「せどり」と「価格のゆがみ」と「投資戦略」
1.地域あたりのせどりプレイヤー
「ブックオフに落ちているお金を拾いに行く」のが、せどりの本質だ。安く売っているものを買って、高く売る。高く売れることを確認してから買うので、正しくやればほとんどリスクがない。
もちろんそんなに簡単な話では無いのだけど、うまくやれば確実にお金を稼ぐことができる。私は自分である程度の期間試してみた。だからこれは確信を持って言える。
しかし、高く売れる本を見つけるのはちょっと難しい。それなりに慣れないとうまくいかない。
そして、競合する「せどらー」が先に入っていると厳しい。先行した「せどらー」の商品をみる目が確かであれば、その古本屋にはもう高く売れる本が残っていない。根こそぎ買い取られてしまっている。そのあたりは、きのこ狩りと近いものがある。先行者が入った山には獲物が残されていないのだ。
古本屋には常に新しい古本が入荷する。だから根こそぎやられたブックオフにも、しばらく期間をおけば再び高く売れる本が並べられるようになる。特に引越しシーズンは狙い目だ。引っ越し前には荷物を減らすのが常道だ。要らないと判断された本がブックオフに持ち込まれる。そうなればまた「お金を拾う」チャンスが産まれてくるんだ。このあたりもきのこ狩りのようだ。
いずれにしても、同一地域にあまりにもたくさんのせどらーが居るのはやりにくい。単位時間あたりに見つかる「お宝本」が、競合のせどらーによってどんどん少なくなってしまう。せどらーがたくさんいるところでは、落ちているお金はあっという間に拾われる。そうやって、古本の「価格のゆがみ」はすぐに訂正されてしまう。
2.株価のゆがみを探せ!
株式市場とは、何万人ものせどらーがいる場所だ。ネット上で常に株価が公開されているし、どこからでも取引できる。古本屋のような地域的な障害は存在しない。
だから前回あげた例である、「札幌証券取引所と東京証券取引所での価格差を利用した裁定取引」は不可能だ。皆さんがそんな美味しい話が目の前に落ちているような状況に出くわすことは無い。落とされたお金は、次の瞬間に見つけた人に拾われているんだ。少なくとも素人がそれを狙うのは無理だと思っていい。
せどりのような分かりやすい価格のゆがみはすぐに解消される。でも、価格のゆがみが分かりにくかったらどうだろう?
例えば、東証一部上場企業とマザーズ上場企業の価格のゆがみは?
100億円の資本を持ち、今後10年間毎年10億円ずつ稼ぐ企業があったとする。この企業が東証一部に上場していようと、マザーズに上場していようと、稼ぐ力や持つ資本はおんなじだ。同じ企業なんだから、同じ値段がつくのが当たり前だと思う。
でも東証一部上場企業とマザーズ上場企業なら、東証一部上場企業の方が「上だ」と感じる人は多いんじゃないだろうか。
信用があるからとか、資金が集まりやすいとか、インデックスファンドが買うからとか。
いろいろ理由があるのはよく知っているつもりだけど、同じ企業なら一部上場もマザーズ上場も同じ値段が付くはずだ。それなら一方が高くて一方が安いのは「株価のゆがみ」だと考えていいだろう。
実際、この価格のゆがみを利用した投資方法がある。コバンザメ投資法というやつだ。コバンザメ投資法については以前書いた。
しかし、上の記事で検証したように、零和の世の中ではコバンザメ投資法は機能しなくなっている。
3.価格のゆがみを利用した投資方法は、いつか消えていく
コバンザメ投資法は現在では通用しない。
しかし、2000年頃には間違いなく通用していた。
通用しなくなった理由は、その価格のゆがみに気付く人が多くなったからだ。価格のゆがみに気付いた人は、それを利用することによってお金を稼ぐ。価格のゆがみは、利用されることによって消滅する。
ゆがみを作る方だったインデックスファンドのマネージャー達も、利用されて見知らぬ人にお金をばらまいている事に気付く。そうなるとゆがみを作らない方向に仕事のやり方を変える。
ひとつの地域のせどらーが増えることで、せどりのうま味はなくなる。
同じ戦略を使った投資家が増えると、その戦略のうま味はなくなる。
そうやって価格のゆがみはなくなる。投資戦略は機能しなくなり、忘れ去られていく。
それでも、価格のゆがみは投資の儲けの源泉なんだ。
いつか通用しなくなる戦略かもしれないが、通用しなくなるまでは十分に稼ぐことができるだろう。
しばらくこの話、続きます。