中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

のれんは爆発するか②・・ルールは人が決めるもの

爆破スイッチのイラスト

1.のれん償却ルールの変更

IFRSの会計ではのれんが償却されない。

IFRSの会計でのれんが償却されるとしたら、業績が悪化するか、会計ルールが変更されるかのいずれかが起こった時だ。

前回は業績が悪化した時の話を書いた。今回はルールの変更の可能性について書く。

 

前回の記事はこちらです。

 

 

2.IFRSのルール変更の報道

国際会計基準審議会の議長が「のれんってIFRSの会計方式でも償却した方がいいんじゃないか?それについて今年の秋くらいから議論を始めようや」と発言したのは2022年の5月だ。

日経新聞のこの記事が詳しい。

この記事がでた頃、TwitterやYahooの掲示板でのれん爆弾についての話がポツポツ出ていた。私も気になって色々調べた。その時に調べた内容が今回の記事のベースになってる。

 

しかしこのIFRSののれん償却の話、突然降って湧いたわけではない。

2019年6月の国際会計基準審議会でもIFRSののれん償却導入の是非を問う審議があった。その時は否決されたが、かなり僅差だったようだ。

読んでいくと、遅かれ早かれIFRSのルール変更がなされ、のれん償却が決定されてしまうような気がしてくる。

 

しかし2022年8月24日、日経ヴェタリスに再びこのような記事が。

リンク先には以下のような事が書いてある。

「日本の会計基準のように規則的に費用化する『定期償却ルール』の導入に前向きだったはずの米国が議論を停止し、関係者に衝撃が走った。6月に突如、議題から取り下げると決めたためだ。」

 

これを読んで、「そんな気がしてたよ」と思った。

 

 

3.ルールは人が決めるもの

長年スポーツ観戦を趣味としている方はご存知かと思う。スポーツのルールはちょくちょく変更される。

ルールは人が決めたものなのだから、その変更は特に構わない。スポーツがより楽しくより安全に行われるように、ルールは積極的に変えていけばいいだろう。

 

しかしちょっと納得いかないようなルール変更もある。

「それって単に自国の選手が有利になるようにルール変更していないか?」

と思えるような変更だ。

 

そしてこれは完全に私の偏見なのだけど、

「欧米諸国が自分に不利になるようなルール変更をする訳がない」

と考えてる。

 

「ルールは自分が決めて人に従わせるもんだ。違うか?」

欧米諸国はたぶんそう考えてる(偏見です)。

 

 

考えてみてほしい。あなたは株主だ。

「来年から会計のルールを変更しようかと思ってるんだけど、そうなるとのれんを償却するからPLの見栄えが悪くなる。純利益とか結構減って、見かけ上PERが大きくなるんだけど、このルール変更、賛成してくれるかい?」

そう言われて賛成するだろうか?

 

あるいは経営者だったらどうだろう?

「本質はかわらない、ただPLの見栄えが悪くなるだけだから賛成してほしい」

そう言われて賛成するだろうか?

 

 

 

4.IFRS企業ののれんが償却されると

きずなHDの2022年5月末のBSには、のれんが3,625百万円計上されている。

一方、2022年度の営業利益は1,072百万円、純利益は598百万円だ。

のれんが10年で償却されることになれば、純利益が半分以下になってしまう。

 

本質が変わらないとしても、株主としてはとても嫌だ。

 

こちらの表はIFRS適用の日本企業の大きなのれんランキングだ。

ソフトバンク武田薬品などの大企業が並ぶ。ソフトバンクグループだけで4兆円を超えるのれんが存在する。

これと比べればきずなHDの36億円ののれんなど、まさしくゴミのようだ。

 

ソフトバンク武田薬品ののれんはM&Aによって発生している。通常、M&Aが活発な企業ほどのれんは大きくなる。

 

そして米国企業も有名どころは活発にM&Aを行ってる。

そんな企業の経営者や株主が、のれんの償却というルール変更に賛成するだろうか?

ちょっと考えにくいと思うのは私だけか?

 

また、具体的なのれんの償却の方法だが、PLを通さずに直接BSにあったって資本を直接減らすやり方もあるらしい。万が一のれんが償却する事になっても、そんな風になるべく影響が小さくなる方法でルール変更をするんじゃないかと考えてる。

読んでもあまりよくわからなかったけどリンクを張っておきます。

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/gijiroku/dai1/f-20001201-2.html

 

 

5.結論と次回予告

「ルール変更によりのれん爆弾の爆発は可能性が低い」

という結論となった。そこまでに至る思考過程を書いたつもりだ。

 

今回の記事は事実に基づく話ではない。私の感想がその大部分を占める。

だけど他にリスクはいくらでもあるんだ。

会計のルール変更でのれん爆弾が爆発するという可能性が低い事を心配するより、他のリスクを調べていたほうが良いだろう。

そう思った。

 

次回はきずなHDの新中経についての話を書く予定です。

 

 

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