ビジネスモデル④ 消費者の頭の中を独占する「ブランド」
こっそり「独占」して儲けている企業を探せ、というテーマでビジネスモデルを考えていくシリーズ。まだ続きます。
1.ルイ・ヴィトンのキーホルダー
このブログで一番初めにビジネスモデルについての話を書いたとき、シャネルの話を書いた。シャネラーにとって、シャネルは他に代替の効かない唯一無二の商品であり、シャネルを製造販売できるのはシャネルだけだ。シャネルはシャネル製品を独占している。
そういう話を書いた。
nigatsudo.hateblo.jp
これは「ブランド」というひとつのビジネスモデルだ。
ルイ・ヴィトンという企業もある。わざわざ紹介しなくても知っていると思う。ヴィトンもシャネルも、とても高いカバンを作って売っている。
ちょっと調べてみたら、ヴィトンはキーホルダーも売っていた。
写真をクリックしてもらうとAmazonのページに飛ぶ。
確認してみればわかるが、そのお値段 67,000円だ。冗談みたいだが、買う人がいるから売っているのだろう。買う人がいる事は理解できるが、価値は理解できない。
ヴィトンの商品を製造販売できるのはヴィトンだけだ。完全に独占しているのだから、価格は好きにつける事ができる。
2.コカ・コーラ
高級なバッグだけではない。ブランドというビジネスモデルは、低価格の商品を扱う企業も使用している。
「コーラ」と言えばコカ・コーラ。ほとんどの日本人にとって、これは真実だろう。
1種類のコーラしか売っていない店にはコカ・コーラしか置いていない。コカ・コーラの次に来るのはペプシコーラだろうが、新幹線の車内販売でペプシコーラは売られない。
コーラを飲みたいけどコカ・コーラは飲みたくない。ペプシコーラじゃなきゃ嫌だ。そんな事を言う人は少数派だ。だから車内販売ではコカ・コーラが売られる。
その結果、コカ・コーラのイメージは更に強くなり、更なる独占が進む。
1990年、「ジョルトコーラ」という商品が、コーヒーで有名なUCCから発売された。
若い人はジョルトコーラなんて聞いたこともないだろう。コカ・コーラに戦いを挑み、そして惨敗して20年も前に姿を消したコーラだ。
ジョルトコーラはアメリカの企業 Wet Planet 社の商品だ。UCCは Wet Planet 社からライセンスを取得し、ジョルトコーラを製造販売していた。テレビCMには北野武を起用し、大々的にキャンペーンを打っていた。あまりテレビを見なかった私が覚えているくらいだから、相当お金をかけて宣伝していたのだろう。
しかしあまり売れる事もなく、2001年に日本での生産を終了した。
アメリカの Wet Planet 社も2009年に倒産し、ジョルトコーラは地上から姿を消した。
コカ・コーラの牙城は鉄壁だったようだ。
コカ・コーラはコーラ市場の大部分を占めており、十分に儲かっている。コカ・コーラ社の営業利益率は20%程度と、とても高い。ウォーレン・バフェットがコカ・コーラの株式を大量に保有している事でも有名だ。バフェットは、10年後も同じように儲かり続けるような企業しか保有しない。バフェットはコカ・コーラの上げる利益が、これからもずっと続くと考えているのだ。
これの利益はすべて、コカ・コーラ社がもつブランドイメージが生み出している。
3.コンビニで買うスターバックスのコーヒーのイメージ
スターバックスは店内が静かで落ち着いているし、禁煙でもある。私が住むイナカでは、古い喫茶店のほとんどが喫煙可能だ。私はタバコが嫌いなので、喫煙可能な空間でコーヒーを飲むなど我慢できない。そういう訳で時々スターバックスに行く。
「スターバックスはコーヒーを売らない。雰囲気を売る。」
そんなような内容をスターバックスの経営陣が話していた。なるほど、と納得できる。
では、コンビニで売られているスターバックスの商品は?
コンビニで買って飲むだけだから、雰囲気も何もない。スタバのコーヒーだろうが、Bossの缶コーヒーだろうが、飲む場所は同じだ。
雰囲気があるとすれば、それは購入したお客さんの「脳内にのみ」に存在する。Bossの缶コーヒーは、おじさんが仕事の休憩時間に飲むイメージなんだろう(CMもそのイメージで作られている)。スタバのコーヒーはもっと落ち着いた、ゆったりとしたイメージがある。そしてスターバックスのマークが付いた商品は、他の同じような商品と比べてかなり割高だ。脳内にのみ存在する雰囲気を、スタバのマークと共に購入しているのだろう。
ポイントは頭の中のイメージだ。
4.頭の中を独占するのが「ブランド」
シャネラーにとってバッグと言えばシャネルのバッグだ。
コーラと言えばコカ・コーラだ。
ゆったりした気分で飲むコーヒーならスターバックスだ。
そうやって消費者の頭の中のイメージを独占してしまえば、その会社の商品はよく売れる。多少値段が高くても大丈夫だ。その人の頭の中を独占しているのだから、他に選択肢がないんだ。その人にとってだけ、だけど。
シャネルは私の頭を占領してはいない。だから私はシャネルの高いカバンを欲しいとは思わない。先ほど挙げたヴィトンのキーホルダーについても同様だ。
「ヴィトンのキーホルダーなんだから高いに違いない。5,000円くらいするんじゃないか?」その程度にしか思っていなかった。実際は67,000円。笑ってしまうが、ブランドの価値を再認識させられる。
現実の何かを独占してるわけじゃないので、消費者の頭の中の独占状態を維持するのはなかなか大変だ。シャネルもコカ・コーラも、宣伝広告費をたくさん使ってイメージの維持に腐心している。
シャネルについては知らないが、コカ・コーラのCMはいつだって爽やかでリア充の香りがする。
実際は太った人が家でテレビを見ながらポテチと一緒にコカ・コーラを飲んでいる。でもそんなシーンはCMにはない。というか、ありえない。
コカ・コーラはハッピーなリア充と共に在らねばならないのだ。少なくとも、消費者の脳内では。そのイメージを維持するために、コカ・コーラが宣伝費を惜しむことはない。
5.まとめ
・ブランドとは、消費者の頭の中を独占するというビジネスモデルだ。
・67,000円のキーホルダーが売れるほど、そのパワーは強力だ。
・消費者の脳内におけるブランドの維持には、大変な宣伝費が必要だ。
・ブランドの価値は決算書に示されない。安い時に株をかっておけば上手くいく。
← おひとついかがですか(笑)