1.利益率の維持は価格決定力の有無による
「SMS事業は利益率を維持できるか」について、前回は原価の面から考察してみた。
しかし原価がいくら上昇しても唯一無二のサービスならば価格に転嫁できる。絶対に必要なサービスなら多少高くても使い続けるしかないのだかから。
しかし同業他社が同じようなサービスを提供しているのであれば無理だ。同じサービスをより安く提供してくれる他社に乗り換えられて終了だ。
そういう意味で、利益率の維持については原価の上昇より他社との差別化がより重要な要素になる。差別化ができなくて乗り換えが簡単なら、原価が上昇してもしなくてもいつかは価格競争になって利益率は維持できなくなる。
という訳で、今回は他社との差別化について考えてみた。
2.他社のSMSとの違い
結論から言うと、ファブリカが提供するSMSサービスは競合他社と変わらない。
メディア4u.のサイトには「双方向」「長文化」などの機能を前面に押し出しているが、競合他社にも同様なことは可能だ。
決算説明会資料を読むと次のような文章が載ってる。
「競合他社様も機能の優劣はございますが、長文化対応にはすでに取り組んでおられます」とある。
SMSサービスはコモディティーだ。差別化は出来ていない。
となると、SMS事業は早々にレッドオーシャン化するという事になる。
差別化なきコモディティの行き着く先は価格競争、そして利益率の低下だ。
それなのに私はファブリカの株を買った。
価格競争はそれほど激しくならないと考えたからだ。
3.面倒なシステム導入とストック化
価格競争はそれほど激しくならないと考えた理由は、前々回書いた事と関連する。
「業務用SMSを導入するためには、まず会社のシステムに繋ぐ必要がある。
必要なタイミングで必要な電話番号を引っ張ってきて、必要なメッセージを載せてSMSを送る。これはちょっと面倒くさい。
YahooやAmazonの2段階認証程度なら楽そうだ。文章は単純な数字の羅列のみだし、アクセスされた時に送付するだけでいい。
しかし家賃の督促や人材派遣会社の業務連絡だとそうはいかないだろう。長い文章で、現在どのような状況か、次にどのような行動を取ればいいかなどを個人に合わせて作文しなくてはいけない。」
業務用SMSの導入に面倒な作業が必要な場合、他社へのスイッチングはコストになる。
こんなブログを読んでる方には想像しにくいかもしれないが、「変更が面倒だから割高なスマホを使い続ける」「調べるのが面倒だから現金しか使わない」「ポイントがほとんど付かないことは知ってるけど新しいカードを作るのが面倒」「5,000円貰えると知ってるけどマイナンバーカードの申請は面倒」といった人は世の中にたくさんいる。
面倒なことをするくらいならお金を余分に払い続けた方がいい。そう考えている人はいくらでもいるんだ。
業務用SMSも、本人認証のような単純なもの以外は特にスイッチングコストが高くなるだろう。であれば一度導入されたらそのシステムを使い続ける可能性が高い。
そうだとすれば価格競争は起きない。
そのためには、導入されるシステムは複雑で面倒な方がいい。
ファブリカが提供している業務用SMSの用途別構成比はこんな感じだ。
本人認証という単純なものが21%と少なくなっている。国内の業務用SMSは本人認証が40%以上を占めているにも関わらず、だ。
導入が面倒なジャンルで新規顧客を開拓し、スイッチングコストを高くさせ、単価を維持する。そんな戦略を取っているように思われる。
4.他社の案件は奪ってもおいしくない?
業務用SMSの市場は拡大している。それはニーズがあるからだろうが、ニーズを掘り起こしてひとつひとつの企業に導入していくのは結構大変なのだろう。
ファブリカのSMS事業の2022年3月期の売上は3,286百万円。ファブリカのSMSサービスを導入しているのは3,521社。1社あたり93万円/年の売上でしかない。
小さな会社の小さな案件をコツコツ拾っていく。そんなに美味しい商売じゃない。
また、おいしくないから他社のSMSサービスを導入している顧客を奪いにはいかない。導入先の企業もスイッチングは面倒だし、低価格を武器に案件を奪ったところで利益率が悪くなるだけだ。それならまっさらの新規顧客を取りに行くほうがいい。どうせ同じかそれ以上の手間がかかるのなら、他社の手垢がついていない案件の方がいい。
そんな状況にあるのではないかと考えている。
5.まとめと雑談
利益率が維持できるかどうかという話はなかなか確たる証拠がないので検証が難しい。私の予想ばかりでイマイチ説得力がないですが勘弁してください。
実際は発表されるKPIや4Q毎の決算をみながら確認していくしかないとも思ってる。
① 業務用SMSの市場が拡大するのは本当か?
② ファブリカはシェアを維持できるのか?
③ 利益率は維持できるのか?
SMS事業についての3つの検討は以上で終わりにします。
次からはU-CAR事業について書きます。
10年かけて行った制作と飛行訓練のノンフィクション。
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これぞ酔狂。当然買いました。
まだ読んでませんが。