中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

スルガ銀行の話・・・個人が収入を独占されてしまう悲劇

分かれ道に立つ人のイラスト(男性)

 1.スマートディズ、という不動産会社の倒産

2018年4月、スマートディズという会社が経営破綻した。

スマートディズは不動産会社だった。そのビジネスモデルはこんな感じだ。

まず、一般の会社員などにシェアハウス(アパートの一種)を建設させてオーナーになってもらう。そのオーナーからシェアハウスを一括して借り上げて、入居者に貸す。スマートディズは入居者から家賃を徴収し、その一部をオーナーに賃貸料として渡す。

シェアハウスのオーナーは面倒な手続きをすべてスマートディズにやってもらう上に、入居者が集まらなかった場合も家賃を受け取れるという「家賃保証」が受けられた。スマートディズは自分でシェアハウスを建てなくても手数料収入を得ることが出来た。

両者とも満足できる、悪くない話だと思う。しかし問題がいくつかあった。

 

スマートディズが会社員に作らせたシェアハウスは、狭くて、駅から遠い上に、家賃が高かった。そんなわけで、当然人気がなかった。

人気がないから入居者が集まらない。入居者が集まらないので家賃収入がない。それでもオーナーには家賃を払わなくてはいけない。結局、スマートディズは倒産した。

 

スマートディズが倒産した後、シェアハウスのオーナーは困った。入居者がいないので家賃は入ってこない。スマートディズが潰れたので家賃保証もない。

しかし、シェアハウスを建てる時に1億円ほどの借金をしてしまった。そのローンは毎月払わなくてないけない。

スマートディズが潰れた後、多くのオーナーがローンを返せず自己破産する事になった。

 

 

2.スルガ銀行の話

銀行は、基本的に返す能力のある人にしかお金を貸さない。車のローンでもマイホームローンでもおんなじだ。銀行がお金を貸す時は、個人の収入や支出や貯金や借金の有無を根掘り葉掘り調べていく。そうやって返す能力があると判断したときのみ、お金を貸してくれる。

それなのに、スマートディズのシステムに乗ってシェアハウスを建てた会社員は、なぜローンを返せなくなったのか?返す能力のある人にしか貸さないんじゃないのか?

調べていくと、みんな「スルガ銀行」という静岡県にある銀行からお金を借りていたことが分かった。

 

スルガ銀行は、あんまり収入やお金がない人にもガバガバお金を貸していた。

銀行がお金を貸す時には「審査」という事を行っている。その人の収入や財産を詳しく調べて、本当に返す能力があるか調べる。その審査で、提出書類の貯金通帳の額や収入の金額を書いた書類を偽造してまで、スルガ銀行は無理やりお金を貸していた。

金貸しのプロが、自分で不正を行ってまで返す能力のない人にお金を貸す。どう考えても異常だ。

 

その異常な状況を調べていくうちに、スルガ銀行の凄まじいパワハラが明らかになってきた。

 

 

3.「家族を皆殺しにしてやる」

 銀行は、貯金で集めたお金を他の人に貸してその利息を受取るのが仕事だ。銀行は、お金を稼ぐためにお金を貸さなくてはいけない。銀行の営業は、お金を借りてくれる人を探すのが仕事だ。

スルガ銀行はこの営業に対するプレッシャーがとても強かった。お金を借りる人を見つけるノルマを達成できない営業マンは、ボロクソに非難された。

以下はその具体的な例である。

 

・数字ができないなら、ビルから飛び降りろといわれた

・毎日怒鳴られ昼食も2週間くらい行かせてもらえず、夜も11時過ぎまで仕事をさせられて体調が悪くなり、夜眠れなくなって、うつ病になり銀行を1年8カ月休職した

・数字ができなかった場合に、ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、お前の家族皆殺しにしてやるといわれた。

・部下が休職や退職に至ったら、営業推進を一生懸命に行った結果だとされた。その数や追い詰め方を自慢し競い、賞賛されるような状況にあった

スルガ銀パワハラ地獄「ビルから飛び降りろ」「お前の家族皆殺し」 弁護士が「明確に違法」と断言 - 弁護士ドットコム

 

 「家族を皆殺しにしてやる」だなんて、もう本職のヤクザも言わないようなセリフた。どうやさしく見てあげても脅迫だ。

 こうやって追い詰められた営業が、返す能力のない人にまでお金を貸すようになっていたんだ。

 

 

4.収入を独占された悲劇

スルガ銀行の銀行員は、パワハラの巣窟のなかで仕事をしていた。それでも仕事をやめなかった理由はなんだろうか?

いろいろあるんだろうけど、辞めたくても辞めれられないという状況があったのだろう。辞めたら食べていけない、子どもの進学資金が必要、マイホームのローンが払えなくなる。そんな金銭的な理由が、辞めたくても辞められない理由だったのではないかと想像する。

家族のために頑張って働く銀行員が、職場の上司から「家族を皆殺しにしてやる」と言われるのを我慢するのは、あまりにも哀しい。

 

もしスルガ銀行の銀行員に1億円の資産があったとしたら?副業で300万の収入が別にあった場合は?

パワハラの嵐の中で次々と退職者が出てくるだろう。そうなれば「やり方がまずかった」と上層部も方針転換をしていたかもしれない。

 

ほとんどのスルガ銀行の銀行員にとっては、仕事を辞めて給料が貰えなくなるのは死活問題だったのだろう。スルガ銀行からの給料が、個人の収入のほとんどを占めていた。つまり、収入を独占されていたわけだ。

ウクライナ天然ガスのように、戦前の日本の石油のように。

 

独占する方は最強、独占される方は最弱。これは個人の収入にも当てはまる。ほとんどの給与所得者は、最弱の立場に立っている事になる。

給料を払う会社の質が悪かった場合、最弱の立場である会社員は好きなように搾り取られる。これは悲惨だ。

 

 

5.独占を許すな。最弱の立場から離れろ。

このような悲惨な状況に陥らないよう、対策を考えてみたい。

 

① どこでも働けるスキルを身につける。

② 収入を1ヶ所からの給料だけに頼らない。

③ 十分な資産を築いておく。

 

大きく分けて上のような3つの対策があると思う。

 

かなり長くなったので、続きます。

 

 

 

↓ スルガ銀行の話は、この本にも書かれています。

私がずっと前からファンだった橘玲さんの本。面白いです。息子のくまにも読ませました。