嫌いな会社に投資してはいけない
私はタバコが嫌いだ。
私が住んでいる場所はなかなかイナカであり、喫煙率が高い。だから飲食店も喫煙可の店が多い。
楽しく食事をしているのに、他の客がタバコを吸い出すとがっかりする。コーヒーなど香りを楽しむ飲み物を飲んでいる時に、横からタバコのケムリが流れてくるとうんざりする。ライターの「カチッ」という着火音が聞こえるだけで舌打ちをしたくなる。
ましてや同じ店で小さな子供や妊婦がいた場合。そんな状況なのにタバコを吸おうとする奴に殺意すら生まれそうになる。確かにその店は禁煙じゃない。それでも子供や妊婦にタバコの煙を吸わせるなんて、どうかしてる。
私はタバコを本質的に嫌っている。健康に悪いから嫌っているだけではない。たとえ健康増進に役立つことが判明して、厚生労働省が喫煙を推奨するようになっても絶対に吸わない。ケムリもニオイも嫌いだから。
タバコを吸う人も、食事中にうんこを撒き散らすと怒るだろう。私にとって、食事中にタバコのニオイを嗅がされるのは、うんこを撒き散らされるのに近い。もう、臭くて臭くて仕方ない。そんな中で食事を摂っているんだ。飲食店で喫煙する人はそのつもりで喫煙してほしい。
タバコは健康に悪い。ガンや心筋梗塞、脳梗塞のリスクを高める。
成人している個人が自己責任で吸っているからいい、という考え方もある。愚かな事をする権利、「愚行権」というやつだ。人間には自由がある、故に不幸になる自由もある。そういう理屈は分かる。
しかし、タバコは周囲の人の健康リスクも高める。本人が不幸になる自由はあるかもしれないが、他の人を不幸にする権利はない。
そして何より、私は自分の子供達の「不幸になる自由」を認める気は更々ない。そして誰もが、誰かの子供だ。わざわざ不幸になる権利を擁護する必要は無いんじゃないかと思う。
だいぶ長くなってしまった。言いたいのはこれだ。
私はタバコが嫌いだから、JTに投資することは絶対にない。
中国には「白い猫でも黒い猫でも、ネズミをよく捕る猫がよい猫だ」ということわざがあるらしい。ネズミを捕るという目的が大事であり、手段については気にする必要がない、という意味だ。
企業は紙幣印刷機だ。印刷機の性能が大切なのであって、印刷機のデザインや形については気にする必要がない。そういう考えもある。しかし、好きじゃない企業の株を買ったところで、持ち続けることは出来ない。株の値が少し下がっただけで手放したくなるだろうし、ちょっと上がったら利益を確定してしまうだろう。辛抱強くその株を握り続けて10倍になるのを待つ、という事はできそうもない。
ときどき紙幣以外の、例えばデスノートが印刷されてくるような印刷機は嫌だ。そのノートに書かれている名前が自分や知人じゃなくても、どこかで誰かが死ぬような印刷機は気分が悪い。
そう思うと早く株を手放したくなる。
これでは勝利はおぼつかない。十分調べて10年でも付き合いたくなるような企業の株を買いたい。好きじゃない会社の株では儲けるのが難しい、と思う。
タバコを吸っている(そして健康を害している)人をみて、「うん、自分の買った会社の売上に貢献してくれているありがたいお客さんだ」と微笑む。そんな自分にはなりたくないんだ。