1.MD制とは何か
PSOLは「MD制」という社内制度を展開している。
MDとは「Managing Director」の略だ。
顧客企業に導入された各種の汎用システムを、それぞれの企業が利用しやすいようにアレンジし最適化するのがPSOLのビジネスだ。
このビジネスを実行するのは10人に満たない人数のチーム。このチームのリーダーがMDと呼ばれている。
MDは一般的な企業の課長や部長よりずっと大きな権限があるらしい。
顧客企業に入り込み、問題を発見し、解決策を打ち立てて実践まで行うPSOLのビジネスを、1つのチームで一貫して行う。
そんな体制のため、チームの独立性が強い。会社の経営陣も「チームは企業であり、MDは経営者」と考えている。
そのため、MDには大きな権限とリターンが付与されている。
上の決算説明資料にもあるが、MDは仕事を受託して実行する事によってインセンティブを受け取る事ができる。権限だけでなくリターンも付与されているわけだ。
2019年12月末時点におけるMDは18名。その年間平均インセンティブは646万円。これはそれなりの金額なのではないだろうか。
2.仕事は自由にやってこそ楽しい
このブログの読者は、ほとんどが何らかの仕事を経験していると思う。
そして自分の思い通りに仕事を勧めることが出来ず、その結果ストレスを溜めた経験は誰もが持っているだろう。
「権力は、それを持たないものを消耗させる」
こんな発言をしたイタリアの政治家がいたが、全く同感できる。
無能な上司に不本意かつ効率の悪い仕事のやり方を強制され、その結果失敗して自分が責任を取らされる。世の中はしばしばこんな事が起こる。
これは本当にストレスが溜まる。
仕事は自由にやってこそ楽しい。
特に有能な人はそうだろう。
権限を大幅に移譲され、経営者と同じように自分の考えで仕事を進め、その成果をリターンとして受け取ることができる。これが理想的な働き方だ。
MD制はそんな働き方を提供している。
その結果、人材の流動性が高い業界であるにもかかわらず、2016年12月以降、MDの離職者は1人も居ないとの事だ。
3.MDのねずみ講
チームの業績がMDの収入に直結する。
そんなシステムだと、MDは優秀な部下を手元に置いておきたくなるんじゃないか?
そうなると部下にとってはストレスが溜まる職場になりかねないのでは?
そういう風に考えるかも知れない。
しかしMDには部下を教育して出世させ、MDとして送り出すインセンティブが用意されている。
あるチームの構成員から新たにMDが誕生した場合、新MDが活躍して成果を上げた報酬はその一部が元の上司であるMDにも配分されるのだ。
部下が次々と出世してMDになった場合、元のチームのMDにはその分のお金が継続的に入ってくる。まるでア○ウェイ、あるいはネズミ講のようだ。
このように社員が自動的に成長し、会社が大きくなっていくシステムが組まれている。
なかなかいいシステムだと思う。
4.MDを増やし成長する
PSOLのビジネスはエンジニアの能力が絶対に必要だ。成長するためには優秀な人材が欠かせない。
PSOLは成長戦略として、このMDの人数を年間10%ずつ増やす事を計画している。
社内のチーム構成員が出世してMDになる事もあるだろうし、外部からヘッドハンティングしてくる事もあるようだ。
「優秀なエンジニアを引き抜きたい。現在別会社に所属し、転職したがっていない人材を特に引き抜きたい。今回の新型コロナでIT業界の有効求人倍率が下がっているのはチャンスだ。人材採用に対してはアクセルを踏んでいきたい。」
こんな話がPSOLのIR資料や社長の説明会動画で何度も出てくる。
人材こそがPSOLのビジネスのキモだし、その人材が有効に働くシステムは用意出来る。
経営陣のそんな考えがにじんできているように思える。
5.まとめと次回予告
社員の持つ力と、それを有効に発揮できる企業のシステム。
この2つの積が企業の力だと思っている。
だからこそ、PSOLのMD制はすごく気に入っているんです。
次回は、ちょっとだけIT業界の構造について書きます。
「世界倒産図鑑」
倒産した会社がどのように発展し、どのように倒産していったか。それをコンパクトにまとめ、抽象化して教訓を引き出している本。
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