ビジネスモデル① 最強のビジネスモデル「独占」
1.くま島交通の社長に必要な能力
前回の記事で出てきた「くま島交通」の社長は、ほとんど何もすることがない。
くま島の島民にとってくま島大橋は絶対に必要なものであり、代わりになるものなんて無い。船で海をわたることもできるが、あまりにも時間がかかるし面倒だ。泳いで渡るツワモノもいるかも知れないが、寒いし疲れるし溺れるかもしれないので論外だ。
だからクルマをもつ島民なら、だれもがくま島大橋の定期券を買う。
くま島交通の社長はあんまり役に立たないが、いい人だった。くま島の島民が本州の人と同じように暮らしていけるのはそのお陰だ。
もし社長が強欲ならば、くま島大橋の定期券の値段を10倍にでも20倍にでも上げることができる。
「高い値段が嫌なら橋を使うな。泳いで渡れ。」
島民にとって選択肢はない。どれだけ高くても本州に渡るためには橋を使うしか無い。
やがてくま島を離れる島民が増え、人口が減少し、過疎化が進むだろう。社長の強欲さがひとつの島を滅ぼすのだが、それはまだまだ先の話だ。
くま島交通の社長は仕事ができなくてもいい。こたつでネコと一緒に寝ててくれればそれでいいんだ。ただ強欲であっては困る。
そういう話だ。
2.「独占」は最強のビジネスモデル
このように、1つしか無いモノやサービスを独占して売る会社は、その値段を好きに決めることができる。競争相手がいないのだから、どれだけ高くしても売れるのだ。値段を好きに決めれるのなら、赤字などありえない。広告も打たなくていい。強欲な社長が、好きなだけ高い値段を付けることができる。
それによって困るのは消費者だ。先にあげた例では、クルマを持つ島民が困る。独占はあまりに企業が有利になり消費者が困るので、日本には「独占禁止法」という法律がある。
でも、世の中には合法的な「独占企業」が存在する。
例えば「塩」だ。
塩は、人間が生きていく上で絶対に必要な成分だ。海水を汲んできて自分で作ることができるかもしれないが、それはなかなか面倒だ。だから必ず買う必要がある。
日本国内では、塩は1997年まで勝手に売ることが出来なかった。販売だけでなく生産も流通も、国が完全に管理していた。このように国がひとつの商品を独占することを「専売制」という。塩を売って上がる利益を国が独占するためだ。
その歴史は1905年から始まる。当時、日露戦争でお金が足りなくなった日本政府が、税金を補う手段として塩を専売制にしたのだ。そうやって競争相手がいない状況をつくり、高い値段で販売して利益をがっちり確保する。
このような制度は、塩以外にもタバコやお酒などで存在した。現在でも北欧や中国でこのような制度が存在する。
まあ、国のやることだ。税金を増やされるよりはマシかもしれない。
3.目に見えない独占を探せ
国以外の企業は、独占販売を行なうのは禁止されている。しかし、目に見えない独占販売を行っている企業は存在する。
独占を行っている企業は、その商品の値段を好きに付けることができる。だから必ず儲かる。そういう企業を見つけて株を買っておけば、まず潰れることはないので安心だ。
目に見えない独占を行っている企業を探すことは、とても有用だ。
見えない独占の例をいくつか挙げてみよう。
ミッキーマウスが大好きな人がいる。ミッキーマウスのぬいぐるみやポスターで部屋中を飾りたい。スマホケースや文房具もミッキーで統一したい。
ミッキーマウスのキャラクターグッズの販売は、アメリカの企業であるディズニーが独占している。
シャネルというカバン屋がある。カバンに100万円を超える値段が付くものもあるらしい。シャネルがあまりにも好きな人は大勢いる。シャネルがとても好きな人を「シャネラー」と呼ぶ言葉があるくらいだ。
シャネルの商品を製造販売できるのは、シャネルだけだ。シャネルの商品はシャネルが独占している。
世の中のパソコンは、ほとんどがWindowsで動いている。そのほかのOSも存在するが、仕事で使われる文章や表計算ソフトは、ほとんどがWindowsで動く。だからWindowsを買って使うしかない。
Windowsを製造販売しているのは、マイクロソフトが独占している。
他にもいろいろある。
それらを見つけるために、必ず儲かる企業を探すために、ビジネスモデルを学ぶ必要があるんだ。
ビジネスモデルはとても大事なので、ひとつひとつを丁寧に説明していきたい。