会社の「貯金」と「借金」
「お金持ち」と聞いてどんな人を想像するだろうか?
1.豪邸に住み、高級外車に乗り、高そうな服を着ている実業家か?
2.ユニクロの服を愛用しているが月給300万円のサラリーマンか?
3.仕事はしていないが借金もなく、貯金その他の金融資産が20億円あるおじいさんか?
豪邸に住んでいる実業家は見栄を張っているだけで、実際は借金まみれかもしれない。月給300万円の高給サラリーマンはものすごく金遣いが荒くて、毎月305万円使って遊んでいるかも知れない。
でも借金がなくて金融資産が20億円あるおじいさんなら間違いないだろう。詐欺師や泥棒が狙うべきなのは、20億円持ってるおじいさんだ。つつましく暮らしているから貧乏だ、などと考えているようであれば、一流の詐欺師にはなれない。
金持ちとは、収入ではなく資産で判断するべきだろう。当然住んでる家や乗っている服の豪華さで判断してはいけない。
個人と同じように、お金を持っている会社というのがある。
お金持ちの会社とは、その本社が豪華な会社ではない。
毎年の利益がすごく多い会社でもない。
現金や金融資産をたくさん持っていて借金が少ない会社がお金持ち、なんだ。
もちろん利益がたくさん出てどんどん現金が入ってくる会社は、いずれたくさんの金融資産を持つようになる。企業を分析するときには、利益と資産の両方から判断するべきだ。
もう忘れているかもしれないが、ずいぶん前に企業の「利益」について書いた。
息子は多分忘れている。もう一度読んでほしい。
なんて事を書いた。
企業にとって利益とは、個人にとっての年収と同じだ。
年収だけではその人の経済状況は把握しきれない。その人がどれだけ貯金や借金を持っているかを確認しないと、経済状況を理解したとは言えない。
同じように、利益だけでは企業の状況は分からない。その企業がどのくらい貯金と借金を持っているかを確認しないと、企業を理解したとは言えない。
なぜ企業の貯金と借金を理解する必要があるのか?
株を買うとは、企業の一部を買うことだ。株をすべて買い占めれば、その企業をまるごと買うことになる。企業を買えば、その紙幣印刷機としての機能が手に入るだけでなく、その企業が所有している貯金や土地や建物も、借金もすべて手に入れる事になる。
できれば貯金は手に入れたいし、借金は手に入れたくないだろう。
ここで2つの企業を考えてみる。
A社:年間の純利益は1,000万円。所有する現金は5億円。借金は0円。
B社:年間の純利益は1,000万円。所有する現金は0円。借金は5億円。
A社、B社共に、時価総額10億円。どっちの企業を買いたいですか?
A社を10億円で買うと、現金が5億円手に入る。これは、A社を5億円で買ったのと同じだ。
B社を10億円で買うと、借金が5億円ついてくる。これは、B社を15億円で買ったのと同じだ。
A社、B社共に、年間の純利益は1,000万円。どっちの企業が安いか、考えなくてもわかるだろう。
そんな訳で、企業が持つ現金と借金の把握はとても重要なんだ。
その調べ方は、また別の機会に書きます。