中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

黒字倒産とは何か?儲かってる企業が倒産する訳は?

 

父の日のイラスト「肩車」

1.黒字倒産

 商売がうまく行かなくて利益が出ない。そんな状態の事を「赤字」という。

逆に、商売が上手く行って儲かる状態の事を「黒字」という。

そのくらいは中学生でも知っているだろう。

 

しかし、世の中には「黒字倒産」という言葉がある。

商売が上手くいってお金が儲かっている。それなのに倒産してしまう。

そんな不思議な事が、世の中では時々起こる。

 

これは株式投資家にとって嫌な話だ。

儲かっているから、これから成長すると思っているから株を買ったのに。それなのに倒産してしまう。買った株が無価値になってしまう。

あんまりじゃないか?黒字でも倒産してしまうなんて。やっぱり株は怖くて出来ない。

そう思う人もいるかもしれない。

 

でも大丈夫だ。決算書さえちゃんと読めれば、黒字倒産する会社の株を買ってしまう事はない。安心してほしい。

というわけでまず、なぜ黒字倒産なんていう事が起こるかを見てみよう。

 

 

2.現金がどんどん減っていても黒字だったりする

ここで、「くま不動産」という架空の会社を見てみよう。

 

くま不動産は土地を買って住宅地を造成し、販売する会社だ。

2019年前半、くま不動産はとても業績が良かった。

2018年にくま島と本州を結ぶ「くま島大橋」が開通したのだ。くま島から本州に通勤、通学することも可能になり、多くの人がくま島に家を建てるようになった。その結果、くま不動産は大繁盛していた。売り物が足りなくなる程、土地はよく売れた。

 

勢いに乗ったくま不動産は、大量の土地を仕入れるようになった。多額の借金をして土地を買い求めた。仕入れた分だけ売れるのだから、仕入れをケチる必要はない。

 

しかし2019年10月になって、土地の売れ行きは突然悪くなった。消費税の増税のためだ。くま島の土地を買おうと考えていた人は、みんな増税前に買ってしまっていた。

しばらく待てば、また土地が売れるようになる。そう思ってくま不動産は土地の仕入れを止めなかった。

何年経ってもくま島の土地の売れ行きは回復しなかった。くま不動産はたくさんの土地を在庫として抱え込んでしまった。

 

この間、くま不動産が持つ現金はどんどん減っていった。次々と土地を買っていたのに売れなかったのだから当たり前だ。

しかし現金がどんどん減っている間も、くま不動産は黒字だった。

買った土地が売れていない。それでも決算書にある「損益計算書」には、くま不動産が儲かっていると書かれてあった。

 

くま不動産はウソを書いていたわけではない。決算書のルール通りに書くと、現金がどんどん減っている状態の会社でも「黒字」だという事になるのだ。

 

 

ちょっと難しい話になるが、損益計算書には「費用収益対応の原則」というルールが存在する。これは「売上に対応する仕入れ在庫だけが、売上の原価として計上される」という意味だ。

 

 くま不動産は1,000万円の土地を10ヶ所購入した。全部で支払いは1億円だ。

このなかで実際に売れた土地は1ヶ所だけだった。1,400万円で売れた。

この場合、損益計算書には「売上1,400万円、原価1,000万円、粗利400万円」と記載される。売れなかった9ヶ所の土地の代金は原価に含まれない。だから利益が400万円出たことになる。これが「費用収益対応の原則」だ。売上に対応していない費用(この場合は9ヶ所の土地の仕入れ代金9,000万円)は計上しなくていいんだ。

 

実際は1億円の仕入れをして、1,400万円しか売れなかった。現金が8,600万円減っている。

だけど、損益計算書のルールでは「売上に対応する仕入れ在庫だけが、売上の原価として計上される」となっている。このルールによると、くま不動産は黒字なのだ。

 

 

 3.黒字でも現金がなければ倒産する

 上の話が理解できれば、黒字倒産が全然不思議じゃないことがわかるだろう。

 

会社が倒産するのは、手元に現金がなくなった時だ。

現金がなくなれば、お金を期限通りに払うという約束が守れない。 お金を払う約束が守れなかった時に、会社は倒産する。

書類の上でどれほど儲かっていたとしても、お金がなくなれば会社は倒産するんだ。

 

 

4.損益計算書の利益よりキャッシュフロー計算書の現金

 黒字倒産がおかしいわけじゃない。現金が減っているのに黒字というルールが、ある意味おかしいんだ。損益計算書のルールは、時として現実にそぐわない。

 

「現金がどんどん減っているけど黒字」と言われても困る。理屈の上で儲かっていても嬉しくない。理屈だけじゃ腹の足しにはならない。

 

大事なのは現金なんだ。

 

だからこそキャッシュフロー計算書が大事だ。

損益計算書よりずっとリアルなお金の動きが書いてある。

 

 「今回はちょっと難しくて理解できない、もっとわかりやすく書け!」

そう思う中学生がいるかもしれない。

 

わからなくてもこれだけは覚えておいてほしい。

現金の流れが載っているのはキャッシュフロー計算書だ。

現金がどんどん減っている企業の株は買うな。

 

 現金の流れがわかるキャッシュフロー計算書は重要なんだ。