中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

日本がアメリカと戦争を始めた理由を漢字2文字で答えるなら

ゼロ戦・零戦のイラスト

前回に引き続き、とてもいかついタイトルです。でも、いつもの投資ブログです。好みが分かれる話ですので、興味のない方は読み飛ばしてください。

 

 独占は最強のビジネスモデルだけど、独占される方は最弱の立場になってしまうという実例その2です。

 

1.平成のバブル、昭和の戦争

平成の30年間は、「バブルと、その崩壊からの再起」という言葉で表せる。

昭和の63年間は、「戦争と、敗戦からの再起」で表せるだろう。

 

平成もあと数十時間で終わるこの時に、「バブルはなぜ起こったか?なぜ崩壊したか?なぜ完全に再起できていないのか?」という事を考えるのは悪くない。しかし私はそれを文章にして説明できるほど詳しくない。

だからという訳ではないが、私の生まれた昭和について書く。

「なぜ、日本はアメリカと戦争なんて始めてしまったのか?」

 

漢字2文字で答えろ、と問われれば「石油」と答える。

日本は石油のために太平洋戦争を戦うことになり、そして敗北したんだ。

 

 

2.世界一の産油国、USA

原油を産出する国といえば、サウジアラビアアラブ首長国連邦、イランなどの中東の国々を思い出すだろう。前回の記事に出てきたロシアや、中国なんかも産油国だ。

でも、世界一の産油国アメリカ合衆国だ。

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世界の原油(石油)生産量 国別ランキング・推移 – Global Note

 

アメリカ合衆国は世界一の産油国だが、石油は一滴も輸出していない。なぜならアメリカの石油消費量は断トツで世界1位だから。自国生産するだけでは足りず、大量に石油を輸入している。アメリカの石油輸入量は、世界二位だ(一位は中華人民共和国)。

 

そして今から80年ほど前の1940年頃。

まだ中東や中国の油田は本格的に開発されていなかった事もあり、アメリカの原油生産量に対する世界シェアは70%に達していた。その石油を自国内で消費するだけではなく、世界中に輸出していた。

飛行機を飛ばすにもトラックを動かすにも船を進めるにも、石油は絶対に必要だ。その石油のほとんどをアメリカが生産していた。一方、日本の原油生産量は全世界の0.1%に過ぎなかった。日本は自国で使用する原油の81%を、アメリカから輸入していた。

日本は、最重要物資である石油の供給の独占を、アメリカに許していたんだ。

 

 

3.対日石油輸出禁止と開戦

やがて世界情勢が悪化していった。詳細は省略するが、太平洋を挟んだ隣同士の国であるアメリカと日本は「似たようなビジネス」をやっていた。自国の植民地を拡大して、それを市場として独占するビジネスだ。日本とアメリカは隣同士だったこともあり、ビジネスで競合するようになった。だから日本とアメリカは仲が悪くなっていった。

 

仲が悪くなり、敵同士になった国を助ける必要はない。アメリカは少しずつ日本への石油の輸出量を減らしていった。石油以外にも、鉄やゴムなどの重要な物資も日本への輸出を制限するようになった。

船も飛行機も、石油がなければ動かない。これから戦争になるかも知れない敵国が、わざわざ戦闘機の燃料を売ってくれる訳がない。当時の日本もそのヤバさを十分に理解していた。

そのために国内の油田開発を進めたり、満州の油田を探してみたり、北樺太から原油を輸入しようとしたりした。果ては石炭から人造石油を作る研究をしてみたりもした。

でも、どれも上手くいかなかった。

 

日本は石油を求めて東南アジアに進出した。オランダ領東インド(現在のインドネシア)には豊富な油田が存在する。日本はそれを求めて南に軍を進めた。

1941年7月、日本軍はまずフランス領インドシナ(現在のベトナム)に進出した。

それを受けて1941年8月、ついにアメリカは日本への石油輸出を完全に禁止した。当時の日本が備蓄していた石油は、平時の使用量の1.5年分だった。もし戦争を始めるなら石油使用量は激増する。そうなれば1年で枯渇する量しか備蓄していなかった。時間が経てば経つほど備蓄している石油は減っていく。どうせ戦争をするなら早く始めないと。石油が無くなってしまえばゼロ戦も飛ばせないんだから。そんな雰囲気が湧き上がってきた。

 

1941年12月8日、日本はハワイにある真珠湾アメリカ軍基地を攻撃した。アメリカとの太平洋戦争の始まりである。その後の結果は知っての通りだ。

 徹底的にやられて、国が滅びてしまった。

 参照:

https://oilgas-info.jogmec.go.jp/_res/projects/default_project/_project_/pdf/0/652/200601_045a.pdf#search=%27%E5%8E%9F%E6%B2%B9%E7%94%9F%E7%94%A3%E9%87%8F+1940%27

 

 

4.独占を許すのはあまりにも危険

 

「エネルギー安全保障」という言葉がある。石油や電気などのエネルギーを安定的に確保しようとする取り組みを表した言葉だ。アメリカが世界の原油生産量の7割を占めていた時代では、エネルギー安全保障が成り立たなかった。

 アメリカはこの状況を上手に利用した。日本は現状を打破しようとした。打破しようとして戦争になったんだ。そして負けた。

独占を許すのは本当に危険なんだ。一つの国を亡ぼすくらいに。

 

 

国の話ではちょっとスケールが大きすぎてピンとこないかもしれない。

という訳で、次回は個人が独占を許した場合の悲劇について書きたい。現代の日本によくある、本当にありふれた悲劇についてだ。

 

 

 

↓ 戦後、日本の石油を確保しようと世界の石油カルテルと戦った男の実話。

  百田尚樹の代表作のひとつ。まだお読みじゃない方は是非この機会に。