中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

2022年を振り返る⑦・・今後どうしたらいいのか

獲得した選手と握手をする監督のイラスト

1.2022年にお金を減らした投資先の共通点

2022年にお金を減らしたのは、モビルス、THECOO、CINCの3つだ。

この3つには共通点がいくつかある。

 

まず、3つともクラウドでサービスを提供しているSaaS企業だ。

そして、3つとも若い企業だ。

 

ビルスは2011年9月に会社が設立され、2016年4月に現在のビジネスであるコンタクトセンター向けのサービスを開始、2021年9月にマザーズへ上場している。

 

THECOOは2014年1月に会社が設立され、2017年12月に現在の主力サービスであるFaniconをリリース、2021年5月にマザーズへ上場している。

 

CINCは2014年4月に会社が設立され、2016年7月に現在の主力サービスであるKeywordmapをリリース、2021年10月にマザーズへ上場している。

 

設立も、主力サービスの誕生も、上場も、同じような時期に行われている。

 

上場からのチャートも3つともそっくりだ。

上場直後が一番高くて、その後何度かリバる様子を見せながらも結局はダラダラと下げ続け、現在に至る。

 

 

 

 


ビルスでお金を減らした過程は前々回の記事で詳細に書いた。

 

THECOOとCINCも大体同じだ。

決算発表ごとにパッとしない数字が出てきてそのたびに暴落する。最終的に「テコ入れのために投資するから来期以降は利益率が下がる」というアナウンスがなされる。それを受けて株価はとどめの一撃を食らう。Yahoo掲示板が怨嗟の声で満ちる。私は途方に暮れる。

 

 

2.マネーボール

マネーボール」というノンフィクションがある。

 

資金不足のため成績不振が続いている球団のゼネラルマネージャーに就任した男が、データを徹底的に利用することで球界の常識をことごとくひっくり返し、球団改革を実行するドキュメンタリーだ。

 

ブラッド・ピット主演で映画化もされているから、ご存じの方もいるだろう。

Hulu Japan on Twitter: "「マネーボール」の配信を開始しました!https://t.co/r5j4LM6Hcz  メジャーリーグの弱小チームを独自の”マネー・ボール理論”により改革し、常勝球団に育てあげたのGMビーンの半生をブラッド・ピット主演で描きます。  https://t.co/79ckOowMeP ...

 

その本の中に、以下のような一節がある。

 

「過去のドラフトの結果から言って、高卒の投手がメジャーに昇格できる可能性は、大卒の投手にくらべて半分以下、大卒の野手と比べると四分の一以下に過ぎない。高校生投手を一位指名して120万ドルの契約金を払うなど・・・確率を無視し、理性をないがしろにしている。」

 

事実として、高卒の野球選手がメジャーで活躍する可能性は、大卒の選手のそれより低いのだ。

 

その原因として「早熟なだけの選手が高校生のリーグで良好な成績を上げることでスカウトの目に留まる」という説を挙げている。

 

一方、大卒の選手は高卒の選手に比べてプラス4年間分の実績がある。

より信用に値するデータが蓄積しているし、早熟なだけの選手は成長はゆっくりだがポテンシャルの高い選手に追い付かれて埋没しているはずだ。

大学での4年間という時間が、メジャーで生き残れない選手をふるい落としてくれている訳だ。

 

 

3.高卒ルーキーの会社

ここまで書けば私が何を言いたいのか、もう皆さんお分かりだろう。

 

前々回の記事で、モビルスへの投資が失敗した理由を書いた。

 

ビルスキャズムを超えるのに苦労し、成長が踊り場に達した。

キャズムを超えるために人材投資を行う必要が出てきたため、利益をほとんど出さないという内容の中計を出すことになった。

そのため株価は暴落し、私のお金は減った。

 

CINCもほぼ同じだ。

キャズムという言葉は使っていないが「成長を維持するために人員採用とマーケティングにお金をかける」と、今期は減益予想だ。

 

このブログを読むような方ならこの一枚で理解できるだろう。

 

THECOOも、販管費が順調に伸びているにも関わらずアイコン数の増加は頭打ちのように見える。

 

 


4.上場する側の思惑

企業側、あるいはベンチャーキャピタルの立場に立って考えてみるとよくわかる。

企業の株は成長速度が頂点になる頃に売り出したい。高値で売ってお金を稼ぎたい。

それがVCの思惑であり仕事だ。

 

だからキャズム以前の、低コストでサービスを普及させることができる市場を取っている間に上場するのは合理的だ。成長スピードも速いし、成長のためのコストが少なくて済むので利益率もよくなる。

キャズム以前の成長スピードがそのまま延長されるイメージを個人投資家が持ってくれればありがたい。無事売り抜けることができる。

 

その後キャズムに到達した企業が業績を落とし、Yahoo掲示板には「上場ゴール」という言葉があふれる。

VCにとっては理想的な展開だ。Yahoo掲示板の意見など知った事か。

 

 

5.今後どうすればいいのか

IPOからの期間が短ければ短期間の財務諸表しか見る事ができない。

 

創業やサービス開始からの期間が短ければキャズム以前の「イージーモード」だけしか経験していない可能性がある。そうであればキャズム以後のデータはゼロだ。

VCもそれを十分承知している。

 

つまり若い会社は実績が足りないし、情報も少ない。

分からない事はリスクだ。若い会社への投資はリスクが大きい。

リスクの大きな投資は慎重に行う必要がある。

 

という訳で、今後は以下のルールを自分に課したい。

 

主力サービスのローンチ5年以内の企業、あるいはIPO後に決算発表を5回以下しか行っていない企業には半分のポジションしか取らない。

 

5%のポジションを取りたいと思ったら2.5%までにしておく。

自信があって15%のポジションを取りたいと思っても7.5%にしておく。

 

私の場合、これでリスクとリターンが釣り合う気がしている。

 

 

「情報が少ないってのはリスクだから気をつけようね」

たった1行で表せる話を原稿用紙50枚以上の文字数で書いただけでした。

読んでくれてありがとうございますw

 

 

という訳で「マネーボール」の紹介。

勘と雰囲気で選手を選ぶ他球団が、データで判断する主人公の喰い物にされていく話です。

正しいデータ運用の前では「長年の経験に裏打ちされた勘」で行動する者など養分。

いやらしい駆け引きによって次々と嵌め込まれていきます・・