中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

どんな時に株の需要が高まるか/自社株買いとTOB

 

アダムスミスの似顔絵イラストアダム・スミス

1.株の需要が高まる時は

 前回、買いたい人が多くなると株価は上がり、売りたい人が多くなると株価が下がる、という話を書いた。つまり株の需要と供給の量で株価が決まる、という話だ。

ものの値段は需要と供給で決まる、という事を最初に説明したのはアダム・スミスというイギリスの哲学者だ。1776年に出版した「国富論」という本に書かれているので、240年以上前の事になる。

 

アダム・スミスがせっかく考えてくれた話だけど、すぐに役立つ話ではない。

人気が出れば欲しがる人が増えて株価が上がる、じゃあどんな株がこれから人気が出るんだ?売上や利益が増えていく会社か?最近の時代の流れに乗っている会社か?

それを考えるためには結局ビジネスモデルとか決算書とか、地味な調査が必要になってくる。

 

 でも、人気に関わらず確実にその銘柄の需要が高まるイベントというものは存在する。需要が高まれば当然株価は上がる。つまり、確実に株価が上がるイベントというものが存在するんだ。

それを順番に見ていこう。覚えておいて損はない。

 

 

2.自社株買いが実施される時

 「自社株買い」とは、企業が自分の株を買うことだ。

企業が稼いだお金の一部は、企業内にストックされる。そのお金を使って、企業が自分の株を買うことが出来る。それを「自社株買い」と言うんだ。

 

自社株買いをすると、市場に出回る株数が減る。発行済株式数が減ると、一株あたりの企業の取り分が増える。その結果、一株当たり純資産も増えるし、一株当たりの利益も増える。

 

かなり前だが、増資の話を書いた。自社株買いというのは、簡単に言えば増資の逆だ。

 

自社株買いのメカニズムがピンとこなくても、企業自身が株の買い手になるという事はわかるだろう。株の買いが増えるのだから、その株の需要が高まる。だから株価は上がる(あるいは下がり方がマイルドになる)。

 

最近の有名な企業としてはソニーの例がある。ソニーは2019年5月16日に自社株買いを発表した。

その発表を受けて株価は上がった。

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・・・すぐ元に戻ったけど。

 

 まあ、この時の株価は需給が良くなって上がったわけではない。自社株買いの発表で投資家の人気が高まって上がっただけだ。実際、ソニーは「来年の3月31日までに自社株買いをする」と発表したので、もしかしてまだ一株も買っていない可能性もある。

でも自社株買いをするんだから、今後安くなった時には会社が買ってくれるだろう。株価下落は限定的になる可能性が高いと思う。

 

 

3.TOBが決まった時

TOBとは何か?

TOBとは「Take over bit」の略だ。・・・と言われても全然ピンとこない。

TOBとは「株式公開買い付け」の事だ。・・これなら日本語だから少しわかる。

 

例えば、ある会社が別の会社を買収して子会社にしたいと考える。

このブログでは何度も書いているが、株を買うことは会社を買うことだ。ある会社を買収して子会社にしようと思ったのなら、その会社の株を全部買ってしまえばいい。

でも市場でちまちま株を買っていっても、全部買うのは不可能だ。買い進めているうちに自分の買いでどんどん株価が上がってしまうのも好ましくない。だからTOBを行う事にする。

 

 カレーショップチェーンを展開する「くまカレー社」の買収を考えた会社があるとする。くまカレー社を買収するためには、その株をすべて買えばいい。くまカレー社の株価は1,000円、発行済株式数は100万株だ。だから時価総額は10億円になる。

くまカレー社の株を集めようとすると、自分の買いが株価をどんどん上げてしまう。株主にとってはとてもありがたいが、買収しようとする企業にとってはとても困る。だから市場以外で株を買うことを宣言する。

「6月15日に、くまカレーのTOBを行います。株価は1,500円です。」

このように発表する。

 

1,000円の値段が付いている株を1,000円で買う、と宣言しても誰も応募しないだろう。普通に市場で株を売ったほうが早い。しかし1,500円なら売る人も多いんじゃないだろうか?だからTOBは、だいたい市場の株価より高い値段で行われる。

 

くまカレーのようにTOBの価格が1,500円と決まると、株価は1,490円くらいまで一気に上昇する。ちょっと待てば1,500円で買い上げてくれる株を、1,000円で売ってくれるような優しい人はいない。

「会社を買収したい」とは「その会社の株をすべて買ってしまいたい」という意味だ。すべての株を買いたいという圧倒的な需要が、株価を一気に押し上げる。

 

すべての株ではなくて、一部の株を買いたいというTOBも多い。安い価格でTOBが行われることもある。TOBは株主にとって、いつもありがたいニュースだという訳ではない。でも需要が湧いてくるんだから、株価が上がることが多い。

 

このTOBは割とよく行われている。 2018年は、一年間で52件のTOBがあった。

 

 

 4.長くなった

需要が高まる時は他にもある。

でも長くなったので、次回に続く。

 

 

 

 TOBと言えば、ホリエモンのフジテレビ買収騒動を思い出す。

 もう14年前の事件だから、中学生は知らないだろうけど。

 

 ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく