中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

PSOLを買ったわけ⑤・・市場規模と成長性とゴールドラッシュのスコップ

タンス預金のイラスト

1.ニッチな市場の規模

 PSOLは、資産運用を行っている金融機関に導入された各種汎用システムを利用しやすいようにアレンジし最適化する、というビジネスを行っている。

実に面倒くさそうな仕事だが、類似案件を多くこなしてノウハウを蓄積しながらサービスの質の向上を図っている。その結果、ニッチな市場ながらほぼ独占的な地位を占めているらしい事は既に書いた。

 

では「資産運用を行っている金融機関に導入された各種の汎用システムを利用しやすいようにアレンジし最適化するビジネス」の市場はどのくらいあるのか。

 

まず、資産運用を行っている金融機関の数を確認する。

投資信託協会という組織があるが、そこの会員数は2020年10月23日時点で106社だ。協会正会員 - 投資信託協会

 

投資顧問業協会という組織もあるが、そこに加入している投資運用会社数は297社だった。https://www.jiaa.or.jp/profile/kaiin.html

 

投資信託運用会社」で検索すると、こちらのサイトに470社あると書かれていた。

投資信託運用の会社一覧(全国)|Baseconnect

 

知らないだけで、結構な数の投資運用会社が存在するようだ。

 

 

2.有価証券報告書を読んで

思ったより多いな、と思いながらPSOLの有価証券報告書を確認する。

すると、「事業等のリスク」の場所にこんな記載があることに気付く。

 

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PSOLの2019年12月期における売上の50.5%は、野村グループからのものとなっている。野村グループへの依存度がとても高いのだ。

 

この事実をどう考えればよいだろうか。

「万が一野村グループとの関係性が悪くなった場合、売上が半分に落ちてしまう。完全に仕事を切られる事は無いにしても、足元を見られてサービスを買い叩かれてしまうかもしれない。」

そんなリスクがあるという考えも成り立つ。

 

あるいは、

野村グループだけで半分も売上があるのなら、市場の余白はまだまだある。ニッチな市場とは言いながら成長の余地は十分。」

こんな風に考えることも出来る。

 

いずれにしても、野村グループが売上の半分を占めている事実は変わらない。その解釈は両方とも考えに入れておきたい。

 

 

3.同一顧客から案件を繰り返し受注

有価証券報告書をもう少し読むと、こんな記載もある。

 

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2018年の取引先企業72社のうち、2019年も案件受注があった企業は64社。取引継続率は88.9%となっている。

 

決算説明会の動画でも社長が言っていたが、PSOLは同じ企業から小規模な案件を繰り返し受注することが多いようだ。

野村グループからの案件受注が売上高の半数を占めるということだが、その割合は改善しつつも続いている。これはPSOLの提供するサービスの付加価値が高いことの証拠だと考えている。

サービスを受ける側にとって便利だからこそ手放せない。その結果、継続した取引が行われると考えている。

 

 

4.ゴールドラッシュとスコップ

普通に生活していても「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉を聞かない日は無い。政府も盛んに旗を振っているし、企業は言うに及ばずだろう。

政府のDX関連予算・総まとめ プロジェクトでデジタル化を推進 | 月刊「事業構想」2020年5月号

 

そんな中でPSOLの仕事が減るなんて事は、ちょっと想像がつかない。DXは、システムが使いやすくなって仕事が効率化してこそ意味がある。

システムを使いやすくする事がPSOLの提供する価値なのだから。

 

今後、政府も企業もDXに予算を割いてくるのは間違いないだろう。

そこで潤うのはどこの企業か?

 

これはなかなか難しい。DXが進むことによって伸びる企業もあれば、統一化されたシステムに負けて淘汰される企業もあるからだ。

 

ゴールドラッシュに乗って金を掘ってみてもお金持ちになれるのは一握りだ。

しかし、確実にお金持ちになった人がいる。

金を掘る人にスコップを売った人だ。

 

そんな話を聞いたことがあると思う。

実際はカリフォルニアまで鉄道を引いた企業だったり、金掘りの男たちに丈夫なジーンズを売ったリーバイスだったりする訳だが。

 

 

私には、PSOLがゴールドラッシュでスコップを売る企業に見える。

まあ、煽りですねw

 

 

6.次回予告

RPAについて書きます。

 

 

この本、面白かったです。
この本を読んで各企業のサイトを見ると、デジタルについてわかっている企業とわかっていない企業が判別出来るようになります。

株式投資には直接役立つことはなさそうですが。

 

PSOLを買ったわけ④・・IT業界の仕組み

暗い部屋でパソコンを使う女性のイラスト

1.下請け・孫請け・ひ孫受け

トヨタやホンダのような自動車メーカーには、部品提供その他のためにたくさんの下請け企業が存在する。大手ゼネコンにも、たくさんの下請け孫請け企業が存在する。

これらはピラミッド構造を形成する。下に行けば行くほど企業の数が多く、規模が小さく、仕事は細分化され、従業員の給料は安くなる。

 

IT業界にも同様なピラミッド構造が形成されている。

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顧客企業のシステム開発を大企業のSIerが受注し、概略を決め、デザインを描く。その後、2次請けのグループ企業や独立系中堅SIerに発注する。2次請けの企業はその仕事を更に細分化して3次請け企業に流す。

 

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ピラミッド構造の上であるほど、仕事の付加価値が高く、利益率がよく、社員の給料もよく、定着率も高い。

下の方はその逆だ。給料も安く、労働環境が過酷で、人材の定着率が低い。

 

↓ 1番参考になった記事のリンクを張っておきます。画像もこのサイトのものです。

IT業界の多重下請け構造で得をする人、損をする人 - paiza開発日誌

 

 

2.IT業界におけるPSOLの立ち位置

IT業界においても、ピラミッド構造の上の方ほど立ち位置としては美味しい。

付加価値が高く利益率もよい顧客企業から直接受注する仕事は、「プライム案件」と呼ばれる。

 

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PSOLは大企業ではないし、2次請け3次請けがたくさん連なっているわけでもない。

しかし、受注する仕事の85%がプライム案件だ。

「顧客企業に導入された各種の汎用システムを、それぞれの企業が利用しやすいようにアレンジし最適化する」という特殊な立ち位置がそれを可能にしているのだろう。

 

その結果、PSOLの営業利益率は2019年で12.1%となっている。

これはIT企業としてはものすごく高い。SIerの最大手であるNTTデータですら、2019年の営業利益率は6.6%なのだから。

ITサービス30社の営業利益率ランキング、意外に健闘した「2社」とは | 日経クロステック(xTECH)

 

 

3.人材の供給源としてのピラミッドの下層

IT業界はピラミッド構造が形成されており、社員の待遇は上に行くほどよくなる。同じ仕事をしていても所属している企業によって給料が違う。これはまあ、どこの業界も同じだろう。

 

ピラミッド構造の下の方という職場環境のせいで安月給に甘んじている人材を引き抜く。これはPSOLの成長戦略のひとつだ。

 

「優秀だがピラミッド構造の下の方の企業でくすぶっている人材は存在する。そのような人材を引き抜いていきたい。その職場で活躍していて、転職など考えていないような人材を雇いたい。」

PSOLの社長は、決算説明会の動画でそんな様な事をいってた。

 

ヘッドハンティング成功のためには、人材に見合う待遇を用意しなければいけない。

前回説明したMD制は、ヘッドハンティングしたい人材にとても良く刺さるフックらしい。

 

ピラミッド構造の下部では、上から流れてきた仕事を上の決めた仕様で上の決めた納期に従ってこなしていく。

一方PSOLのMDになれば、権限を大幅に移譲され、経営者と同じように自分の考えで仕事を進め、その成果をリターンとして受け取ることができる。

この差は大きい。

 

 

4.まとめと次回予告

・IT業界はゼネコンと同様のピラミッド構造が形成されている

・ピラミッド構造の最上部の案件は「プライム案件」と呼ばれる

・PSOLはニッチな立ち位置ながらプライム案件が85%

・その結果、IT業界のなかでは営業利益率が高い

・PSOLピラミッド構造の下の方から人材をヘッドハンティングしている

 

 

次回、PSOLのビジネスの市場規模について書きます。

その次がRPAについて。

それも書いたら企業のバリエーションについて書きます。

 

 

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PSOLを買ったわけ③・・MD制とは何か?

猿のDJのイラスト

1.MD制とは何か

PSOLは「MD制」という社内制度を展開している。

MDとは「Managing Director」の略だ。

 

顧客企業に導入された各種の汎用システムを、それぞれの企業が利用しやすいようにアレンジし最適化するのがPSOLのビジネスだ。

このビジネスを実行するのは10人に満たない人数のチーム。このチームのリーダーがMDと呼ばれている。

 

MDは一般的な企業の課長や部長よりずっと大きな権限があるらしい。

 

顧客企業に入り込み、問題を発見し、解決策を打ち立てて実践まで行うPSOLのビジネスを、1つのチームで一貫して行う。

そんな体制のため、チームの独立性が強い。会社の経営陣も「チームは企業であり、MDは経営者」と考えている。

そのため、MDには大きな権限とリターンが付与されている。

 

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上の決算説明資料にもあるが、MDは仕事を受託して実行する事によってインセンティブを受け取る事ができる。権限だけでなくリターンも付与されているわけだ。

 

2019年12月末時点におけるMDは18名。その年間平均インセンティブは646万円。これはそれなりの金額なのではないだろうか。

 

 

2.仕事は自由にやってこそ楽しい

このブログの読者は、ほとんどが何らかの仕事を経験していると思う。

そして自分の思い通りに仕事を勧めることが出来ず、その結果ストレスを溜めた経験は誰もが持っているだろう。

 

「権力は、それを持たないものを消耗させる」

こんな発言をしたイタリアの政治家がいたが、全く同感できる。

 

無能な上司に不本意かつ効率の悪い仕事のやり方を強制され、その結果失敗して自分が責任を取らされる。世の中はしばしばこんな事が起こる。

これは本当にストレスが溜まる。

 

仕事は自由にやってこそ楽しい。

特に有能な人はそうだろう。

権限を大幅に移譲され、経営者と同じように自分の考えで仕事を進め、その成果をリターンとして受け取ることができる。これが理想的な働き方だ。

MD制はそんな働き方を提供している。

 

その結果、人材の流動性が高い業界であるにもかかわらず、2016年12月以降、MDの離職者は1人も居ないとの事だ。

 

 

3.MDのねずみ講

チームの業績がMDの収入に直結する。

そんなシステムだと、MDは優秀な部下を手元に置いておきたくなるんじゃないか?

そうなると部下にとってはストレスが溜まる職場になりかねないのでは?

 

そういう風に考えるかも知れない。

しかしMDには部下を教育して出世させ、MDとして送り出すインセンティブが用意されている。

 

あるチームの構成員から新たにMDが誕生した場合、新MDが活躍して成果を上げた報酬はその一部が元の上司であるMDにも配分されるのだ。

部下が次々と出世してMDになった場合、元のチームのMDにはその分のお金が継続的に入ってくる。まるでア○ウェイ、あるいはネズミ講のようだ。

 

このように社員が自動的に成長し、会社が大きくなっていくシステムが組まれている。

なかなかいいシステムだと思う。

 

 

4.MDを増やし成長する

 

PSOLのビジネスはエンジニアの能力が絶対に必要だ。成長するためには優秀な人材が欠かせない。

PSOLは成長戦略として、このMDの人数を年間10%ずつ増やす事を計画している。

社内のチーム構成員が出世してMDになる事もあるだろうし、外部からヘッドハンティングしてくる事もあるようだ。

 

「優秀なエンジニアを引き抜きたい。現在別会社に所属し、転職したがっていない人材を特に引き抜きたい。今回の新型コロナでIT業界の有効求人倍率が下がっているのはチャンスだ。人材採用に対してはアクセルを踏んでいきたい。」

こんな話がPSOLのIR資料や社長の説明会動画で何度も出てくる。

 

人材こそがPSOLのビジネスのキモだし、その人材が有効に働くシステムは用意出来る。

経営陣のそんな考えがにじんできているように思える。

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 5.まとめと次回予告

社員の持つ力と、それを有効に発揮できる企業のシステム。

この2つの積が企業の力だと思っている。

だからこそ、PSOLのMD制はすごく気に入っているんです。

 

次回は、ちょっとだけIT業界の構造について書きます。

 

 

「世界倒産図鑑」

倒産した会社がどのように発展し、どのように倒産していったか。それをコンパクトにまとめ、抽象化して教訓を引き出している本。

これも今ならKindleで半額で読めます。

私は定価で買いましたが、全然惜しくないです。定価で買っても確実に元が取れます。

かなり自信を持ってオススメします。

 

 

 

 

パワーソリューションズを買ったわけ②

 

https://2.bp.blogspot.com/-qi2PrhLzK08/V2FU-MWXutI/AAAAAAAA7cE/MOTbdckwRasaNCc-ZjkJrI8-ujMcv9bvACLcB/s800/system_integration.png

1.PSOLの面倒な仕事とニッチな顧客

顧客企業に導入された各種の汎用システムを、それぞれの企業が利用しやすいようにアレンジし最適化する。

それがパワーソリューションズ(以下PSOLと略す)のビジネスだ。

 

このビジネスはたぶん、とても面倒くさい。

 

私が普段仕事をしている医療の世界では電子カルテが使われている。これまでいくつもの病院で働いていたが、どの病院の電子カルテも色々なシステムがツギハギでつながっていて実に使いにくい。

 

メインの電子カルテがあり、検査や点滴のオーダーシステムがある。ここまでは1つのシステムで収まっている。

しかし何故かCTやMRIの画像ソフトは別のシステムだ。病理検査のオーダーや検査結果も別のシステム。放射線治療も別のシステム。抗癌剤などの化学療法をオーダーするのも別のシステム。そして看護師が使うシステムも別。

病理検査と画像ソフトは同時に開けない。複数の患者のカルテを開いていると病理検査のオーダーが出来ない。化学療法オーダーのシステムと点滴オーダーシステムを同時に開くとフリーズするから気をつけろ・・。

 

医療という1つの業務なのに、それぞれの部署が独自に導入したシステムがそのまま雑に統合されている。当然、とても使いにくい。

これらをスムーズに使えるように統合するのはとても面倒だろう。

 

PSOLはそんな面倒な仕事をメインのビジネスにしている。

 

 

PSOLは「資産運用を行っている金融機関」に特化してこの面倒くさい仕事を行っている。

 

いくら面倒な仕事でも、業界を絞れば応用が効きやすい。

どこの病院の電子カルテでも同じようなトラブルを起こしているのなら、1つの病院で効果があった対策は他の病院にも流用できる。

 

PSOLは資産運用を行っている金融機関に特化し、サービスを行っている。類似案件を多くこなしてノウハウを蓄積しながらサービスの質を高める。それを武器として更に顧客を増やす。

これがPSOLのビジネスモデルだ。

 

PSOLのサービスについて知っている人は少ないだろう。

しかし資産運用会社のなかでは知名度が高いらしい。

 

資産運用会社で働く人は、企業を渡り歩きながらキャリアアップしていく方も多い。移籍した人が新たな職場で使いにくいシステムに遭遇すると、PSOLの事を思い出す。

そうやって自然に顧客が増えていく。

 

そんな事を社長が言ってた。

 

 

2.ITコンサルティング会社との違い

各企業に適切なITインフラ導入をアドバイスするビジネスとしては、ITコンサルティング会社がある。 

 コンサルティング会社は企業に入って業務を分析し、問題を発見して改善提案を行う。企業はその提案を受けて、システムを導入したり改善したりする。

しかしコンサルティング会社がするのは提案だけだ。提案された改善策を具体的に実行して実現させるのはSIerの仕事になる。

 

一方、PSOLは業務分析、改善提案、更にそれを実行して問題解決するところまで全部やってくれる。

 

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依頼する企業としてはこちらの方が便利だろう。

提案する企業と実行する企業が別だった場合、上手く行かなかった時はどちらにクレームをつければいいかも分からない。

同じだった場合、現実味のない事を提案される可能性はなくなるし、責任の所在もはっきりする。業務は一括して受託してもらったほうが、依頼する方としてはありがたいに決まっている。

 

 

3.大手SIerとの競合について

上記のような理由で、大手SIerとは競合が起こらない。

 

電子カルテの話に例えると、カルテや画像診断のソフトを作るのは大手SIerだ。

PSOLはソフトを作らない。大手SIerが作ったソフトを使いやすいようにセッティングするだけだ。

 

だから大手SIerとは競合にならない。むしろ補完し合う関係になる。

実際大手SIerから顧客照会を受ける事すらあるようだ。 

 

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面倒くさい仕事はやりたがる人が少ない。

面倒くさい仕事に特化してその仕事に精通すれば、面倒くさくなくなる。

面倒くさい仕事をサクサクできるようになった企業は、その仕事のプロだ。

「面倒くさい仕事はその道のプロに任せてしまおう」そう思われるようになれば、それは十分な参入障壁になりうる。

 

これが、PSOLは大手SIerと競合しない理由だ。

 

 

4.総括と次回予告

PSOLがビジネスを行っている環境と立ち位置について書いてみました。

次回、私がPSOLで最も気に入っているポイント、MD制について書きます。

 

いつものように何回も続きます。

お付き合いください。

 

 

 言わずと知れた片山晃さんの本。

今ならKindleで定価の3分の1の値段で読めます。

未読の方はぜひ。

 

 

 

 

パワーソリューションズを買ったわけ①

https://3.bp.blogspot.com/-LzEiBcwTmRY/V5ND6jvpjoI/AAAAAAAA8fc/4uMk5iQuAA8IwciuM2udq6CANB8x9q73ACLcB/s800/computer_server_korobu.png

久しぶりの分析記事

自分がなぜその企業の株を買ったのか?

これは説明できるレベルになっておく必要がある。「なんとなく」で売買しても勝てる人もいると思うが、それは一部の天才のみ。私のような凡人がそんな真似をしても退場に近づくだけだ。

 

だから企業を十分に調べる。そして買った理由を明確にしておく。それを必ず文章で残しておく。

そうする事で以下のようなメリットがある。

① 自分がよくわかっていない部分が明確になる

② よく知る事により握力が増す 

③ 買った前提が崩れた時はすぐに売ることができる

④ 失敗して大損したときも反省して次に活かすことができる

 

という訳で、最近購入したパワーソリューションズについて書きます。

 

 

1.パワーソリューションズの提供するサービス

パワーソリューションズが提供するサービスは大きく分けて3つある。

①システムインテグレーション、②アウトソーシング、③RPA関連サービスの3つだ。

この3つを順番に見ていく。

まずは、①システムインテグレーションから。 

 

 

① システムインテグレーション

銀行の貯金口座にお金があれば、どの支店でもATMでもお金を下ろすことができる。

これらは当たり前だと思われているが、そうでもない。大昔は貯金をおろすことができるのは、お金を預けた銀行の支店窓口だけだった。

那覇にある郵貯銀行に預けたお金を静岡のスルガ銀行でおろすことができるのは、全てがオンラインで繋がっているからだ。

 

 

クレジットカードの引き落とし、PAYPAY等のQRコードへのチャージ、他の銀行口座への振り込み、住宅ローンの審査や利息の計算。金融機関が行っている業務は無数にあり、それぞれは全て繋がっていてシステム化されている。

 

システムはお金のことだけではない。

人事データベース、給与データベース、業務データベース、会計データベース、営業データベースなどなど、企業が行うあらゆる事はシステム化されている。

 

これらのシステムをプログラムし、ネットワークを形成し、運用し、トラブルに対応していく事を「システムインテグレーション」と呼ぶ。略して「SI」だ。

 

そしてシステムインテグレーションを行う企業の事を「システムインテグレーター」、略して「SIerエスアイヤー)」と呼ぶ。

 

 

このSIerは無数にある。

富士通NECNTTデータ、日立、大塚商会など、売上が数千億から数兆円にまで至る大企業が並ぶ。

これらの企業がいろいろなシステムを作る。いろいろなシステムが各企業に導入される。

 

いろいろなシステムは、統合した方が使いやすい。1つのシステムにデータを打ち込めば、全てのシステムに反映されてほしい。

あと、自社の業務に上手くフィットしたシステムを使いたい。郵貯銀行とスルガ銀行では同じ金融機関でも仕事の仕組みが違う。自社の仕組みにあったシステムを使いたい。

 

 様々なSIerが作った様々なシステムを統合させ、自社の仕組みに上手くフィットするように最適化してくれる。そんなサービスを行っているのがパワーソリューションズだ。

 

 

「当社は顧客企業が各種汎用サービスを導入後、エンドユーザーであるビジネス部門が利用できるまでの最後の部分を『ラストワンマイル』と呼び、これらを最適化することを主な事業としております」

このように有価証券報告書に書いてある。

 

このシステムインテグレーション事業は、パワーソリューションズの売上の7割程度を占めている。 

 

 

② アウトソーシング

アウトソーシングとは、インテグレーション事業を補完するような顧客企業の業務を代行して行うサービスだ。具体的には投信レポートのデリバリーや航空券の手配代行サービス等を行っているらしい。

簡単に言えば雑用の代行だろう。あんまり成長性や収益性が高いとは思えない。

だからあんまり深入りしません。

 

このアウトソーシング事業は、パワーソリューションズの売上の2割程度を占めている。

 

 

③ RPA関連サービス

RPAとは何か?

PRAとは「Robotic Process Automation(ロボテック・プロセス・オートメーション)」の略だ。つまりロボットにプロセスを自動的にやらせるシステムだ。

 

私が企業を分析する時は、数年分の決算書を開いてそこにある売上や利益やKPIの数字をひとつひとつ確認してエクセルの表に打ち込んでいる。

好きでやっている作業なのだけど、これを何百社もやっていると間違いなく気が狂う。

 

こんな単純な作業はロボットにやらせるのが正解だ。

パソコンの中で行われている単純作業を人間の代わりにやってくれるロボット。そんなありがたいロボットの事をRPAという。

このサイトの解説がわかりやすかったので、読んでみてください。

https://winactor.com/column/about_rpa

 

パソコンの中で働くロボットであるRPAは、様々なものが販売されている。

NTTデータの「win Actor」、RPAテクノロジー社の「Biz Robo!」などが国内企業では有名だが、世界シェアNo.1なのが「UiPath」だ。

 

パワーソリューションズは、この「UiPath」の日本国内ライセンス販売と、導入サポートを行っている。

 

このRPA関連サービス事業は、パワーソリューションズの売上の1割を占めている。

 

 

 

2.次回予告

今回は触りだけです。

次回から少しずつ買った理由を書いていきますので、よろしければお付き合い願います。

 

 

  

決算書とか読む気もしない。

そんな方でもスムーズに読める本です。

それなりに読める人には物足りないかと思いますが。

 

 

       

科学的な銘柄選択・・「科学的な適職」より

嫌な面接官のイラスト(就職活動)

 1.職業選択と銘柄選択

最近このブログには企業分析の記事ばかり書いていた。それはそれで良いんだけど、数社の株しか持っていない私では記事のネタがすぐに切れてしまう。そして持っていない企業の分析記事は書いていても面白くない。

 

という訳で需要があるかどうか知らないけど、最近読んだ本の話を書く。

「科学的な適職」という本です。

 

 [鈴木祐]の科学的な適職

タイトルの通り、就職や転職を考えている人向けの本。

面白いのは著者の主張が書かれていないこと。思い込みから来る「主張」ではなく、過去に行われた研究結果について書かれた本だということ。就職や転職を控えている人にはぜひ読んでほしい。

 

そして転職を考えていない投資家にもオススメする。

職業選択とは「選択」だ。

株式投資も企業を選んだり売ったり買ったりと、選択を繰り返している。

この本には正しく選択するための方法について書かれている。

 

「科学的な適職」は就職や転職についての本。

だけどこれは投資ブログなので、内容をすべて投資に置き換えて書いていく。

 

 

2.バイアスが常に存在する前提で判断する

バイアスという言葉を聞いたことがない方は少ないだろう。

 

自分の思い込みを裏付けてくれる情報のみを集めてしまう「確証バイアス」

未知のものを検討し受け入れるのが面倒なため現状維持に走る「現状維持バイアス

退場した人の話は聞けないので生き残った人間の話のみが真実となる「生存バイアス」

 

 このあたりは有名だけど、それ以外にもバイアスは無数にある。

発表されているものだけでもバイアスには170種以上あるらしい。だから、自分には確実にバイアスが存在するという前提で判断を下す必要がある。

「正しい意思決定を行うためには、綿密なデータ分析よりこれらのバイアスを取り除く事のほうが600%重要だ」

そんな実験データもあるらしい。

 

 

3.自分のバイアスを粛々とチェックする方法とは

 この本ではバイアスを取り除く方法がいくつか書かれている。

投資にも使えそうな方法を3つ紹介する。

 

 

① 時間を操作する

目先のバイアスから自分を切り離すために、時間軸を変えるフレームワーク。「10/10/10テスト」と名付けられた方法。具体的には、以下のように将来の自分の感情を想像する事でバイアスを除去する。

 

 ・この選択をしたら、10分後はどう感じるだろう

 ・この選択をしたら、10ヶ月後はどう感じるだろう

 ・この選択をしたら、10年後はどう感じるだろう

 

 

さすがに1つの銘柄を10年スパンで投資する方は少ないだろう。投資期間にもよるけど、時間軸は10分/10日/10週あたりが一般的でよい気がする。だからその線で例を上げてみる。

 

・10分後は

株価が下がり始めているこの株を売れば、10分後に不安から解消されて楽になってるだろうな。

 

・10日後は

下がる不安からは解消されたけど、売ったという選択が正しかったかどうか気になって株価を毎日チェックしているだろうな。リバっていたら買い直すか?

 

・10週後は

もう次の四半期決算が近づいて来ているな。はじめに想像していた決算の予想はどのくらい当たっているのだろうか。それでまた株価は動くだろうけど、どちらに動くか?

 

実際は株価の変動によってどう感じているかは違う。しかし、少なくとも目先の不安だけに囚われることはなくなるだろう。短期的な恐怖だけで動いて後で後悔する事は避けられそうだ。

 

そして売ったあとに株価がどう動くか事前に想像し、それに対する行動もあらかじめ決めておくことができる。

「恐怖に囚われて投げて、その後でリバっていく所に飛びついて、再び下げて往復ビンタをくらう。」

短期間の感情に翻弄されて傷を深くした経験のある人じゃなくても、試しに10-10-10テストをやってみても良いのでは無いかと思う。

 

 

② 敗北を想定する

まず未来を想像して、自分の選択が『完全な失敗』に終わった場面をイメージする。 

続いて、その完全な失敗がどのような原因で起きたのかを紙に書き出していく。自分が普段どんな失敗をしやすいか考えて、現実にありそうな理由をできるだけ出していく。

どれだけリアルに失敗のプロセスをイメージできるかが最大のポイント。

 

例1:本業の月次が良かったので決算を期待して買ったら、本業以外の新規事業が激しくコケて下方修正されてしまった。

例2:月次では順調に売上を伸ばしていたので安心していたら、大量の広告費が計上されていて利益は前年比50%以下になっていた。

例3:成長のために大胆な投資や採用を行った後だから売上も上がるだろうと期待していたけど、MSワラントを発行されてしまった。

例4:Twitterですごく良さそうな話を見たので買ったけど、煽りの本尊は既に売っていた。

 

このように失敗の原因を思いついたら、その前後についても詳しくイメージする。

「この企業が利益を3割下方修正すれば株価が〇〇%下がるかもしれない。そうすると自分の運用資産が〇〇万円まで減るな。そうなれば来月計画していた旅行の楽しみが半減するかもしれない。」

ここまでリアルに想像する。

 

買う前から株ツラい状態をイメージする訳だ。ツラいのは当然で、この敗北を想定する方法は「プレモータム」と名付けられている。プレモータムは日本語にすると「事前の検死」。「死ぬ前に解剖して死因を調べる」という訳だ。

 

でもこの方法で未来の予測精度が30%上昇したというデータがあるらしい。

少なくともその場の勢いでレバをかけまくって爆死して退場、という事態は防げそうだ。

 

 

③ 視点を操作する

自分の行動を三人称として記録していく方法。

古代ローマの事実上の初代皇帝ユリウス・カエサルが、自分の遠征を自ら記録した「ガリア戦記」の中で使った文体にちなむ。

 

「彼は吉野家HDの損切りについて悩んだ。そして優待の利回りを計算し、ポケ丼がどのくらい話題になっているかを検索して今後の月次の推移を想像した。その結果、彼は吉野家のHDを損切りした。」

 

 このように取引を三人称で記入していく。

 

悩みや行動を三人称で書き記していくと、他人の視点で物事を考えるのがうまくなり、複数の観点からベストの対策を導き出せるようになる。

 

三人称でなくても書き残すメリットは2つある。

ひとつは意思決定の記憶をあとから改ざん出来ないこと。

人には自分の敗北や失敗を正面から受け止めることができず、記憶を都合よく書き換える性質がある。文字で残しておけばそのような記憶の改ざんはできなくなる。正しく事実を受け入れてこそ、その失敗を次に繋げることができる。

 

もうひとつのメリットは意思決定のパターンがはっきりする事。

「自分はTwitterの有名垢の発言に流されがちだな」

「企業のバラ色の未来予想を信じすぎだな」

そんな失敗パターンも自覚する事ができる。

 

 

4.おわりに

とても長くなってしまって申し訳ないです。しかも上手くまとまっていない。

ちょっとした興味で読んだ本でしたが、とても参考になったので紹介してみました。

私は何でも投資への教訓に結びつける癖があるんですが、この本は上に書いた3つ以外にも感心する内容が多かったです。

帯にあるDaiGoの推薦文がもったいないくらい内容がしっかりしていました。

まとまっていないこの記事に満足できない方は、ぜひご自分で読んでみてください。

 

 

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  もうひとつのオススメはガリア戦記

古代ローマの事実上の初代皇帝であり、最高の司令官でもあるユリウス・カエサルが自分で書いた戦記。文章が本当に上手くて美しくて、ああもうこの人は本当に何をやらしてもスゴい。

 

 

 

アズームを買った理由⑦ 原価と販管費と利益

注射を受ける女性のイラスト

1.アズームの決算

7月30日にアズームの3Q決算が発表された。その内容はほぼ予想通りだった。

 

発表される当日は決算に対する期待からか、株価が5.0%も上がっていた。発表された翌日は-11.23%と下落した。

決算発表前にどのような期待があって買われたのか、発表後はどのような失望があって売られたのか。どちらも私にはよくわからない。わからないから株価の予想はしない。

とりあえず3,500円あたりで100株追加購入してみた。数日後の未来の株価はわからないが、数年後の未来の株価はもっと高いと思っている。

 

 

2.利益は成長するか

これまで受託台数(=商品の入荷量)や稼働率(=商品の売上)の話を書いた。

しかし売上の話だけでは心もとない。商品がいくら売れたとしても赤字になっては困る。いろいろな議論はあるだろうが、企業の価値は利益が第一だ。

アズームの企業分析の最後の記事として、今回は利益の話を書く。

 

アズームのコアになる事業は駐車場のサブリースだ。駐車場をオーナーから借り上げ、それを利用者に貸すことで利益を得ている。

たとえば、1ヶ月2万円で借りたものを3万円で貸すことができれば1万円の利益になる。この場合オーナーに支払った2万円が原価になり、受け取った3万円が売上、儲かった1万円が粗利になる。

この1万円の粗利から販管費(会社の本社費用や宣伝費や社員のお給料など)を引くと営業利益が出てくる。

売上については既に考察したのだから、利益については原価と販管費の事を考えればいい。

 

 

2.サブリース駐車場の原価は地代

サブリースの駐車場の原価は、駐車場オーナーに支払う地代だ。決算短信を読めば、四半期ごとの売上に対する原価について書かれている。原価を売上で割れば原価率が出てくる。売上と原価率をまとめたのが次のグラフだ。

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原価率はだいたい55~62%あたりで推移している。

 

もちろん決算短信に載っている原価は、会社全体の売上に対する原価だ。サブリース事業だけでなく、駐車場仲介やその他の新規事業を含めた原価。だから駐車場サブリースの原価をそのまま示しているわけではない。

しかしアズームの売上の85%以上が駐車場サブリースを占めているのだから、大体の傾向はわかるだろう。原価率はだいたい6割弱。10万円の売上があるとしたら、6万円程度を駐車場オーナーに地代として払っていると理解できる。

この原価は完全に変動費だ。1台分の駐車場を借りれば1台分の地代を払う必要がある。何らかの事情があって原価率が急激に上昇しない限り、売上に比例して大きくなると考えればいい。

 

今回発表された3Qの決算でも、原価率は60.4%だった。

3年後も同じような原価率が続くと判断した。
 

 

3.販管費は人件費が大きい

原価の次は販管費だ。

販管費とは「販売費および一般管理費」の略だ。販売費は販売にかけた人件費と広告費が、一般管理費は間接部門に関わる人件費や事務所の家賃、光熱費などが含まれる。

 

駐車場サブリース事業にはあまり広告費がかかっていないと推察する。集客は自社で運営するウェブサイトで行っているのだから、宣伝する必要がない。

それでは何に費用をかけているのか。

 

おそらく人材に費用をかけているのではないか。2019年9月で、アズームの社員数は132人、平均年間給与は409.4万円。給与のみで5億4,000万円を支払っていることになる。この年度の販管費は10億7,500万円だから、50.3%だ。

その前の年である2018年9月は、社員数が75人、平均年間給与は452.6万円。会社が支払った給料の総額は3億3945万円。同年度の販管費6億6300万円の51.2%を占める。

支払い給与の約2倍が販管費、という目安で将来を予測してもいいだろう。

 

さらに、社員に支払うお金は給与だけではない。社会保険料や交通費や各種手当ても会社が負担する。社員が多くなれば本社のオフィスも広くする必要がある。

いずれも社員が増えるほど金額が増える。販管費は社員数に比例すると考えた。

 

さて、去年までのアズームはとても積極的に社員数を増やしていた。2019年9月で75人だったのが、2019年9月には132人。たった1年で76%も社員を増やしている。

そして2020年6月末現在の社員は135人であり、9ヶ月経過してほとんど増えていない。

 

アズームの四半期ごとの販管費は、

2020年1Q 325百万円

2020年2Q 326百万円

2020年3Q 329百万円。

社員数の増加が止まって、販管費の増加も止まっている。 

 

 

4.売上と原価、販管費、営業利益

前回までの記事で売上が着実に伸びるであろうという話を書いた。そして原価は一定だ。ならば売上から原価を引いた粗利も確実に伸びるはずだ。

その状態で販管費の伸びが止まっていれば、粗利の伸びイコール営業利益の伸びになる。

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グラフのように、売上は伸びているが販管費は伸びは止まっている。

 

そして粗利と販管費、営業利益のグラフはこちら。

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 粗利はずっと伸びている。販管費の伸びが止まれば、その差額はすべて営業利益の伸びになる。グラフの紫と緑の差が営業利益だ。

この調子で行けば、会社予想の営業利益は達成できるだろう。3Qまでの営業利益が108百万円なのだから、4Qの営業利益が82百万円になれば、今季の会社予想である営業利益190百万に届く。

そして2021年の営業利益520百万円もそんなに難しくないと計算しているのだけど、どうだろう。

 

 

 5.販管費は会社次第

今後の営業利益について計算した内容を書いてみた。

販管費がこのまま抑え気味で続けば予想通りになると考えている。

 

しかし販管費は会社次第だ。社長が「もっともっと社員を雇って全国展開するぞお」と言い始めれば、あっという間に利益は消滅する。そうなれば株価も見えないレベルに下がる、かもしれない。

 

売上の成長が続けば持ち続けたいとは思っていますが。

投資はいつだって自己責任で。 

 

 

 

この本、とてもおもしろかったです。

企業分析だけでなく個人投資家の退場防止にも役立ちます(断言)。

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