INFORICHの競合他社
INFORICHの競合他社は数社ある。
直接の競合となるのは①POWER NOW、②HESTAチャージ、③充レン、④mocha、⑤充電Go、の5社だろう。
どの競合他社もINFORICHと似たような機材を使っており、似たようなシステムで運用されている。
それ以外にも⑥U4Bという企業もある。こちらはBtoBの企業であり直接の競合ではないのだけど、一般消費者の充電需要を満たすサービスなので取り上げる。
合計6社。各社の料金等はあまり詳しく書かない。
モバイルバッテリーシェアリングが消費者に提供する価値は「便利さ」だ。つまり「簡単に、いつでも借りれる、いつでも返せる」という事だ。これは「バッテリースタンドがどこにでもあって24時間アクセスできる」という事が重要になる。
「レンタル料金は安い、だけど返却場所は限られている」というサービスは不便だ。それなら最初から自分でモバイルバッテリーを買えばいい。それが面倒だからレンタルするのだろう。
便利さを担保するのは利用できるバッテリースタンドの数だ。さらに言えば24時間いつでもアクセスできることが望ましい。
競合他社の調査も主にバッテリースタンドの数を調べてみた。
その① POWER NOW
POWER NOWは中国でモバイルバッテリーシェアリングを展開している「来電科技」の日本法人だ。
システムはCHARGE SPOTやその他の企業と変わらない。1時間110円から借りられる。
POWER NOWは2020年1月に日本で本格的なサービスを開始した。
その時のニュースリリースには「2020年8月までに日本国内で2万か所のバッテリースタンドを設置する予定」とある。
しかしどう見てもPOWER NOWのバッテリースタンドは多くない。
スマホにPOWER NOWのアプリを入れるとバッテリースタンドの場所が確認できる。
品川駅から渋谷駅あたりのMAPがこれだ。
画面上には25か所のバッテリースタンドしか表示されない。
同じ地域のチャージスポットのバッテリースタンドを示す地図は下の通り。
左上の渋谷駅の場所に(236)という数字が見える。渋谷駅周囲だけで236ヶ所のバッテリースタンドが設置されているわけだ。
チャージスポットのバッテリースタンドは国内40,900台だ。
地図に現れるバッテリースタンドの密度を考えると、POWER NOWのバッテリースタンドが国内2万ヶ所も設置されているとは考えられない。
POWER NOWの事業計画は上手く行ってないと考えるのが妥当だろう。
その② HESTA CHARGE
「HESTA CHARGE」もモバイルバッテリーシェアリングサービスだ。
そのサービス内容はINFORICHとほぼ同じ。レンタル料金は24時間165円から。
展開しているのはHESTA大倉という企業だ。
HESTA大倉の本業はニュータウンの開発、分譲マンションや戸建住宅の販売、リゾートクラブの運営などだ。新規事業としてモバイルバッテリーシェアリングを行っているようだ。
会社の公式発表ではバッテリースタンドの設置台数が4,200台、アプリのユーザーは4万人とのこと。
INFORICHはバッテリースタンド設置数が40,900台、月間アクティブユーザー数が69万人だ。
渋谷から品川駅周囲のバッテリースタンドMAPは以下の通り。
規模も利用者も1/10以下のようだ。
その③ 充レン
充レンもモバイルバッテリーシェアリングのサービスだ。
ネオンサインのような派手なロゴが印象的だ。
展開しているのは東京エナジーパートナー。東京電力HDの子会社のひとつであり、日本最大の小売電気事業者でもある。
レンタル料金は24時間で330円。
バッテリースタンドの数はそれほど多くないようだ。
サイトの「新着情報」のページを見ると、2022年10月6日に「充レンを神戸市営地下鉄に設置決定」というニュースがある。その記事に「現在、全国各地の約3,300箇所にレンタルスタンドを設置しております」という文章がある。
そしてそれ以降は新しい設置のニュースはない。
渋谷~品川間のバッテリースタンドMAPはこの通り。
POWER NOWやHESTA CHARGEよりは多いが、チャージスポットと比べるべくもない。
そして2023年8月29日に新しいニュースリリースがあった。
東京エナジーパートナーが「充レン」を会社分割によって譲渡するとのこと。
買い手は別のモバイルバッテリーシェアリングサービスを展開しているGREEN UTILITYという会社だ。
東京電力エナジーパートナーとしては、自社でモバイルバッテリーシェアリング事業を諦めたようだ。
その④ mocha
充レンを買収した「GREEN UTILITY」が展開しているのがmocha(モチャ)だ。
mochaの渋谷~品川間のバッテリースタンドMAPはこの通り。
範囲内でバッテリースタンドは25ヶ所のみ。
更に付け加えると、このMAPのスクショを撮った深夜に稼働しているのバッテリースタンドは2ヶ所のみだ。バッテリースタンドの設置場所は、深夜営業していないレストラン等の店舗がほとんどのようだ。
これでは「どこでも借りれてどこでも返せる」という利便性はないだろう。
充レンを買収したmochaだが、買い手の規模の方がずっと小さいようだ。
mochaについて、2020年2月29日のニュースリリースにこんな記事があった。
「2月に関西エリアで一気に50ヶ所バッテリースタンドを設置。現在全国で300ヶ所稼働中」
「2020年に全国で10,000ヶ所のバッテリースタンドを設置する計画です」
2020年4月1日にはこんな記事が。
「バッテリースタンド全国1000万箇所設置を目標に!」
しかしmochaのバッテリースタンドは全国1,000ヶ所もなさそうだ。
充レンの事業を買収したが、そのシステムの統合もなかなか難しいだろう。どれほどのシナジー効果があるのかも不明だし、買収後のバッテリースタンド数を考えてもチャージスポットと比べてまだまだ少ない。
まとめ
競合他社を順番に見ていったけど、INFORICHの脅威になるような所はなさそうだ。
2020年頃に「バッテリースタンドをすごくたくさん設置します!」という目標を掲げながらも実現していない企業が多い。
2020年といえば新型コロナ感染症が爆発した年だ。その時の行動制限や外出自粛については記憶に新しい。
人流が大幅に低下して先行きが見えない時期に、各社はバッテリースタンド設置のアクセルを緩めたのではないかと想像している。
その中でアクセルを踏み続けたINFORICHが、現在のガリバー状態を作ったのではないだろうか。
コロナ禍はINFORICHにとっても売上を大きく減らす逆境だったはずだが、競合他社が怯んだ隙に圧倒的だった市場を更に地固めしたと考えられる。
言い古された言葉だけど、ピンチをチャンスに変えたんだと。
リスクを取って「ほぼ独占企業」の地位を築いたのだと考えてる。
次回予告など
競合他社のうちの最後のひとつ、「充電GO」については次回に回した。
私がいちばん注目している競合他社が「充電GO」なのです。
だからこそ長くなります。読んでください。。
「物語思考」
けんすうさんの新刊。まだ途中までしか読んでいませんが、面白いです。
どちらかというと娘や息子に読ませたいと思って購入した本ですが、自分にも十分参考になりそうです。