中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

2023年を振り返る②・・セルシス(アートスパークHD)への投資について(後編)

ダルマを抱えたウサギのイラスト(卯年)

1.DC3事業への10億円投資は予見できたか

UI/UX事業の売却のニュースが発表されたのは2023年2月10日だ。

それと同時にDC3事業への10億円の開発投資を行う計画も発表された。

営業利益14億円の企業が新規事業に10億円投資する訳だから、当然株価は地に落ちた。

 

私も株を売った。セルシスへの2回目の投資は損切りで終わった。

 

これは事前に気付けなかったのだろうか?

人間はいきなり突飛な行動をする訳では無い。例えば突然ブチ切れてしまう人も、その人なりにブチ切れる理由があるからブチ切れる。他人から見ると理解不能かもしれないがその人の中ではその人なりの理由があるし、ブチ切れるまでの過程があるはずだ。

 

営利14億円の企業が新規事業に10億円の投資をするという突飛な行動も突然決まった訳では無いはずだ。ホルダーにとっては理解不能でも経営者側には投資を決める理由や過程があるはずだ。

だから過去を遡って予兆を探してみることにした。

それでお金が返ってくる訳ではないが、今後につながることはあるかもしれない。

 

 

2.DC3の発表会のニュース

そもそもDC3とは何か?

セルシスのサイトをみるとこのように説明してある。

「DC3は、あらゆるデジタルデータを唯一無二の「モノ」として扱うことが出来るようにする、WEB3基盤ソリューションです。」

 

 

DC3は「NFT等の流通プラットフォーム」という理解でいいだろう。たぶん。

 

セルシスが「株式会社&DC3」という子会社を立ち上げてDC3のサービスを提供すると発表したのは2022年12月7日だ。

このニュースを確認したときの感想は「自分の書いたイラストをNFTにして売ることができれば作家にとってはありがたいのかな」という程度だった。つまりほぼスルーしていた。

 

その後もセルシスのサイトは定期的に巡回していたが、DC3のニュース記事に関しては開く事もなかった。大勢には影響しない些事だと判断していたからだ。

 

サービスローンチの翌日である2022年12月8日に「DC3の発表会を開催しました」というニュースが出ていたが、内容を読むことすらしなかった。

 

DC3の発表会ってどんな事を発表したんだろう?

損切りの後ではあるが調べてみた。するとこんな記事がみつかった。

 

あらゆるデジタルデータを唯一無二の “モノ” として取り扱うことができる新ソリューション「DC3」発表会を開催 -令和の白ギャルゆうちゃみさんとITジャーナリスト三上洋さん - ZDNET Japan

 

 

その内容の一部が書き起こされていた。

 

 

ここに出てくる「ゆうちゃみさん」とは「古川優奈」というモデルさんらしい。

令和の白ギャルとも称される「egg」の元専属モデルだ。

 

NFTやDC3と関係がありそうな人物には見えない。この人を新規事業の発表会に呼ぶ理由がわからない。だけどお金がかかっていることはわかる。

 

 

3.マイナビITmedia、News Picks、日経ビジネス

また、セルシスのサイトには「マイナビ様にDC3についての記事を掲載いただきました」というニュースが貼られていた。

 

DC3の解説記事だが、多くのイラストを入れて読みやすくなってる。

 

そして記事の最上段には「PR」の文字が。

プロモーション記事じゃん。

 

 

「ITmedlia 様にDC3についての記事を掲載いただきました」というニュースも貼られていた。

 


こちらもプロモーション記事だ。

 

他にも、NewsPicksや日経ビジネスにもプロモーション記事を出している。

 

ここまで調べて思った。

これは電通の仕事だな、お金かけてるな、と。

 

 

4.プラットフォームビジネスは立ち上げが大変

色々調べてみたが、DC3が何なのかをはっきりと理解することはできなかった。しかしNFT周辺の流通プラットフォームビジネスだという事は間違いないだろう。

 

プラットフォームビジネスとは、商品やサービスの提供者と利用者をつなぐ場所(プラットフォーム)を提供するビジネスだ。具体例としてはメルカリが一番理解しやすいだろう。

プラットフォームは使う人が大勢いなければ意味がない。メルカリの参加者が少数であれば「売りたくても買ってくれる人がいない、買いたくても商品がない」という状態になる。使う人が大勢になれば「あそこに行けば何でも売れる、何でも買える」という状態になる。そうなればますます参加者が増える。いわゆるネットワーク効果だ。

参加者の数と質こそがそのプラットフォームの価値になる。

 

しかしどんなプラットフォームも最初は参加者が少ない。参加者を増やしプラットフォームを価値を上げるために、多くの広告宣伝費をかける必要がある。あるいは人件費をかけて泥臭い営業を続けなければならない。

 

セルシスもDC3というプラットフォームビジネスを本気で立ち上げるのならば、広告宣伝費をはじめとする多額の投資が必要になる。

2022年12月のDC3事業発表直後にあったいかにもお金をかけて行った発表会、複数のメディアに出したプロモーション記事。このあたりを見て「プラットフォームビジネス立ち上げに必要な多額の投資資金」の匂いを嗅ぎ取ることができれば、もしかするとこの損失は回避できたかもしれない。

しかし私は匂いを嗅ぎ取る以前に、ニュースの内容のチェックすらしていなかった。事実を認識していないのに雰囲気を嗅ぎ取ることなどできる訳がない。

 

 

5.元カノ投資法の失敗

最初にセルシスへの投資は2回目だと書いた。

一度売却した企業を買いなおす事を個人的に「元カノ投資法」と呼んでいる。

 

株を買うときはその企業についてかなりの時間をかけて調査する。売却した後もフォローを続けている。よく知った企業の株を買うのは調査の時間が少なくて済む。

 

過去に付き合ったことのある企業ならよく理解している。ビジネスも、社風も、経営者も、株価の動きのクセもわかってる。過去に付き合ったことのある元カノと同じだ。

それは今後付き合いを続けていく上で役に立つはずだ。

よく知っていることは安全性が高いという事だ。この考え方は間違っていない。

 

しかし油断していた。

よく知っているとタカをくくっていた彼女はこっそりと別の事を始めていた。丁寧に見ていれば気付いたはずの予兆は、油断していた彼氏の目には見えなかった。

 

まるでレディースコミックのストーリーのようではないか。

どれだけよく知っていると思っていても油断してはいけない。常に関心を持ち続け、病める時も健やかな時も、相手を知る努力を続けるべきだという事を知った。

 

 

6.おまけと次回予告

という訳でセルシスの反省は終了です。

プラットフォームビジネスの代表としてメルカリの創業本のアフィを貼っておきます。

 

次回は2023年の総括について書きます。

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