株式投資とビットコイン/お金を産むもの産まないもの
1.仮想通貨取引は難しい。間違いなく。
ちょっと前、株式投資と不動産投資を比較した話を書いた。不動産投資は難しい。不動産業界にいた訳でもない素人が始めるのは勧めない、という話だ。
今日はその続き。
世の中には無数の投資先がある。そんなに見聞が広くない私でも、株式、債権、FXなどの外貨、不動産、骨董品、美術品、ダイヤモンド、貴金属、商品先物、オプション、仮想通貨などがすぐに思いつく。
その中で、今日はビットコインに代表される仮想通貨取引について書く。
私は仮想通貨取引に手を出したことは一度もない。経験もないのだから、本来こんな記事を書くべきではないのかもしれない。でも間違いなく難しい事はわかる。
その根拠について書きたいと思う。
2.仮想通貨は何も産まない
以下にいくつかの投資先を挙げた。これを2つのグループに分けてみてほしい。
目黒区のアパート、貴金属の「金」、婚約指輪に付いているダイヤモンド、
上の6つの投資先は、ある特徴で2つに分けることが出来る。
答えは先にあるんだけど、まず自分で考えて下さい。
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考えましたか?
答えは、
A:目黒区のアパート、日本国の国債、ホンダの株
B:貴金属の「金」、婚約指輪に付いているダイヤモンド、ビットコイン
に分けることができる、でした。
上記のAとBのグループは何が違うか?順番に説明していきます。
目黒区のアパート
アパートは不動産だ。
5,000万円で買った後に、6,000万円で買いたいという人が現れれば、売って儲けることが出来る。このような転売目的でアパートなどの不動産を買う人はいる。
しかし、もっと高く買ってくれる人が現れなくても、住みたい人が現れれば家賃収入が入る。毎月30万円の家賃が入るのなら、年間で360万円。5,000万円に対して7.2%の利息が発生するのと同じだ。
アパートなどの不動産は、家賃収入というお金を産む。
日本国の国債
国債とは、国にお金を貸す借用書だ。日本国の国債を買うということは、日本政府にお金を貸すことと同じだ。お金を貸すのだから、利息をもらうことが出来る。
令和元年5月現在、日本国の国債を買うと、0.05%の利息をもらうことが出来る。つまり100万円分の国債を買うと、年間500円もらえる。実際手に入れることが出来る金額は、500円から税金を引いた398円なんだけど・・。
小学生の小遣いかっ!と突っ込みたくなるが、それでも国債は利息というお金を産む。
ホンダの株
ホンダの株を買うということは、ホンダという会社の一部を買うことと同じだ。
ホンダは日々クルマやバイクを作って売って、お金を稼いでいる。ホンダの一部を所有するわけだから、ホンダの稼いだお金の一部は自分のものになる。
3,000円で100株買ったホンダの株を4,000円で売ることができれば、10万円の儲けになる。しかし株価が上がらなくても、ホンダの株主はホンダの稼いだお金の一部を受け取ることができる。ホンダの稼いだお金の一部は、「配当」として株主に配られる。
5月10日の終値で、ホンダの株価は2832円。ホンダの一株あたりの配当額が112円の予定となっている。つまり、ホンダの株を100株買うと、配当金が11,200円もらえるわけだ。利息としては3.95%になる。まずまずの額だ。
株を買うということは会社の一部を買うことだ。会社なので、当然お金を産む。株主は配当金という形でそれを受け取ることができる。
貴金属の「金」
金も買うことができる。2019年5月10日現在、1gの金を4,950円で買うことが出来る。100gの金の延べ棒は49万5000円だ。
この金を100g買ってみる。金の値段が上がり、1年後の買取価格が1g5,500円になっていれば、5万5,000円の儲けが出る。
金の値段はいろいろな事で変化する。新しい金鉱山が発見され、金が増産されれば金価格は下がる。工業製品の原料として金の需要が高まれば金価格は上がる。戦争が起きて世の中が不穏になれば、金価格は上がる。
でも、金はただの金属の塊だ。金属の塊はお金を産み出さない。
婚約指輪のダイヤモンド
ダイヤモンドは金とともに、富の象徴かもしれない。値段の割には小さいので、難民が身につけて運ぶには便利だろう。私もいつかこの国を追放されることがあれば、胃の中にダイヤモンドを隠して出国する予定だ。
まだダイヤモンドは手に入れていないが。
しかし、ダイヤモンドはただの物体だ。もちろんお金は産み出さない。
博物館に並べれば見学者が来るほど大きなダイヤモンドなら、入場料収入を生むかもしれない。しかし、我々はオスマントルコのスルタンではない。そんなデカいダイヤモンドを手に入れることはできないだろう。
ビットコインに代表される仮想通貨は、極論を言えばネット上のデータだ。ビットコインを欲しがる人が多ければ値段が上がり、売りたい人が多ければ値段が下がる。買いたい人の需要と、売りたい人の供給のみが、仮想通貨の価格を決める。買いたい人が全くいなくなれば、ビットコインは即座に無価値となる。
もちろん欲しがる人が急増すれば、急激に値段が上がる。それで大儲けした人がいるのも事実だ。
でも、ただのデータはお金を産み出さない。
Suicaも、銀行口座の残高も電子データだ。なぜビットコインだけ特別に敵視する?
そう思うかもしれない。しかし、Suicaや銀行口座の残高は現金で保証されている。現金は日本国が保証している。日本が滅びに瀕すれば円は無価値になるだろうけど、あと数百年は大丈夫だろう。
3.お金を産むもの、産まないもの
株や不動産、国債などはお金を産む。お金を産むものは無価値にはならない。
株なら、その企業がお金をどれだけ稼ぐか、どのくらい配当を出すかで、理論的な株価を決めることが出来る。不動産や国債も同様だ。
そしてお金を産むものは、ずっと持っていても構わない。お金を産んでくれる限りは。
しかし、貴金属や宝石、仮想通貨はお金を産まない。価格はだた、需要と供給のみで変動する。欲しがっている人が多ければ値上がりする。売りたがってる人が多ければ値下がりだ。
貴金属の金には数千年の歴史があって、欲しがる人が急にいなくなる事は考えにくい。でも、ビットコインはどうだろう?急に人気がなくなって、ほぼ無価値になるかもしれない。急に人気が出て、大儲けできるかもしれないけど。
需要と供給のみで価格が決まる、ただの電子データ。この値動きをあらかじめ知ることはとても難しいと思う。
少なくとも私には全然わからない。
わからないものには投資しない方がいい。これは、投資の鉄則だ。
「子どもの投資教育・実体験プロジェクト」 エントリー失敗/仮名借名取引とは
1.エントリーは失敗に終わった
村上世彰さんの「子どもの投資教育・実体験プロジェクト」に参加するために手続きを進めていた。その経過と、娘と息子が実際に投資を行なうところまでをブログで記事にしていく予定だった。
だが失敗した。
この失敗は私にとってかなりダメージが大きい。せっかくの追い風は、あまり利用することができないままに通り過ぎてしまった。
私がどのようにしてつまずいて、エントリー失敗に至ったかを書きます。これから申し込む方が同じミスをして苦しまないために。
2.私はどこでミスをしたか
昨日の記事で申込手続きの流れを書いた。その前半を再掲する。
① 参加希望受付フォームから参加申し込みをする。
② 登録したメールアドレスにプロジェクト内容の詳細が書かれたメールが届く。
③ GMOクリック証券とGMOあおぞらネット銀行に親が自分の口座を開く。
④ 親が開いた口座から「未成年口座」の申込みをする。
⑤ 中高生名義のGMOクリック証券とGMOあおぞらネット銀行の口座ができる。
私がミスったのは上記の④だ。
自分自身のGMOクリック証券の口座を開いて、子ども名義の口座である「未成年口座」の申込みをしようとしたが、できなかった。
このように未成年口座の申込みの部分にずっと「現物取引規制がかかっているため、お申込みいただけません」という文字が表示され、申込みができない。
口座開設したばかりだからか?あるいはマイナンバーの提出が終わっていないからか?そう思ってちょっと様子を見たが、状態は変わらない。
ふと見ると、マイページの場所にメールが来ている。タイトルに「取引規制のおしらせ」という文字がある。そのメールを開いてみた。
登録した電話番号が、他の人と同一の携帯電話番号だったらしい。それで不公正取引や脱税、マネーロンダリングの疑いをかけられたようだ。
不公正取引!マネーロンダリング!そんな大層なことをやる訳ないし。
しかし、他の人と同一の携帯番号だって?
ここでようやく思い当たった。ずっと昔に妻の名義でGMOクリック証券に口座を開いた事があった。妻の名義の口座を確認したところ、やはりその携帯電話が私の番号で登録されていた。これとかぶったんだ。
妻の口座を開設するとき、面倒な電話がかかってくるのを嫌がった妻の意見を組み入れて、私の携帯電話番号で登録したんだ。
妻の口座の携帯電話番号の登録内容を訂正し、GMOクリック証券の窓口に電話した。携帯電話番号がダブった理由を説明し、凍結を解除してもらうように頼んだ。
窓口の人は「10日ほど待て」と言った。
しかし、2週間ほど経っても凍結は解除されなかった。
私はもう一度窓口に電話した。
「仮名借名取引のおそれが解消されないため、解除はいたしません。」
そう言われて凍結解除を断られた。
同様に妻名義の口座も凍結されたままだった。両親いずれかの口座からしか、未成年口座は申し込む事ができない。
つまりこれは、「子どもの投資教育・実体験プロジェクト」のエントリーが失敗に終わった事を意味した。
3.仮名借名取引とは?
仮名借名取引とは、仮名取引(かめいとりひき)と、仮名取引(しゃくめいとりひき)を合わせた言葉だ。
仮名取引は実在しない人間の、架空の名義で行なう取引のことだ。
借名取引は自分以外の名義で行なう取引のことだ。たとえ家族であっても、口座名義以外の人が取引を行った時は借名取引に該当する事があるようだ。
仮名取引も借名取引も、脱税やマネーロンダリングの手段になるから法律で禁止されているらしい。
そんなわけで、携帯電話番号の登録ミスで子どもの口座を開設することができなくなった。GMOクリック証券で口座を開かなければ、子供の投資教育・実践プロジェクトには参加できない。
せっかくの子どもの投資教育のチャンスを失ってしまった。
しかし、家族名義の口座を開設して株式投資を行っている投資家は多いと思う。
例えばNISAの制度は、投資金額が一人当たり年間120万円と決まっている。結婚している人なら、相方の名義で口座を開設すれば年間の投資金額が240万円に増える。そうやって非課税の枠を広げることが出来るのだから。
株主優待の制度も同じだ。株主優待は、100株持っている人にも10,000株持っている人にも同じものをくれる場合が多い(保有株数で優待内容が違う場合もある)。その場合、10,000株を持っている株主は、その中の100株を妻名義にする事によって2倍の株主優待券が貰える。
これらの方法はすべて違法なわけだ。
・・・気をつけよう。
4.終了のお知らせ
私が好きなことはたくさんある。そのなかのひとつに「新しい何かを企んで、それを試してみること」というのがある。
新しい企みを計画して、試してみてる。その結果をドキドキしながら待つ。これが楽しいんだ。
趣味の釣りでもそうだ。新しい釣りのアイデアを考えて、実行するために釣り場に向かうときが一番ワクワクしている。
このシーズンにこの時間帯に、このポイントでこの釣り方をすれば釣れる。そういう事が分かってしまったら楽しくない。釣れると分かってしまえば飽きてしまう。より大きな魚を狙って未知のポイントに向かったり、新しい釣りの仕掛けを考えたりする。
釣りはそういう事が楽しいんだ。
今回の「子供の投資教育・実体験プロジェクト」の参加という企みも、すごく楽しみにしていた。しかし、スタートする前に終わってしまった。
楽しみにしていた遠足が突然中止になったような、そんな苦しみが私を襲った。
というわけで、子供の投資教育・実体験プロジェクトのシリーズは、始まる前に終了しました。
皆さんは気をつけて下さい・・・。
一度紹介した村上世彰さんの本。お金は汗水垂らしながら稼ぐもの、という信条に凝り固まった人から弾圧され続けた投資家の魂の叫びが聞こえます。
「お金は大事な人を助ける事も出来る『ただの道具』だ」。
村上世彰さんの「子どもの投資教育・実体験プロジェクト」のエントリー方法
1.子どもの投資教育・実体験プロジェクト
村上ファンドの元代表として有名な村上世彰さんが、「子どもの投資教育・実体験プロジェクト」という慈善事業を行っているという話を以前に書いた。
村上世彰さんが代表をつとめる「村上財団」が、中高生に一人あたり最大10万円の投資資金を提供してくれる。この10万円を元手として、中高生が株式投資を実体験することができる。
このプロジェクト、中高生には何のデメリットもない。儲かったらその分は自分のものに出来る。損をしても残った分を返せばチャラにしてくれる。事実上ノーリスクで投資を学べる上に、儲かった時のお金まで手に入る。こんないい話は滅多にないだろう。
この話を知った時、強い追い風が吹いているのを感じた。村上世彰さんと私は、投資教育について完全に志を一致させている。
子どもに世の中のしくみを知ってほしい。人生の選択を間違わず豊かに暮らしてほしい。そしてこの国を豊かにしてほしい。そのために株式投資について知ってほしい。
本気でそう思っている。
このブログも、私の子ども達に投資教育をするために書かれているのだから。
息子が株式投資を始めるのは、今年の11月からの予定だった。村上世彰さんのプロジェクトに乗ることで、それを前倒しに出来る。そうすれば経験も早く積むことが出来る。
また、子どもたちの投資の結果をブログに書けばネタも増える。
そのプロジェクトに参加している世間一般の中高生が、このブログを読んでくれるかもしれない。
これが追い風と呼べないのなら、世の中に追い風は存在しないだろう。
2.子どもの投資教育・実体験プロジェクトの流れ
このプロジェクトに参加するための流れはこうだ。
① 参加希望受付フォームから参加申し込みをする。
② 登録したメールアドレスにプロジェクト内容の詳細が書かれたメールが届く。
③ GMOクリック証券とGMOあおぞらネット銀行に親が自分の口座を開く。
④ 親が開いた口座から「未成年口座」の申込みをする。
⑤ 中高生名義のGMOクリック証券とGMOあおぞらネット銀行の口座ができる。
⑥ 参加申し込みフォームから本式の申込みを行なう。
⑦ 村上財団が審査を行なう。通れば、最初のお金(3万円)が振り込まれる。
⑧ 中高生が株式投資を行なう。
⑨ 3ヶ月後運用状況の中間報告Ⅰを行なう。その内容により2万円が追加される。
⑩ 6ヶ月後運用状況の中間報告Ⅱを行なう。その内容により5万円が追加される。
⑪ 1年後に最終報告を行なう。
⑫ 利益が発生した時は元本のみを返す。損失が発生した時は残金を返す。
こんな感じだ。
詳細を順番に見ていこう。
① 参加希望受付フォームから参加申し込みをする。
↓ このリンクをクリックすると、プロジェクトのサイトに飛ぶ。
imakimi.jp -子どもの投資教育・実体験プロジェクト-(村上世彰のお金の教育・村上財団)
この画面の中央、「参加を希望する」をクリックする。
そうすると「受付フォーム」が表れるので(↓)、そこに名前とメールアドレスを入力する。
② しばらく経つと、登録したメールアドレスに村上財団からメールが届く。
そのメールにあるURLをクリックすると、こんなサイトに飛ぶ。
③ 親の、GMOあおぞらネット銀行とGMOクリック証券の口座を開く
「子どもの投資教育・実体験プロジェクト」のためにはGMOあおぞらネット銀行とGMOクリック証券の2つの口座が必要なことがわかる。
未成年がこの2つの口座をひらくためには、親の名義の口座が必要だ。だからまず親がGMOあおぞらネット銀行と、GMOクリック証券の口座をひらく。
この2つの口座を開いた後、その親が後見人となって、プロジェクト参加者である子どもの未成年口座をひらくことが出来る。
親の口座は、全てネット上で出来るので割と簡単だった。
④ 親の口座にログインして、未成年口座を申し込む
親が口座を開いてログインする。すると、画面の一番左側のカラムの下に「未成年口座(ジュニアNISA申込) 口座開設」というバナーがある(↓)。それをクリックして未成年口座を開く。
⑤ 中高生名義のGMOクリック証券とGMOあおぞらネット銀行の口座ができる。
未成年口座の開設はネットで完結しないのでちょっと面倒。でもこれがないと話が始まらないので頑張って開く。
⑥ 参加申し込みフォームから本式の申込みを行なう。
②のメールにあるURLをクリックして出てくるサイトから進んでいくと、参加申し込みフォームが表れる。そこで本式の申込みを行なう。ここで中高生名義の口座番号等の入力が必要になる。
参加理由を書き込む欄もあるので、ちゃんと参加者である中高生本人が作文して申し込む。
⑦ 村上財団が審査をし、通れば最初のお金(3万円)が振り込まれる。
審査がおりたらお金が振り込まれる。はじめは3万円からスタートだ。
⑧ 中高生が株式投資を行なう。
中高生が投資家デビューする事ができる。しかもノーリスクで。なんともありがたい話じゃないか。
3.それなりに手続きは大変だ
GMOあおぞらネット銀行と、GMOクリック証券の2つの口座を開設する。その後で子供の分の口座を開設する。必要書類を集めて、入力して、それが反映されるのを待ってと、なかなか手続きは大変だった。しかも私は確定申告を終えたばかりの時期にやった。大嫌いな事務仕事が続いてちょっとうんざりしていた。
でも、子供のためのせっかくの機会なんだ。がんばって手続きをやった。
この話、続きます。
↓ なぜ村上世彰さんが「子どもの投資教育・実体験プロジェクト」を始めたのか?
この本を読めば、その動機がわかります。
村上ファンド事件の報道に接した方なら、村上世彰さんに対するイメージが激変する事を保証します。
株式投資と不動産投資
1.不動産投資は難しい、たぶん。
大家さん、という職業を初めて知ったのは「おじゃまんが山田君」というアニメだった。主人公の山田君のお父さんは、ボロアパート「山田荘」のオーナーだ。だからアパートの住人から「大家さん」と呼ばれていた。
「大家さん」っていうのは、働かなくても家賃としてお金が貰えるのか!
そんなことを思った記憶がある。働かなくても貰える金、というのは実に魅力的だ。
記憶はそれっきりだ。その後「自分も大家さんになりたい」と努力した覚えはない。そして今後も努力する予定はない。
前回の話で、社畜にならずに済む方法をいろいろ書いた。会社からもらう給料だけに依存するのではなく、収入を多様化するという方法も書いた。収入を多様化する方法のひとつとして、アパートやマンションの大家さんになるというものがある。不動産投資というやつだ。
不動産投資のやり方は知っている。
① 良さそうなアパートやマンションを見つける。あるいは土地をみつける。
② それを買う。土地を買った場合は建物も建てる。
③ 入居者を募集して家賃をいただく。
たったこれだけだ。
これで誰でも大家さんになれるし、働かなくても家賃がもらえるようになる。悪くない話のように思える。
でも、やった事がないので本当の事は知らないが、不動産投資は難しい。多分。
2.不動産投資は物件を探すのが難しい
良いものを安く買う、というのは家計の基本だ。株式投資でも、良い会社の株を安く買えば、一番確実に儲かる。
そして、不動産投資もおんなじだ。良い物件を安く買えば、間違いなく儲かる。毎月10万円の家賃でも入居者が付くような物件が2000万円で買えるのなら、私でも買う。2年足らずで元が取れるのだから。
しかし、その物件がその値段で売られる事はあり得ない。そんなにいい物件なら、不動産屋がその価格で売り出さない。自分で買い取った方がずっと儲かるのだから。
だから営業マンが電話で売り込んでくるような物件が、安くてよい物である可能性はとても低い。そんな物件のオーナーになっても儲かるわけがない。
不動産は、すべての物件が1点ものだ。それをプロである不動産屋がチェックして値段を付けていく。本当に確実に儲かるような物件が安く手に入るなら、その不動産屋が自分で買い取るだろう。不動産投資をする人は、プロである不動産業者より物件の目利きができると考えているのだろうか。
その点、株はいい。注目されずに安値で放置されている優良企業の株は存在する。値段を付けるのはマーケットであり、株のプロではないのだから。
そしてそれを安く買うチャンスは誰にでもある。株は1点ものではないのだから。
3.不動産投資は税金や手数料などのコストが高い
不動産を購入するときは、物件の3%程度の手数料を不動産屋に払わなくてはいけない。不動産取得税という税金も、原則4%かかる。買った不動産を自分のモノとして登記するときにもお金がかかる。不動産は買うだけでずいぶんコストがかかるんだ。
買った時だけでなく、所有しているだけで毎年固定資産税がかかる。
さらにアパートやマンションは修繕費がかかる。1年ごとに築年数が増えていく。財産価値はどんどん減っていくのだ。
下りのエスカレーターを駆け上がるような気分にならないだろうか?とてもじゃないけど、私には不動産投資は無理だ。
その点、株はいい。購入手数料は数百円~数千円で済む。株式取得税のようなものは存在しない。儲かった時だけ税金を払えばいいのだ。
しかも、持っているだけで配当や株主優待が貰える。修繕費も必要ないし、会社が成長する限り、その本質的な価値は上がり続ける。
不動産投資と比べて、とても条件がいいんだ。
4.不動産投資は流動性が低い
急にお金が必要になって、所有するアパートやマンションを売る事になったとする。そんな時は、不動産屋に売却を申し込んで、買い手が現れるのを待つ必要がある。望む値段では売れないかもしれない。売るのを急げば安く買いたたかれる。
しかも、売るときにも不動産屋に仲介手数料を払わなくてはいけない。
その点、株はいい。基本的に、売りたいときはすぐに売れる。買ったその日に売る事も可能だ。このような「売りたいときに売れ、買いたいときに買える」という特徴を「流動性が高い」という。
株は、不動産と比べて圧倒的に流動性が高いのだ。
5.不動産投資は経験を積む余裕がない
不動産は価格も高いし、手続きも大変だ。素人の投資家が、生涯で10回以上不動産を売ったり買ったりすることはほとんどないだろう。10回程度では経験が積めない。経験が積めない事は、上達する可能性がとても低い。
その点、株はいい。売り買いして経験を積むことができる。痛い目にあっても再起することができる。
不動産投資で痛い目にあったときは、もう再起するのがとても難しい状況になっているだろう。1件あたりの投資額が多すぎる。
失敗を経験として将来の肥やしにする余裕は、たぶん、ない。
6.スマートディズの「被害者」の自信の根拠は?
不動産投資は、これほどまで不利な条件が揃っている。それを理解して、スマートディズの「被害者」の方々は、シェアハウスのオーナーになったのだろうか?
1億円近い借金をしてまで投資するのだから、よほど自信がないとできないはずだ。その自信の根拠は?上に挙げた不利な条件をクリアする、論理的な根拠があったのだろうか?
特に2.に挙げた条件をクリアする根拠だ。絶対に儲かる物件なら、絶対に売りに出されない。これは、絶対だ。リスクは必ずある。
どのようなシステムを組んでも、「絶対に儲かる物件」だけは絶対に売りに出されない。儲からないリスクは必ずある。必ずある儲からないリスクを、どのようにクリアするのか?それをクリアする根拠が必要だ。
根拠のない自信は実生活に役立つことがある。でも、根拠のない自信を同伴して投資すると、だいたいひどい目にあう。
とりあえず私は不動産投資を勧めません。息子が不動産投資をやると言い出したら、全力で止めます。
↓ けっこう面白かったです。気分転換にどうぞ。
ブラック企業に飼われないために
いらすとやにはこんなイラストもあるんだ。平然とした社畜の表情がとても怖い。
年号が変わって初めに書く話としては、ちょっと暗い内容かもしれない。でも、前回の続き。
1.それ以外の選択肢を持つために
独占は最強のビジネスモデルだが、独占を受けてしまった方は最弱だ。
ウクライナはエネルギーの供給を、ロシアからパイプラインで送られる天然ガスに依存した。その結果ロシアに逆らえなくなり、さんざん辛酸をなめた。現在は原子力発電所を建設してエネルギー安全保障に努めている。チェルノブイリを経験しても、原発に活路を見出すしかないところまで追いつめられた。
1940年頃の日本はアメリカから石油の輸入を止められた。その結果、勝てるはずもない戦争に突入してしまった。
スルガ銀行の社員は、収入を会社に頼ってしまった。その結果、パワハラの嵐の中でも辞めることができず、ただ耐え忍んでいた。
じゃあどうすればいいか?ほとんどのサラリーマンは、会社にその収入を完全に頼っている。決してスルガ銀行の社員が特別な訳ではない。サラリーマンの多くは最弱の立場に立っている。
これではまずい。
そこで、対策を3つ上げてみる。
① どこでも働けるスキルを身につける。
② 収入を1ヶ所からの給料だけに頼らない。
③ 十分な資産を築いておく。
3つとも選択肢を複数持つ、という対策だ。順番に書いていきたい。
2.どこでも働けるスキルとは
間違ってブラック企業に就職してしまった時は、辞めればいい。日本では職業選択の自由が憲法によって保証されている。会社を辞める権利は、どんな人でも持っている。
問題はその権利を行使する事が出来ない社員の方にある。
辞められない理由は「辞めたら次の就職先がないかもしれない」だろう。
労働条件がきつく年収も少ないなら、もっといい条件のところに就職すればいい。しかし、次の仕事が見つからなければ生活環境がもっと悪くなる。見つかったとしても、更に悪い条件の就職先しかないかもしれない。
そういうことを考えると、多少ブラックでも今の会社に残ることを選択してしまうのだろう。スルガ銀行の社員のように。
この場合、次の就職先を心配する必要のない、確固としたスキルを身に着けておけば安心だ。
分かりやすい職業で言えば、医師や看護師、薬剤師などの資格だ。弁護士や会計士などの資格も有用だ。手に職をつけておけば、社会や企業に求められる技術があれば、転職先を心配する必要はない。
その代わり、スキルは磨き続ける必要がある。これらの資格は取得した時がスタートなんだ。医学部に合格したから、医師免許が手に入ったから安心だ、とはならない。その先もずっと修行の道が続く。
あと、これらの資格は取得するのに何年もかかる。実際仕事を始めてみて「全然合わなかった、辞めたい」となった場合、ちょっとロスが大きい事も難点だ。
3.収入を1カ所の給料だけに頼らない
収入を独占されないためには、依存先を数カ所に増やしておけばいい。例えばこんなライフスタイルはどうだろうか?
ちょっと田舎の方に住んで生活費を抑える。畑を借りて農業をやってみる。忙しくない時期はリヤカーで焼き芋を売る。冬はスキー場でスキーのインストラクターをやる。せどりをちょこちょこやる。近所の中学生に勉強を教える。
それぞれ年間80万円ほど稼げば、それだけで十分暮らしていける。
そのなかのひとつがダメになることもあるだろう。例えば暖冬で雪がなくてスキーのインストラクターの収入がなかったり、冷夏で畑が上手くいかなかったり。
でも複数の収入源があれば、ひとつくらいダメになっても暮らしていける。これはこれで結構安定していると思う。
実は私も、こんな生活に憧れている節がある。
環境のいい会社に勤めていても、いつリストラされるかわからない世の中だ。ブラック企業じゃなくても会社にすべてを依存するのは危険だ。収入の分散は、これからの世の中で安心して暮らす一つの手段だろう。
もちろん、一個一個の収入源を確保するのもそれなりにスキルが必要だ。特に農業。よく勘違いしている人がいるけど、農業はのんびり身体を動かしていればできる生易しい職業じゃない。体も頭も使う、スキルが必要な職業だなんだ。舐めてると酷い目に合うので気を付けよう。
4.十分な資産を築いておく
「宝くじで1億円当たったらいつでも辞める」
このようなセリフを口にした事があるひとは多いだろう。よく聞く話だ。でも、宝くじは当たらない。ジャンボ宝くじの100万円が当たる可能性すら100万分の1しかない。
宝くじの当たる確率2019年は?交通事故や隕石に例えると・・・! - 気になる話題・おすすめ情報館
宝くじについての考えはずっと前に書いた。
宝くじは当たらないが、他の方法で資産を築けば安心だ。
資産がたくさんあれば、その運用益でも十分暮らせる。5億円あれば、1%の利息でも毎年500万円の収入になる。そもそも5億円もあれば、よほどの下手を打たない限り、一生食うに困らない。
そのような状態を「経済的自由」という。お金によって人生の行動が左右されない、という自由だ。
そのために株式投資を勧めるのがこのサイトの趣旨だ。
頑張って勉強して、自由を手に入れたい。まず私が。
↓ 株式投資をやるなら最初に読むべき本。確信をもってお勧めします。
スルガ銀行の話・・・個人が収入を独占されてしまう悲劇
1.スマートディズ、という不動産会社の倒産
2018年4月、スマートディズという会社が経営破綻した。
スマートディズは不動産会社だった。そのビジネスモデルはこんな感じだ。
まず、一般の会社員などにシェアハウス(アパートの一種)を建設させてオーナーになってもらう。そのオーナーからシェアハウスを一括して借り上げて、入居者に貸す。スマートディズは入居者から家賃を徴収し、その一部をオーナーに賃貸料として渡す。
シェアハウスのオーナーは面倒な手続きをすべてスマートディズにやってもらう上に、入居者が集まらなかった場合も家賃を受け取れるという「家賃保証」が受けられた。スマートディズは自分でシェアハウスを建てなくても手数料収入を得ることが出来た。
両者とも満足できる、悪くない話だと思う。しかし問題がいくつかあった。
スマートディズが会社員に作らせたシェアハウスは、狭くて、駅から遠い上に、家賃が高かった。そんなわけで、当然人気がなかった。
人気がないから入居者が集まらない。入居者が集まらないので家賃収入がない。それでもオーナーには家賃を払わなくてはいけない。結局、スマートディズは倒産した。
スマートディズが倒産した後、シェアハウスのオーナーは困った。入居者がいないので家賃は入ってこない。スマートディズが潰れたので家賃保証もない。
しかし、シェアハウスを建てる時に1億円ほどの借金をしてしまった。そのローンは毎月払わなくてないけない。
スマートディズが潰れた後、多くのオーナーがローンを返せず自己破産する事になった。
2.スルガ銀行の話
銀行は、基本的に返す能力のある人にしかお金を貸さない。車のローンでもマイホームローンでもおんなじだ。銀行がお金を貸す時は、個人の収入や支出や貯金や借金の有無を根掘り葉掘り調べていく。そうやって返す能力があると判断したときのみ、お金を貸してくれる。
それなのに、スマートディズのシステムに乗ってシェアハウスを建てた会社員は、なぜローンを返せなくなったのか?返す能力のある人にしか貸さないんじゃないのか?
調べていくと、みんな「スルガ銀行」という静岡県にある銀行からお金を借りていたことが分かった。
スルガ銀行は、あんまり収入やお金がない人にもガバガバお金を貸していた。
銀行がお金を貸す時には「審査」という事を行っている。その人の収入や財産を詳しく調べて、本当に返す能力があるか調べる。その審査で、提出書類の貯金通帳の額や収入の金額を書いた書類を偽造してまで、スルガ銀行は無理やりお金を貸していた。
金貸しのプロが、自分で不正を行ってまで返す能力のない人にお金を貸す。どう考えても異常だ。
その異常な状況を調べていくうちに、スルガ銀行の凄まじいパワハラが明らかになってきた。
3.「家族を皆殺しにしてやる」
銀行は、貯金で集めたお金を他の人に貸してその利息を受取るのが仕事だ。銀行は、お金を稼ぐためにお金を貸さなくてはいけない。銀行の営業は、お金を借りてくれる人を探すのが仕事だ。
スルガ銀行はこの営業に対するプレッシャーがとても強かった。お金を借りる人を見つけるノルマを達成できない営業マンは、ボロクソに非難された。
以下はその具体的な例である。
・数字ができないなら、ビルから飛び降りろといわれた
・毎日怒鳴られ昼食も2週間くらい行かせてもらえず、夜も11時過ぎまで仕事をさせられて体調が悪くなり、夜眠れなくなって、うつ病になり銀行を1年8カ月休職した
・数字ができなかった場合に、ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、お前の家族皆殺しにしてやるといわれた。
・部下が休職や退職に至ったら、営業推進を一生懸命に行った結果だとされた。その数や追い詰め方を自慢し競い、賞賛されるような状況にあった
スルガ銀パワハラ地獄「ビルから飛び降りろ」「お前の家族皆殺し」 弁護士が「明確に違法」と断言 - 弁護士ドットコム
「家族を皆殺しにしてやる」だなんて、もう本職のヤクザも言わないようなセリフた。どうやさしく見てあげても脅迫だ。
こうやって追い詰められた営業が、返す能力のない人にまでお金を貸すようになっていたんだ。
4.収入を独占された悲劇
スルガ銀行の銀行員は、パワハラの巣窟のなかで仕事をしていた。それでも仕事をやめなかった理由はなんだろうか?
いろいろあるんだろうけど、辞めたくても辞めれられないという状況があったのだろう。辞めたら食べていけない、子どもの進学資金が必要、マイホームのローンが払えなくなる。そんな金銭的な理由が、辞めたくても辞められない理由だったのではないかと想像する。
家族のために頑張って働く銀行員が、職場の上司から「家族を皆殺しにしてやる」と言われるのを我慢するのは、あまりにも哀しい。
もしスルガ銀行の銀行員に1億円の資産があったとしたら?副業で300万の収入が別にあった場合は?
パワハラの嵐の中で次々と退職者が出てくるだろう。そうなれば「やり方がまずかった」と上層部も方針転換をしていたかもしれない。
ほとんどのスルガ銀行の銀行員にとっては、仕事を辞めて給料が貰えなくなるのは死活問題だったのだろう。スルガ銀行からの給料が、個人の収入のほとんどを占めていた。つまり、収入を独占されていたわけだ。
独占する方は最強、独占される方は最弱。これは個人の収入にも当てはまる。ほとんどの給与所得者は、最弱の立場に立っている事になる。
給料を払う会社の質が悪かった場合、最弱の立場である会社員は好きなように搾り取られる。これは悲惨だ。
5.独占を許すな。最弱の立場から離れろ。
このような悲惨な状況に陥らないよう、対策を考えてみたい。
① どこでも働けるスキルを身につける。
② 収入を1ヶ所からの給料だけに頼らない。
③ 十分な資産を築いておく。
大きく分けて上のような3つの対策があると思う。
かなり長くなったので、続きます。
↓ スルガ銀行の話は、この本にも書かれています。
私がずっと前からファンだった橘玲さんの本。面白いです。息子のくまにも読ませました。
日本がアメリカと戦争を始めた理由を漢字2文字で答えるなら
前回に引き続き、とてもいかついタイトルです。でも、いつもの投資ブログです。好みが分かれる話ですので、興味のない方は読み飛ばしてください。
独占は最強のビジネスモデルだけど、独占される方は最弱の立場になってしまうという実例その2です。
1.平成のバブル、昭和の戦争
平成の30年間は、「バブルと、その崩壊からの再起」という言葉で表せる。
昭和の63年間は、「戦争と、敗戦からの再起」で表せるだろう。
平成もあと数十時間で終わるこの時に、「バブルはなぜ起こったか?なぜ崩壊したか?なぜ完全に再起できていないのか?」という事を考えるのは悪くない。しかし私はそれを文章にして説明できるほど詳しくない。
だからという訳ではないが、私の生まれた昭和について書く。
「なぜ、日本はアメリカと戦争なんて始めてしまったのか?」
漢字2文字で答えろ、と問われれば「石油」と答える。
日本は石油のために太平洋戦争を戦うことになり、そして敗北したんだ。
2.世界一の産油国、USA
原油を産出する国といえば、サウジアラビアやアラブ首長国連邦、イランなどの中東の国々を思い出すだろう。前回の記事に出てきたロシアや、中国なんかも産油国だ。
世界の原油(石油)生産量 国別ランキング・推移 – Global Note
アメリカ合衆国は世界一の産油国だが、石油は一滴も輸出していない。なぜならアメリカの石油消費量は断トツで世界1位だから。自国生産するだけでは足りず、大量に石油を輸入している。アメリカの石油輸入量は、世界二位だ(一位は中華人民共和国)。
そして今から80年ほど前の1940年頃。
まだ中東や中国の油田は本格的に開発されていなかった事もあり、アメリカの原油生産量に対する世界シェアは70%に達していた。その石油を自国内で消費するだけではなく、世界中に輸出していた。
飛行機を飛ばすにもトラックを動かすにも船を進めるにも、石油は絶対に必要だ。その石油のほとんどをアメリカが生産していた。一方、日本の原油生産量は全世界の0.1%に過ぎなかった。日本は自国で使用する原油の81%を、アメリカから輸入していた。
日本は、最重要物資である石油の供給の独占を、アメリカに許していたんだ。
3.対日石油輸出禁止と開戦
やがて世界情勢が悪化していった。詳細は省略するが、太平洋を挟んだ隣同士の国であるアメリカと日本は「似たようなビジネス」をやっていた。自国の植民地を拡大して、それを市場として独占するビジネスだ。日本とアメリカは隣同士だったこともあり、ビジネスで競合するようになった。だから日本とアメリカは仲が悪くなっていった。
仲が悪くなり、敵同士になった国を助ける必要はない。アメリカは少しずつ日本への石油の輸出量を減らしていった。石油以外にも、鉄やゴムなどの重要な物資も日本への輸出を制限するようになった。
船も飛行機も、石油がなければ動かない。これから戦争になるかも知れない敵国が、わざわざ戦闘機の燃料を売ってくれる訳がない。当時の日本もそのヤバさを十分に理解していた。
そのために国内の油田開発を進めたり、満州の油田を探してみたり、北樺太から原油を輸入しようとしたりした。果ては石炭から人造石油を作る研究をしてみたりもした。
でも、どれも上手くいかなかった。
日本は石油を求めて東南アジアに進出した。オランダ領東インド(現在のインドネシア)には豊富な油田が存在する。日本はそれを求めて南に軍を進めた。
1941年7月、日本軍はまずフランス領インドシナ(現在のベトナム)に進出した。
それを受けて1941年8月、ついにアメリカは日本への石油輸出を完全に禁止した。当時の日本が備蓄していた石油は、平時の使用量の1.5年分だった。もし戦争を始めるなら石油使用量は激増する。そうなれば1年で枯渇する量しか備蓄していなかった。時間が経てば経つほど備蓄している石油は減っていく。どうせ戦争をするなら早く始めないと。石油が無くなってしまえばゼロ戦も飛ばせないんだから。そんな雰囲気が湧き上がってきた。
1941年12月8日、日本はハワイにある真珠湾のアメリカ軍基地を攻撃した。アメリカとの太平洋戦争の始まりである。その後の結果は知っての通りだ。
徹底的にやられて、国が滅びてしまった。
参照:
4.独占を許すのはあまりにも危険
「エネルギー安全保障」という言葉がある。石油や電気などのエネルギーを安定的に確保しようとする取り組みを表した言葉だ。アメリカが世界の原油生産量の7割を占めていた時代では、エネルギー安全保障が成り立たなかった。
アメリカはこの状況を上手に利用した。日本は現状を打破しようとした。打破しようとして戦争になったんだ。そして負けた。
独占を許すのは本当に危険なんだ。一つの国を亡ぼすくらいに。
国の話ではちょっとスケールが大きすぎてピンとこないかもしれない。
という訳で、次回は個人が独占を許した場合の悲劇について書きたい。現代の日本によくある、本当にありふれた悲劇についてだ。
↓ 戦後、日本の石油を確保しようと世界の石油カルテルと戦った男の実話。
百田尚樹の代表作のひとつ。まだお読みじゃない方は是非この機会に。