チェルノブイリを経験したウクライナが原子力発電所を建設し続けるのはなぜか?
いかついタイトルがついているけど、いつもの投資ブログです。
1.独占は最強のビジネスモデル、独占されたほうは最弱
少し前の記事で、橋の通行料をどんどん上げられて困るくま島の島民の話を書いた。
独占する企業は好きに値段を上げることができる。それを買うしか無い消費者はとても困る。そういう話だ。
もちろん「くま島」は架空の島であり、独占企業である「くま島交通」は実在しない。でも、それと似たような話は現実にも存在する。
ヨーロッパの東の端っこに「ウクライナ」という国がある。そんなにメジャーな国でも無いので、知らない人も多いかもしれない。
50歳くらいの人ならウクライナという国の名前を知らなくても、「チェルノブイリ原子力発電所」という言葉は知っていると思う。チェルノブイリ原子力発電所とは、1986年に起きた世界最悪の原子力事故の舞台だ。爆発、溶解した原子炉が世界中に放射能を撒き散らし、数万人から数十万人の死者を生み出したと言われる。
この史上最悪の原発事故を起こしたチェルノブイリという街が、ウクライナに存在する。
事故から30年以上経過しているが、いまだにチェルノブイリの周囲の地域では高濃度の放射線が確認され、立入禁止の地域もそのままだ。
そこまでひどい目にあった国なら、もう原子力発電所は恐ろしくて使えない。原発なんて懲り懲りだ。そういう風に考えていると思ってしまう。
しかし、現実はまったく逆だ。ウクライナは、世界で最も原子力に発電を依存している国のひとつなんだ。2017年のデータだが、ウクライナで発電される全ての電力のうち、原子力発電所が占める割合は58.4%だった。これはフランスに次いで世界2位だ。
3.ウクライナの憂鬱
なぜこんな事になっているのか。
ウクライナとその隣りにあるロシアは、もともと「ソビエト連邦」というひとつの国だった。1991年にソビエト連邦が解体され、構成していた国々が独立した。それをきっかけにロシアとウクライナは別々の国になった。
ロシアでは天然ガスが豊富に産出される。ロシアは近隣の各国までパイプラインを敷設し、その天然ガスを輸出していた。
パイプラインは、一度敷設してしまえば実に安く手軽にガスを輸送する事ができる。パイプにガスを通すだけだ。日本がガスを輸入しようとすれば、ガスタンカーを使って運んで来なくてはいけない。それを考えるとパイプラインの効率の良さはケタ違いだ。
もともと同じ国だったということもあり、ロシアはずいぶん安くウクライナにガスを売っていた。そんなこともあり、ウクライナは、ロシアから安く供給される天然ガスに頼ってしまった。
ロシアは、ウクライナに天然ガスを「独占して」売る国になっていたのだ。
独占した方は、自由に値段を上げることができる。ロシアは天然ガスの値段をどんどん上げるようになった。そして、問題は値段だけではなかった。
ウクライナは、政治的にもロシアに対して立場が弱くなってしまった。エネルギーを供給してくれるロシアがへそを曲げたら、暖房も電気もロクに使えなくなってしまう。国の産業も国民生活も成り立たなくなる。あんな寒い国で暖房が使えないなんて、シャレにならない。
エネルギーの首根っこを抑えられたウクライナは、ロシアに逆らうのがとても難しい国になってしまったわけだ。
このように書くと、ウクライナが一方的な被害者のように感じるだろう。しかしそうとも限らない。ロシアは、もともと同じ国だったウクライナに、市場より安い値段で天然ガスを売っていた。その価格を普通に戻そうとしていただけ、だった。
ウクライナは市場より安い価格で売ってもらった天然ガスを、別の国に高く売って利ざやを稼いだりしていた。また、お金がないからとロシアに払うべきガス料金を滞納していた。更に、こっそりとパイプラインに穴をあけて、お金を払わずガスを盗んでいたりもしていたようだ。
それでロシアの怒りを買って、ガスを止められてしまった。料金を払わずにガスを止められるなんて、貧乏学生かよ。
ロシアとウクライナの「ガス紛争」 | 時事オピニオン | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス
4.ウクライナの更なる憂鬱
そんな事をやっているうちに、ウクライナの一部であったクリミア半島で独立騒ぎがあった。その騒ぎに対し、在留ロシア人の保護を名目にロシア軍が進出、クリミア半島全域を占領してしまった。その後クリミア半島は独立し、すぐさまロシアへの編入を宣言した。
ウクライナは、クリミア半島という国土の一部をロシアに奪われてしまった。
ウクライナは、ロシアを「侵略国家」と呼んで敵視している。まあ、当然だろう。
そんなロシアにこれ以上エネルギーを依存するのはあまりに危険だ。そう考えたウクライナが、原子力発電所に活路を見出した。
ウクライナはチェルノブイリを忘れたわけじゃない。ロシアに頼るより原子力発電所に頼るほうが安全だと考えたんだ。
国であれ、個人であれ、自分自身の運命は他人に握らせてはいけないんだ。
環境は二の次、原発依存高めるウクライナ - ライブドアニュース
5.まとめ
・独占は最強、独占される方は最弱。
・まだまだ世界は平和とは言い難い。下手な手を打つとやられる。
・若者は心と体を鍛え知識を身に付け、不測の事態に備えるべきだ。
こんな記事を書いている時に、ウクライナの大統領選挙の結果が出てた。
政治経験ゼロ、テレビドラマで大統領役を演じた人気コメディアンであるゼレンスキーが選挙に圧勝し、大統領に選ばれたらしい。
コメディアンが圧勝へ ウクライナ大統領選 出口調査で70%超支持 - 産経ニュース
大丈夫なのか、ウクライナ・・・。
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