中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

信用取引という劇薬

白雪姫のイラスト「白雪姫と魔女」

先日、息子の「くま」が私に言ってきた。

「おとうさん、来年始める株投資のことなんだけど、30万円から始めるんだよね?」

「そうだよ。あと1万5千円ほどくまが用意できればね。」

「30万円って少なすぎない?」

「!!!」

 

中学1年生が、月々のお小遣いが1,500円の息子が、30万円を少ないと言ってきた。

「中学生には十分すぎるわ!」

「でも、どの本見ても、もっと多い金額で始めてるよ。30万円で始めるって少ないと思う」

 

中学生の息子に「教育目的」で支出する30万円を、まさか当の本人に少ないと言われるなんて。正直驚いたが、まだ投資の荒海に出ていない素人のセリフだ。簡単にその金額が半減するのを身をもって知れば、大金を投資することの恐ろしさ(と楽しさ)も理解することが出来るだろう。

ちなみに息子の大好きな任天堂の、大学卒の初任給は22万円だ。若い投資家はその22万円から生活費を払って、その残りを投資に回すことになるんだ。30万円を貯めるのがどのくらい大変か、よく理解して欲しいところだ。

任天堂販売株式会社の採用情報(初任給/従業員/福利厚生)|リクナビ2019

 

 

しかし今回は、少ない種銭でもいっぱい株を買うことが出来るという、魔法の方法を息子に教える事にした。「信用取引」という魔法だ。

この「魔法」について、よく理解してほしい。

 

例えば30万円の資金しかない場合、30万円分の株しか買えない。予想通り買った株が上がり、30%上昇した場合、30万円の株は39万円になる。9万円の儲けだ。

一方、100万円の資金があれば100万円分の株が買える。同じ様に30%上昇した場合、100万円は130万円になる。30万円の儲けだ。

当然だが、種銭が多いほうが儲かる額は増える。だから、それなりの額の種銭を用意する事が、株式投資の第一歩になる。息子に種銭を集める所から経験させるのは、その重要性を学んでもらうためだ。

 

しかし、30万円の資金でも100万円分の株を買う方法がある。信用取引という方法だ。

なぜそんな事が可能なのか?

 

「借金をすれば買える」が答えだ。

信用取引とは、借金をして株を買う制度だ。まず信用取引の講座を開いて、そこに30万円を入金する。その30万円を「担保」にして100万円までお金を借り、株を購入することができる。

信用取引を使えば、30万円の資金で100万円分の株が買える。100万円の株が30%上昇すれば、130万円になる。儲けは30万円だ。30%の上昇で、手持ちの30万円が、一気に倍の60万円になる。信用取引を使わなければ39万円にしかならなかったのだから、この違いは大きい。

 

もちろん予想に反して株価が下がった場合、損も大きくなる。買った株が30%下がれば、信用取引を使わなければ30万円は21万円になるだけだ。それでも9万円損するのは痛いが。

しかし30万円で100万円の株を買っていた場合、30%の株価下落は30万円の損になる。100万円が70万円になるわけだ。しかし元々30万円しか資金が無いのだから、30万円の損で資金がゼロになってしまう。これは痛いどころではない。一発で退場だ。

更に、買った株がストップ安を連続して、40%下がった場合どうなるか。100万円が60万円になるわけだから、元々の30万円をすべて失ってもまだ足りない。資金をすべて失った上に、更に10万円の借金を背負う事になる。数十万円のレベルで借金を背負ってもなんとかなるが、数千万円のレベルで同じことをやると人生からも退場させられかねない。

 

この世界に、誰でも使える手軽な魔法なんてない。いい話には必ず裏がある。リスクとリターンは等価交換だ。短期間で大きなリターンを得るためには、それに見合ったリスクを受け入れる必要がある。

信用取引はそのリスクの大きさから、使い方を間違えれば簡単に命を落とす。まさに劇薬だ。

 

まあ、息子が信用取引をする事は当分ない。中学生に信用取引用の講座は開けない。

でも株式投資のいろいろな仕組みを知ることは、投資家として生き残るために必ず役に立つ。しばらく信用取引について書いてみたい。