息子のくまが投資家としてデビューするのは今年の11月、の予定だった。
しかし村上世彰さんの「子どもの株式投資・実体験プロジェクト」に参加する予定なので、投資家デビューが早まりそうだ。
現在プロジェクト参加のために、こどもの口座開設などの準備をしているのだけれど、知識や心構えの準備も早いほうが良いだろう。
というわけで、今回からビジネスモデルについての話を始めていきたい。
↑ ちょっと前のこの記事の最後に、
「決算書には『過去のレースの結果』しか書いてない。未来のレースの結果を予想するためには、ビジネスモデルを理解する必要がある。」
「軽トラックか?カウンタックか?どんなマシンでレースを戦っているかを知れば、レースの結果を予想しやすくなると思わないか?」
という話を書いた。
決算書には、その企業が過去にいくら儲けたかという数字が書いてある。それは過去のレースの結果だ。
結果の数字だけではなく、「その企業がどのようなビジネスをしてお金を儲けたか」という過程を知る必要がある。なぜなら、とてもお金が儲けやすいビジネスと、いくら頑張っても全然儲からないビジネスがあるからだ。
簡単なたとえを上げてみよう。
1.社長就任!
さて、あなたは「くま島」に住んでいるとしよう。
くま島は瀬戸内海に浮かぶ島で、人口は12万人。本州とは海峡で500mほど離れているが、橋でつながっているのでそれほど不便ではない。
ある日、あなたの所にスカウトがやってきて来た。
「社長になりませんか?」
よくわからないが、あなたに社長になって欲しいらしい。あなたが経営する会社は以下の3つから選ぶことができる。
1.くまカレー社・・・・カレーショップ「くまカレー」をチェーン展開する会社
2.くま島水産・・・・・くま島周囲の新鮮な魚介類を水揚げし、全国に出荷する会社
3.くま島交通・・・・・くま島と本州を結ぶ有料道路「くま島大橋」を所有する会社
それぞれの会社の営業利益は全て同じだ。2018年度は3社とも年間3億円の利益を上げている。
この3つの中で、一番ラクしてお金を儲けることができる会社はどれだろう?
ラクして人生を歩みたいあなたは、どの会社の社長になるべきだろう?
2.2022年のくまカレー
あなたはくまカレーの社長になることにした。くまカレーには固定ファンも多く、売上は順調に伸びていた。利益も増え続け、社長の評判も上々だ。
しかし2022年、くま島に「きつねカレー」が進出してきた。しかも、くま島での開店記念セールと銘打って「カレー1皿 210円」という破格の値段で売り出してきた。くまカレーは1皿500円だ。価格では全然勝ち目がない。お客の数は激減した。
あなたはカレー1皿400円に値下げしたが、それでもお客の数は戻らない。その上値下げしたせいで利益も出なくなった。赤字転落が目の前だ。
この困難な状況で、あなたの社長としての経営手腕が試される。
3.2022年のくま島水産
あなたはくま島水産の社長になることにした。くま島周囲の魚介類は美味しいと評判で、名物のサバの干物はふるさと納税の特産品にも選ばれた。社長の評判も上々だ。
しかし2022年、遠くの国で起こった戦争がきっかけで原油の値段が5倍に上がった。
くま島水産が持つ船の燃料も5倍になった。いくら魚を売っても全て燃料代に消えてしまうようになった。燃料代を補うために商品の値段を上げたが、その分売上が激減した。お客さんは、高い魚より安い肉を食べるようになってしまった。
この困難な状況で、あなたの社長としての経営手腕が試される。
4.2022年のくま島交通
あなたはくま島交通の社長になることにした。本州とくま島をつなぐ橋を管理して、通行料を取るのが仕事だ。
くま島の島民が本州に行く時は、99.99%がくま島大橋を利用する。くま島には娯楽施設が少ないため、週末には誰もが本州に遊びに行く。だからクルマを持つ島民のほとんどが、くま島大橋の定期券を購入している。毎年クルマの台数だけ、くま島大橋の定期券が売れる。
橋の補修に必要なセメントの値段が10倍に上がったこともあった。あなたは定期券の値段を年間300円上げただけで、この危機(?)を乗り切った。くま島の島民が、くま島大橋を使わなくなることなどありえないのだ。みんな去年と同じように定期券を買ってくれた。
橋は1本しかない。他に橋が建設される気配もない。大した仕事をする必要もない。社長のあなたは「昼行灯」と言われることもあるが、会社は今日も利益を上げ続ける。
あなたの社長としての経営手腕が試されることは、今後も多分、ない。
5.まとめ
ちゃんとくま島交通の社長を選ぶことができただろうか?
1つしかない橋を所有してしまえば、どんな愚か者でもラクラク利益を上げ続けることができる。一方、競争が激しい業界でビジネスをする場合、血で血を洗うような競争をするハメになる。
これがビジネスモデルの差だ。
あまりにも不平等な気もするが、愚か者でもラクラク利益を上げ続けることができるビジネスモデルは存在する。
残念ながら、そんな会社の社長になってくれと頼まれることはない。しかしそんな会社の株を買うことはできる。
このように、ビジネスモデルはとても重要なんだ。
レースに出るマシンが軽トラックなのか、あるいはカウンタックなのか。それを知るのと同じくらい重要だ。