、下がればマイナスになる。含み益があればプラス、なければマイナスだ。
しかし、実際は信用評価損益率がプラスになることはほとんど無い。いつもいつも、信用評価損益率はマイナスだ。例えば、2019年2月8日の信用評価損益率は-15.95%だ。
これは、「信用取引で株を売り買いしている人を平均すると15.95%損している」という意味になる。信用取引では損をしている投資家が普通なのだ。
信用取引をしている人は、平均すると損をして苦しんでいる。
「信用取引は決済期限のある短期売買のための取引手法なので、評価益が出ると買い建てした投資家は利益の確定のための反対売買を急ぎ、評価損の出ている投資家は利益が出るまで待とうとする傾向にあります。」
などと証券会社のサイトには書かれている。
「含み益がある人は株を売ってしまう。含み損がある人は上がるまで待つ。だからみんな損しているように見えるけど、実際はそうじゃないんだよ。」
ということを言いたいのだろうけど、そんな訳がない。
期限があるからこそ、リスクが高いからこそ、損をした時ほど早く売って損切りするのが一般的なんじゃないか?上の記載のように「株価が上がった時にすぐ売って下がったときは待つ」というスタンスで取引する人がいれば、それは間違いなく大損するタイプの投資家だ。損切りもできないような投資家が、信用取引で生き残れるか?
証券会社にとって、信用取引をやる投資家は上客だ。頻繁な株の売買手数料に加え、借金の金利や貸株のレンタル代まで払ってくれるからだ。
だから証券会社は信用取引を勧めてくる。信用取引が「損するのがスタンダード」であっては都合が悪い。だからこそ上に書いたような矛盾した理論を押して、信用取引の安全性をアピールしているんじゃないだろうか。
信用取引は損をするのが当たり前。信用評価損益率がそれを証明している。
平均すると損をするという前提を理解してから、信用取引を始めるべきだ。
2.信用評価損益率の使い方
私は信用取引を使っていない。信用講座も開いていない。でも信用評価損益率という指標はなかなか使える。
下のグラフは過去の評価損益率と日経平均を比較したものだ。
グラフ:1分でわかる信用取引20【信用取引の指標】評価損益率とは?相場を俯瞰できる見方 | トウシル 楽天証券の投資情報メディア
グラフを見ての通り、信用評価損益率がプラスになることはほとんどない。プラスになるときはどんなときか?それは株価がガンガン上がっている時だ。
プラスの状態は長くは続かない。信用評価損益率はすぐにマイナスになる。信用取引をしている個人投資家が平均して儲かっているのは異常な状態なのだ。
「信用評価損益率がプラスのときは、上がりすぎている株価を警戒し、売却を検討する時期だ」
こういう事を書いている記事も時々見かけるが、上のグラフで信用評価損益率がプラスになっているのは2013年の1月だ。
2013年1月は、アベノミクス相場が始まった時だ。この時に「上がりすぎている株価を警戒して」売ってしまえば、その後の上昇相場の恩恵を受けることができない。
信用評価損益率がプラスだからと、すぐに売ってしまうことはおすすめしない。
逆にマイナス20%を超えて下がった場合はどんな時か。
これは多くの個人投資家が、悩み、苦しみ、のたうち回って夜も眠れなくなっている時だ。「追証」が発生し、強制的に損切りさせられ、退場者もちらほら出現する。
信用評価損益率のマイナス20%は、そんな風景が見られる。
これは株を買う時だ。間違いない。
信用評価損益率がマイナス20%を下回って更に下がることはほとんどない。2009年からの10年間で、信用評価損益率が20%を下回ったのは3回しかない。一瞬だけ20%を下回り、その後回復している。株価もその時が一番下がり、その後上昇している。
3.まとめ
・信用取引は損をするのが当たり前。やるなら覚悟を決めて始めよう。
・信用評価損益率プラスは様子見。信用評価損益率マイナス20%以下は買い。
まとめればこんなところだと思う。
ただし、2008年9月には信用評価損益率がマイナス39.68%まで下がった。リーマンショックが発生した時だ。これは信用評価損益率が算出され始めた1980年以降最も低い数字だ。
そんなことは滅多にないけど、そういう事もありうると考えておけばいい。
だからこそ信用取引は勧められない。株は現物に限る。
↓ リーマンショックについて知りたい人はぜひ。