ビジネスモデル② 地元で負け知らずを目指すという「地域ドミナント戦略」とは?
1.独占地域を作る作戦
他に代わりになるものがないモノやサービスを独占して販売する企業は、間違いなく儲かる。社長の経営手腕が普通以下でも、余計なことさえしなければ利益は勝手に転がり込んでくる。これが「独占」だ。
「独占」の状態を作っていけば、とてもよいビジネスができる。しかし日本全土で独占の状態を作るのは難しい。ライバルも多いし、もしかすると独占禁止法に引っかかってしまうかもしれない。
でも、ある地域だけで独占を狙ってみるのはどうだろう?
「地元じゃ負け知らず、そうだろ?」という状況を作ってやるのだ。
そういう戦略を「地域ドミナント戦略」という。
2.地域ドミナント戦略とは?
ドミナントとは、「優勢である」「支配的な」という意味の英単語だ。地域ドミナント戦略とは、「その地域内で優勢になり、できれば支配して独占する」という戦略だ。
言葉で説明してもわかりにくいので、実例を挙げる。わかりやすいのはコンビニだ。
コンビニの雄、セブンイレブンはこの地域ドミナント戦略をはじめから採用していた。
セブンイレブンはコンビニ業界の売上高1位であり、そのシェアは36.8%を占める。
しかし日本全都道府県には存在しない。まだ沖縄県にはセブンイレブンが1店舗も無いんだ。2015年までは青森県と鳥取県にも存在しなかった。これは、セブンイレブンが少しずつ出店範囲を拡げていく地域ドミナント戦略をとっていたからだ。
日本全国に均一に出店するのではなく、ある地域を決めてそこに集中的に出店する。その地域に隙間がなくなるまで出店して、地域No.1になる。そこまでやって次の地域に手を出していく。地域ひとつひとつを塗りつぶすように出店し、その領域を拡げていく。それが地域ドミナント戦略だ。
3.地域ドミナント戦略のメリット
このような地域ドミナント戦略にはどのようなメリットがあるのか?順番に書いていきたい。
① 配送がラクだ
弁当に代表されるコンビニの商品は、毎日トラックで各店舗に入荷される。コンビニの店舗が日本中にバラけて存在すれば、配送する人が大変だ。遠くにある1軒のコンビニのために何百キロもトラックを走らせるのは、あまりにも効率が悪い。
逆に、近くに店舗が密集していれば、トラックを走らせる距離が少なくて済む。時間もかからないので、弁当の賞味期限も長くとることができる。
② ひとつの店舗が他の店舗の宣伝になる
1軒のセブンイレブンの看板を見れば、それはその地域全てのセブンイレブンの宣伝になる。地域の中に多数の店舗があれば、一日に何度も看板を見ることになる。こうやって地域の住民に認識されて行けば、お客さんも集まりやすい。
北海道に行ったことがない人は、多分「セイコーマート」を知らないだろう。逆に北海道民でセイコーマートを知らない人はいない。セイコーマートが鳥取県で1つだけ店舗を出しても、北海道の1店舗より売上は少ないだろう。人は、よく知らない店にはあまり近づかない。
③ 地域ごとに宣伝がしやすい
私が小さい頃、「マツモトキヨシ」のCMをよくテレビで見た。幼い私は、マツモトキヨシという人が誰なのか全くわからなかった。
「マツモトキヨシ」はドラッグストアのチェーン店だ。テレビでCMが流れていたが、私の住む地域にはマツモトキヨシの店舗は全くなかった。全く無駄なCMが流されていたわけだ。
北海道ではセイコーマートのCMがよく流れる。北海道以外の地域でセイコーマートのCMが流されることはない。そんな無駄なことは誰もやらない。
地域ドミナント戦略は、CMの無駄を省くことができる。
④ 地域に合わせた商品が開発できる
北海道では赤飯に甘納豆を入れる。ほんのり、というか明らかに甘い赤飯を初めて食べた時はおどろいた。
その文化に合わせて、北海道のコンビニで売られる赤飯おむすびには甘納豆が入っている。当然、甘い。
この甘納豆おむすび、北海道以外の地域で食べたことはない。
けっこう美味しいのだけど、甘い赤飯は北海道以外では売れないと思う。
⑤ 占領してしまえばこっちのものだ
あなたがコンビニの店舗を経営するとしたら、どちらを選ぶだろうか?
1.300m進むごとにセブンイレブンの店舗が存在する、上津町。
2.人口12万人だがまだ1軒のコンビニも存在しない、くま島町。
わざわざ1.を選ぶような人はいるだろうか?
地域をガチガチに占領してしまえば、もう他のコンビニチェーンが出店する気にならないだろう。他のコンビニが出来ないのなら、その地域は独占する事ができる。
「独占」という美味しい立場を手に入れることができるのだ。
・デメリットは?
もちろん地域ドミナント戦略にはデメリットもある。客を奪い合う「共喰い状態」になってしまうとか、唯一の出店エリアで地震が起きたときのダメージがでかいとか。
でも、メリットの方がずっと大きいように思えないか?
4.ある地域で成功した企業の全国展開を狙え
ひとつの地域で勝利した企業が全国展開していくとき。これは実に美味しい季節だ。
ビジネスがある地域で成功した。その地域でのドミナントは完了した。あとは同じパターンを繰り返しながら占領地域を拡げていけばいい。
そういう成長が約束されたような企業の株は、是非買うべきだ。
北海道で生まれた家具の「ニトリ」なども典型的な例だ。
北海道からスタートし、徐々に店舗を展開する地域を拡げてき、現在523店舗を数える。日本だけでなく、台湾や中国にも出店地域を拡げている。上場した1989年に株を買っておけば、現在110倍になっている。
そんな企業は、結構たくさんある。
たくさんあると言いながら、私はそういう企業の株を買えていない。残念だ。
5.まとめ
・地域ドミナント戦略は、狭い地域での「独占」を狙う経営戦略だ。
・ひとつの地域で成功して、全国展開直前の企業の株を買え。
・わたしもいつかはそんな株を買って、100倍に増えるところを見てみたい。
↓ ビジネスモデルを学ぶなら、まずこの本がおすすめ。小説仕立てで読みやすい。
私は3回読みました。